埼玉 お土産にもおすすめの埼玉県の特産品

快晴が多く穏やかな気候の埼玉県では収穫量日本一である里芋をはじめ、川越いもやくわい、うどなどの伝統野菜やビーツ、ズッキーニ、バターナッツかぼちゃといったヨーロッパ野菜など個性的な野菜も多く生産し県内外の食生活を支えています。また、オリジナル品種の果物・畜産・米も豊富に生産している埼玉県は隠れた食の宝庫とも言えるでしょう。今回はそんな埼玉県の特産品や食材を使った郷土料理・グルメについて紹介していきます。

深谷ねぎ

埼玉県の野菜として全国的にも特に有名なのが“深谷ねぎ”です。県北部で生産されている深谷ねぎは柔らかく繊維のキメが細かい・白根の部分が長く美しいなどの特徴を持っていますが、1番の特徴としては糖度が高く甘いこと。その糖度は10~15度あると言われており、ミカンなどの果物と同じにもなります。馴染みのない方からすると深谷ねぎは品種の名前だと思われていることも多いですが、実は品種ではなく深谷地区で生産されているねぎの総称として呼ばれています。深谷市では昔から栽培しているねぎの品質が高く、その品質の高さが認められるようになったことで深谷ねぎという言葉が使われるようになりました。年間通して収穫されるため、収穫時期によって春ねぎ・夏ねぎ・秋冬ねぎと呼び方が変わり、特に冬に旬を迎える秋冬ねぎはみずみずしく冬の寒さでさらに甘みが増します。その甘さや加熱した時のトロっとした食感は1度食べたら他のねぎが食べられなくなるほど美味しいと評価が高いです。

深谷ねぎは深谷地区で作られる新しい作物として明治30年頃から本格的に栽培をはじめました。利根川と荒川に挟まれた、水が豊富で作物が育ちやすい肥沃な土地と耐寒性や耐病性などの改善のために改良を重ねた努力があったからこそ現在の品質の高いねぎを生産することに繋がっています。薬味や料理の引き立て役など脇役として使われることが多いねぎですが、特徴豊かな深谷ねぎは料理の主役として使われることが多いのも魅力の一つです。また、焼きねぎ味噌や塩ダレ、佃煮などのごはんのお供やねぎ油、ドレッシングといった深谷ねぎの風味を感じる加工品も多く販売されており、お土産としても非常に人気があるため、ねぎ好きの方には特におすすめです。さらに県東部では春から夏に収穫される越谷ねぎと吉川ねぎも生産しており、深谷ねぎを含めた三大ブランドねぎとして有名です。深谷ねぎとはまた違った特徴を持っているため、食べ比べてそれぞれのおいしさや違いを比べてみるのも楽しいですよ。

草加せんべい

“草加せんべい”も埼玉県を代表する特産品の1つになります。バリバリっとした硬めの食感が特徴の草加せんべいは、草加市で誕生した煎餅であり丸い形をした醤油味が定番です。しかし、バリエーションや種類が豊富で、四角形、ハート型、薄焼き、ザラメ、ごま、えび、抹茶砂糖、唐辛子、チョコなど大きさ・形・味などの違いを含めると約100種類以上の煎餅が存在しています。しかし、草加せんべいは昔から伝わる伝統的な製法を使って1つ1つ丁寧に作られているため、一人前の職人になるには10年かかると言われるほど奥が深いです。また、2021年には草加せんべいと認定するための3つの条件が定められ、地域産のうるち米を100%使用していること・押し瓦という平たい形にするための専用の器具を使用した手焼き、またはそれに準ずる押し焼の製法であることに加えて技師資格認定された10年以上の経験を持つ伝統産業技師が製造していないと草加せんべいと名乗ることが出来ないのです。

煎餅のはじまりは今から数千年前と言われており、当時から乾燥させた餅(堅餅)を保存食として焼いて食べる習慣がありました。後にこの堅餅にゴマを入れたり塩味をつけるようになったのが草加せんべいの原形と言われています。もともとは塩せんべいでしたが、江戸時代に利根川沿岸で醤油が作られるようになると煎餅にも醤油を塗るようになり、そのまま草加の名物として日光街道を行き来する人達に親しまれていきました。草加せんべいの起源には諸説あり、江戸時代、日光街道にある団子が人気の茶屋で、売れ残った団子を潰して乾燥させ醤油を塗って販売したところ人気が出て名物になったという話も親しまれています。その美味しさや香ばしさは昔からお土産としても重宝されているため、市内には老舗の煎餅屋が何軒もあり定番の味をはじめオリジナルの味を販売しているところも多いです。中には、工場見学や煎餅の手焼体験が出来るお店、草加せんべいを素材として加えたスイーツを販売しているお店などもあるため、ぜひ草加市に訪れた際には煎餅の味だけでなく一味違った角度からも草加せんべいの魅力に触れてみて下さい。

五家宝

埼玉県には草加市の草加せんべいと熊谷市の芋菓子と並んで埼玉三大銘菓と呼ばれている伝統菓子があります。それが熊谷市を中心とする県北部の銘菓である“五家宝(ごかぼう)です。もち米から作ったおこし種を水飴などで固めて棒状の芯を作り、きな粉と水飴で作った皮で巻き付けた筒状のお菓子になります。表面にはきな粉がたっぷりまぶしてあるのが定番となっていますが、商品によっては青大豆から作られる青きな粉や、抹茶、ココアがまぶされているものやアーモンドやオレンジなどを混ぜ込んで作られているものもあります。材料や製法はシンプルですが類似品は少なく、サクッとした食感ときな粉の香ばしい香りを感じられるのが特徴です。太さや長さもお店によって違い、小袋に入った自宅用から贈答用まで広く扱われており、中には末永くという意味を込めた縁起物として長さ60cmもある五家宝を切らずに1本売りしている商品もあります。

