煎茶の特徴と蒸す時間による違い

 普段の生活の中で緑茶を飲む人は多く、特に煎茶という言葉を耳にすることは多いと思われます。ですが緑茶と煎茶は何が違うのか案外分からない人も多いのではないでしょうか。

まず、緑茶とはお茶の種類のことで原料になる茶葉の発酵具合により、緑茶と烏龍茶と紅茶に分けられています。この3つは同じ茶葉を使っており、茶葉を摘んだ瞬間から茶葉の持つ酵素により発酵が始まります。その中でも摘んですぐに加熱加工によって発酵を止めて作られているお茶が緑茶になります。

緑茶にはさらに製造方法の違いによりお茶の種類が分けられているのですが、そのうちの1つが煎茶になります。煎茶は緑茶の中では特に一般的な種類であり、日本全体の生産量としては約80%と1番多く生産されています。

煎茶の特徴

 煎茶は日本全国で作られているお茶ですが、特に生産が多いところとしては静岡、鹿児島、三重になっています。日本で1番生産量が多いため、品種や作られている場所、製造方法によって香りや味などの特徴が変わってくるのも煎茶の良さの1つです。煎茶の製造方法と主な特徴、産地の違いによる煎茶の特徴を一緒に見ていきましょう。

製造方法としては簡単に説明すると、生葉を摘んだ後、蒸気で蒸して4段階の揉む工程を行います。最後に乾燥させて完成になりますが、途中に入る蒸気で蒸すという工程の茶葉を蒸す時間の長さによって煎茶の特徴が大きく違ってきます。

中蒸し/普通煎茶
まず、1番スタンダードなものが中蒸しと呼ばれるものであり、煎茶として売られているものがだいたいこのタイプになります。蒸し時間としては30~40秒程度で、葉の形は針のような鋭い形をしており、お茶を淹れた時の水色は黄色よりの黄緑色をしています。清涼感のある香りがあり、甘みと渋みのバランスが良いです。

深蒸し/深蒸し煎茶
普通煎茶より多くの蒸気を使い60~80秒程度と倍の時間をかけて蒸して作られているのが深蒸しです。時間をかけて作られていることにより、渋みが抑えられマイルドな味わいが特徴になります。葉の形は細く柔らかく、水色は緑色をしています。普通煎茶に比べると香りは弱めになっています。

深蒸し茶は静岡県の牧之原が発祥となっています。比較的日照時間の長い静岡で作られる茶葉は葉に厚みがあることにより他の生産地で作られた茶葉より苦みが強く出てしまいました。しかし、深蒸しの製法を作り出し取り入れることで苦みが抑えられまろやかな味わいとなり、たくさんの人に愛されるお茶となっていきました。そのため、牧之原を中心に今でも静岡では深蒸しの製法を使って作られている煎茶が多いです。

特蒸し(上蒸し)
深蒸しよりさらに長い時間をかけて蒸して作られています。その時間としては、90~120秒程まで長くなり、さらにまろやかでコクを感じる味わいをしています。しかし、香りはさらに弱くなり、長い時間熱が加わることにより葉の形は細かく崩れた形になります。水色は濃い緑色をしており、見た目の色の濃さのイメージから苦そうに感じますが、苦みや渋みは感じにくいのが特徴の1つです。また、茶葉が柔らかく細かいため、お湯を入れてから短時間でお茶を淹れることが出来、淹れ方の違いによる変化が少なくおいしく飲むことが出来ることがおすすめのポイントになります。

極蒸し
特別なものとしては、煎茶の中では1番蒸す時間が長い極蒸しと呼ばれる種類があります。140~160秒程の時間をかけて2段階を踏まえて蒸すため、水色はとても濃い緑色をしていますが、渋みや苦みが少ないのが特徴です。手間がかかっていることもあり、高級品として扱われています。

浅蒸し
浅蒸しの蒸し時間は10~30秒程度と煎茶の中で1番蒸す時間が短いです。そのため、葉の形は細くとがっており、新鮮で清涼感のある香りが強いのが特徴です。深蒸しと反対に水色は黄色に近い明るい黄緑をしており、渋みがありながらもさっぱりした味わいをしています。

産地別の煎茶の特徴

 産地として有名な煎茶としては静岡の利根茶・京都の宇治茶・埼玉の狭山茶があります。この3つは日本三大銘茶としても知られているお茶です。

静岡:利根茶
先ほどご紹介した、浅蒸しとしても有名な利根茶は静岡県の川根本町周辺を中心に作られています。黄金色のような水色と浅蒸しに出やすい渋みやクセが少なく爽やかな香りが特徴的です。同時に甘みや苦みも感じるバランスの良い味わいになっています。

京都:宇治茶
古くからお茶の文化が根強く抹茶でも有名な宇治ですが、宇治で作られる煎茶は濃いうま味とほどよい渋みがあり同時に甘みも感じられます。全体的にマイルドで香りが良いのも特徴の1つであり、香りを重視したい場合は宇治茶を選ぶのがおすすめです。

埼玉:狭山茶
埼玉県の武蔵野台地で主に生産されている狭山茶は寒冷な地域で生産されていることから、年に2回しか収穫を行っておらず生産量の少ない種類です。寒冷地で育った狭山茶は肉厚な茶葉をしており、伝統的な「狭山火入」と呼ばれる強めの火入れをする製法により香ばしい香りとコク、甘みを感じる濃厚な味わいを持ち合わせているのが特徴です。

他にも、お茶の生産量が高い鹿児島の知覧茶や三重の伊勢茶、福岡の八女茶など煎茶には全国的に特徴のある美味しい煎茶が多く作られています。香り重視なのか味わい重視なのかなど、自分の好みや気分に合わせて煎茶を選ぶのも品種の多さが強みとなっています。好きな煎茶を選んで毎日の生活の一息つきたいタイミングに取り入れてみて下さい。