岐阜県の知って欲しい代表的な特産品や郷土料理

白川郷や下呂温泉といった古きよき町並みを感じる観光地や日本を代表する焼き物の美濃焼など岐阜県には魅力的な見どころがたくさんあります。なかでも飛騨牛や高山ラーメンをはじめとする特産品やご当地グルメは人気が高く、岐阜県に訪れたら食べたいものの1つとなっています。しかし、県内にはまだまだ美味しい食べ物がたくさんあるのを知っていますか?今回はそんな岐阜県の知っておいて欲しい代表的な特産品や郷土料理について紹介していきます。

鮎料理/鮎菓子

岐阜県には長良川沿いを中心に美濃市や岐阜市、郡上市などで“鮎料理”を食べられるお店が多数あります。県内には木曽川三川と呼ばれる木曽川・長良川・揖斐川などの清流が多く流れていますが、特に長良川は日本名水百選に選ばれるほど美しい清流として有名で、水質がよく透明度も高いのが特徴です。また、河口から源流までに大きな高低差があることから苔や藻などの生態系も豊かであるため、これらを餌にして成長する長良川の鮎は質が高く美味しいと評価されています。さらに、冷たい急流で育った鮎は引き締まった身と芳醇なハラワタが特徴となっており、国内にある鮎の産地の中でも非常に高い人気を誇っています。6月~10月にかけて鮎業が盛んに行われますが、新鮮な鮎からはスイカのような独特な香りがすることから「香魚」とも呼ばれており、なかでも特に7月に獲れる若鮎は格別の美味しさと評判も高いです。そのため、県内では多彩な鮎料理を食べることが出来、塩焼きや甘露煮、唐揚げ、寿司、一夜干し、雑炊といった定番料理からラーメン、ピザ、カレーなどのジャンルに囚われないさまざまな調理方法の鮎料理を楽しむことが出来ます。

岐阜県で鮎漁といえば「鵜飼」が有名であり、1300年以上も続く歴史ある伝統漁法となっています。日本には河川などに暮らすカワウと海岸周辺に暮らすウミウがいますが、長良川では体が大きくて力が強く、比較的おとなしい性格のウミウを使うのが特徴で、魚を飲みこみ鵜の食道で一気に気絶させて捕獲するため傷がつかず脂も逃げにくいことから鮮度が高いと言われています。5月~10月のシーズン中には、鵜飼の様子を船上から見られる鵜飼観覧の人気も高く、鵜飼で捕まえた鮎は高級食材として地元の料亭などで食べることが出来ます。また、皇室に納めるために鮎を捕る「御料鵜飼」という宮内庁の職務もあり、年8回だけ禁漁区の御料場で行われる鵜飼は通常の鵜飼とは一味違った様子を見られるでしょう。鵜飼に加えて県内では川の流れをせき止めて「ヤナ」という木杭や竹で組んだ仕掛けに川魚を流し込む「ヤナ漁」も伝統漁法となっており、夏の風物詩として広く親しまれています。

さらに県内には鵜飼をルーツにした “鮎菓子”という和菓子があり、岐阜市を中心とした和菓子屋さんや土産店で購入することが出来ます。鮎菓子とは餅粉や水飴から作られる求肥をカステラ生地で包み、鮎に見立てて目やヒレを焼きゴテでつけているのが特徴です。素朴で可愛らしい見た目は作られているお店によって少しずつ異なり、大きさや表情の凛々しさ、若鮎や登り鮎などの呼び方にも違いを感じられます。また、中の求肥に弾力があるものから柔らかく口当たりがよいもの、しっかり甘さを感じられるもの、甘さが控えめで全体のバランスがよいものなど、食感や味わいにもお店によって特徴があるため、好みの鮎菓子を探してみるのも1つの楽しみ方となっています。古くから鮎が身近にあり、長い年月をかけてその伝統を守ってきたからこそ、鮎に関連する料理やお菓子が今でもたくさんの人に親しまれています。ぜひ、岐阜県を訪れた際には鮎漁にも触れて、美味しく歴史ある鮎料理や鮎菓子を味わってみて下さい。

