番茶と地方ごとの呼び方の違い

 お茶の種類の中には“番茶”と呼ばれる種類があります。しかし、番茶がいまいち何か分からない人も多いのではないでしょうか。

番茶とは緑茶の1種類であり、基本的には旬を過ぎた煎茶など主流となるものを省いた緑茶のことを指します。また、季節以外にも品質や地方によって呼び方が変わることが多く、番茶の概念は意外と広ため定めるのが難しいのです。そんな番茶の特徴や地域によって異なる呼び方について紹介していきます。

番茶の名前の由来と特徴

 先ほども少し触れましたが、番茶は主流となる煎茶以外のものを指すことが多いです。主流となる煎茶には新芽などの柔らかい葉を使って作られることが多いですが、成長が進んで硬くなってしまった葉や収穫をした後に遅れて伸びた葉、仕上げ加工の際に分けられた大きい葉など“番外のお茶”を番茶と呼んでいます。また他にも、初摘みのお茶を一番茶、その後に収穫されるお茶を順番に二番茶、三番茶と呼びますが、それに該当しない番外のお茶のことを番茶と呼んだり、昔は収穫の時期が遅くなるほど品質が落ちてしまうお茶のことを”晩茶”と呼んでいたことが年月とともに番茶に変わっていったなど、番茶と呼ばれる起源はいくつかあります。

いずれにしても、品質としては高くない茶葉を使って作られているため、煎茶に比べると甘みやうま味は少なくなってしまいます。しかし番茶には、抗菌・殺菌作用のあるカテキンが多く含まれると同時に、過剰摂取を避けたいカフェインの量や苦みが少ないのが特徴です。また、ポリサッカライドと呼ばれる血糖値の上昇を抑えてくれる成分が豊富に含まれているため、体にも嬉しい効果が期待出来ます。価格も低価格で買えることから毎日お茶を飲む習慣がある人には手に取りやすく、コストパフォーマンが高いのも番茶の良いところになります。

地方による番茶の呼び方や特徴の違い

 番茶の面白い点としてあげられるのが、地方によって呼び方が変わるということです。基本的に使われる茶葉は共通していることが多いのですが、収穫する時期の違いや茶葉を焙煎しているもの、後発酵や熟成させて作られたものなど地方により加工方法が違うことが呼び方の違いにも影響しているようです。また加工よっては茶葉が緑色のものだけではなく茶色の番茶も存在します。

上級番茶
煎茶を作る工程の中で行われる茶葉の仕分けの際に出る、大きくて硬い葉を使って作られた上級の番茶になります。

秋冬番茶
4~5月に収穫が始まる一番茶に対して、9月下旬頃に摘む三番茶をあえて収穫せずに成長させ、秋~初冬にかけて収穫した茶葉で作られたお茶が秋冬番茶です。カテキンが豊富なのも特徴の1つになります。

親子番茶
一番茶と二番茶を収穫する間の期間に収穫した茶葉で作られたお茶です。一番茶を摘んだ後に新しく生えてきた芽と一番茶として摘まれずに残り育ってしまった大きな芽が混ざっており、それぞれのいいところが合わさったバランスの良いお茶です。

三年番茶
摘み取った茶葉や茎を日干しさせ、3年熟成させて作られているのが三年番茶です。熟成させることによりカフェインやタンニンが少なくなり、年齢問わず飲める体にも優しいお茶になります。最終的に焙煎させて作っているため、香ばしい香りとまろやかな甘みを感じます。

京番茶
茶葉を焙煎して作られたスモーキーな香りが特徴の京都で作られている番茶です。ほうじ番茶やいり番茶とも呼ばれ、ほうじ茶に似た香ばしくすっきりした味わいを感じられます。

美作番茶
岡山で作られている伝統的な番茶です。日刊番茶とも呼ばれ、茶葉を煮た後、天日干しをして乾燥させていきます。茶葉の形がそのまま残り、香りが高いのが特徴です。甘みを感じる香りと味わいを楽しむことが出来ます。

土佐番茶
蒸した茶葉を揉まずに乾燥させ、その後焙煎して作られているのが土佐番茶です。渋みが少ないため飲みやすく、香ばしい香りと甘みを感じられ、どんな料理にも合うお茶となっています。

阿波晩茶
阿波番茶は乳酸菌によって後発酵をさせて作っています。徳島の山間部で作られており、苦みや渋みが少なく、乳酸菌の持つさわやかな香りが感じられます。後発酵をさせて作る似たようなお茶として高知の碁石茶や愛媛の石鎚黒茶が挙げられます。

バタバタ茶
富山の伝統的な番茶であり、専用の茶筅に塩をつけて抹茶のように泡立てて飲むお茶です。バタバタという名前には慌ただしいという意味があり、阿波番茶と同じく後発酵茶の1つになります。また、新潟の糸魚川にも伝統的なお茶としてバタバタ茶があります。同じ名前ですが番茶ではなく健康茶になり、茶葉以外に大豆や漢方にも使われるカワラケツメイ、麦茶などが入っているさわやかなお茶です。同じ名前の伝統的なお茶ですが全く違う種類のため飲み比べをしてみるのもおもしろいかもしれません。

ぶくぶく茶
沖縄にもバタバタ茶に似た泡立てて飲む伝統的なお茶があります。ぶくぶく茶と呼ばれ、番茶やさんぴん茶と炒った米を煮だした湯を茶筅で泡立てて飲みます。バタバタ茶よりさらに泡立ち具合が強くふわふわなのが特徴です。飲むというより泡を食べるという感覚のお茶で、伝統的なものだと少量の赤飯と茶湯の上に泡を乗せて食べます。

ぼてぼて茶
お茶というよりは島根の郷土料理となりますが、バタバタ茶と同じように番茶を泡立て、煮豆やおこわ、きざんだ漬物などを少しずつ入れ、箸を使わずに食べるという料理があります。茶筅を使って泡立てる音からぼてぼて茶と名前がついたと言われており、間食や非常食として食べられていた歴史があります。

このようにひとえに番茶といっても、地方によっては違いも多く、とても広い扱いのお茶になります。基本的には価格が低めの手に取りやすい緑茶ですので、毎日お茶を飲みたい場合などには取り入れやすい種類です。普段のお茶として飲みつつ、旅行など地方に行った際にはそこでしか味わえない番茶を味わってみるのも良い思い出になるかもしれません。ぜひ、地方特有の番茶も味わってみて下さい。