茨城県の歴史ある特産品

茨城県は関東地方の北東部に位置しており、県内の南東部には日本最大の関東平野が広がっています。そのため、農産業が盛んで茨城県で生産されている白菜やレンコン、ピーマン、栗などをはじめとする14品目の生産量が全国1位となっています。実は漁獲量も全国2位に位置づけており首都圏を中心に全国の食生活を支えているのです。そんな茨城県ではどのような特産品や茨城ならではのグルメが人気なのでしょうか。今回は茨城県の特産品やご当地グルメについて紹介していきます。

メロン

“メロン”といえば北海道のイメージが強いですが、実は茨城県はメロンの生産量が25年連続日本一に輝くほどのメロン大国になります。関東の中でも太平洋側に位置しているため、太平洋から来る潮風と年間を通して温暖な気候、水はけのよい土壌がメロンを栽培するのに適した環境をしているのです。メロンは初夏にかけて旬を迎えるフルーツであるため5月~7月にかけて出回ることが多いですが、県内では緑肉・赤肉など定番の種類から限定種まで約20種類近いメロンを豊富に栽培していることから、4月~10月と年間の半分以上の間に渡って特徴や旬の時期が違うメロンを味わうことが出来ます。少し前までは高級品として扱われていたメロンですが、品種や栽培技術の改良により美味しく質のよいメロンでも手にしやすい価格の種類が増え、夏の贈り物だけでなくお土産としても購入する人が増えています。

今から約60年前、昭和37年に現在鉾田市旭地区である旭村と八千代町で麦や芋に代わる作物としてプリンスメロンを導入したことがきっかけで茨城県でのメロンの産地化が本格的に始まっていきます。昭和50年代に入るとアンデスメロンが導入され、県内での栽培がより大きく拡大し、栽培する環境も適していたことから生産量が少しずつ増えていきました。県内では特に温暖で昼夜の寒暖差がある鉾田市・八千代町・茨城町での生産が盛んで、栽培技術の進化もあり現在はパイプハウスで栽培されていることが多いです。実をつけてから収穫するまでの約2か月間、生産者は外出が出来ないことも多いそうですが、その分手間暇かけて大切に育てたメロンだからこそ品質の高さにも繋がっています。さらに茨城県では目視検査の後、光を当てて糖度や熟れ具合を測定する光センサー選果を導入したことで規格を作り、糖度によってブランド化をしているため、十分甘く品質がよくても手ごろな価格で購入することが出来るようになりました。アンデスやクインシー、アールスといった定番の品種も多い中、県内でしか栽培することが出来ないイバラキングなどオリジナルの品種も多く人気も高いため、茨城県ならではのメロンにも注目してみて下さい。また、農家が力を入れて作ったバウムクーヘンやゼリーなどの加工品も非常に人気があるのでおすすめです。

干しいも

蒸したさつまいもを薄く切り乾燥させたものが“干しいも”です。干しいもは全国でも作られていますが、特に茨城県での生産が多く国内シェア率は9割、生産量も日本一となっています。県内ではひたちなか市を中心に隣接する東海村や那珂市での生産が盛んであり、水はけがよくミネラルが豊富に含まれている赤土は美味しいさつまいもがよく育ちます。また、海が近いことから夏には浜風が、冬には晴天で乾燥した風が吹くことが多いため、こうした環境が干しいも作りに大きく貢献しているのです。茨城県で作られた干しいもは質が高く、砂糖や添加物を使用しないで作られるため、さつまいも本来の甘さを楽しむことが出来るのが特徴でもあります。使われる品種は昔から定番で使われる玉豊(たまゆたか)をはじめに、甘さが強く焼きいもでも人気の高いべにはるか、さっぱりとした味わいが特徴のシルクスイート、育ちにくいため幻と言われているいずみなどがあります。

干しいもの発祥は実は茨城県ではなく静岡県になり、江戸時代後期に御前崎で初めて煮切り干しが作られたのが干しいもの始まりとされています。明治中期に製法が実用化され茨城県に伝わったことで県内でも干しいもの生産が始まりました。そのため、当初は静岡県の方が生産が盛んでしたが、昭和30年に生産量を抜いてからはずっと首位を維持し続けています。干しいもは蒸す・切る・乾燥させるといったシンプルな方法で作られるため、熟練の技や環境が美味しさ・質のよさにも大きく影響します。特に乾燥は食感を残す大事な作業になりますが、県内の産地では冬の乾燥した空気がさつまいもの水分を時間をかけて均一に蒸発させるため、硬くなりすぎずしっとりとした食感を残すことが出来るのです。薄くスライスした平干しが定番で食べやすいですが、他にも小ぶりのさつまいもをそのまま使った丸干しやスティックタイプにした角切りなどの種類もあるため、品種の違いと一緒に食べ比べるのもおすすめです。近年はさつまいもの甘みも増していることから、そのまま食べるだけでなく、揚げたりアイスなどをトッピングするなどのアレンジも増えています。ぜひオリジナルの食べ方を見つけて茨城県産の干しいもの美味しさを味わってみて下さい。

