醸造酢の1種であり、果実を使った醸造酢になります。りんごやブドウ、柿、ザクロ、いちごなど様々な果実を使用した果実酢は複数ありますが、JAS法の中で明確に定義される果実酢はりんご酢とぶどう酢の2種類しかありません。今回は果実酢の中でもJAS法に定義されるりんご酢とぶどう酢を解説していきます。
果実酢とは
果実酢はJAS規格(日本農林規格)により定めがあり、醸造酢の中で、原材料として1種または2種以上の果実を使用しており、その使用総量が醸造酢1リットルにつき果実の搾汁が300g以上のものを果実酢と呼ぶことが出来ます醸造酢に果実の搾り汁が入っていることが条件になります。
果実酢と呼ばれるものは果実を使って発酵・熟成させ醸造酢にしたものを指し、JAS法ではそのように定義されています。一般的に出来上がっている醸造酢に果実と砂糖を漬け込んだものや果汁を入れて加工したものを果実酢と呼ぶこともありますが、そちらについてはJAS法では定義されていません。一方でJAS法に則っていない限り果実酢を名乗ることができない・・・ということではありませんので、そのようなもの製造、販売されていても何ら違反ではありません。ここでは前者の果実を使って作られた醸造酢について紹介していきます。この果実酢の中にはさらにりんご酢とぶどう酢に種類が分かれていくため、その特徴をさらに細かく見ていきましょう。
穀物酢(米酢、黒米酢、大麦黒酢)との違い
りんご酢、ぶどう酢は先に説明した通り、醸造酢にカテゴリされており、穀物酢と大きなグループは同じです。穀物酢はJAS法では穀物、果実、野菜、その他の農作物(さとうきび糖)、はちみつ、アルコールを原料としたものを酢酸発酵させた調味料で、氷酢酸、酢酸を使用していないものと定義されています。
穀物酢はその名の通り穀物を使用したお酢であり、米酢は1Lあたり40g以上の米を使用し、黒米酢は米の使用量が180g以上、大麦黒酢は大麦の使用量が1Lあたり180gとなっています。それに対して果実酢はりんご酢はりんご果汁が1Lにつき300g以上、ぶどう酢はぶどう果汁が300g以上使用されたものと定義されています。
穀物酢は料理に使用することが多く、お酢煮込みなど火を通す料理でも使用されます。果実酢はサラダやマリネなど料理に使用されるシーンもありますが、基本は生食でりんごやぶどうの香りと酸味を活かす場合など料理だとかなり限定的な使用用途になります。一方で、果実酢は水や炭酸などで割ってドリンクとして飲まれるシーンで使用されることが多く、特に昨今の健康ブームもあり飲むお酢の商品数も年々増加傾向にあります。
また、近年韓国から輸入され人気となって美酢(ミチョ)ですが2009年韓国で販売されると焼酎の割材として若年層に人気となったそうです。日本に輸入をされると、当時お酢を飲料として愛用するメインターゲットは40-50代の健康志向を持つ層だったそうですが、韓国で若年層に受け入れられていたこと、健康だけでなくシンプルに美味しいということから日本でも若年層を中心にブームになったそうです。元々果実酢は日本にも存在していましたが、美酢が輸入されたことから、日本でも果実酢の多様性が広がりその人気が再注目されているようです。
りんご酢
果実酢の1つとして、りんごを主原料として作られているお酢がりんご酢です。果実酢の中で、りんごの搾汁が果実酢1リットルにつき300g以上のものがりんご酢と呼ぶことが出来ます。
りんごの甘みや酸味、香りを楽しむことが出来、穀物酢に比べるとフルーティなお酢です。お酢特有のむせるような酸味ではありませんが、りんごの酸味が加わることで酸っぱく感じやすくなります。料理に使うより薄めてドリンクにしたり、ドレッシングなどに使うことでよりりんご酢の良さを直接感じることが出来ます。
また、果実酢でも苦手と言う人には、りんご100%で作られている純りんご酢と言うものもあります。よりソフトで口にしやすいお酢になっているためおすすめです。
たまに、表面のラベルなどに果実酢と記載されていても、甘味料が入ってる場合、ジュースと同じ扱いになる飲用酢になります。そのため、醸造された果実酢を選ぶ場合は裏の原材料ラベルなどをよく見て購入するのが良いです。飲用酢の方が飲みやすく作られているため、摂り入れやすいですが、より酢の効果を得たい場合は醸造酢の方を選ぶ方がおすすめです。