朴葉みそ

ホオノキという落葉広葉樹の葉である朴葉には、天然由来の殺菌効果があるため古くから器の代わりとして食材を包む材料に使われてきました。岐阜県にはこの朴葉を使った“朴葉みそ”という郷土料理があり、飛騨高山地方で古くから食べられています。朴葉の上にネギや生姜などの薬味、山菜、きのこなどを混ぜた味噌を乗せて焼きながら食べる料理で、焦げた味噌の香ばしい香りと朴葉の良い香りを感じられるのが特徴です。また、飛騨地方の味噌は塩気が控えめで甘みや旨みが強く、さらに砂糖やみりん、酒などを加えて朴葉みそを作るため甘みと一緒にコクも感じられ、濃い味わいがごはんやお酒のお供として最適となっています。もともとは朴葉に自家製みそを乗せて焼くシンプルな料理でしたが、次第に薬味や山菜などを混ぜるようになり、肉や魚、野菜との相性もよいことから近年では地元の旅館や飲食店などで薬味などが入った朴葉みその上に肉や野菜を乗せた1品料理として提供していることも増えています。

飛騨高山地方は山に囲まれた自然豊かな土地柄であったため林業が盛んであり、山仕事を生業とする杣人(そまびと)たちがお皿の代わりに朴葉を使い、味噌を焼いたのが始まりと言われています。しかし、朴葉みその由来にはいくつかの説があり、乾燥や火に強い朴葉の特性から囲炉裏の火の上に置き、冬場の厳しい寒さを凌ぐため凍った漬物や味噌などを温めながら食べていたのが始まりともいわれています。また、殺菌効果を持っていることから包むと食材にカビが発生するのを予防し、日持ちもしやすくなるため、酢漬けにした鮭やサバ、煮つけにしたきゃらぶきなどの具材と一緒に酢飯を包んだ朴葉ずしも夏場の農作業などには重宝されていました。朴葉みそは郷土料理として根付いていたため、杣人などの一部の人や限られた地域でしか食べられていなかった料理でしたが、一般家庭に広まるようになると昭和40年代にはお土産としても購入出来るようになり、現在は郷土料理としてもお土産としても人気の高い食べ物となっています。近年は飛騨高山地方だけではなく、県内の土産店や道の駅、さらには県外でも物産店やアンテナショップなどで購入することも出来るため、家庭にある卓上コンロやホットプレートなどを使って好きな具材と一緒に温めれば、簡単にオリジナルの朴葉みそを味わうことが出来ます。あまり身近にはない朴葉ですが、身近にないからこそ朴葉の香りをしっかりと楽しむことが出来るため、郷土料理でしか味わえない朴葉みその魅力に触れてみて下さい。

鶏ちゃん

岐阜県には“鶏ちゃん(けいちゃん)”と呼ばれる郷土料理があるのを知っていますか?奥美濃地方の郡上市や飛騨地方の下呂市などの地域で親しまれており、一口大に切った鶏肉と野菜を特製のタレで炒めたとってもシンプルな料理になります。ケーちゃんや鶏ちゃん焼きなどとも呼ばれており、醤油・味噌・塩などをベースにした味つけはお店や家庭、地域によって異なるのが特徴です。また、若鶏や親鶏といった使う鶏の種類の違いだけでなく内臓や皮などの部位も使う場合や肉の切り方が違うことによって食感にも特徴を感じることが多くなり、味つけや部位、食感も含めるとシンプルながらも多様な味わいを楽しめるのが鶏ちゃんのよさにも繋がっています。鶏肉が貴重だった頃は、客人へのおもてなし料理や正月などの特別な日に振舞う料理でしたが、鶏肉が手軽に購入出来る現在では1年を通して家庭で作られており、飲食店などでも食べられるご当地グルメとなっています。

