こんぶだしの取り方と特徴、昆布の種類

 家庭料理でもよく使われている “こんぶだし”は昆布から取り出す和食にかかせないだしの1つです。あっさりとしながらも上品なうま味を持ち素材の味を引き立たせる優しい味わいが特徴になっています。

こんぶだしの特徴とだしの取り出し方

 昆布は海水に含まれるミネラルなどの栄養分をたくさん吸収して育ちます。この栄養分にはミネラル以外にもこんぶだしのうま味であるグルタミン酸やアルギニン酸と呼ばれるアミノ酸が多く含まれています。このミネラルやアミノ酸など多くの栄養分は昆布が生きている間は細胞によって体内に閉じ込められています。ですが、昆布として海から引き上げられることで細胞が壊れ、再度水にさらすことにより閉じ込められていたうま味成分が抽出されます。この仕組みにより簡単にだしを取ることが出来るようになるのです。

だしの取り方は“水出し法”と“煮だし法”の2種類があり、どちらも水重量に対して1%の昆布を用意します。
水・・・1ℓ
昆布・・・10g

水出し法
容器に水と昆布を入れ1晩、最低でも3時間冷蔵庫で寝かせてだしを取り出します。水出しで取り出しただしは少し時間がかかりますが手間はかからず、クセの少ないすっきりした味わいになります。

煮だし法
水を入れた鍋に昆布を30分ほど浸けておき、加熱してだしを取り出す方法です。沸騰直前に昆布を取り出すことにより、えぐみや海藻臭さをおさえることが出来ます。水出しに比べると手間はかかりますがコクや風味が強くなり、うま味をしっかり味わいたい料理には煮だし法がおすすめです。

保存方法
どちらの方法でも昆布を取り出し容器に入れ、冷蔵保存の場合は2~3日、長期保存したい場合は冷凍保存することで約1か月ほど保存することが出来ます。冷凍保存の場合は製氷皿などに入れ小分け出来るようにしておくと便利に使い分けることが出来ます。

また、だしとして取りだされた後の昆布は、醤油・砂糖と一緒に煮て佃煮や、そのまま煮物の具材として、また細かく刻んでふりかけにするなど最後まで美味しく使うことが出来ます。

こんぶだしを使ったおすすめの料理
お吸い物・鍋・おでん・湯豆腐・しゃぶしゃぶ

昆布の産地と種類

 こんぶだしに使われる昆布の産地は、国内生産量の約95%が北海道となっています。残りの約5%も北海道に近い東北の青森・岩手・宮城で生産されています。これは昆布が寒流系の海藻と呼ばれる植物であり、広大な海と水温の低い環境でよく育つ性質を持っているためです。

販売されている状態の昆布は一見同じように見えるものが多いですが、昆布にも種類があります。特に主な生産地である北海道の海は太平洋側と日本海側のどちらで生産されているのか、また、海流の強さなどによって収穫される昆布の種類や特徴に違いが出てきます。

日高昆布(ひだかこんぶ)
昆布の中でも比較的安価で万能に使える日高昆布は北海道南部にある日高地方を中心に生息しています。スーパーにもよりますが扱っている所が多い昆布であり、柔らかく煮えやすい特徴があるため、だし以外にも煮物の具材や昆布巻きなど料理に使うことにも向いています。しかし、だし自体はにごりやすく磯の香りが強いため、お吸い物や薄味の料理に使うことはあまり向いていません。
だしにも食材としても使えコストパフォーマンスが良い日高昆布は初めて昆布を使う人におすすめの昆布です。

真昆布(まこんぶ)
主に函館の周辺に生息している真昆布は特に上品なだしを取ることが出来ます。また、本州にも近いため青森や岩手、宮城でも収穫することが出来る品種です。昆布の中でも良質で肉厚な真昆布から取るだしは澄んでいるのが特徴で、甘みやコク、香りが上品なため食材の邪魔をせず使い勝手も良く、料理全般に使える昆布となっています。

利尻昆布(りしりこんぶ)
利尻昆布は北海道北部にある利尻島周辺を中心に生息しており、ほのかな甘みと塩味を感じる味わいが特徴です。特に京都で好まれて使われており、懐石料理などにも多く使われています。他の昆布に比べると硬くだしが出にくいため、時間をかけてだしを取ることで利尻昆布の持つ風味を最大限に引き出すことが出来ます。また、千枚漬けなど漬物と一緒に漬ける際に使われることも多いです。

羅臼昆布(らうすこんぶ)
昆布の中では濃厚で香りも味わいも強いだしが取れます。知床半島の一部でしか生息のしていない羅臼昆布はだしの色が濁るほど濃いのが特徴で「だしの王様」とも呼ばれるほどです。他の昆布に比べると主張が強いため、合わせだしではなく昆布単体でだしを取るのがおすすめになります。昆布のうま味を味わいたい料理やつゆなど濃い味の料理に使うことで羅臼昆布の持つ風味を生かすことが出来ます。生産地が限られているため、昆布の中では生産量が少なく高級品となっています。

 他にも、長昆布や細目昆布、かごめ昆布などだしより食材として使われることに向いている昆布もあるため、購入する際にはどのような料理を作るのか、他のだしと合わせて使うのか、具材としても使うのかなど用途によって選んでみるとよりこんぶだしの美味しさや風味を感じることが出来ます。また、収穫される季節や天然か養殖かによってもだしの出方に違いが出てくるため、いろいろ試して好みの昆布を見つけてみて下さい。