九州の北部に位置する福岡県は電車やバス、モノレールなどの公共機関が充実しており、福岡空港から地下鉄に乗れば博多駅まで5分で行けるなど、アクセスや立地の良さから国内旅行の行き先としても人気の高い県になります。さらに夜になると突然現れる屋台は福岡県ならではの文化であり、屋台をはじめとする美味しい食べ物を求めて訪れる人も多いです。今回はそんな食べ物が美味しい福岡県を代表するご当地グルメについて紹介していきたいと思います。
とんこつラーメン
福岡県のグルメと聞いてまず思い浮かぶのは“とんこつラーメン”ではないでしょうか。ご当地グルメの代表格であるとんこつラーメンは、ストレートの細麺と豚骨の旨みやコクをたっぷり含んだ白濁のスープが特徴で、男性からの人気はもちろん、女性からも絶大な人気があります。県内にはさまざまなとんこつラーメンが存在していますが、大きく分けると「博多ラーメン・久留米ラーメン・長浜ラーメン」の3つに分かれ、福岡を代表する三大とんこつラーメンとしても知られています。中でも性別問わず広い世代に親しまれているのが博多ラーメンで、一般的に福岡のとんこつラーメンとして紹介されているものは博多ラーメンであることが多いです。豚骨ラーメンは製法や煮込む時間、ベースとなる味が醤油か塩かなどによって濃さや風味が異なるため、日本には多種多様の豚骨ラーメンが存在していますが、種類によっては豚骨の独特なにおいが強く、人によっては臭いと感じることも多いです。また、濃度が高いとドロッとしたスープになり、こってりした口当たりや味わいは好みが分かれやすくなっています。しかし、お店による違いはあるものの、博多ラーメンは豚骨の旨みがありながらも全体的にあっさりやクリーミーなものが多く、食べやすいことが年齢や性別問わず多くの人から支持されている秘訣となっているのです。
福岡の三大とんこつラーメンは麺の硬さを指定出来ることや替え玉が出来ることなど共通点も多いですが、それぞれに特徴や個性もあります。1番の決め手となるスープと麺は、3つの中では久留米ラーメンが特に濃厚でこってり系が多く、豚骨臭も強め、中太ストレート麺を使っているものが多いです。反対に非常にあっさりとしており豚骨の旨みを感じやすく、博多よりもさらに細い極細のストレート麺を使うのが長浜ラーメンになります。また、麺の硬さに加えて脂の量などが指定出来るのも長浜ならではの特徴です。この二つのちょうど中間くらいで麺はストレート細麺、あっさりしているが濃厚・さらっとしながらもクリーミーなスープが多めであるのが博多ラーメンになります。3つとも似ているようで少しずつ違いがあり、それぞれにちゃんと個性を感じられることが三大ラーメンの人気にも繋がっているのでしょう。具材にはどのラーメンにもネギとチャーシュー、好みで紅ショウガやごまを使うことがほとんどですが、久留米ラーメンはそこにきくらげ・のり・にんにくが加わり、博多ラーメンはさらに高菜が加わることが多いです。しかし、長浜ラーメンはチャーシューとネギだけと非常にシンプルであり、他のラーメンよりも安価で手軽に食べられるということも大きな違いとなっています。
ここで気になるのは3つのとんこつラーメンはどの順番で誕生したのかということ。福岡県でラーメンの提供を始めたのは昭和12年、久留米市内の通りで営業していた屋台が支那そばとして販売するようになったのが最初と言われています。当初は汁そばや長崎のチャンポンを参考にして作られたため白濁しておらず、透明色の強いラーメンでしたが、誤ってスープの火加減を強くしてしまったことで煮詰まり、白濁した濃厚な豚骨スープが誕生したのです。偶然生まれた久留米ラーメンは福岡だけでなく日本におけるとんこつラーメンの発祥となり、後に博多や長浜、さらには熊本県や佐賀県、本州など県外にまで広く影響を及ぼしていきます。久留米ラーメンの次に誕生したのは博多ラーメン。昭和13~15年頃と言われています。しかし、博多も当初は今とは異なり、半濁色のあっさりとした豚骨醤油に平打ち細麺を使ったラーメンでした。その約10年後、昭和27年には福岡市の長浜地区で長浜ラーメンが誕生します。長浜地区は博多漁港に面していたことから、魚市場で働く人たちからの人気が高く、競りなどで忙しい労働者のために時短で提供出来るように極細の麺を使うようになりました。ただし、細い麺は伸びやすいこともあり、大盛りでの提供ではなくあえて少量で作り、おかわりとして新しい麺を追加する替え玉という提供方法を取り入れたのです。今では馴染み深い替え玉の文化ですが、このスタイルを作り出したのが長浜ラーメンであり、替え玉の発祥とされています。そして、久留米の白濁したスープや長浜の細麺・替え玉という特徴を上手く取り入れ、時代の流れに合わせて変化していったのが現在の博多ラーメンとなっています。