昔、下呂や郡上では卵を手に入れるために各家庭でニワトリを飼育しており、卵を産まなくなってしまったニワトリ(廃鶏)を調理するようになったのが鶏ちゃんが生まれたきっかけとなっています。この時代は食肉が手に入りにくかったこともあり、鶏ちゃんは特別な家庭料理とされていましたが、昭和30年代あたりから同地域で大規模な養鶏が始まったことにより廃鶏の数も増え、鶏ちゃんの商品化が広まっていきます。鶏ちゃん発祥の由来には他にも、下呂市内にある精肉店がお客さんのリクエストに応えて味つけした鶏肉を販売し始めたこと、台風の復旧作業や大型ダム建設などの労働者向けに飲食店がメニューとして取り入れたこと、戦後奨励していた羊の飼育が減少しジンギスカンと同じように廃鶏に下味をつけるようになったことなどがありますが、鶏ちゃんの場合これらがほとんど同時期に各地で起こっていた歴史があるのがおもしろいポイントとなっています。また、郡上では焼き肉店でホルモン料理が出されるようになると、次第に内臓に鶏肉も加えるようになり、これが後に内臓部位が入った鶏ちゃんへと変化していきました。こうして鶏ちゃんが家庭料理としてだけでなく商品としても販売されるようになったことで少しずつ知名度も広まり、さらにブロイラー(食用の若鶏)の普及や真空パック入りの鶏ちゃんが開発されたことによって昭和40年代を境に需要が急速に広がっていきました。

商品化されたばかりの頃は鶏ちゃんという名称ではなく、味付けかしわや鳥ホルモンなど違う名称で呼ばれていましたが、豚の内臓料理を「とんちゃん」と呼ぶことからヒントを得て「けいちゃん(鶏ちゃん)」と名付けられたと言われています。需要が広がるにつれて美濃や北飛騨など鶏ちゃんを食べる文化のなかった地域でも親しまれるようになり、次第に代表的なお土産として人気が出たことや県外でも鶏ちゃんを販売・PRする機会が増えたことより、全国的にも認知度が高まっていきました。現在は真空パックの鶏ちゃんを購入することやお土産としてもらうことも多いですが、県内にある飲食店で味わえる鶏ちゃんは一味も二味も違うものが多く、その美味しさに驚く方も多いそうです。まだ食べたことがない方や真空パックの鶏ちゃんしか食べたことがないという方はぜひ1度、こだわりのつまった出来立ての鶏ちゃんも食べてみてもらいたいです。

栗きんとん

栗きんとんといえばおせちに入っている栗やさつまいもを砂糖で炊き上げた甘露煮をイメージするのではないでしょうか?しかし、岐阜県の特産品である“栗きんとん”は一般的なものと異なり、裏ごしした栗を使った伝統的な和菓子になります。和菓子の栗きんとんも砂糖を使いますが、栗本来の甘みや旨みを活かすために甘さが控えめとなっており、白みがかったクリーム色や薄茶色をしているのが特徴です。また、厳選された栗と砂糖だけを使い、濡らした布巾で1つずつ包んで丁寧に栗の形にかたどっているのも特徴となっています。お店によって、栗の種類や製法、粒の大きさなどが違うため味や色味も少しずつ違いますが、どのお店もシンプルな材料と製法で作られているからこそ、栗本来が持つ香りや味わいを口いっぱいに楽しむことが出来るのです。栗をそのまま食べているかのような美味しさから非常に人気が高い和菓子ですが、栗の旬の時期に合わせて9月~1月頃までの期間限定で作られているため希少価値が高く、県外での販売はタイミングなどを確認していないとなかなか手に入れられないこともあり、全国では知る人ぞ知る銘菓となっています。ちなみに漢字だと、和菓子の場合は「栗金飩」おせちに入っているものは「栗金団」と書き、使う文字が異なっています。

