出汁の種類と違い、取り方、使い分けのポイント

 出汁といえば、かつおだし、昆布だし、野菜だし、あごだし・・・など様々あり、最近は「UMAMI」として海外からも日本の出汁について再注目されています。栄養素的にはグルタミン酸、イノシン酸、グアニル酸などの核酸関連物質がうま味を感じさせ、かつおだしや昆布だしなど、出汁の種類によって含まれる成分が異なります。今回は、それぞれの出汁の特徴や、取り方出汁別にどの料理に合うかなど、出汁の基本的な解説をしていきます。

かつお出汁

 国内で最もメジャーな出汁の1つで、鰹節から取れる出汁です。鰹節から取れる出汁の栄養成分はイノシン酸で、イノシン酸の抽出には軟水が良いとされていましたが、最近の研究では硬水でも十分に抽出できることが分かり水の硬度による差はないとされています。

 最初に取る出汁を「一番だし」、2回目以降取るだしを「二番だし」と呼びます。一番だしはお湯を沸騰させ、鰹節を入れる直前に火を消し1-2分出汁取り鰹節を取り出す方法がおすすめの出汁のとり方です。二番だしは一番だしで使用した鰹節を沸騰したお湯で4-5分煮出して抽出する方法がおすすめの取り方です。

 一番だしは香りが強いことが特徴で、その香りを活かすために醤油や味噌を多く使う料理にはあまり向いていません。そのため出汁の風味を活かせる、だし巻き卵、茶碗蒸し、お吸い物、おひたし、高野豆腐などがオススメの食べ方です。二番だしは煮出した分、強い旨味が特徴となるため、味噌や醤油を使用する味の濃い料理によく合います。具体的には味噌汁、そばつゆ、うどん、煮物、肉じゃが、おでんなどです。 
 ただし、味噌汁や煮物など日常的に鰹出汁を使用する際に、毎回二番だしを使用するのが面倒という方は、最初から鰹節を煮出しても大丈夫です。その際、煮出し時間が長くなると雑味も出てしまうため弱火で4-5分程度煮出したら鰹節を取り出すようにすると良いでしょう。 

 また余談ですが、西日本と東日本では同じ鰹出汁でも少し異なるようです。西日本ではカビつけしないかつおの荒節が好まれ酸味とスッキリした味わいが人気で、東日本ではカビ付けをした枯節が好まれ、甘さとまろやかな味わいが人気です。

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こんぶ出汁

 かつお出汁と並ぶ日本でメジャーな出汁の1種です。昆布だしは干した昆布から抽出される出汁で、味わいはスッキリとしていて、少しだけ塩味を感じられる出汁です。栄養成分はグルタミン酸で、昆布だしの抽出に水の硬度は影響しないようですが、カルシウムを多く含む水だと昆布の粘性があがり出汁がうまく抽出できないと言われています。昆布だしを取る際にはカルシウムが入っていない水を選択しましょう。

 昆布だしの取り方は、大きく分けて水出しと煮出しの2種類があります。前者の水出しは水に昆布をつけておくだけという方法で、水の重さに対して1%程度の昆布を使用すると良いとされています。コップや瓶などに水を入れ、そこに昆布を入れ冷蔵庫で一晩寝かせると昆布の出汁がしっかり出ています。また煮出して昆布の出汁を取る場合は、同じく水の重さに対して1%程度の昆布を使用し、ポイントは水の状態から昆布を入れ弱火から中火でゆっくりと加熱をしていくことです。沸騰直前に昆布は取り出しましょう。沸騰後も昆布を煮出すと海藻の臭みやエグミが出てしまうため、沸騰前には取り出すようにしてください。またどちらの場合も、昆布を水に入れる前に軽く絞った布巾で昆布の表面を拭くと表面についたホコリや他の成分なども取れるためよりよいでしょう。

 昆布だしは鰹だしと比べると、抽出される出汁自体に味が強くあるわけではないため、旨味をしっかり残し、薄味や濃い味どちらでもそれぞれの味を引き立てることができます。そのため和食全般で使用できますが、鍋、煮物(野菜中心)、しゃぶしゃぶなどへの相性が良いです。

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合わせ出汁(鰹節、昆布)

 鰹節と昆布の合わせ出汁も広く使われる出汁の1種類です。鰹出汁のイノシン酸、昆布出汁のグルタミン酸が旨味の主成分です。昆布出汁の旨味成分であるグルタミン酸は他の旨味成分と組み合わせられることでより強い旨味成分を感じさせることができることが研究の結果明らかになっています。合わせ出汁についての最後の記録は1668年に成立した料理塩梅集にその記録があり、グルタミン酸が旨味成分であると判明する1908年のはるか前から昆布と鰹節の出汁が相性の良いことが記録されていました。

 合わせ出汁の取り方はまず、水に昆布を30分から1時間程度つけておきます。目安は水の重さ1%の昆布を加えることです。その後、弱火で加熱をして沸騰直前に昆布を取り出します。そして沸騰をしたら1度火を止め鰹節を入れ1-2分出汁を取ったら鰹節を取り出し、合わせ出汁の完成です。

