料理をする際には醤油や塩などさしすせそと呼ばれるよく使う基本の調味料があります。ですが、この5つ以外にもよく使う調味料があります。それが『みりん』です。甘みの強いイメージがあるみりんは照り焼きや煮物を作る際には欠かせない調味料となっています。今回はこのみりんについて調べてみましたのでご紹介していきます。
みりんとは?
みりんとは簡単にお伝えすると“米を使った調味料”です。しかしみりんと言っても1種類だけではないのをご存じですか?大きく分けるとみりんには3種類あり、本みりん・みりん風調味料・みりんタイプ調味料に分かれており、似ているようですがそれぞれには特徴や使い方、扱い方にも少し違いがあります。本みりんを基準に他の2つがどう違うのか見ていきましょう。
本みりん
基本的にみりんとは本みりんのことであり、まろやかな甘みや芳醇な香り、コクを感じられ“米・米こうじ・焼酎または醸造アルコール”といったシンプルな原材料から出来ています。蒸したもち米と米こうじに焼酎や40%程度あるアルコールを混ぜ40日~1か月程熟成・糖化させます。長期間熟成させることにより、糖類やアミノ酸、有機酸などの成分が作り出され、みりん特有の甘みや旨みが生まれます。
ここで注目して欲しいポイントがあります。それは、本みりんは”お酒”であるということです。意外と知らない人も多いのではないでしょうか。本みりんは原材料に度数の高いアルコールを使っていることや製造過程で熟成、つまり醸造させて作っており、出来上がった本みりんも14%前後のアルコールが含まれているため調味料という扱いではなくお酒に含まれます。そのため、酒税対象となり、子供など未成年には実は販売することは出来ません。
しかしアルコールが入っているからこそ発揮するみりんの効果があります。
みりんの効果
- 食材の臭みを取る
みりんに含まれているアルコールは食材の臭いを吸収し、熱が加わり蒸発する際に一緒に臭いも飛ばしてくれます。また、醸造することで生まれた糖類やアミノ酸などがマスキング効果と呼ばれる臭いを包み込む役割をしてくれるため相乗効果で食材の臭みを軽減させてくれます。そのため、臭みが気になる肉料理や魚料理にはみりんが使われることが多くなります。この効果から食材の下ごしらえに使うことにもおすすめです。 - まろやかな甘みやコクを出す
みりんにはオリゴ糖やブドウ糖など砂糖には含まれない糖類が複数含まれています。さらに原材料がもち米や米こうじなど米由来のものから出来ているため、米の甘みやうま味がみりんのまろやかな甘み・うま味となって料理に影響しています。また、アミノ酸や有機酸と呼ばれるクエン酸なども含まれているため、糖類とは別のうま味やコクを作り出してくれます。 - 料理につや・照りをつける
1つ前にもお伝えしたように、みりんには複数の糖類が含まれています。もちろん砂糖でもつや・照りをつけることは出来ますが、みりんに比べるとその光沢度は低くなります。これは、複数の糖類が入っていることにより食材の表面に膜を張り砂糖には出せない光沢を出してくれているためです。料理においてつや・照りは見た目による食欲を促進させる重要な役割を果たしてくれています。 - 食材の煮崩れを防ぐ
みりんに含まれるアルコールや糖類は肉や野菜などの食材の形を保ってくれる働きをしてくれるため、煮ものや煮つけなどにみりんを使うと煮崩れを防いでくれます。 - 味や旨みを染み込ませる
アルコールには味を染み込ませる効果があると言われています。アルコールの分子は小さいため、食材に浸透しやすく一緒にうま味も浸透してくれます。消臭効果も持っており、1番最初にみりんを入れるとより効果的にみりんの力を発揮してくれるためおすすめです。
保存方法
本みりんに入っているアルコールが抜けしないようしっかり蓋を閉めて直射日光を避けていれば常温で保存することが出来ます。より風味を損なわないように保存したい場合は冷暗所で保管するのがおすすめです。冷蔵庫に入れも大丈夫ですが、糖類が多く含まれているため白く結晶化することがありますが問題なく使うことが出来ます。
みりん風調味料
本みりんに似せて作られた調味料です。水あめなどの糖類に米こうじなどの醸造調味料や酸味料、香料などを混ぜて短期間で作られており、本みりんのように長期熟成などはされていません。水あめなどが入っているため、本みりん以上に甘みが強く糖分も多いですが、アルコールが1.0%未満とほとんど含まれておらず酒税の対象外となるため、誰でも購入することが出来ます。製造する際のコストも低く本みりんより低い価格で購入出来るのもメリットの1つです。
みりん風調味料の効果と使い方
