香川県は日本で1番面積の小さい県としても有名ですが、瀬戸大橋や日本のウユニ塩湖と呼ばれる父母ヶ浜、小豆島をはじめとする数多くの離島など自然を身近に感じられる観光スポットが多くあります。また、瀬戸内海に面しているためクロダイやハマチなど鮮度の高い海産物が漁獲されていますが、自然災害が少なく温暖な気候でもあることから小麦や野菜、果物といった農産物の生産も盛んです。そんな恵まれた環境だからこそ他県よりも風土や環境の特徴をしっかりと感じられる香川県の特産物を今回は紹介していきたいと思います。
讃岐うどん
香川県を代表する“讃岐うどん”は県だけでなく日本を代表するうどんとしても広く知られており、秋田県の「稲庭うどん」、群馬県の「水沢うどん」と合わせて日本三大うどんとしても認知されています。讃岐うどんの大きな特徴はコシが強くモチっとした食感を楽しめる麺とイリコを使った深みのある出汁です。讃岐うどんは「県内で製造されたもの、加水量40%以上、加塩量3%以上、熟成時間2時間以上、15分以内で茹で上がるもの」この5つの条件を満たしていないと讃岐うどんと名乗ることが出来ませんが、規定である水分量の高さや塩水が使われていること、さらには足で踏んで生地を作る「足踏み」という製法を取り入れているからこそうどんに粘りが生まれ、特有のコシの強さやモチモチとした弾力を作り出しています。一般的なうどんは鰹節などから取った出汁に醤油やみりんといった調味料を加えたつゆを使うことが多いのに対して、讃岐うどんは伊吹島の特産物でもあるイリコ(煮干し)をメインに昆布や醤油を加えて作ることが多く、関西を中心につゆではなく「出汁/だし」と呼ばれています。かたくちいわしを加工したイリコから抽出される出汁は旨みが強くコクや甘みも感じられるため、鰹節では味わえない独特の風味や深みが味わえるのも讃岐うどんならではとなっています。また、麺は並麺や太麺を中心に細麺や極太麺とお店ごとに使われている太さが違い、食べ方もかけ・ざる・ぶっかけ・釜揚げなどバリエーションが多いことも讃岐うどんの特徴です。この他にもうどん県と言われるだけあって、冷水で締めたうどんに醤油をかけて食べる生じょうゆうどんや地元の野菜をふんだんに使った郷土料理のしっぽくうどん、打ったうどんを茹でずに味噌仕立てのつゆにそのまま入れて一緒に煮込む打ち込みうどんなど、他県では見られない食べ方も定番の食べ方として親しまれています。
香川県の中でも特に讃岐地方は昔から晴天が多く温暖な気候の地域であったため、奈良時代から稲を中心とした作物の生産が盛んに行われてきました。しかし、降雨量が少なく干ばつによる被害がたびたび発生してしまったため、なかなか米の生産が安定せず、戦国時代から江戸時代にかけて稲作の二毛作として取り入れたのが小麦でした。栽培に適していた環境から小麦の生産が盛んになり、次第にうどんを作って食に取り入れることが増えていったため、庶民の間でも少しずつ浸透していったのです。さらに、小麦は出汁に使われる醤油を造るのに必要な原料であったことやイリコが手に入る環境だったこと、香川県がうどんに欠かせない塩の産地だったことなども重なり、小麦を美味しく食べる方法として県全域にうどんが広まっていきました。当初は、現在のような澄んだ出汁ではなく味噌を使った煮込みうどんが主流でしたが、醤油が全国に広まりさまざまな料理の調味料として取り入れられるようになったことで少しずつ食べ方も変化していったそうです。こうした経緯から現在でも、地域や好みによってしっぽくうどんや打ち込みうどんのようにうどんを煮込んだ食べ方が根付いています。古くからうどんが身近にあり、主食だけでなく今や飲んだ後の〆にも食べられるほどうどんが愛されている香川県では、1年の幸せを願って食べる「年明けうどん」や新築時に新しいお風呂でうどんを食べる「初風呂うどん食え」、さらにはうどんが無料で食べられる「うどんの日」など、うどんに関係する風習やイベントも多数存在しています。バリエーションの多さや老舗の多さから全国のうどんファンがうどんを食べるためだけに香川県を訪れる人も多く、カフェ巡りならぬうどん巡りも人気の観光の仕方です。ぜひ香川県に訪れた際にはさまざまなうどんを食べ比べ、自分好みのうどんを探す旅に出かけてみてはいかがでしょうか。
醤油・いかなごしょうゆ
