世界遺産でもある厳島神社や原爆ドームを中心に見どころがたくさんある広島県は、世界各国からも多くの人が訪れる県です。そんな広島県には美味しい特産品や銘菓もたくさんあります。今回は、広島県ではお土産としても購入することの多い定番のお菓子や特産品について紹介していきます。
もみじ饅頭
広島のお菓子やお土産で特に強いイメージがあるのがもみじ饅頭です。県内でも人気の高いもみじ饅頭は、その名の通りもみじの葉の形をした100年以上も続く伝統的な和菓子で、発祥の地でもある宮島には約20軒のもみじ饅頭製造業者があります。ふわふわのカステラ生地の中に甘さ控えめのこし餡が入っているのが定番で、素朴ながらも程よい甘さと大きさが年齢問わずに人気がある秘訣です。
平安時代にはすでに県花・県木であるもみじをイメージしたお菓子が振舞われていたとされていますが、現在のもみじ饅頭が誕生するきっかけになったのは明治後期です。老舗旅館に訪れる大切なお客さまへの手土産としてなにか作れないかと相談された高津堂の菓子職人がもみじ饅頭の原形を作り出したとされています。その後、改良を重ねて現在のもみじ饅頭にたどり着きますが、宮島の名物になるように職人を育成したことや独占をしなかったことが宮島のもみじ饅頭メーカーやブランドの多さに繋がっているようです。
おもてなしの気持ちから生まれたもみじ饅頭は、メーカーやお店ごとに生地や餡子の製法・甘さなどにこだわりがあり、シンプルであるがゆえにその味わいや食感の違いをしっかり感じられます。そのため、地元民には贔屓にしているお気に入りのお店があると言われるのも納得です。人気の高さからこし餡・粒餡といった餡子の違い以外にも、チョコレート・クリーム・チーズ・抹茶などの定番品やさくら・パイナップル・栗といった季節限定味、モチモチ食感が特徴の生もみじ饅頭、餡子入れずをチョコレートでコーティングしたもみじ饅頭などバリエーションが非常に豊富なのも大きな特徴となっています。1個から購入することが出来るためお土産としてだけではなく、各店舗の定番のこし餡だけを購入してお店ごとの違いを食べ比べてみたり、さまざまなバリエーションのもみじ饅頭を味わうなど個人でも楽しむことが出来ます。宮島の店頭ではもみじ饅頭を揚げたアツアツの“揚げもみじ”も食べられるので、広島を訪れた際には進化が止まらないもみじ饅頭を堪能してみて下さい。
牡蠣・牡蠣加工品
島々や岬に囲まれている広島湾は波が穏やかであるため、牡蠣を養殖するのに適した環境をしています。また、太田川などの河川から流れる水源には栄養が豊富に含まれており、牡蠣のエサとなるプランクトンがよく育ち、こういった環境が広島県産の牡蠣の美味しさに大きく影響しているのです。生産量日本一を誇る広島県産の牡蠣は味のよい高品質なものが多く、小さめの殻に詰まった身は肉厚でプリっとした食感と濃厚な味わいが特徴です。そのため、県内には牡蠣料理を提供しているお店が多くあり、特に旬の10月~3月の冬には美味しい牡蠣を求めて県内外から多くの人々が訪れます。近年は、品種改良が進められていることから安全な牡蠣が1年を通して味わえるようになっており、生・焼き・蒸しといったシンプルな食べ方からフライ・鍋・パスタなどアレンジの多さも人気の理由の1つとなっています。
料理以外にも牡蠣を使った加工品が広島県には多く存在しており、お土産として購入する方も多いです。牡蠣の加工品としては、牡蠣エキスと鰹節や昆布などの出汁を加えたかき醤油が定番で、牡蠣の旨みを感じる味わいはさまざまな料理に使えるため、スーパーでも購入出来るものの県内で作られたこだわりのかき醤油をわざわざ購入していく方も多いです。また、かき醤油を使った味付のりの人気も高く、地元の方を中心に普段使い出来る定番商品となっています。さらに、日持ちしない牡蠣をオイルに漬けることで保存が可能となり、牡蠣の身そのものを楽しむことが出来る牡蠣のオイル漬けも人気商品の1つです。