本みりんと同じように使うことが出来ますが、アルコールがほとんど含まれていないため、食材の臭みを取る、煮崩れを防ぐ、味やうま味を染み込ませるといったアルコールの力を使った効果は期待できません。しかし、本みりんはアルコールが強い分、ドレッシングなど加熱しないで使うものにはあまり向いておらず、反対にみりん風調味料は加熱しなくても使えるため、刺身の漬けや和え物、タレ・ドレッシングなど仕上げとしてやそのままかけて使うことが出来ます。また、その特徴を活かして砂糖の代わりやシロップの代用としても使うことも出来ます。
保存方法
アルコールがほとんど入っていないみりん風調味料は常温で保存することには向いておらず、冷蔵庫での保存になります。
みりんタイプ調味料(発酵調味料)
みりんタイプ調味料は米や米こうじなどを発酵させ、水あめなどの糖類や食塩、アルコールを加えたものになります。前の2つと大きく違う点は“塩”が加わっていることです。本みりん同様にアルコールが14%前後含まれていますが、お酒としてそのまま飲めないように塩を入れて調整しており酒税がかからないため本みりんよりも安価に購入出来ます。ちなみにこちらも、上記の理由で酒税がかかっておらずお酒の扱いではないため、未成年でも購入することは出来ます。
みりんタイプ調味料の効果と使い方
アルコールが含まれているためまろやかな甘みやうまみをつけられるだけでなく、食材の臭みを取る、煮崩れを防ぐなどアルコールの力を使った効果も得られ、より本ほんみりんと近い使い方をすることが出来ます。しかし、1つ大きな注意点があります。みりんタイプには他の2つには入っていない塩が入っているため、みりんと同じようにレシピ通りに使ったり甘みを出すために使うと料理全体の味が濃くなってしまう、塩辛くなってしまうことがあるため使う量や代用する際には注意が必要です。
保存方法
アルコールと塩が入っているため、直射日光を避けた常温または冷暗所での保存が出来ます。こちらも本みりんと同様にアルコールが抜けないように蓋をしっかり閉めておくようにしてください。
煮切りとは…
料理を作る過程でみりんを使う際に、「煮切り」という文字が出てくることが多いです。煮切りとはみりんや酒のアルコール分を飛ばして使うという意味です。特に本みりんはアルコールが含まれているため、そのまま使うとアルコールの香りが強く、料理の風味に影響してきます。煮物など加熱する料理は調理中にアルコールが飛んでしまうため、特にレシピなどにも煮切りという言葉が出てくることはありません。しかし、和え物や加熱をしない料理の場合にはみりんを煮切りする必要があります。アルコールの香りが気にならない人はそのまま使うことも出来ますが、出来れば煮切りをしたみりんを使った方がよりその料理の味を楽しめるでしょう。
また、煮きりをした本みりんは甘みとうま味の強いとろみがあるためシロップとしても使うことが出来ます。アイスクリームにそのままかけたり、はちみつの代わりなどみりんは調味料以外として使うことが出来ます。
≪煮切りの仕方≫
鍋を使う場合
鍋に100㏄のみりんを入れ1分ほど弱めの中火で煮てアルコールを飛ばす
レンジの場合
耐熱容器に大さじ1のみりんを入れラップなど蓋をせずに600wで50秒ほど加熱してアルコールを飛ばす
※沸騰するため少し大きめの容器に入れるのがおすすめです
みりんの代用方法
料理をする際、みりんを使おうと思ったときに切らしてしまった場合、代用出来るものがあります。それは”日本酒と砂糖”です。
割合は日本酒3:砂糖1(料理酒大さじ1:砂糖小さじ1)
日本酒の代わりに料理酒、砂糖の代わりにはちみつを使うことも出来ます。しかし、料理酒には塩などが含まれているため、より本みりんに近づけたい場合は日本酒の方がおすすめです。また、はちみつを使う場合は砂糖より糖度が高いため少なめに入れるほうがよいでしょう。
みりんの歴史
意外と奥が深いみりんは一体どのように現代に伝わったのでしょうか。これには由来が諸説あるため実ははっきりしていないそうです。しかし、その中でも有力な諸説が2つあります。
1.戦国時代に中国から「蜜淋(ミイリン)」と呼ばれる甘い酒が九州や沖縄に伝わり全国に広まったのが始まり
2.日本に古くからある甘い日本酒の1種である「練酒」や「白酒」の腐敗を防ぐために焼酎を加えたのが始まり
どちらにしても、戦国時代には甘いお酒が飲まれていたのが分かります。その後改良されみりんとなった江戸時代でも調味料としてではなく、甘いお酒として女性を中心に飲まれていました。しかし後にお酒からコクを出す調味料として使われるようになり、江戸時代後期には料亭やそば屋で本格的に調味料として使われ始めました。明治~戦前までは日本料理屋などでしか使われておらず高級品として扱われていましたが、昭和30年に酒税法改正が行われてからは家庭でも使われるようになり、今では欠かせない調味料の1つとなっています。
間違えないで!本みりんを作る・売るには免許が必要?
