天ぷらの美味しい揚げ方

海老天やかき揚げなどそのまま食べても蕎麦などに乗せても美味しい天ぷらは代表的な日本料理の1つです。野菜や魚介などの食材に衣をつけて揚げるだけで作れるため自宅で作ることも多い料理ですが、工程は簡単であるもののなかなかお店のようにサクサクとした食感を出すことが出来ないところが難点です。今回はそんな天ぷらを失敗せず簡単に揚げることが出来るコツを紹介していきます。

天ぷらの基本的な揚げ方

天ぷらの基本的な揚げ方は”食材を薄力粉・卵・水で作った衣をつけて揚げる”というとてもシンプルな工程です。しかし、シンプルであるがゆえに衣の作り方やつけ方、揚げる油の温度で揚がり方が大きく変わってしまいます。

成功するためのポイントとしては

  • 食材は冷蔵庫で冷やしておく
  • 食材に打ち粉をする
  • 衣も冷やし混ぜすぎない
  • 油の温度を下げない

温度が大切
天ぷらの1番の醍醐味は揚げたてのサクサクした食感です。しかし、家庭で天ぷらを揚げるとサクサクどころか揚げた後時間が経つにつれしなっとした食感になり油っぽくなってしまうことが多いです。このサクサクした食感を出すには油の温度だけでなく食材や衣の温度も非常に大切になります。

衣がサクサクに揚がるのは衣が急速に加熱されることで油と衣の温度に差が出来、表面の水分がしっかり蒸発するためです。しかし、油の温度が低いと温度の差が少ないため水分が蒸発しにくくサクッと揚がりません。また、油が高熱であったとしても食材や衣の温度が高い場合も同じく温度差が出にくいためサクッとした食感を出しにくいのです。

油は160~180℃が適温とされており、特に火の通りやすい野菜は低温で魚介のような火が通りやすい食材は高温で短く揚げる、根菜のような火が通りにくい食材は低温でじっくり揚げるのがコツとなります。また、事前に食材を冷やしておく、衣を作る際には冷水や氷水を使って作ることでより油との温度に差を出すことが出来ます。

小麦粉の扱いが大事
温度の次にポイントとなる点は小麦粉の扱い方です。衣に使う小麦粉に含まれるたんぱく質と水が結びつくことでグルテンと呼ばれる成分が作られます。このグルテンは混ぜることで粘り気が強くなるのが特徴ですが、衣を混ぜすぎてしまうと粘りが出て衣自体にもたつきが出てしまい揚げた後もべたつきが強くなってしまいます。そのため、衣を作る際にはダマが残る程度に軽く混ぜることで衣がもたつかずサクッと揚がりやすくなります。

小麦粉には薄力粉・中力粉・強力粉と種類がありますが、グルテンが少ない薄力粉を使いこし器などでふるう、卵を先に冷水でしっかり混ぜ合わせた後に小麦粉と混ぜ合わせることも失敗しにくくなるポイントです。さらに、グルテンは温まることでも粘り気が出てしまうため冷水を使うことでグルテンの粘りを防ぐことにも繋がっています。

また、衣をつける前の食材に水分がついていると仕上がりがベタっとしやすくなります。そのため衣をつける前にキッチンペーパーなどでしっかり水気を取り、全体に小麦粉を軽くまぶしておく(打ち粉をしておく)ことで必要以上に衣がつかずもたつきづらくなります。ビニール袋やタッパーなどの容器に食材と小麦粉を入れて振ると少量で綺麗にムラも少なく小麦粉まぶすことが出来るためおすすめです。

かき揚げにも軽く小麦粉をまぶしておくことで食材がバラバラになりにくく、同時に油ハネを防止することも出来るため、小麦粉の扱い方を変えるだけでも仕上がりが大きく変わります。しかし、事前にすべての食材に小麦粉をまぶしておくと、他の食材を揚げている間にべたついてしまうため揚げる直前に揚げる分だけまぶすのがポイントです。

油の適温と鍋のサイズ
170℃前後に油が温まったらアクが出にくいものから低温で順番に揚げていけばよいのです温度計がないと正確な温度まで把握するのは難しいです。そんな時は菜箸に衣をつけて加熱した油に何滴か落とした衣の状態を目安にしてみて下さい。

