宮城県に訪れたらチェックしたい特産品

鳴子峡や日本三景の一つである松島がある宮城県は奥羽山脈などの山々と太平洋に囲まれており、東北の中でも比較的温暖なため、四季折々の自然豊かな景色が1年を通して楽しめます。また、美食家や料理好きとしても有名だった伊達政宗が治めていた土地としても有名であるため、美味しいグルメが多いのも特徴です。そんな宮城県にはどのような美味しい特産品やグルメがあるのでしょうか。今回は宮城に訪れたらチェックして欲しい特産品について紹介します。

牛タン

宮城県仙台市の代表的なグルメと言えば“牛タン”です。厚めに切られた牛タン焼きと麦飯、テールスープがセットになった定食が定番の食べ方で、一緒に浅漬けや南蛮漬け、とろろがついてくるお店も多いです。各お店では薄めにスライスした牛タンも用意していますが、仙台では厚めに切られた牛タンの方がポピュラーで人気が高く、牛タン一つ一つに切り込みを入れる、数日かけて熟成させるといった手間をかけることで厚めでも柔らかく噛むほどに旨みを感じられるのが特徴となっています。

なぜ、牛タンが仙台市の特産物かと言うと、牛タン焼きと言う料理を生み出し初めて提供したのが仙台市にあるお店だったからです。1950年代、戦後に市内で焼き鳥屋を経営していた店主が他の店との差別化を図ろうと、日本ではあまり食べることのなかった牛タンに目をつけました。当時、アメリカの駐在軍が多かった仙台市には大量の牛肉が運ばれており、その中で試しに食べた牛タンの美味しさや魅力を知った店主は、日本人でも食べやすいよう味付けや焼き方などを試行錯誤し改良を繰り返します。その結果、牛タンを使ったオリジナルメニューを作り出し提供したのが始まりと言われています。珍味の部類だったこともあり、はじめは地元の人々にあまり受け入れられませんでしたが、高度成長期と共に県外から転勤などによって仙台に移住する人が増え、外食をする人も増えていくと次第にその美味しさが広まり人気が出るようになったのです。その後、口コミでの評判の高さや牛タンのヘルシーさがメディアで紹介されたことにより認知度が上がり、1990年代には牛肉輸入の自由化が始まったことで材料を仕入しやすくなり、店舗数が増えたことで”仙台=牛タン”のイメージが浸透していきました。

牛タン定食には白米ではなく麦飯を使っているのも特徴的ですが、これは牛タン定食を提供し始めた頃はまだ戦後で食料難が続いていたため、腹持ちがよく栄養も高い麦飯を使った名残とも言われています。そんな戦後の歴史と共に成長してきた牛タン定食は、お店によって切り方や味つけの仕方、歯ごたえなどこだわりのポイントが違い、どれもそのお店でしか味わえない美味しさがあるため、仙台に訪れた際には忘れずに食べてもらいたいご当地グルメです。また、牛タン弁当を販売しているお店も多く店頭で食べるよりもリーズナブルであるため、時間がない方は牛タン弁当も一緒にぜひチェックしてみて下さい。

ずんだ/ずんだ餅

鮮やかな黄緑色の見た目が特徴の“ずんだ餅”は宮城県を中心に食べられている郷土菓子です。「ずんだ」とは枝豆をすり潰して作る黄緑色の餡のことを呼び、つきたての餅に絡めて食べます。枝豆の粒感が残った餡は枝豆の風味や旨みと優しい甘さを感じられるのが特徴で、子供から大人まで年齢問わず人気があります。もともとはお盆やお彼岸の時に米農家などで作られていたり、団子屋などでも期間限定商品として取り扱われていた季節感のある和菓子でしたが、仙台市にある食品メーカーが冷凍ずんだ餅をお取り寄せ商品として開発し、季節問わずに食べられるようになったことで広く認知されるようになりました。人気と共に取り扱うメーカーが増え、和菓子だけでなく洋菓子とも相性がよいため、近年はパンやどら焼き、ケーキ、アイス、プリンなど和洋・ジャンル問わず、さまざまなスイーツにずんだを取り入れている商品が増えています。 