“醤油”は私たちが食べている和食に欠かせない調味料であり、ジャンル問わずさまざまな料理に使うことが出来る万能さを持っています。日本の各地で醤油は作られており、その地域の風土や歴史の影響を受けているもの多いため、ひとえに醤油といっても風味や特徴、製造方法の違う個性豊かな醤油が数えきれないほど作られています。そのなかでも大手メーカーが集まる千葉県や淡口醤油が生まれた地である兵庫県、溜り醤油と白醤油が作られた愛知県が産地として有名ですが、その3県と並んで醤油の主要産地として挙げられるのが香川県の小豆島です。小さな島ではあるものの島内には20軒ほどの醤油製造所が存在しており、木桶を使った伝統的な製法による「木桶仕込醤油」が作られています。日本全体で見た生産量や出荷量はそこまで多くはありませんが、木桶を使う伝統的な製法だけに注目すると国内最大の産地であり圧倒的なシェア率を誇っています。島内にある1000本を超える木桶を使って作られる小豆島の醤油は、あえて人為的に温度調整は行わず約半年から1年以上もの間、自然の力を借りてじっくり時間をかけながら育てていくからこそ、他の醤油では味わえない芳醇な香りとまろやかでコクの深い味わいを感じることが出来るのです。
瀬戸内海に面していた香川県では古くから塩造りが盛んに行われており、今から400年以上も前に塩の二次利用をするために始めたのが醤油造りになります。昔は船が輸送手段の中心であったため、小豆島は島外から醤油の原料となる小麦や大豆を入手しやすかったことに加えて、香川県の温暖な気候や降雨量の少なさが醤油を醸造するのに適していたため醤油造りも盛んに行われるようになっていきました。島内では主に濃口醤油と淡口醤油、材料や時間を濃口醤油の2倍かけて作る再仕込醤油の3種類が造られており、基本的にはすべて酵母菌や乳酸菌の力だけを使った本醸造の醤油が造られています。長期間発酵させて作る醤油にとって何世紀にも渡って使われている木桶には酵母菌や乳酸菌が住み着いているため、木桶を使うことでしか作り出せないコクや風味の深さを感じられるのです。しかし、たとえ同じ仕込み方や製造方法を行っていたとしても蔵や造り手が違えば環境が変わるため、ひとつとして同じ味わいの醤油は存在しておらず、その蔵の美味しさや特徴に変化するのが醤油のおもしろく奥深いところでもあります。
木桶仕込醤油が有名な香川県ですが、県内ではもう一つ有名な醤油の種類があります。それが“いかなご醤油”です。醤油と言いつつも小麦や大豆から作られる一般的な醤油と違い、魚介類を塩漬けにして発酵させる魚醤と呼ばれる調味料の一種で、香川県で春先に獲れるイカナゴを主原料にして作られています。イカナゴを塩漬けにして作るため塩分濃度が高いですが、旨みも強いためあまり塩味を強く感じないのが特徴です。また、淡い琥珀色をしており、豆腐や刺身、煮物など醤油と同じように使えることから、仕上がった際には素材本来の彩りを上手く活かすことが出来ます。しかし、熟成期間は1年半~3年、約10kgのイカナゴから4kgの醤油しか作ることが出来ず、時間もコストもかかってしまうため職人が減り、現在はなかなか手に入りにくい調味料でもあります。実は日本にいくつかある魚醤の中でも最古の魚醤がいかなご醤油と言われており、約2,000年以上も昔の弥生時代から作られている歴史ある醤(ひしお)でもあるのです。じっくり熟成させたものはまろやかな味わいを感じられることからうどんのだしに使うのも人気があり、近年は技術の向上などにより購入出来る機会が増えてきています。うどんの県として知られている香川県ですが、実際には醤油や魚醤を作ってきた歴史の方が遥かに長く、その歴史を今でも街並みから感じ取ることが出来ます。特に小豆島には趣のある醤油蔵が立ち並び、伝統的な木桶仕込みの様子が見学出来る蔵や醤油を使った加工品・アイスクリームなどを販売している蔵もあるため、醤油の歴史に触れてみるのもおすすめです。
オリーブ
食用油の中でもオレイン酸やポリフェノール、ビタミンEなどの栄養素が豊富に含まれているオリーブオイルは、生活習慣病の予防や腸内環境の改善など体にとってさまざまな良い効果を期待出来ることから、普段の食事に取り入れている人も多い油です。原料となる“オリーブ”はイタリアやスペインといった地中海沿岸の国を中心にオーストラリア、チリ、ニュージーランドなど温暖な気候である国々が主要な栽培地となっていますが、日本国内でも香川県の小豆島でオリーブを栽培しており、その生産量は国内最大を誇っています。香川県の特産物であると同時に県花や県木にも指定されているオリーブはモクセイ科オリーブ属の常緑樹で、木に出来る果実は苦くて生では食べられないため基本的には塩漬けや酢漬け、実・葉を搾ってオリーブオイルや化粧品にするなど加工して使われることが一般的です。