蕎麦の実から作られる蕎麦には冷たいざる蕎麦や温かいかけ蕎麦、具材の乗ったきつね蕎麦など種類も豊富にありますが、さらに二八蕎麦や十割蕎麦などそば粉の割合や製法の違いにより食感や風味も大きく違ってきます。これらの蕎麦の特徴を最大限に楽しむためには蕎麦のゆで方も大きなポイントの1つとなってきます。今回は蕎麦のゆで方について、乾麺・生麺ではゆで方に違いがあるのかということも含めて紹介していきます。
蕎麦のゆで方
蕎麦には乾燥させた乾麺と打った状態の生麺の2種類があります。ゆでる時間が違う・気を付けるポイントがある以外に基本的にゆで方の流れは同じです。はじめに基本的な乾麺そばのゆで方を紹介して違いを見てきましょう。
乾麺・生麺どちらもポイントとなる点は
- たっぷりのお湯を使う
- しっかりぬめりを取り水でしめる
1. お湯は3リットルを目安に出来るだけ大きい鍋にたっぷりの水を用意し沸騰させる
蕎麦は他の麺に比べるとゆでているうちに出てくるぬめりが多いです。ぬめりは麺同士がくっつきやすくなるうえに、ゆでムラが出る、ゆであがった蕎麦の食感が悪いといった問題が起きやすくなります。さらにお湯の温度が下がると麺の表面が崩れぬめりの原因にもなりやすいため、蕎麦をゆでる時はより多くのお湯を用意するのが1つ目のポイントです。3リットルを目安に1人前をゆでる時は少なくても2リットル以上を用意し、1~2人をゆでる場合は2~4リットルのお湯を用意して下さい。お湯の量が多いため家庭にある鍋では1回でゆでることが出来ない場合は無理にゆでず、1人前ずつゆでるなど少量でゆでるようにしましょう。
2.沸騰したら乾麺を入れ蕎麦をゆでていく
お湯が沸騰したら麺を入れて菜箸などでほぐし、お湯がふきこばれないようにゆでていきます。麺を入れてすぐに触ると折れてしまうことがあるため入れて少し経ってから触るのがよいです。また、先ほどもお伝えしたように温度が低いとぬめりが出やすくなるため、麺を入れた後一度蓋をして再沸騰させるのもおすすめです。
再沸騰したら出来るだけ沸騰状態を保ったままゆでます。ふきこぼれそうになっても“差し水”はせず、火加減を調節してふきこぼれないようにすることで蕎麦の芯まで火を通すことが出来るのです。ゆでている最中に麺がほぐれていない時は均一に火が通るように優しくかき混ぜ、それ以外は必要以上に麺を触らなくて大丈夫です。
3.ゆであがったらしっかりぬめりを取り麺をしめる
ゆであがったら手早くザルに移し水でぬめりを取り除いていきます。蕎麦は独特のぬめりを持っているためしっかり洗い流さないとのどごしが悪くなります。しかし、うどんほどコシがあるわけではないためごしごし揉み洗いせず、ボウルにザルを重ねザルの底蕎麦がにつかないよう優しく洗い流すのがコツです。ぬめりが取れたらボウルに氷水を入れ麺をしめコシを出します。しかし、あまり長い時間氷水に浸けて冷やしすぎると麺が締まりすぎて蕎麦の風味を感じにくくなるため、軽く浸けてさっと洗うだけで十分です。
ゆで時間の目安
約3~7分
そばの乾麺のゆで時間は4分前後のものが多いですが、メーカーや蕎麦の種類、温かい・冷たいなど食べる温度によってもゆでる時間が変わります。そのため必ずパッケージに記載しているゆで時間や注意事項を確認しておきましょう。また、好みの固さを把握しておくことでゆでる時間を調整しやすくなります。
乾麺を美味しくゆでる時の工夫
基本のゆで方をすれば乾麺でも美味しく蕎麦を食べられますが、少し価格が安めの蕎麦などはぼそぼそとした食感が出やすいです。ですが、事前に乾麺を水に10分ほど浸けてからゆでると生麺のようなモチモチした食感に近づけることが出来ます。フライパンやバットなど麺が水に浸かる容器に入れておくだけで大丈夫です。麺が太い場合は5~10分増やして水に浸ける長さを調整してみて下さい。
また、水に浸しているためゆで時間は記載している時間の半分、4分が記載しているゆで時間であればその半分の2分に短くしてゆでるようにして下さい。
これだけでも麺の質感がかなり違ってきますが、さらにゆでる時にお湯2リットルに対して大さじ1杯の食用油を入れるとより美味しくゆでることが出来ます。この量であれば油っぽさや油の香りなどを感じることはありませんが、出来るだけ蕎麦の風味を壊したくない場合はサラダ油やこめ油など油自体に風味がない油を使ってください。蕎麦の甘みやコクを感じられるオリーブオイルを加えるのもおすすめです。