栗きんとんはその昔、茹でる・焼くなどをして食べていた山栗を布巾でしぼったり、日持ちするように加工したのが原形とされていますが、発祥としては諸説あると言われており、中でも県内有数の栗の産地である中津川市は江戸時代中期頃には江戸と京都・大阪を結ぶ重要な宿場町として発展し、旅人をもてなすために特産の山栗を使って作られた和菓子の内の1つが栗きんとんという説が有力となっています。この地域では古くから恵那栗という良質な栗があり、収穫時期や特徴の違う14品類の栗が現在、恵那栗として認定され栗きんとんにも使われています。品種の違いに加えて収穫時期の違いによっても特徴が変わり、あっさりしたものから濃厚な風味のものなど違った味わいや香り、美味しさを感じられるでしょう。しかし、流通や需要が高まると岐阜県産の恵那栗だけでは追いつかず、お店によっては農家と直接契約するなどして恵那栗だけを使い続けている和菓子店もありますが、現在は九州産など他県の栗を使うことも増えています。それでも変わらず人気や評価が高いのは、こだわりを持ち続けて伝統を守り、丁寧に作られているからといえるでしょう。テレビやSNSによって認知度は広まっているため、さらに手に入りにくくなっていますが、岐阜県に訪れた際やイベントなどで見かけた際には見逃さずに手に取ってみて下さい。その美味しさに心惹かれること間違いなしです。

水まんじゅう

“水まんじゅう”とは大垣市を代表する銘菓であり、日本の伝統的な和菓子の一つでもあります。一般的なまんじゅうと違いくず粉とわらび粉から生地を作っているため半透明の見た目をしており、中に入れるあんこやフルーツが透けて見えるのが特徴です。また、わらび粉を使っているため食べる際に水や氷水で冷やすことで冷たくのどごしがよくなり、ぷるぷるとした食感やもちもちとした食感を楽しむことが出来るのも大きな特徴となります。大垣市内は古くから水の都と呼ばれるほど井戸水に恵まれており、かつては井戸舟と呼ばれる井戸水を受ける水槽で水まんじゅうを冷やしながら販売していた光景が夏の風物詩となっていました。夏の暑い日などに重宝される和菓子として親しまれているため、5月6月頃から9月頃までの夏季限定の販売になりますが、お店によっては現在も店の外に井戸水が流れる屋台を設置し、その様子を見ることが出来たり冷えた水まんじゅうを購入して食べることも出来ることから観光スポットとしても人気が高いです。

質がよく豊富な水資源に恵まれていた大垣市では江戸時代から庶民が水菓子を楽しむ風習や各家庭に設置された井戸舟で野菜や果物を冷やして夏の暑さを和らげる工夫がされていました。そういった習慣などから明治30年頃に大垣の名水を活かした水に濡れても崩れない水まんじゅうが誕生しました。水まんじゅうを考案する際には葛餅や葛饅頭がベースとなっていますが、水で冷やすと硬くなってしまう性質があったため水に強いわらび粉を加え、冷やしたり水に濡れても崩れないように改良したことで特有のもちっとした食感も生まれました。昔は、丁寧に作られた生地をお猪口に流し入れ、そのまま冷やして販売し、食べ終わったらお猪口を洗って返すというのが定番となっており、老舗などでは今でもお猪口を型にして作っているところもありますが、現在は販売する際にお猪口から外して透明なパックに入れて渡しています。水まんじゅうは見た目も涼やかであることから、生地に色をつけているものや中の餡に柄が出るよう工夫されているもの、パイナップルや夏みかんを使った夏らしい餡やマスカルポーネチーズ・コーヒーといった洋風の餡、さらにはかき氷やぜんざいにトッピングしているなど見た目・味わい・食べ方とバリエーションが非常に豊富であるのも人気の秘訣となっています。水まんじゅうはお土産としても購入することは出来ますが、あまり日持ちしないためその場で出来立てのものを味わうのが1番美味しい食べ方となっているため、暑い日には大垣の水まんじゅうを食べて体を冷やしてみてはいかがですか?お店によって、食感や甘さも違うため、食べ比べてみるのもおすすめです。