ずんだという名前にはいくつかの由来があり、甚太という百姓が作り始めたから、伊達政宗が陳太刀(じんだち)の柄で枝豆を砕いたことから、豆を打つという意味の「豆打(づだ)」から、ぬか味噌のことを「じんだ」と呼んでいた時代に形状が似ていたことから、それぞれが訛りずんだと呼ばれるようになったからなど、さまざまな説があると言われています。どの説が正しいかは定かにはなっていませんが、いずれにしても砂糖を入れた甘いずんだは幕末から、甘くないずんだに関しては江戸時代から食べられていたとされており、宮城県では古くからずんだが浸透した食べ物だということが分かります。さらに正月や婚礼、法事などの行事には餅を食べる習慣があり、ずんだ餅以外にもくるみ餅、ごま餅、納豆餅など餅の種類も豊富だったことから、来客時には季節にあった餅を出すことが多くとても身近な食べ物でした。こういった歴史やその土地ならではの習慣からずんだ餅は宮城県に根付いており、三大名物として今も変わらず人気があるのです。食べたことや馴染みのない人からすると枝豆を使った甘い餡はどのような味がするのか想像しづらく苦手意識も少なくないですが、想像以上に食べやすくスイーツとの相性もよいため、豊富な商品の中からお気に入りのものを見つけてずんだの美味しさを味わってみて下さい。

笹かまぼこ

 牛タン・ずんだと並んで宮城の三大名物(仙台三大名物)の1つが“笹かまぼこ” です。笹のような形をしたかまぼこにはこんがりとした焼き色が付き、歯切れのよいプリっとした食感が特徴です。蒸して作られる一般的なかまぼこ(板かまぼこ)に対して、笹かまぼこは焼いて作られているため表面に焼き色が付きます。主原料にスケトウダラのすり身を使って作られていますが、もとはヒラメやキチジといった魚のすり身を使っていたこともあり、現在もヒラメなどを使って作られている商品もあります。練り物である笹かまぼこは調理しなくてもそのまま食べることが出来、おやつやつまみとして食べることも多いことから1切れずつ個包装になって販売しているものも多です。また、チーズやエビ、しそ(大葉)が入ったもの、スモーク加工されているものなどアレンジされた種類が多いのも1つの特徴です。料理の具材としても重宝されていますが、フライパンやトースターで軽く焼き色を付けてからそのまま食べるのがメーカーも推奨しているおすすめの食べ方で、焼くことにより香ばしい香りと味わいを楽しむことが出来ます。

明治時代、仙台市ではヒラメが大量に漁獲された時期があり、今のような輸送力も保存する設備も少なかったことから叩き売りをしてまでも消費しようとしましたが、量が多すぎてすべては消費することが出来ませんでした。そこで残ったヒラメをすり身にして手の平で叩き、笹の葉の形にして焼いて売り始めたのが笹かまぼこの始まりとされています。ヒラメを使った笹かまぼこは風味がよく保存も効いたため重宝されていましたが、タラなどを使ったものに比べるとコシが少ないのが欠点でした。しかし、増量剤を使わずに調味料、卵白のみで練り合わせる製法や材料の鮮度などの改良を重ねたことで特有の食感を生み出すことに成功しました。そういった技術を守りながらも時代に合わせて進化している笹かまぼこの人気は衰えることなく続き、特産品として現在でも親しまれています。当初は見た目の形から、べろ(舌)や手のひら、木の葉、雪駄などいくつかの呼び方がありましたが、昭和に入ってからゆかりのある伊達家の家紋「竹に雀」にちなんで笹かまぼこと統一して呼ばれるようになりました。シンプルだからこそメーカーによる弾力や食感、厚み、旨みなどの違いを感じやすく、1切れずつ販売している商品も多いため手軽に購入して食べ比べてみたり、お酒好きの知人にお土産として渡すのもおすすめです。