納豆

茨城県の特産品として忘れてはいけないのが“納豆”です。古くから茨城県では納豆の生産が盛んであったため、県内では各地でさまざまな納豆が作られており、特に水戸市の名産品である小粒で粘りが強い水戸納豆が有名です。また、茨城県の納豆に使われている代表的な大豆も「納豆小粒(なっとうしょうりゅう)」という小粒の品種になり、納豆の加工に適するように厳選した品種を改良して作られています。このように、茨城県の納豆は豊富な種類がある中でも小粒の大豆を使っているものが多くみられます。

納豆は今から900年以上も前の1083年、平安時代に源義家が現在の水戸市に宿泊した際に、馬の飼料であった煮豆の残りを藁で包んだものが自然発酵したことで納豆が生まれました。偶然生まれたものではあったもののその美味しさに義家が気に入り、それ以降、義家に納めるようになったことから「将軍に納めた豆」という意味で納豆という名前がついたと言われています。これがきっかけで県内では納豆の生産が盛んになっていきますが、栃木県から流れる大きな那珂川という川が県央地域まで流れており、江戸時代には台風などによって川が氾濫し水害が頻繁に起こっていました。そのため、水害が起こる前に収穫出来る小粒の早生大豆(わせだいず)が多く生産されるようになり、主流となったことから現在も茨城県では小粒の納豆が多いのです。しかし、小粒の大豆は味噌や豆腐などの加工には不向きだったため他県では使われず、納豆も中粒以上の大きさが一般的でした。明治時代に電車が開通した際に水戸駅のホームで小粒納豆を販売したところ、非常に評判だったことがきっかけでお土産としても購入する人が増え、全国に水戸の小粒納豆として知られるようになりました。茨城県では一般的なパック入りの納豆も販売していますが、昔ながらの藁で包まれた納豆や、希少な黒豆を使ったものもなども地元のスーパーで販売しており手軽に購入することが出来ます。また、ふりかけやごはんのお供、干し納豆などの加工品も扱いが多いため茨城県に訪れた際にはスーパーに立ち寄ってみるのもおもしろいですよ。

鯉/鯉料理

日本人にとって見かける機会が多く馴染み深い魚の1つである“鯉”は、今でも食材として食べる文化が残っている地域がいくつかあり、そのうちの1つが茨城県になります。県内では南東部にある霞ケ浦北浦で昭和39年から鯉の養殖が行われており、茨城県の特産品にもなっている鯉の生産量は日本で1番多いです。鯉といえば泥臭いイメージがありますが、食用として養殖され丁寧に下処理されたものは泥臭さや淡水魚・川魚特有の臭みが少なく、生食としても食べることが出来ます。ブリに似た脂の旨みを感じられ、刺身でも美味しく食べることが出来ますが、特に「洗い」と呼ばれる鯉の刺身を氷水などで締めた料理は身がプリっと引き締まりコリコリとした食感を楽しめるのが特徴です。また、煮る・焼く・揚げるといった火を通す調理方法ではふんわり柔らかい白身魚のような食感を味わえ、調理法によってまったく違った食感を楽しめるのも特徴となっています。さらにじっくり煮込むことで骨まで柔らかくなり臭みも取れることから、甘露煮やうま煮などの煮付けにすることが多く、食べ慣れていない人でもクセなく美味しく食べられる定番の調理方法として取り入れられているのです。天然の鯉でも鮮度に気をつけ、下処理や調理方法を工夫すれば美味しく食べられますが、養殖に比べると臭いや寄生虫の心配、コイ毒と呼ばれる毒を含んでいる可能性が高いため、現在食用として食べられているものは養殖の鯉を使うのが一般的になります。

古くから日本では淡水魚である鯉を食べる文化があり、鯛と並ぶ高級魚として扱われてきました。そのため、奈良時代・平安時代の貴族や戦国時代の将軍家など位の高い人の食事に高級食材として使われていましたが、その後、庶民の食事にも使われるようになったことで鯉を食べる文化が広く浸透していきました。また、「こいのぼり」や「登竜門」の語源になっているなど、縁起のよい魚としても認知されてきたため、伝統料理や郷土料理としてハレの日や祝いの席などで食べることが多いですが、養殖が主軸となっている現在では1年を通して食べることが出来るため、地域によってはから揚げなど普段のおかずとしても親しまれています。

霞ケ浦北浦を中心に県内では地魚を扱っているお店やうなぎ屋などで、洗いや煮付けといった鯉料理を食べることが出来ますが、甘露煮やしぐれ煮、鯉こく、押し寿司などお土産としても使える商品も販売されているため、伝統的に食べられてきた鯉の意外な風味や食感をぜひ一度味わってみて下さい。実は日本以外にも中国やチェコといった一部の海外では鯉を食べる習慣があり、近年は日本でも洋食に使われることが増えています。若い人や鯉に抵抗がある人でも食べやすいよう工夫された鯉のハンバーガーを提供しているお店もあるため、近い将来さまざまな形で今よりもっと身近な魚として鯉が浸透していくかもしれませんね。