時系列では久留米・博多・長浜の順に誕生しましたが、現在の形として浸透するようになったのは博多ラーメンが一番最後になります。ラーメンブームやご当地ラーメンが注目されたことで広く認知されたのが博多ラーメンだったため、三大とんこつラーメンの中では最も認知度が高いですが、久留米と長浜の特徴を取り入れていることから、この2つのラーメンがなければ誕生しなかった可能性も高く、三者三様の良さがあるからこそ誕生から何十年もたった今でも多くの人に愛され続けているのです。ご当地グルメとしてだけでなく今や全国の食文化を支えているとんこつラーメンですが、ラーメン全体の進化が進んでいることにより、年々個性豊かな多種多様のラーメンが続々と登場しています。選択肢も数えきれないほどあるラーメンだからこそ、ぜひとんこつラーメンのルーツとなる博多・久留米・長浜のラーメンを食べて、それぞれの美味しさや違い、そしてその歴史を感じてもらいたいです。
もつ鍋
主な材料に牛や豚のホルモン(内臓・臓物)を使う“もつ鍋”は、全国でも食べられている定番の鍋料理ですが、もとは福岡県福岡市で誕生した郷土料理になります。もつ鍋の最大の特徴はメインである小腸のプリプリとした食感ですが、福岡のもつ鍋は牛のホルモンを中心に使い、鮮度の高い国産の「生もつ」を使うことでより食感の良さを楽しむことが出来るだけでなく、合わせてホルモンの甘みや旨みも感じやすくなっています。また、キャベツやニラ、ごぼうなどのたっぷりの野菜に豆腐やきのこといった具材を鍋いっぱいに使っているのも特徴であり、具材から出てくる旨みと甘みがスープに馴染むことによって、もつ鍋の美味しさが完成していくのです。一般的にもつ鍋のシメには雑炊やうどんを使うことが多いですが、福岡ではちゃんぽんの麺を使うのが定番で、長崎の限られた製麺所でしか作られないちゃんぽん麺が使えるのは同じ九州だからこその特権でもあります。栄養豊富でヘルシー、さらにはコラーゲンも豊富に含まれていることから体に良く、美容や健康を意識している人からの人気も高いため、冬に食べることが多い鍋料理の中では珍しく夏場でも食べられることが多い鍋となっています。
福岡市でもつ鍋が食べられるようになったのは第二次世界大戦後間もない頃、炭鉱夫として働いていた朝鮮の人々がアルミ鍋にホルモンとニラを入れて炊き、醤油で味付けをして食べていたのが始まりとされています。国内では大正時代からホルモンを食べる文化があり、当初は鳥獣肉の内臓の他にも卵や納豆、山芋などスタミナや滋養を増進させる食材を使った料理をホルモン料理と呼んでいましたが、需要が限られていたこともあって次第に内臓のことのみを表すようになっていきました。さらに戦後の食料不足の際には安価で手に入れやすかったホルモンが日本人の間でも重宝されるようになると、食べる機会や人が増え、内臓を使った料理=ホルモン料理として浸透していったのです。経済が成長するにつれてホルモンとニラだけだったもつ鍋にキャベツやシメのちゃんぽん麺が加わわり、醤油味のスープを使うようになったことでより現在に近いもつ鍋の形へと進化していきました。その後、昭和50年前後には市内を中心に今でも老舗として営業しているもつ鍋店をはじめ、多くの専門店が営業を始めたことで身近な食べ物として定着し、ご当地グルメとして認知されるきっかけとなったのです。平成初期に東京で博多風もつ鍋の店舗がオープンするとこれによって人気に拍車がかかり、さらに2000年代にはヘルシーさと栄養価の高さが女性からの支持を集め、一気に全国でも広く親しまれるようになっていきました。