落とした衣が沈みゆっくり上がってきたら150~160℃の低温
低温で揚げられるもの:野菜・きのこ・根菜など
目安の時間:30~1分、根菜の場合は2~3分

落とした衣がすぐに上がってくるようなら170℃前後の中温
中温で揚げられるもの:かき揚げ・油を吸いやすい野菜(なすなど)
目安の時間:1~2分

落とした衣が沈まずに表面で散らばるようなら180℃ほどの高温
高温で揚げられるもの:魚介や肉(短時間で揚げる)
目安の時間:2~3分(開いた火の通りやすい魚は1分程度)

さらに、天ぷらを揚げる場合は2.5~3cmくらいの高さが出るくらいしっかりした量の油で揚げるのが失敗しにくくなるポイントでもあります。大きいフライパンや鍋は揚げやすく温度も下がりにくいですが使う油の量が増えてしまうため、適度な大きさと深さがあるものを使うとよりよいです。21cm径のフライパンや鍋なら2~3人分くらいの天ぷらを揚げるのにちょうどいいサイズというのを目安に、お持ちの鍋などのサイズを確認してみて下さい。また、一度にたくさんの食材を油に入れてしまうと温度が下がりやすくなるため入れた食材が無理なくひっくり返せる程度に入れるのもポイントとなります。

天ぷらの衣を作る際のおすすめのひと手間

油や衣の温度、衣を混ぜすぎないなどのポイントやコツを押さえるだけでもサクサクした食感を出すことが出来ますが、衣にあるものを加えるだけでより失敗せずに美味しく揚げることが出来ます。

ひと手間その1:卵の代わりにマヨネーズを使う
衣を作る際に入れる卵をマヨネーズに変えるだけです。卵1個に対して大さじ1杯のマヨネーズを加えるだけですが、卵に比べると水分が少なく油分が多いことから衣の水分が蒸発しやすくなります。また、マヨネーズの油分と酢はグルテンが作られるのを抑える働きもあります。

ひと手間その2:炭酸水を使う
衣を作る際の冷水や氷水を冷えた炭酸水に変えて作ります。油で揚げた時に炭酸水に含まれている気泡が抜けることで一緒に衣の水分も逃してくれるため仕上がりがべたつきにくくなります。ただし、炭酸が強すぎる場合は油はねしやすくなるため少し炭酸が抜けた状態の炭酸水を使うのがおすすめです。

ひと手間その3:片栗粉やベーキングパウダーを加える
小麦粉と違い片栗粉にはグルテンが含まれていないため、小麦粉と混ぜることで衣の粘り気を抑えサクサクとした軽めの食感を出しやすくなります。片栗粉を混ぜる場合は小麦粉と1:1の割合で混ぜるのが目安です。また、お菓子やパンを作る際によく使われるベーキングパウダーは水に反応して気泡が発生するため、炭酸水と同じような効果を得ることが出来ます。ベーキングパウダーの原料でもある食用の重曹を入れても同じ効果が生まれます。

片栗粉やベーキングパウダーを入れた衣は小麦粉で作った衣に比べると冷めてもサクサク感を保つことが出来るため、揚げてから時間が経ってから食べる場合やお弁当に入れる場合は衣の小麦粉の割合などにも注目して作ってみて下さい。

ひと手間その4:こめ油や太白ごま油を使う
天ぷらは油を多く使うため油の単価が高いと大きくコストがかかってしまいます。そのため、熱に強く価格も抑え気味なサラダ油やキャノーラ油を使うことが多いですが、ここで使ってみていただきたいのがこめ油や太白ごま油です。サラダ油などに比べると少し価格は高めですがどちらも非常に加熱に強く、酸化しにくい特徴があります。特にこめ油は油臭くなく揚げ物をしている際に出やすい独特なにおいによる油酔いもしにくいです。油の中でも非常に酸化しにくく、サクッと揚がるだけでなく冷めてもべたつかず美味しさをキープしてくれます。また、焙煎せずに作られた太白ごま油はごまの旨みがあるものの特有のごま油の香りがほとんどなく、軽い仕上がりの中にコクを感じられる仕上がりとなります。

どちらも酸化しにくいため使ったあとの油も酸化しにくく繰り返し使う点においても他の油より優れているため、結果的にかかるコストは低めでもあります。天ぷらは揚げる油によっては想像以上に大きな違いが出やすいため、油を変えてワンランク上の天ぷらを目指してみて下さい。

シンプルな工程の天ぷらですが、少しのコツやひと手間を取り入れるだけでべたっとした失敗をしにくくなり、簡単にサクサクの食感が楽しめるようになります。ぜひポイントを押さえて自宅でもお店には負けない美味しい天ぷらを揚げてみて下さい。