あんこう鍋

野菜や果物など農業が盛んなイメージのある茨城県ですが、実は漁業も盛んであり、漁獲量日本一のイワシをはじめにアジやイカナゴなど全国シェア率が上位の魚も多いです。そんな茨城県には県内だけでなく県外からも人気の高い郷土料理があるのをご存じですか?それが“あんこう鍋”です。北茨城市の郷土料理であるあんこう鍋は、野菜と一緒に高級魚であるあんこうのさまざまな部位を煮込んだ旨みがたっぷり詰まった濃厚な鍋料理になります。あんこうの肝を混ぜて炭火で炙った焼き味噌を使って味付けをするため、香ばしい香りを感じるのも特徴です。味噌味が定番ではありますが、高級な料亭などでは醤油味の鍋を提供している場合や一部の地域ではあん肝が濁ってどぶ汁と呼ばれるさらに濃厚な鍋を提供していることもあります。茨城県で水揚げされるあんこうは黒褐色をした一般的なあんこうと違い「きあんこう」と呼ばれる黄褐色をした食用の種類になります。11月~2月が旬であることから市内では10月頃から提供を始めるお店が多く、冬の風物詩として親しまれているのです。

もともとあんこう鍋は漁師が船上で暖を取るために作ったものであり、船の上では真水が貴重であったことから水を使わず、水分の多いあんこうと野菜だけで作った濃厚な鍋があんこう鍋のルーツとなっています。この土地で獲れるあんこうは、江戸時代から水戸藩が将軍へ献上する高級食材として使われていました。あんこうは全国でも水揚げされていますが、冷たい海に生息しているものの方が身が締まって美味しいと言われているため、茨城県より北の地域で水揚げされたあんこうは質がよく評価が高いです。中でもプランクトンが豊富な常盤沖で獲れるあんこうは、プランクトンに集まった小魚をエサとして食べるため大きく育ち、肝の脂が上質であるためより美味しいと言われています。あんこうは骨と目以外の部位は全部食べることが出来るのも大きな特徴であり、「あんこうの七つ道具」と呼ばれる身・皮・胃(水袋)・肝・卵巣・エラ・ヒレの7部位は、刺身や唐揚げなど鍋以外の調理法でも食べられています。また、ぬめりが強いあんこうはまな板では捌きづらいため、釣り針に吊るした状態で回しながら捌く「吊るし切り」という伝統的な方法を取り入れているお店もあり、パフォーマンスとして見られるのも1つの特徴です。近年はグルメフェスなどであんこう鍋を気軽に食べられる機会も増えていますが、ぜひ冬の北茨城市に訪れた際には茨城県でしか食べることが出来ない上質なあんこう鍋を味わってみてはいかがですか。お土産用としてやふるさと納税でもあんこう鍋のセットが用意されているため気になる方はチェックしてみて下さい。

つけけんちん/常陸秋そば

大根・にんじん・ごぼうなどの根菜類やこんにゃく、豆腐を具材にした醤油味のけんちん汁は普段の食卓に汁物の1つとして並ぶことがありますが、茨城県では少し変わった食べ方があり、温かいけんちん汁にざるそばをつけて食べる“つけけんちん”という食べ方があります。郷土料理の1つであるつけけんちんは、茨城県の北部を中心に県内全域で食べられており、少し太めのそばを使うのが特徴です。新そばが出る秋から冬の寒い時期に主食として食べられることが多いですが、家庭・飲食店問わず年間通して食べられるほど親しまれています。

茨城県では根菜類を含む農作物が盛んに作られているため、昔からけんちん汁は家庭でよく作られる身近な料理でした。さらに、寒暖差が大きく、水はけのよい土壌などの環境がそばの栽培にも適しており、江戸時代から続くほどそばの生産も盛んです。現在も長野県などの産地と並んで関東のそばどころとして周知されており、収穫量も全国上位に位置していることから、県内では早くからそば品種のブランド化に力を入れ、昭和後期に生まれた「常陸秋そば」は味・香りの品質が高く特産品としても人気があります。昔からけんちん汁やそばを食べる習慣があった茨城県では、次第にそばのつけ汁としてけんちん汁が使われるようになり、郷土料理の1つとして馴染み深いものへと変わっていきました。けんちん汁の中にそばを入れて食べる「けんちんそば」は他の県でも食べられていますが、ざるそばのつけ汁として食べるのは茨城県だけあり、江戸時代から食べられていたとも言われています。具材のたくさん入ったけんちん汁は非常に食べ応えがあり、家庭やお店によって具材や味つけが違うため、お店を探す際には各店舗のこだわりポイントに注目するのもおすすめです。つけけんちんを食べて、歴史ある茨城県の郷土料理と品質の高い常陸秋そばの美味しさを一緒に味わってみて下さい。