ひと手間かかりますが乾麺のぼそぼそした感じやのどごしがあまりよくない蕎麦の場合はこの方法を一度取り入れてみて下さい。驚くほど変化したのが分かるはずです。
生麺をゆでる時のポイント
では次に、生麺をゆでる時のポイントを紹介します。
ゆで時間の目安
約1~2分
生麺であってもたっぷりのお湯を用意し沸騰したら麺がくっつかないように入れます。生麺は乾麺より温度が低いため一度にたくさん入れると再沸騰するまでに時間がかかってしまいます。麺が切れやすくもなってしまうため多くても2人前までをゆでるのがよいです。また、冷蔵保存していた場合はゆでる前に冷蔵庫から出しておき常温に戻しておくのもポイントになります。
生麺は乾麺に比べると鍋の中でくっつきやすいため、優しく8の字を書くように菜箸で混ぜて下さい。混ぜすぎると切れてしまうため軽く箸を入れる程度で問題ありません。生麺はゆでる時間も短いため強火で一気にゆでるのがコツです。ふきこぼれそうになった時だけ火加減を調節するようにし、乾麺同様に差し水はしないほうがよいです。しかし、メーカーによって生麺の時だけ再沸騰後に一度少量の差し水をするように説明している場合があります。麺の作りによる違いもあるため、その場合は最低限の量を差し水してゆでていきましょう。
また、生麺をゆでる時に多く起こる問題がぶつぶつ切れてしまうということです。これは先ほどもお伝えしたように一度にたくさん入れると再沸騰に時間がかかることが切れやすくなる原因となります。一度で大量にゆでないだけでも防げますが、お湯に入れる回数を3回ほどに分けて入れることでよりぶつぶつ切れるのを防ぐことが出来ます。
1/3の蕎麦を入れ蕎麦が上がってきたら追加します。再度蕎麦が上がってきたら残りの蕎麦を入れて軽く混ぜ、蕎麦が上がってきてから記載している時間ゆでるだけで解消されます。ゆでた後は乾麺と同じように水で洗ってぬめりを取り麺をしめて完成です。
切れやすい十割蕎麦のゆで方
つなぎを使わずにそば粉だけで作る十割蕎麦は熱に弱い性質を持っているため、乾麺であっても切れやすいです。そのため基本のゆで方とは違ったゆで方をします。
十分に沸騰させたお湯に麺をほぐしながら入れ2分ゆでたら火を止め蓋をして1分蒸らします。もちろん製品によってゆでる時間と蒸らす時間は変わるため、すべての十割蕎麦が同じ時間ではありませんが十割蕎麦はゆでたあとに蒸らす工程が入ります。これをすることで十割蕎麦は麺が切れにくくなるためゆで方が違うことをぜひ覚えておいて下さい。
ゆでた後の処理
蕎麦は特有の香りや味を感じられるためゆでた後すぐ食べるのが1番美味しいです。しかし、ゆですぎてしまった場合や蕎麦打ち体験などをして余ってしまった場合はどのように保存したらよいのでしょうか。
ゆでた蕎麦は冷蔵庫であれば3日ほど日持ちします。しかし冷やすと麺同士がくっついてしまうため食べる時に軽く洗うと解消します。多めにゆでて長期保存したい場合は、1食分に小分けし空気がなるべく入らないようラップで包み冷凍保存してしまうのがよいでしょう。しかし、ゆでた蕎麦は風味や食感が劣化しやすく冷凍保存するとさらに悪くなってしまいます。そのため、出来るだけ保存することは考えず極力食べる量だけゆでるようにしましょう。
作りすぎてしまった手打ちそばも冷凍保存するのがよいです。同じく1食分ずつに小分けしラップで包み冷凍保存可能な袋に入れて冷凍します。この場合は事前にゆでていないため解凍時に手打ちそばをゆでるより多めのお湯を用意し、しっかり沸騰させてから1分~1分半ゆでれば食べられます。途中で軽くほぐしてあげることやゆでる前に冷蔵庫で保存しなおしてから調理すると失敗しにくくなります。ゆでた蕎麦より劣化しにくいですが、冷凍保存していても徐々に劣化していくため早めに食べてしまうようにして下さい。
蕎麦は他の麺と比べても気を付けなければいけない点が少し多いです。また、ゆで時間も早くゆでている間に麺をしめる準備をしているとゆですぎてしまうことがあるため、事前に準備しておくことでより失敗なく美味しくゆでることが出来ます。また、蕎麦をゆでた後のそば湯を飲むのも蕎麦の醍醐味です。そば湯には代謝をよくするビタミン群や二日酔い予防にも効果的なナイアシンが含まれています。美味しく蕎麦をゆでて一緒にそば湯の栄養も取り入れてしまいましょう。