お酒のつまみや料理の具材として相性がとてもよく、旨みが溶け出したオイルも使えることが人気の理由となっています。漬けているオイルの種類や味付の仕方で風味が大きく変わりますが、牡蠣の加工の仕方によっても特徴が変わります。オイル漬けに使われている牡蠣には焼きあげタイプと燻製タイプがあり、シンプルに牡蠣の味わいを楽しみたい方やクセが強いのが苦手な方、料理に使う場合は、焼いてからオイル漬けしている焼きあげタイプがおすすめです。より牡蠣の旨みや風味を味わいたい場合、お酒が好きな方には燻製タイプがおすすめになります。人気の高さからオイル漬けの商品数は増え続けているため、好みや使い方によって選択するのも楽しいですよ。他にも、牡蠣の身が入っている具材をごはんと一緒に炊くだけで簡単に炊き込みごはんが作れるかきめしの素や牡蠣のエキスが染み出たかき鍋の素などもおすすめです。
レモン
広島県は国産レモンの生産量が日本一であり名産物にもなっているため、県内にはレモンを使ったスイーツやお土産がたくさんあります。レモンは強風雨や寒さに弱い性質を持っていますが、瀬戸内沿岸の晴れが多く温暖で乾燥しやすい気候がレモンを栽培するのに適した環境だったため、呉市や尾道市、大崎上島町などの島しょ部を中心に広く栽培されています。県内で生産されたレモンは”瀬戸内ひろしまレモン”と呼ばれ、糖度が高く酸味も優しいため一般的なレモンより食べやすいのが特徴です。皮が薄く果肉もたっぷり詰まっているためとてもジューシーで、酸っぱいより美味しいという印象が強いほど味の違いを感じます。
全国的にも広島県はレモンが有名という印象がありますが、実は10年ほど前までは県内でもレモンが日本一の生産量であるということを知らない人が多く、レモンを使った商品も今ほど多くはなかったそうです。しかし、県をあげて広島県産レモンのブランド化に取り組みPRしたことで知名度が上がり、現在は広島県産レモンを使った洋菓子や和菓子、ジュース、ドレッシングなどの幅広いジャンルの商品がたくさん販売されています。香りが高く皮まで食べられる広島県産のレモンは、レモンの輪切りや果汁が入った見た目も印象的なレモン鍋や揚げ物のつけ合わせ、また、牡蠣との相性がいいことから牡蠣料理やパスタなどのソースといった洋食まで料理にも幅広く使う飲食店が多く、レモンの爽やかさとさっぱりした味わいは季節問わず食欲が止まらないことでしょう。
レモンを使ったクラフトビールも多数あり、全体的に爽やかでありながらもレモンの酸味とビールの苦味どちらも味わえるものからビールが苦手な方でも飲みやすい口当たりの軽いものまでさまざまな味わいを楽しむことが出来ます。お酒が好きな方はぜひ広島県産のレモンを使ったお酒も試してみて欲しいです。
はっさく(八朔)/はっさく大福
広島県はレモンが特産物として有名ですが、恵まれた気候や環境からみかん・オレンジといった他の柑橘類の生産も盛んです。中でもミカン科の“はっさく”は生産量こそ和歌山県がトップではあるものの、実は広島県の因島が発祥地となっているのをご存じですか?因島で作られるはっさくは、ほろ苦さと甘酸っぱく爽やかな風味のバランスがよいのが特徴で、他の柑橘類では感じられない果肉のサクサクっとした食感を楽しめます。はっさくの栽培が始まったのは江戸時代、因島にある浄土寺の境内ではっさくの原木を見つけたことがきっかけとなり、旧暦の8月1日を指す「八月朔日」の頃から食べられるという言葉から「八朔(はっさく)」と呼ばれるようになりました。しかし、実際にははっさくの旬の時期は夏ではなく冬の2月~3月頃となっており、収穫後1~2か月熟成させてから出荷するため店頭に並ぶのは3月~4月頃となっています。昭和に入り島から市内へ、さらに県内から県外へと栽培が広がるまではっさくは因島でしか食べられていなかった柑橘になるのです。