近年、国内でのオリーブの生産は年々増加しているものの他国に比べると少なく、国産のオリーブは希少価値が高いですが、栽培するのに適した環境と生産者の愛情をたくさん受けて育った小豆島のオリーブは特に評価が高く、小豆島産のオリーブを100%使用した「エキストラバージンオリーブオイル」は、その品質の高さから国内だけでなく国外からも評価されています。また、県内では採油後の果実や葉などを廃棄せずに余すことなく有効活用しており、その技術は世界有数とも言われています。基本的には油をはじめとする食品に加工することが多いですが、香川県ではオリーブの果実を飼料に混ぜて育成させたオリーブ牛やオリーブ豚、オリーブ地鶏、オリーブの葉を餌に混ぜて養殖するオリーブマダイ、オリーブハマチ、オリーブサーモンなどさっぱりしながらもオリーブに含まれるオレイン酸の力によって旨みや甘みを強く感じる畜産物・水産物の生産にも力を入れているのです。
日本に初めてオリーブの樹が渡って来たのは江戸時代末期、フランスから輸入した苗木を横須賀に植えたのが最初と言われています。この頃、ヨーロッパを訪れた日本人は医薬品や美容品、料理、さらには魚介類の保存などオリーブオイルが日常的に使われている文化に触れ、国内でも漁獲された魚をオリーブオイルに漬けて輸出しようと農商務省の指定を受け、明治後期に三重・鹿児島・香川の3県で実験的にオリーブの栽培を始めました。しかし、温暖で雨が少ない環境を好むオリーブは生産するのが難しく、三重県と鹿児島県の2県ではほとんどの樹が枯れてしまいましたが、地中海などの原産地の気候に近かった香川県の小豆島だけが栽培に成功し、日本の「オリーブ栽培発祥の地」と呼ばれるようになったのです。現在は小豆島だけでなく、岡山県や静岡県、九州なども主要産地となっていますが、栽培を始めてから研究や技術に磨きを重ねた小豆島は今も変わらず、日本最大の生産量を作り出す産地として認知されています。体にも良いオリーブオイルは年々需要が増えており、スーパーやコンビニなどでも手軽に購入出来るほど身近な油となっていますが、日本と世界では定められているオリーブオイルの基準が異なっていることから質の低い種類が出回っていることも多く、どれを購入したらよいか分からないという声もよく耳にします。そんな時こそ小豆島のオリーブオイルを選択してみて欲しいです。精製油や添加物を使わず収穫したばかりの果実を使って作られるオリーブオイルは、特有の苦味や辛みがありながらも旨みや爽やかな香りを楽しむことが出来るためリピート率も高く、その品質の高さを実感することが出来るでしょう。手軽に近所のスーパーなどで購入することは難しいですが、県内をはじめネットやアンテナショップ、サービスエリア、物産展などでも購入出来るため、質が高く美味しいオリーブオイルを探している方は一度小豆島のオリーブオイルを試してみて下さい。他にも、フレーバー付きのオリーブオイルや具材の入った食べるオリーブオイル、ドレッシング、塩漬け、チョコレート、ジャム、さらには石鹸や化粧水などさまざまな加工品も販売しているため小豆島産のオリーブをさまざまな角度から楽しんでみてはいかがでしょうか。
骨付鳥
うどんのイメージが強い香川県ですが、県内にはうどんにも負けないほど県民に愛されているソウルフードがあります。それが“骨付鳥(ほねつきどり)”です。骨付鳥とはその名の通り、骨がついた鶏のもも肉をオーブン釜などで焼き上げたご当地グルメであり、香ばしい皮のパリッとした食感と肉汁たっぷりのふっくらとしたもも肉を堪能することが出来ます。味つけはニンニクや塩コショウが効いた特製のスパイスが主流となっているため、ごはんにはもちろんのこと冷えたビールと合わせれば最高の組み合わせであること間違いないでしょう。たまに骨付き鳥と記載されていることがありますが、正式には「骨付鳥」と記載するのが正しいと言われています。