仙台駄菓子

駄菓子といえばラムネや一口大のチョコレート、小袋入りのスナック菓子など子供の頃に数十円で買えるお菓子をイメージしますが、もともとは麦・あわ・ひえなどの雑穀と水飴や黒砂糖などを使って作られた素朴なお菓子のことになります。そして、仙台にも“仙台駄菓子”と呼ばれる伝統的なお菓子があるのをご存じでしょうか。仙台駄菓子にはきなこやごまを使ったねじりもの、落雁の一種であるしおがま、こうせん粉を練って作るゆびわ・うさぎ玉、梅干しを見立てて作られるうめぼし、黒パン、みそぱん、ささら飴、ハッカ、かるめら焼きなど、見たことがあるものから馴染みのないものまで豊富な種類があり、形や素材、製法による違いを入れると約50~60種類の駄菓子があると言われています。基本的にはすべて職人が手作りで作っているため、同じ駄菓子でも職人やお店によって味が違うのも特徴です。昔は子供のおやつとして食べられていましたが、茶の文化が普及すると同時にお茶請けとして食べられるようになり、現在もお茶やコーヒーなどと一緒に食べるのが一般的です。しかし、販売しているお店は仙台市都心部周辺地域の路地裏などにひっそりと専門店があるため、地元の方でも口にしたことがないという人も少なくなく、存在自体知らないという人も増えつつあります。

そんな仙台駄菓子は、白砂糖が贅沢品であった江戸時代に作られるようになりました。当時、庶民は白砂糖を食べることを禁止されていたため、雑菓子と呼ばれる黒砂糖を使ったお菓子しか食べることが出来ませんでしたが、庶民にとっては身近なお菓子であったことから「つまらぬもの」を意味する駄に置き換えて駄菓子と呼ぶようになりました。もともと米の栽培が盛んであった仙台では余った米を使った駄菓子が多く作られていましたが、茶の世界にも精通していた伊達政宗の影響で茶の文化が発展すると菓子(和菓子や茶菓子)作りも盛んに行われ、庶民にも菓子が浸透していったのです。仙台駄菓子には可愛らしい見た目の種類も多く、その可愛さからお土産として仙台を訪れた観光客に人気があり、近年は震災復興の一部でアニメとコラボしたことから若者にも注目されています。販売しているお店自体は多くなく、お土産のように購入しやすいお菓子ではありませんが、伝統的な技術が詰まった素朴な美味しさの仙台駄菓子を一度味わってみてはいかがでしょうか。

冷やし中華

ラーメン屋や中華料理屋では夏になると販売することが多い“冷やし中華”は、実は日本発祥の料理であり仙台市が発祥地ということを知っていますか。そのため、仙台市内には季節問わず冷やし中華を販売しているお店も多く、市民にとっては非常に馴染み深い料理となっています。

昭和初期に誕生した冷やし中華は市内にある中華料理店で考案されます。東北と言っても夏は暑く、冷房設備も今ほど完備されていなかったため、熱い料理や辛さのある料理が中心の中華料理は夏場の売上が伸び悩むことが多かったそうです。そこで、店の店主は打開策として中華料理の概念にはない冷やした麺を使った「涼拌麺」を生み出しました。中国語で和えるという意味がある涼拌麺は文字通り、冷たい麺とタレ、具材を混ぜ合わせて食べる新しいスタイルとして売り出され、徐々に受け入れられるようになります。戦時中は一時期メニューから消えてしまったものの、その後復活し、改良を重ねたことで多種類の具材を乗せた現在の形が定着しました。1960年には家庭用商品として冷やし中華が販売されたのですが、当時は珍しかった生麺と液状のタレがセットになった形状で販売されたこともあり、美味しさと手軽さ、珍しさが重なり全国まで広く認知されるようになったのです。これをきっかけに、冷やし中華と言う名前も統一されるようになりました。

仙台市内で冷やし中華を提供しているお店では、醤油ベースのさっぱりしたスープにキュウリやハム、錦糸卵などの具材をトッピングした定番の冷やし中華を提供しているお店が多いですが、ごまダレスープのものや辛みそが乗っているもの、具材を別添えにしているものなどお店ごとの特徴やこだわりが見られる冷やし中華が多くあります。宮城県には牛タンや仙台牛、ふかひれ、牡蠣など美味しく代表的なグルメも多いですが、発祥地でしか味わえない冷やし中華の魅力にもぜひ注目してみて下さい。