にぼしだしの出汁のとり方と種類

 にぼしだしは煮干しを使ってだしを取り出すため煮干し特有の香りやうま味が強くなります。煮干しと言えばイワシを想像する人も多いですが、小魚や魚介を煮て干したもの全般を煮干しと言うため、イワシだけではなくキビナゴやトビウオ、アジ、サバなどで作られたものも煮干しになります。

にぼしだしの特徴とだしの取り出し方

 煮干しから取るだしにはイノシン酸と呼ばれるアミノ酸が含まれており、うま味を強く感じることが出来ます。イノシン酸はこんぶだしに含まれるグルタミン酸と合わせることで強いうま味が生まれるため、にぼしだし×こんぶだしの合わせだしとしても相性がとても良いです。また煮干しには、たんぱく質をはじめ、鉄や亜鉛、カルシウムなど多くの栄養素も含まれています。

にぼしだしの取り方は“水出し法”と“煮だし法”の2種類があります。
ここでは1番スタンダードなイワシの煮干し(いりこ)を使った方法と煮干し×昆布の合わせだしの取り方をお伝えします。

煮干しのみ
煮干しは水の量に対して2%になります。
水・・・500ml
煮干し・・・10g

水出し法
頭と内臓を取り除いた煮干しを乾煎りし、水に浸けてラップをして1晩冷蔵庫で寝かせます。時短の場合は乾煎りしなくても大丈夫です。その後煮干しを取り出して完成です。
水出し法で取り出しただしはあっさりしており、雑味が少ないのが特徴です。

煮だし法
水だし法と同じく、頭と内臓と取り除いた煮干しを使います。水を張った鍋に煮干しを入れ30分以上浸けておきます。その後、鍋を火にかけ沸騰してきたら火を弱めアクを取り、さらに5分ほど煮だして完成です。
水出し法に比べると、濃厚でパンチのあるだしを取ることが出来るため、具がたくさん入ったみそ汁や濃い味付けの料理に使うことに向いています。

煮干し×昆布だし
煮干しだけでも美味しいですが、一緒に昆布を入れて浸けておくと相乗効果でより強いうま味を感じることが出来ます。煮干し・昆布とも水の量に対して1%になります。
水・・・500ml
煮干し・・・5g
昆布・・・5g

水出し法
煮干しのみと同じく、容器に水・煮干し・昆布を入れラップをして1晩寝かせ、煮干しと昆布を取り出して完成です。

煮だし法
鍋に水・煮干し・昆布を入れ30分ほど浸けておきます。その後、火にかけ沸騰してきたら弱火にして昆布だけ取り出します。アクを取り除いてさらに5分ほど煮だして完成になります。


保存方法
どちらの方法でも取り出しただしは、冷蔵保存の場合3~4日、長期保存したい場合は冷凍で3週間程度を目安に使いきってください。冷凍保存の場合は、製氷皿やジップロックに入れて冷凍すると使いたい時に必要な量を取り出せるためおすすめです。

基本的には煮干しは頭と内臓を取り除いて使いますが、苦みや香りが気にならない人は取り除かずに使ってもおいしくだしを取ることが出来ます。また、水に対しての煮干しや昆布の量は目安であるため、増やしたり減らしたりして好みの濃さでだしを取り出してみてくださいね。

煮干しの種類

 にぼしだしは別名でいりこだしとも呼ばれていますが、主に西日本での煮干しの呼び方がいりこであり、煮干しを使っただしということは変わりません。しかし、にぼしだしはだしを取る煮干しの種類が変わることによって風味や特徴も大きく違ってきます。煮干しの中でも特に使われることの多いイワシを中心に違いを見ていきましょう。

カタクチイワシ
イワシを使った煮干しの中で1番生産量が多いのがカタクチイワシになります。
カタクチイワシには大きく分けると2種類あり、1つは背中が青い青口です。太平洋や日本海で育った青口を使って取っただしは風味が強くしっかりとしただしになり、関東で好まれて使われています。もう1つは背中が白い白口と呼ばれる瀬戸内海で育ったカタクチイワシを使っています。白口は青口に比べると味わいが柔らかくまろやかなのが特徴で、九州や四国で好まれて使われています。
この瀬戸内海で育ったカタクチイワシの中にいりことして有名な伊吹いりこがあります。伊吹いりこが獲れる伊吹島がある香川はいりこの生産地として有名ですが、その香川を抑えて国内の生産率が1番高いのは長崎になります。

平子イワシ
真イワシの小魚が平子イワシと呼ばれています。小魚であるため、頭や内臓を取り除かずにそのまま使ってだしを取ることが出来、クセやイワシ特有の香りが少ないですがコクのある味わいが特徴です。だしの見た目は薄い色をしていますがしっかりだしの味が出ているため、お吸い物や素材を活かす料理から鍋、煮物など料理全般に使うことが出来ます。

うるめイワシ
生産量の少ないうるめイワシを使って取り出しただしは、クセが少なく甘みがあり、まろやかな味わいを感じられます。うるめイワシは身が引き締まり脂肪分が少ないため、だし自体もあっさりしており、水出し法でだしを取り出すことでさらにすっきりとしただしになります。うるめイワシで取り出しただしはイワシの中でも特に料理の向き不向きが少なく幅広く使うことが出来る万能なだしとなっています。

 あまり普段の料理には使うことが少ないですが、イワシ以外では鯛や干しエビ、ホタテ貝柱など小魚にはない特有の旨味や香りが楽しめる煮干しがたくさんあります。普段使わない煮干しのだしを使うことで料理のジャンルや幅がぐっと広がるため、気になる煮干しを見つけた時には試してみるといつもとは違った美味しさに気づくかもしれません。

あごだしとは

 近年特に人気の高いにぼしだしの中に“あごだし”があります。九州ではトビウオのことをあご呼び、トビウオを使って取り出しただしがあごだしになります。長崎や鹿児島を中心とした九州が主な産地として有名ですが、実は静岡や島根でも生産が盛んです。
すっきりとした甘みとうま味が強く味わいが深いあごだしですが、もともとはトビウオが高級食材だったため、あごだし自体も高級品でした。しかし主な産地である九州では昔から親しまれており、そのおいしさから近年では全国的にも人気が広がり家庭でも使われることが増えています。

トビウオは他の魚に比べ身が引き締まっており、脂肪分が少ないことから雑味や臭みが少なくあごだしの美味しさにも影響しています。また、焼き目を付けたトビウオを使った“焼きあごだし”は香ばしくコクがあり、あご煮干から取っただしとはまた違った風味を感じることが出来ます。しかし、イワシに比べるとだしを取るときに半日水に浸けるなど少し手間がかかってしまうため、だしパックや液体タイプを上手く使うことで手軽にあごだしの美味しさを味わうことが出来ます。

みそ汁やうどんつゆなど、普段の料理に使うだしをあごだしに変えることでワンランク上のような上品な味わいの料理に仕上がるため、まだ試したことのない人はぜひ1度試してあごだしの美味しさを感じてみて下さい。