香川県の中西部に位置する丸亀市が発祥地であり、現在は市内だけでなく横浜や大阪などにも店舗を持つ「一鶴」という居酒屋の創業者が考案しました。昭和中期頃に誕生した骨付鳥は、ハリウッド映画に登場した骨付きのもも肉からヒントを得て作られたため、その見た目はローストチキンやフライドチキンにも似ており、出来立てでアツアツの鶏肉を豪快にかぶりついて食べるのが醍醐味でもあります。発祥の一鶴が他県にも店舗を出したことで骨付鳥の存在が広まって注目を浴び、次第に香川県のご当地グルメとしてだけでなく鶏肉を扱う居酒屋のメニューとして取り入れる店舗も増えていきました。骨付鳥は大きく分けると種類が2種類あり「おやどり」と「ひなどり(わかどり)」から選べるのも特徴です。おやどりは産卵を経験した鶏(親鳥)の肉を使っており、余分な脂がなく身がしまっているためしっかりとした歯ごたえと噛むほどに染み出る旨みを味わえるのが特徴です。反対にひなどり(わかどり)は、生後数か月の若い鶏を使っていることからふっくらとした肉質であり、柔らかくホロっとほぐれるような食感が特徴です。柔らかさや食べやすさから女性や初めて食べる人にはひなどりの方が人気が高く、噛み応えが強いのが好きな人や食通の人からはおやどりの人気が高くなっています。
特徴が異なる2種類の鶏から選べるのも骨付鳥ならではの良さになりますが、サイドメニューが充実している店舗が多いことも1つの特徴となっています。骨付鳥は丁寧に焼き上げていることから出来上がるまでに20~30分かかってしまうことが多く、部位も限定されてしまうため、とり皮酢やモツ煮込み、から揚げ、とりめしなど部位や調理法の違う鶏料理が充実しており、焼きあがるまでのサイドメニューとして提供していることが多いのです。また、骨付鳥にはざく切りにしたキャベツが付いてくるのが定番で、皿に残ったタレや旨みタップリの鶏油をつけて食べるのも美味しいですが、何もつけないことで箸休めの役割も果たしてくれます。さらに、骨付鳥があるお店では必ずといっていいほどメニューにあるおにぎりを注文してタレや鶏油をたっぷり染み込ませて食べるのもおすすめです。どちらもシンプルだからこそ骨付鳥の美味しさや魅力を引き立たせてくれるため、食べたことがない人はぜひ試してほしい食べ方になります。香川県に訪れた際にはうどんに注目しがちですが、ローストチキンやフライドチキン、から揚げとも違う骨付鳥の旨みや食感を思う存分に楽しんでもらいたいです。お店によってはおやどりとひなどりをハーフで頼めるところもあるため、食べ比べてみるのもおすすめですよ。
おいり
香川県の西部地方では古くから“おいり”という伝統菓子が食べられています。直径1cmほどの小さな球状をしているおいりは米菓子であるあられの一種であり、ピンクや白、水色、黄緑、オレンジ、黄色などパステル色が可愛らしいカラフルな見た目をしているのが特徴です。ひなあられにも似ていますが中は空洞であるため、殻のようなカリっとした食感と口の中でシュワっとすぐに溶けてしまう軽い口当たりも特徴となっています。原料はもち米・水あめ・砂糖と非常にシンプルであり、もち米から作った餅を天日干しで乾燥させ、さいの目状に切って火で煎ることで丸く膨れ上がります。仕上げに回転機にかけながらシロップを絡めて色と味をつけていくため、優しく上品な甘さと華やかな色合い、特有の食感が生まれているのです。餅を作るところから始めるおいり作りは、出来上がるまでに1週間~2週間近くの時間がかかっており、職人が手間ひまかけて作っているからこそ現在まで長く愛され続けています。
おいりの誕生は今から400年以上も前の安土桃山時代まで遡り、当時の讃岐国領主の姫君が嫁入りする際のお祝いとして領内の農家の人が5色のあられを献上したことがはじまりといわれています。当時はあられのことを「お煎りもの」と呼んでいましたが、おめでたいお嫁入りと掛け合わせて「おいり」と呼ばれるようになりました。また、丸い形には心を丸くしてまめまめしく働くという意味合いが込められていると言われています。こういった歴史や経緯から生まれたこともあり、県内の西部地方では古くから結婚時の嫁入り道具として用いられ、引き出物や挨拶まわりなどには欠かせないお菓子となっているのです。さいの目状に切った餅は火で煎ることで角が取れて丸くなることや結婚時の挨拶として近所におすそ分けすることなどにより「幸せのお菓子」とも呼ばれています。もともとは5色だったおいりですが、近年は幸せの虹をイメージした7色で作られているものもあり、よりカラフルで華やかなイメージが強くなっています。現在は結婚以外にも出産や新築祝いなどのお祝い菓子としても幅広く重宝されているほか、可愛らしい見た目からソフトクリームやケーキなどのトッピングとしても使われ、SNS映えすると若い世代からの注目度も非常に高いです。おいりは古くから縁起が良いお菓子であり、作る過程や見た目からも幸せを連想しやすいため、自分用や大切な人へのお土産として購入して幸せのおすそ分けをしてみてはいかがでしょうか。