県内には誕生当初から営業する老舗や落ち着きのあるおしゃれな居酒屋、親しみやすいリーズナブルな飲食店など高級なお店からふらっと気軽に立ち寄れるお店までさまざまなところでもつ鍋を食べることが出来ます。スープは醤油味がスタンダードですが、お店によって塩や味噌、ピリ辛のチゲ、すき焼き風、昆布だしなど店ごとにオリジナルの味を楽しむことが出来るうえに、小腸の他にコリっとした食感の大腸や蜂の巣のような格子の形が特徴的なハチノスなど他の部位のホルモンも使われていることがあり、スープや具材によって食べた時の印象も大きく変わります。店舗数の多さからお店を選ぶ際に迷ってしまいやすいですが、福岡県に訪れた際には好みのもつ鍋を探して、シメの最後の最後まで美味しい本場もつ鍋の魅力を味わってみてはいかがでしょうか。有名店は取り寄せが出来る場合やふるさと納税としても利用することが出来るため、気軽に自宅で福岡のもつ鍋を楽しむことも出来ます。
水炊き
冬になると食べたくなるのが鍋料理。好きな具材とスープを鍋に入れて煮込むだけと、簡単で美味しいうえに栄養のバランスが良く、冷えた体を温めてくれる万能な料理です。年々鍋の種類は増えており、定番から変わり種までさまざまな種類があるなかで、好きな鍋ランキングでは常に上位に入ってくるのが“水炊き”です。鶏肉をメインに使う水炊きは、味つけをしていない水やお湯、出汁に具材を入れて加熱していくため、素材の旨みや鶏肉のコラーゲンを楽しめる鍋になります。素材の風味を味わうためにそのまま食べるかポン酢につけて食べるのが一般的ですが、柚子胡椒やごまだれ、生姜醤油など鍋自体に濃い味がついていない分、好みのタレや調味料で味わえるのも水炊きの良さです。家庭でも作る機会の多い水炊きですが、実は博多の郷土料理であることはご存じでしょうか?水炊きは博多以外にも関西でも馴染み深い鍋の一つであり、昆布ベースのダシに鶏肉や豚肉、魚介類、野菜、豆腐、きのこなど多種類の具材を入れるため、家庭ではこのタイプの水炊きを作ることが多いのに対して、水・お湯から鶏肉を煮込み白濁色のスープになるのが博多水炊きの特徴です。野菜や豆腐、きのこなどを使うのは同じですが、肉類は鶏肉のみであることも博多ならではとなっており、しっかり出汁を出すために鶏ガラや骨付きの鶏肉を使うことが多くなります。煮込む時間が長いほどスープが白濁し濃厚な味わいとなるものの時間がかかるため、お店や市販商品によってはすでに旨みを取り出した鶏スープを使うこともよくあります。鶏ミンチを使ったつくねなどを加えることも多く、より一層、鶏肉の旨みが際立つ鍋となっているのが博多水炊きです。
水炊きが誕生したのは今から100年以上昔の明治時代になります。博多水炊きの発祥と言われている店の創業者が15歳の頃、料理を勉強するために香港へと渡り、英国人の家庭に住み込みました。そこで鶏肉を長時間煮込む中国料理の「白湯(パイタン)」と西洋料理で肉や野菜を長時間煮込んだ「コンソメ」というスープを学びます。日本に戻った後、この二つの料理を日本人の口に合うように工夫し、アレンジして出来たのが博多水炊きであり、実は海外の食文化を上手く取り入れた料理となっているのです。その後、博多で水炊きの店を始めると評判がよく、次第に家庭にも広がっていきました。家庭料理として作られるようになったことで、野菜や豆腐などの具材が使われるようになり、シンプルだった水炊きは現在も多くの人から愛される鍋料理として定着していったのです。すべての具材が入った状態で作られるのが鍋の醍醐味でもありますが、博多水炊きを提供するお店によってはすでに鶏ガラなどから取り出したスープを鍋に入れて加熱し、最初にスープだけを味わうところから始まる提供の仕方も多いです。次に鶏肉だけを入れて風味を味わい、その後に野菜や豆腐などの具材を加えて煮込むという一般的な鍋とは少し異なる食べ方で提供してくれます。鍋というよりもコース料理のような感じでもありますが、この流れがあることによって他県や家庭で食べられている水炊きとはまったく違う美味しさを味わえるのも博多水炊きの特徴です。最後に野菜などの旨みも加わったスープにごはんやうどんなどを入れてシメを楽しむことで、一滴も余すことなく素材の旨みを吸収し、それぞれの良さを最大限に味わうことが出来ることこそ博多水炊きの良さでもあるのです。
スープは長時間煮込んだ濃厚な白濁のスープを使うのが定番ですが、鶏ガラなどを上手く使って煮込み時間を短くし、透明色の強いあっさりとしたスープを使う場合や鍋の提供の仕方・食べ方など店舗によってこだわりが異なり、味わいもさまざまです。しかし、鶏を使うことが必須の博多水炊きは今まで食べた水炊きとは必ず違った印象や衝撃を受けることでしょう。そのため、まだ一度も食べたことがないと言う人や鶏好きという人にこそ食べて欲しい料理であり、その美味しさや奥深さを思う存分に堪能してもらいたいです。また、家庭で作る際にも博多水炊きと同じように具材を順番に入れて煮込むことで普段とは違った水炊きを味わうことが出来るため、鍋料理をよく作るという人は博多流の作り方にもぜひチャレンジしてみて下さい。