 合わせ出汁は出汁の旨味が強く、薄味でも出汁の風味で十分に味を決めることができ、お吸い物やだし巻き卵、おひたしなどにも活用できます。また旨味もしっかり出ているため醤油や味噌を多く使う味噌汁、鍋、煮物などでも調味料に負けることなく十分に味を引き立てることができます。合わせ出汁は、出汁界における万能選手と言っても過言ではありませんが、昆布、鰹節から出汁を取るのはそれぞれ単体で出汁を取るより手間がかかってしまうことから市販の顆粒だしなどの多くは合わせ出汁をベースに作られることが多いようです。もし昆布を準備して、鰹節を・・・というのが手間であれば、顆粒だしなどを検討するのも手だと思います。

煮干出汁

 煮干出汁はイワシの干物から取れる出汁です。別名ではにぼしだし、いりこだしと呼ぶこともあります。煮干出汁の旨味成分は鰹節と同じく、イノシン酸です。鰹だしと比べるとやや海鮮系の香りが強く、イワシ独特の香りがあります。煮干出汁は中国〜四国地方で好まれることが多いとされています。

 煮干出汁は水出しと、煮出し2種類の方法があります。水出しの場合は煮干しを水に10時間をほどつけておくことで出汁が抽出され、そのまま出汁として使用ができます。頭と腸をとったほうが雑味が出ないとされていますが、水出しの場合は、灰汁が出にくいため頭と腸を取る必要がないとされています。また煮出す場合は水の状態から煮干しを加え30分〜1時間放置してから弱火で火をかけ沸騰したら火を弱め5分ほど煮出して出汁を取ります。その際、沸騰前後で灰汁がでるため灰汁をこまめに取ると雑味が減り美味しい出汁がとれます。また、若干手間ですが煮出す前に頭と腸を取り出すとより澄んだ出汁がとれます。

 煮干出汁は酸化しやすいという特徴があるため、できる限り早めに調理に使用すると良いでしょう。出汁の風味が強いだしになるため出汁を生かした、味噌汁、うどん、ラーメン、パスタのちょっとした隠し味などに相性が良いです。

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しいたけ出汁

 干したしいたけを使用した出汁です。しいたけ出汁の旨味成分はグアニル酸で、出汁の材料として使用される食材としてはしいたけが唯一グアニル酸を抽出できる食材と言われています。グアニル酸は昆布などから取れるグルタミン酸と合わせられることで舌の上で長く旨味成分を感じさせることができるとされています。しいたけの風味が非常に強いため昆布など他の出汁と合わせて使用されることが一般的です。またしいたけには肉の厚いどんこと肉の薄い香信と2種類あり、出汁を取る際はどんこが向いているとされています。

 しいたけの出汁を取る方法は、しいたけを水につけ12時間ほど放置するとしいたけの出汁がよくとれます。ポイントは冷蔵庫など低温の環境に置くことでグアニル酸の抽出量が増えるとされており、冬なら常温でも大丈夫ですが夏は冷蔵庫で冷やしながら抽出しましょう。また時間があればしいたけを水に入れる前に2時間ほど太陽光に当てるとビタミンDの抽出量が増えるとされており、こちらも合わせて実践したい方法です。また時間がないときはしいたけを細かく切って水入れることで1時間程度出汁の抽出ができるようになります。他の出汁と違い、火にかける必要がないため、夕食用であれば朝冷蔵庫に入れておき準備をしておけば出汁を取る手間が省けるため、楽な出汁でもあります。

 しいたけ出汁は他の出汁より風味が強く、また出汁の色が茶色と濃く出るため、薄味の料理やお吸い物のように見た目的にも薄い料理にはあまり向きません。味のしっかりした炊き込みご飯や、煮物、そうめんつゆなどがおすすめです。

野菜だし

 野菜だしは、その名の通り野菜から取れる出汁で、人参や玉ねぎの皮、ヘタ、しいたけの軸など本来捨ててしまうところから得られるだしです。旨味成分はグルタミン酸で、昆布などと近い成分になります。

使用できる野菜はどの野菜でも大丈夫ですが、加熱すると甘みの出る野菜、玉ねぎ、人参、しいたけ、大根、ピーマンなどが相性の良い野菜です。2Lの出汁を取る場合約300gの野菜が必要となるため、1度にそれだけの皮やヘタを用意することは難しいことから、それらを捨てに冷凍保存して300g溜まったら使用すると良いでしょう。水2Lを火にかけ沸騰したら弱火にして野菜を入れ、20分ほど弱火で煮出します。その際冷凍の野菜を使用する場合は冷凍のまま使用して大丈夫です。

野菜だしは野菜の甘味も同時に抽出されるため、甘みを生かした料理に相性が良く、ポトフなどのスープや煮込み料理、カレーなど、和食に限らず和洋中いずれでも活用ができます。

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以上一般的に使用できる出汁の特徴ととり方、合う料理のご紹介でした。料理や場面に合わせて使い分けると料理の幅も広がるため、ぜひ使い分けてみてください。

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