現在、因島や尾道市を中心にジュースやジャム、果実がゴロっと入ったゼリーなどはっさくを使った加工品がたくさん販売されていますが、特に人気が高いのが“はっさく大福”です。因島大橋の完成に伴って考案されたはっさく大福は、1989年から本格的に販売されており、バランスのとれた因島はっさくの果実と白あんを餅生地で包み込んだシンプルな和菓子になります。はっさくの持つ特有の苦味・酸味と白あんの甘みの相性が非常によく、お互いを引き立たせながらもまろやかに整えてくれるため、甘いものやはっさくの苦味が苦手という方でも食べやすい味わいとなっています。シンプルであるがゆえに、素材にこだわったはっさく大福を作っているお店が多く、お餅やあんこだけでなく、はっさくの水分量にまでこだわりを持ち、ジューシーで柔らかい大福から水分量の低いはっさくを使い食感に重点を置いた大福までお店ごとに特徴の違うはっさく大福が味わえます。
近年はフルーツ大福がブームになっており、1年を通して購入出来るお店も増えていますが、因島のはっさく大福ははっさくの旬の時期に合わせて丁寧に手作業で作られているものが多いため、長くても10月~8月と期間限定で販売されています。特に2月~4月頃に販売している大福には、旬の時期に収穫され追熟したはっさくが使われており、果実も大きく甘みを感じられるためおすすめです。あまり日持ちはしませんが、自分用やお土産として購入する方も多く、定番ではないお土産を探している方にはうってつけの和菓子になるため、因島や尾道を訪れる際にははっさく大福が販売されている場所や期間もぜひチェックしてみて下さい。
せんじ肉
みなさんはせんじ肉という名前を聞いたことがありますか?聞いたことがない方にとっては肉であることくらいしか分からないという方も多いと思います。せんじ肉とは、豚のホルモンを揚げて干し、塩などで味付けした広島のソウルフードともいわれる珍味です。広島版ジャーキーともとれるせんじ肉は、”せんじがら”という名称で地元では親しまれており、コンビニやスーパーなど身近な場所で購入することが出来ます。調理工程の豚ホルモンを煎じるというところから名前が付けられており、じっくり水分を飛ばして作るせんじ肉ははじめのうちはコリッとした硬めの食感ですが、噛むことで柔らかくなり次第に凝縮した旨みが口いっぱいに広がり、ビールをはじめとするお酒がよく進みます。
昭和20~30年代に広島市にある食堂や肉屋によって作られたとされているせんじ肉は、豚の胃を一口サイズにカットしたものが定番であり、シンプルな味付けは肉の旨みをダイレクトに感じることが出来ます。豚の横隔膜であるハラミを使ったせんじ肉は、脂肪分が少なめで柔らかくよりビーフジャーキーに近い食感があるため定番のせんじ肉との違いを楽しむことも出来ます。さらに、豚ではなく鶏の砂肝(砂ずり)を使ったせんじ肉もあり、もともと弾力のある砂肝は定番のせんじ肉よりもさらにコリコリした食感とたんぱくでクセの少ない味わいを感じるため、味や食感の好みで部位を選ぶのもよいでしょう。基本的に使われている部位はこの3種類ですが、これにスパイシーな味わいや黒コショウ・にんにくが効いている味のものといった味ちがいのバリエーションもあり、一味も二味も違ったせんじ肉を楽しめます。そのまま食べるだけでなく炒め物や煮物の具材としても使える一面を持つため、お土産にはもちろんのこと、食べたことがないという方はぜひ一度その美味しさを味わってみて下さい。
今回は、お土産などにもよく使われる定番のお菓子や特産品を紹介しましたが、広島県には八天堂のクリームパンやはっさくゼリー、レモスコなどの人気のある商品がまだまだたくさんあります。自分好みやまだあまり知られていないお土産などを探すのも楽しいので、観光しながら広島県の美味しい特産品を探してみて下さい。
こちらの記事では広島県で食べたいご当地グルメを紹介しています。
広島県尾道市のお酢
尾道はお酢の製造が盛んなエリアです。北前船の着工地として原料となるお米が入手しやすかったこと、水が良いこと、年間通じて温暖な気候であることなどさまざまな条件が重なり盛んとなったそうです。詳しくはこちらのページからご確認ください。