鉄フライパンの使い方(油通し、洗い方)

料理人の間でも多く愛用されている鉄フライパン。コロナ化の自粛生活期間にこだわった食生活をしたいという人を中心に自宅でも愛用している人が増えたそうです。鉄フライパンを使うと美味しく仕上がる・長期間使えるなどのメリットも多いですが、手入れや扱いが難しそうというイメージからなかなか手が出せない人も多いのではないでしょうか。しかし、実際は思っている以上に簡単に扱うことが出来るのです。今回はそんな鉄フライパンの使い方や手入れの方法について紹介していきます。

鉄フライパンの使い方

鉄は錆びやすい素材であるため鉄フライパンも水に弱く、使いはじめや使い終わった後の手入れを間違えてしまうと錆びる・焦げつくといった状態になりやすく調理にも影響が出ます。せっかく料理を美味しく作るために取り入れたのにモチベーションが上がらず使わなくなってしまうのはもったいないくらいメリットも大きいため、正しいお手入れ方法を覚えて上手に使っていきましょう。

使いはじめ

まず、使いはじめる前には「空焼き」「油ならし」を行います。初めて鉄フライパンを購入したときには必ず行って欲しい工程ですが、使っていた鉄フライパンが焦げ付いてしまい一度焦げを綺麗に落としてから使いなおす場合にも取り入れる工程になります。フライパンに油を馴染ませて焦げ付きにくくさせる一連の工程は油ならし以外に「シーズニング」とも呼ばれています。

空焼きの方法

1.洗剤とスポンジを使ってフライパンを軽く洗い、キッチンペーパーなどで水分を拭き取っておく

2.油など何も入れずに直接火にかけ中火で空焚きをする
買ったばかりの鉄フライパンには錆び防止の塗料などにより表面をコーティングしているため、空焚きをしてコーティングを剥がし油が浸透しやすい状態にします。煙が多く出やすいため必ず換気扇を回すようにして下さい。また、急に高温で加熱するとフライパンの変形にも繋がってしまうため中火から始めて全体が温まってきたら強火で加熱するようにして下さい。

この時、IHでは底面しか空焚きが出来ないことや空焚き防止機能が働いてしまうため、ガスコンロかカセットコンロを使うようにして下さい。しかし現在は、空焚き不要のものや油をすでに馴染ませてあるものも販売しているため、下準備がめんどうな場合やIHしか自宅にない場合は空焼きや油ならしが不要なフライパンを選ぶのもおすすめです。

3.フライパンの色が青白くなるまで加熱する
フライパンが青白くなり煙が少なくなってきたらコーティングが剥がれたサインになります。底面だけでなく側面もムラなく全体的に加熱するのがポイントです。全体のツヤもなくなったら自然と温度が下がるまで待ちましょう。下がったら洗剤で軽く洗い水気を拭き取っておきます。

油ならしの方法

1.フライパンの水分をとばし多めの油を入れて全体に馴染ませる
火を止めた状態で油を入れるのがポイントです。そのため、水分を飛ばす際に手で触れないほど加熱してしまっている場合は一度放置してフライパンの温度を下げてから油を入れるようにして下さい。油の量としては大きめのフライパンであれば1/2~1カップ、小さめであれば1/4~1/2を目安に底面に行き渡る量の油を入れます。どの種類の油を使っても大丈夫ですが加熱後に余分な油を取り除くためコスパのよいサラダ油などを使うのがおすすめです。

2.加熱をして油でフライパンをコーティングしていく
油が全体に馴染んでから火をつけ弱火で3分を目安に煙が出てくるまで加熱し、煙が出たら火を止めます。煙が出た状態で加熱を続けると引火する恐れがあるため、煙が出たら必ず火を止めて次の工程に進むようにして下さい。

ここで通常は1回加熱したら終わってしまうのが一般的ですが、濡れタオルに乗せて冷やしフライパンと油の温度を下げます。残った油はそのままの状態で再度加熱し、煙が出たら濡れタオルに乗せるという工程を3回ほど繰り返します。この工程を繰り返すことで油が酸化し、回数を増えるごとに粘度も増してフライパンにしっかりコーティングをすることが出来るため一般的な方法より焦げにくくなるのです。さらに余分な油が出にくいため量によってはそのまま拭き取るかお湯で軽く洗って水分を拭き取れば油ならしは終了です。余分な油が残ってしまった場合は、オイルポットや耐熱性のあるビンに入れ調理前の油返しに再利用することも出来ます。

この繰り返して油を定着させていく方法は“フランス料理Rapitasu cuisine”というYou Tubeのチャンネル内にて分かりやすく紹介しています。気になる方はぜひそちらの方も確認してみて下さい。

また、初めて鉄フライパンを使う際には独特の鉄のにおいを感じることが多いです。油ならしをした後に野菜の皮や芯など余った部分を油で炒めておくとにおいが薄れるためにおいが気になる場合は取り入れてみて下さい。

料理開始時

調理をする前にはさらに「油返し」という工程を加えてから調理することで焦げつきにくくさせます。油返しは初めて鉄フライパンを使う場合だけではなく、調理をする前には毎回必ず行うことが大切です。

1.鉄フライパンを火にかけて全体を温める
加熱する時は強火で青煙が出るまで加熱しましょう。ここでしっかり加熱をすることで、調理をした時にくっつきにくくなります。鉄フライパンを使って食材がくっついてしまうという際は、鉄フライパンの加熱が足らない時にそのような事態になります。しっかり加熱をしましょう。

