紅茶 キーマン(キーモン)とは?

 キーマン(祁門)は中国産の紅茶であり、ダージリン・ウバと並ぶ世界三大銘茶と呼ばれる紅茶の1つです。他にもキーモンやキームンと呼ばれることがあります。

中国の南東、上海より西の位置にある安徽省祁門県(あんきしょうきもんけん)で伝統的な製法により生産されている紅茶ですが、もともと祁門県では緑茶の生産が盛んでした。19世紀後半(1875年頃)、ヨーロッパでの紅茶の需要が高まったことから祁門県でも紅茶を生産するようになりました。

キーマンの特徴

 祁門県は穏やかな気候でありながら年間の約3分の2が雨や霧という多湿で気温の低い環境です。そんな環境で作られるキーマンは苦みや渋みが少なくコクがあり、うま味を感じられる紅茶になっています。また、スモーキーな香りと花のような香りを合わせ持った”祁門香”と呼ばれる華やかな香りが特徴的です。

収穫時期は6~9月と他の紅茶に比べると短く、旬のクオリティーシーズンと呼ばれる8月に収穫された茶葉の中には最高級品として驚くほどの高値で売られているものもあります。収穫時期の短さや製造工程が多く手間のかかる伝統的な製法によって作られたキーマンは希少性が高く、他の紅茶にはない味わいがあります。特に品質の高いものはエリザベス女王も愛飲していたほど魅力的な紅茶となっています。

キーマンの茶葉は細長くよじれた見た目をしています。これは上質な緑茶にもみられる特徴です。茶葉の色も他の茶葉に比べると黒っぽい色をしていますが、紅茶としていれた水色は綺麗な黄みがかった明るいオレンジ色をしており、上質な茶葉によってはゴールデンリングと呼ばれる金色の輪がカップに現れます。反対に品質の低い茶葉は、葉が厚くよじれもゆるいのが見られるため購入する際に茶葉が見えるものはよじれ具合や細さなどにも注目してみて下さい。

他の紅茶にはない品質区分

 紅茶は基本的には茶葉の出来の良さなどでは等級は区分されず、葉の大きさによっては分けられているものがあります。しかし、キーマンは中国特有の品質区分がされており、特級、一級、二級、三級と分けられています。さらに高品質のものは上から特貢、貢茶、礼茶、特茗と合わせると8種類の等級によって分けられています。

キーマンの中では特級が味や香り、価格と全体的にバランスが良いため少し良い紅茶を試してみたい時や初めてキーマンを買う人にはおすすめの等級です。等級が高いものになると、特有のスモーキーな香りより蘭やバラのような花と果物のような華やかで甘い香りと味わいが強くなるのが特徴です。

しかし、中国自体はお茶の生産がとても盛んですが、ウーロン茶や緑茶など紅茶以外の生産の方が圧倒的に多く紅茶は全体量でいうと10分の1もいかないほどになります。さらに収穫時期の短さや等級の種類の多さも重なり、高品質のキーマンは国内で消費されてしまうか、献上品として輸出しているため等級の高いものにはなかなか巡り合うことが出来ません。

そのため、希少なキーマンに出会った際には、ストレートで飲んでキーマンの持つ香りや味をぜひ味わってみて下さい。キーマンにはうま味成分も含まれているため、特有のスモーキーな香りが苦手な人はミルクティーとして飲むのもおすすめです。

おすすめのお菓子
 香りも味も甘みを持つキーマンは酸味のあるフルーツを使ったケーキやタルトとの相性がよいです。また、渋みが少なくコクもあるため焼き菓子との相性も抜群です。スモーキーな香りを楽しみたい人にはチーズを使ったお菓子やチーズをそのまま一緒に食べるのもおすすめです。風味ともに特徴的なキーマンは後味が意外とさっぱりしているため、ティータイムだけではなく食事中や食後に飲むのもおすすめになります。