りんご酢はりんごから作られていることから、直接飲むことがおすすめですが、やはり原液で飲むには酸が強いため飲みにくく、水やお湯で割って飲むのがお手軽ですが、炭酸や牛乳、野菜ジュースで割るとさらに美味しく飲むことが出来ます。また、はちみつを入れることでより飲みやすくなるため、毎日お酢を摂り入れる際に黒酢が苦手な人はぜひりんご酢を試してみて下さい。
ぶどう酢
フランス料理やイタリアン料理に使われることが多い“ワインビネガー”や“バルサミコ酢”。これはどちらもぶどうを主原料にして作られているぶどう酢になります。ぶどう酢にも規定があり、果実酢の中で、ぶどうの搾汁が果実酢1リットルにつき300g以上のものをぶどう酢と呼ぶことが出来ます。
ぶどうの果汁にワイン酵母を混ぜ発酵・熟成させるとワインになります。そこからさらに手を加えてぶどう酢(ワインビネガー)が作られています。と言うのも、もともと古くなって酸味が出てしまったワインを調味料に使ったことが始まりと言われているフランス発祥のお酢です。
ぶどう酢もぶどうの果汁から出来ているため、甘みと酸味がありフルーティーな香りが特徴になります。
ワインビネガーにはワインに白と赤があるように、白ワインビネガーと赤ワインビネガーがあります。白ワインビネガーは白ぶどうから作られているため、苦みや渋みが少ないあっさりとしたお酢になっています。クセも少なく淡い色合いのため、ドレッシングやカルパッチョ、魚料理に使うのがおすすめです。
赤ワインビネガーは赤ぶどうから作られており、皮も含めて作られていることから渋みや苦み、酸味がありながらも、コクや深みが感じられるお酢になっています。存在感があるため、肉料理や煮込み料理に使うのが最適です。どちらも料理に使うのが取り入れやすいですが、実は飲むことも出来るため、水や炭酸水で割って飲むのもおすすめです。
ぶどう酢とバルサミコ酢の違い
ワインビネガーと間違えやすいバルサミコ酢ですが、バルサミコ酢もぶどう酢の一種になります。明確な違いとしては作り方と熟成期間、発祥の地が違ってきます。発祥としてはイタリアのモデナ地区中心になります。このモデナ地区とレッジョ地区で作られたものだけが「バルサミコ酢」と呼ぶことが出来るのです。
作り方としては原材料にぶどうを使うのは同じですが、果汁を搾り、煮詰めて樽に入れ、酵母などは使わず長い期間熟成させることで出来上がります。ワインビネガーが目安として約3か月の熟成期間に対して、バルサミコ酢は3~5年、長いものだと25~100年ととても長い期間熟成させています。長くなればなるだけコクやうま味が増しますがその分、価格も高くなります。バルサミコ酢自体、他のお酢より高価ですが、日本ではバルサミコ酢に甘味料などが加わり使いやすく加工されているバルサミコ酢風というものが多く売られており、価格も安価で使いやすいため初めて使う人や普段使いにはおすすめです。
バルサミコ酢は長期間熟成させていることから、色が濃く香りが芳醇で深みがあります。酸味もまろやかで甘みも感じられるため、ドレッシングや肉料理などのソースとして使うのがおすすめです。また、火を通すことで甘みが増すことから、炒め料理や煮込み料理に使うことで違った味わいが楽しめます。
その他の果実酢(フルーツビネガー)
りんご酢やぶどう酢の他にも年々果実酢の種類が増え、販売しているメーカーも増えています。
りんご酢やぶどう酢と同じように果実を発酵させて作られているお酢と、果実酢に果汁を加えて作られているお酢があります。どちらにしても、より果物の味わいを感じられる果実酢が多く、ものによってはジュースに近い感覚で飲めるお酢もあります。好きな果実でつくられたお酢を選ぶことでさらに気軽にお酢を摂り入れることが出来ます。また、多種類あることから果実酢を普段の生活に摂り入れたい人におすすめです。
醸造酢としての果実酢ではありませんが、好きな果物をお酢と砂糖と一緒に漬けることで出来るフルーツビネガーもあります。こちらは果実を発酵させて作っているわけではないため、果実酢としての効果は下がりますが、自宅で簡単に作ることが出来ます。長期保存には向いていないため注意が必要になりますが、漬け込んだ果肉をそのまま楽しんだり、果実酢として売られていない果実を使うことで、オリジナル感溢れる一味違ったお酢を味わうことが出来ます。また、アレンジも豊富ですので、ぜひ一度試してもらいたいです。