五家宝の歴史も非常に古く、江戸時代の文政の時代には五嘉棒という名前ですでに販売していたと言われています。熊谷では原料となる良質の米や大豆、大麦などが豊富に作られていたため、五嘉棒の字があてられましたが「五穀は家の宝」という意味から現在では五家宝という字に切り替わったと言われています。しかし、発祥や語源は他にも水戸藩の銘菓を改良した説や近隣県で開発された説、天明の大飢饉中に焼き米を使って開発された説など諸説がいくつかあるため実は詳しいことまでは分かっていません。ですが、伝統の製法を引き継ぎ、明治に入って電車の開通とともに全国にその名を広めたのは熊谷であるため、熊谷の銘菓として全国に認知され愛されているのです。伝統菓子ということで贈答品やお土産としての人気も高いですが、日持ちがよく、甘すぎず添加物を使っていないことから近年では健康や美容を意識している方の間でも注目されています。熟練した職人の技術が食感などに大きく影響しているため、素朴ながらも繊細で他では味わえない五家宝の奥深さを堪能してみてはいかがでしょうか。

武蔵野うどん

“武蔵野うどん”とは埼玉県西部から東京都北西部の多摩地域にかけて広がる武蔵野台地周辺で古くから食べられてきた郷土料理です。茶色っぽい見た目をした太めの手打ちうどんは、加水率が低く塩分が高めであるため非常にコシが強く、噛み応えもあるのが特徴です。つけ麺として食べる武蔵野うどんは、具材に豚肉やネギなどを使ったダシの効いた温かい醤油味の肉汁に冷たいうどんをつけて食べるのが定番ですが、きのこ汁やなす汁、鴨汁、具なしなどメニューの種類を豊富に取り揃えて味の違いを楽しめるお店も多くあります。郷土料理であるため、使用する小麦粉は武蔵野台地で生産されたものを使うのが原則とされており、ふすまと呼ばれる小麦の表皮部分を取り除かずに製粉した全粒粉を使うことが多いため、よく見ると粒感の残った茶色っぽい見た目のうどんを提供されることが多いのです。

武蔵野台地は荒川や多摩川など複数の川に囲まれた台地でしたが、台地内には大きな河川がなく水に乏しい地域だったため米が上手く育ちませんでした。その代わりとして江戸時代から小麦や大麦を栽培し発展させていったことで、小麦粉から作られるうどんが昔から郷土料理として食べられていたと言われています。日常的に食べられていたものの、正月などの親戚が集まるタイミングには米の代わりとして使われていたり、一部の地域では冠婚葬祭時にもうどんが使われるなど行事食としても使われています。もともと地元では武蔵野うどんではなく単純に手打ちうどんと呼ばれていたため、いつ頃から武蔵野うどんと呼ばれ始め定着していったのかは不明となっていますが、2000年前後に料理研究家が「武蔵野手打ちうどん」と呼んだのが有力とされています。お店ではもちろんですが、埼玉名物として武蔵野うどんや肉汁うどんという名称で販売している商品も多く自宅でも美味しいうどんが食べられるため、武蔵野うどんを食べて他のうどんにはない歯ごたえを感じてみて下さい。初めて食べる方はその力強い食感に必ず驚くことでしょう。

北本トマトカレー/北本トマト

県内には歴史ある郷土料理や馴染み深いご当地グルメがいくつも存在していますが、誕生してからまだ10年ほどしか経っていないにも関わらず数々のフェスティバルなどで優勝や上位に入賞しているご当地グルメがあります。それが“北本トマトカレー”です。県中央より少し東にある北本市で生産されている特産品のトマトを使った真っ赤な見た目が特徴のご当地カレーです。北本トマトカレーには「ライスをトマトで赤くする・ルーにトマトを使う・トッピングにトマトを使う」といった3つの定義が定められているため、真っ赤な見た目になりますが、トマトの酸味・旨みとカレーのスパイシーさの相性が非常によく爽やかで豊かな風味を感じられます。子供から大人まで年齢問わずに人気があり、見た目のインパクトと美味しさから初出店した2011から2024年の間にはご当地グルメやご当地カレーフェスで4度の優勝と常に3位以上の上位に入賞する実力を持っています。

北本市(旧・北足立郡石戸村)では大正時代からトマトの栽培を始めており、ずっしりとした重みと甘みのある北本トマト(石戸トマト)は味・形状ともに高品質であるため北本市を代表するブランド農産物として全国に認知されています。そのため、市内にはトマトを使ったジュースやスイーツ、コロッケなどの惣菜が多数販売されており、地元の人にとっては馴染み深い食材でした。2011年に北本市でB級ご当地グルメフェスが開催されるにあたって、市の特徴を活かしてトマトを使ったグルメ開発を公募で行ったことで誕生したのが北本トマトカレーになります。トマトのことを熟知している農家で実際に作られていたレシピが採用されたこともあり、フェスでは見事優勝を勝ち取り、これまでにヤマザキパンなどの大手企業とのコラボ商品も開発されてきました。レトルトカレーとしても商品化されており、発売されてからはカレー好きの方だけでなくお土産品としても人気があります。現在、市内には10軒以上のお店で定義を守り認定されたオリジナルのトマトカレーを食べることが出来、洋風・キーマ・インド風・ハワイアン風などのルーのこだわりと一緒にトッピングやライスの工夫も各店舗で見られます。北本市を訪れた際にもですが、各地で行われているフェスなどでも北本トマトカレーを見かけた際にはぜひ注目してみて下さい。今までのカレーの概念が変わるかもしれませんよ。