2.大さじ2~3(約30~50ml)の油を引き全体に馴染ませてから調理する
青煙が出たら、1度火を止めて油を入れましょう。油ならしをしっかりしている場合そこまで多くの油を使わなくても油返しの効果がありますが大さじ2-3杯の油を入れ全体に馴染ませてからそれら油を他の容器に移して、必要量を戻して調理に移りります。油が少なすぎると空焚き状態となりせっかく行ったコーティングが剥がれてしまうため、慣れないうちは多めに入れて余分な油を取り除いてから使う方がよいです。毎回行うため、油ならしをしたばかりであれば残った油を再利用し数回使ってから処分してしまいましょう。新しい油を使う場合は余った油をオイルポットや耐熱性のあるビンに入れて再利用するか少量であればキッチンペーパーで吸い取って処分して下さい。

洗い方

使い終わった後のお手入れの仕方として気をつけて欲しいことがあります。それは“洗剤を使わない”ということです。毎回油返しをするからといっても洗剤を使って鉄フライパンを洗ってしまうとせっかく馴染ませた油が落ちてしまい、油ならしからもう一度やり直さなければなりません。そのため、洗剤を使わずにお湯で洗うのがポイントとなります。

1.鉄フライパンが温かいうちに洗剤を使わずお湯で洗う
調理後にフライパンを放置し時間が経ってから洗うことも多いと思いますが、鉄フライパンの場合は放置することにより調味料や食材などがそのまま定着し焦げ付きの原因になってしまいます。調理後は放置せずフライパンが温かいうちにお湯ですぐに洗い流すようにして下さい。洗剤がついていなければスポンジを使うことも可能ですがフライパンが熱い場合溶けてしまうこともあるため、たわしや竹ささら、専用のブラシなどを使って洗うのがおすすめです。金たわしも使えますがコーティングも一緒に剥がしてしまうため避けた方がよいでしょう。

2.水分を取り油をなじませる
洗い終わったら軽く水分を拭き取り中火にかけてしっかり水分を飛ばしていきます。少しでも水分が残っている状態のまま保管してしまうと錆びのもととなるため必ず加熱して水分が残らないようにして下さい。ただし、この時に加熱しすぎてしまうとコーティングが取れてしまうためやりすぎにも注意です。水分が飛んだらキッチンペーパーなどに油を染み込ませ全体に薄く塗り込んだらそのまま保管しておしまいです。

鉄フライパンの特徴

熱伝導率の高い鉄フライパンは食材を入れても温度が下がりにくいことから、短い時間で食材に火を通し水分を逃がさずに調理することが出来ます。そのため、ステーキやハンバーグをはじめとした肉料理は旨みを逃がさずに表面をカリっと焼くことが出来、野菜はシャキシャキっとした食感を残したまま調理することが出来るため、一般的なフライパンを使うより風味・食感ともにワンランク上のような仕上がりを感じやすくなるのです。

他にも焼き色を付ける料理に向いており、餃子・目玉焼き・ホットケーキなどは鉄フライパンとの相性が非常によいです。しかし、水分に弱い性質であるため使うことは出来るものの、煮る・ゆでる・蒸すといった調理にはあまり向いておらず場合によっては油ならしなどを再度行う必要があります。

また、ほうれん草・れんこん・ごぼうなどアクが強い食材やトマト・レモン・醤油といった酸性やアルカリ性の食材は料理の仕上がりやフライパンの表面の色が変化しやすくなります。食べることは問題ありませんが見た目が少し悪くなってしまうため、これらの食材を使う場合は油を多めに使い短時間で調理するようにして下さい。

鉄フライパンは鉄製であるため耐久性が高く丈夫で、正しい手入れをすることにより一生ものと言われるほど長持ちします。その耐久性の高さからテフロン加工のフライパンには命取りの金属製のヘラなども使うことが可能です。また、鉄フライパンで調理すると素材の鉄分が食材にも溶け出し、わずかですが鉄分を摂取することが出来ます。鉄分は毎日消費しているにもかかわらず、体に吸収されやすい鉄分が多い食材には煮干し・レバー・岩のり・乾燥きくらげなど継続がしづらい食材が多く、どうしても不足しやすい栄養素となります。そのため、調理をするだけで継続的に鉄分を摂取出来ることから、女性を中心に鉄分不足を感じる人にはおすすめのフライパンでもあります。はじめの空焼き・油ならしは少し手間のかかる作業ですが、これをしっかり行うことで焦げ付きにくく鉄フライパンのよさを十分に感じることが出来るでしょう。

焦げてしまう場合は、最初の工程が甘い・洗剤を使って洗ってしまった・調理時の油返しをしていない・使う油の量が少ない・焦げが取り切れていないなどが考えられます。少しの焦げであればお湯を張ってふやかして取除くことが出来ますが、頑固な焦げはたわしやヘラなどを使い、それでも取れない場合は洗剤やクレンザーを使ってしっかり取り除く必要があります。ごしごしこすったり洗剤を使った場合には再度油ならしをしてから保管するようにして下さい。

鉄フライパンは人気の高さから現在はIHに対応しているものや重さを軽減して作られているもの、取っ手が熱くならないよう工夫されているものなどその種類も多種多様になっています。正しく手入れをして鉄フライパンを育てていけば一生使い続けることも可能です。お気に入りの鉄フライパンを見つけて仕上がりや美味しさの違いを実感してみて下さい。