業者や関係者でないとみりんを作る・売ることはなかなかありませんが、本みりんを扱う場合には何か特別な免許がいるのでしょうか。
まずはじめに注意して欲しいことは家でみりんを作ることは原則禁止となっています。
原材料がシンプルであったり、作り方も特別複雑ではないため、作れてしまうのではないかと考える人もいるかと思いますが国の許可なくみりんを作ることは出来ません。みりんは製造段階でアルコールが1%以上あり「酒類」に含まれるため、酒類の製造免許が必要であったり、酒税を納めないといけません。
焼酎類に果実を漬け込む果実酒など1部の規定を守って作られているお酒は販売は出来なくても個人で飲むことはできます。しかし、みりんはその規定外となり、個人で楽しむだけだとしても無断で作ることは法律違反になってしまうため注意しましょう。
また、お酒の1種である本みりんは、販売する場合にも酒類の販売免許がないと販売することは出来ません。販売するにあたっても消費者に直接売るのかネットを通すのかなどで必要な免許が違ってくるため、免許を取得しようと考えている人はどの免許が必要か確認してみて下さい。
みりん風調味料やみりんタイプ調味料は酒類に含まれないため、酒類の販売免許がなくても大丈夫ですが、本みりんを扱う場合に免許なく販売してしまうと酒税法違反で罰則されてしまいます。どちらにしてもそれぞれに必要な免許を取得しないといけないため、安易に作ったり売ったりしないようにしましょう。
参考:国税庁 酒類の免許
番外:みりんはそのまま飲めるのか
お酒の1種として扱われている本みりんですが、お酒として飲めるのかというのが素直な疑問です。
調べてみたところ、昔はお酒として飲まれていたものの現在のみりんはあくまで調味料として加工されているため、お酒としてそのまま飲むことはおすすめしていませんでした。
しかし、現在では「本直し」や「やなぎかげ」といったみりんを使ったリキュールが少数ですが販売されています。本直し・柳陰とはもともと江戸時代に飲まれていたお酒で、焼酎とみりんを1:1で割った今でいうカクテルのようなお酒のことです。関東では「本直し」関西では「柳陰(やなぎかげ)」と呼ばれており、井戸で冷やして暑い夏の日によく飲まれていたようです。
では、単純に焼酎と本みりんを混ぜてみてはいいのでは?と思いますが、ここでも1つ注意点があります。
通常は“お酒に他のものを混ぜて新たなお酒を作り出すことは禁止”されていますが、これに関しては「作り置きしないこと・個人で楽しむのみ」であれば免許がなくても許可されています。
気になる人は一度国税庁の規定を確認してみて下さいね。
本直し・柳陰の購入先
古澤醸造合名会社/本直し 池邊鶴1800ml
酒井酒造/杉錦 やなぎかげ 12年長期熟成
いかがでしたか?普段の料理には欠かせない調味料の1つとなっているみりんは意外と奥深く、本みりんに関してはお酒の1種であることが分かりました。料理の種類や使い方によってはみりん風やみりんタイプを使い分けることで時短となったり、みりんがもたらす効果が変わってきます。それぞれの特徴を活かして上手に使い分けてみてくださいね。