焼き鳥
ビールや日本酒などお酒との相性も抜群で香ばしい香りが食欲をそそる“焼き鳥”は、日本全国どこででも親しまれている食べ物ですが、福岡県ではご当地グルメとしての人気が非常に高いです。とんこつラーメンや明太子など食の宝庫とも言われるほど美味しい食べ物が多い福岡県でなぜ焼き鳥の人気が高いのでしょうか。理由はいくつかありますが、まず福岡県は日本一鶏料理を扱う店舗数が多く、焼き鳥店の軒数も日本一多いです。見渡せばどこにでも焼き鳥店があり、入りやすいという環境が人気の理由の一つとなっています。そして特に福岡県の焼き鳥が注目される理由には、他県では珍しい串の種類が多く県内ではそれが定番メニューとなっていることも大きいです。
福岡県の中でも特に博多は焼き鳥店の軒数が多い街ですが、その理由は江戸時代にまで遡ります。江戸時代、博多を統治していた黒田藩は、藩の経済力を高めるために海外から鶏を輸入して鶏卵の出荷を促したり、各農村に養鶏業を勧めてきました。そのため、古くから博多では鶏肉を食べる習慣が身近にあり、食文化として根付いていったことが焼き鳥店をはじめとする鶏料理店の多さに繋がっています。その文化は現在も残り続け、鶏肉の購入量と支出金額は福岡県が日本一を維持しています。店舗数が多い分、各店舗ではそれぞれにこだわりや特徴があり、なかでも各店の特製タレは甘め、さっぱり、コクが強いなどの違いを感じやすいことから、タレの味わいでお気に入りの店を決める人がいるほど重要視されているのです。また、県内の焼き鳥店では職人が焼き加減を調節しながら炭火で焼き上げているところも多く、炭火を使うことでパリッとジューシーな焼き加減に仕上がるため、より素材本来の美味しさを味わいやすい点も人気の秘訣となっています。
次に珍しい串の種類ですが、福岡県では「とりかわ」と「豚バラ」の人気が非常に高いです。もちろん、ねぎまやささみ、レバー、ハツ、ぼんじりなど焼き鳥ではお馴染みの部位もありますが、それらを抑えて定番となっているのがとりかわと豚バラになります。さらに近年は他県でも取り扱うことが増えているレタスやトマトなどの野菜を豚バラやベーコンで巻いた「野菜巻き」の人気も男女問わずに高く、福岡県が発祥の地となっています。鳥皮は基本的に全国の焼き鳥店でも扱いがある部位ですが、福岡県のとりかわはそれとは異なり、鶏の首皮を串にぐるっとねじりながら巻いてあるのが特徴で、一般的な鳥皮よりも細長い見た目をしています。しかし、カリカリに焼き上げた表面と中のモチっとジューシーな食感は、福岡のとりかわでしか味わうことが出来ず、ペロッと食べられてしまうことから5本や10本など複数本注文するのが基本となるほど名物として愛されています。また、県内では鶏肉よりも豚バラの方がポピュラーで、どこの店舗でも取り扱いがあるのも福岡県ならではの特徴です。ここでぜひ串の種類と一緒に付け合わせのキャベツにも注目してみて下さい。県内のお店では焼き鳥を注文するとはじめに酢ダレのかかったキャベツが提供されます。焼き場の近い席では焼きあがった焼き鳥がそのキャベツの上に次々と置かれていくのも特徴で、もちろん、お酒のつまみとしての役割もありますが、脂の多い豚バラをよく食べる福岡県では箸休めの役割も果たしており、なくてはならない存在でもあります。
さらに豚バラなどでさまざまな野菜を巻いた野菜巻きは、見た目の華やかさとボリューム、野菜が加わることで生まれる旨みの組み合わせが絶妙で、今では県内だけに留まらず、全国でも扱う店舗が増えているほど人気が高いです。これも、豚バラをよく食べる福岡県だからこそ誕生した変わり種だったかもしれませんが、その影響力は強く、全国で定番メニューとなる日もそう遠くないかもしれません。こうやってみると、いかに福岡県で親しまれている焼き鳥が一般的な焼き鳥とは違うのかが分かり、ご当地グルメとして確立しているのも納得することでしょう。その他にも、塩コショウの塩梅に定評のある店や希少部位を扱う店舗、つくねや創作性の高い代わり種が人気のお店など県内には数えきれないほどの焼き鳥店があるため、リサーチして訪れるのも良いですが、ふらっと気分で立ち寄るのもおすすめです。
ごぼ天うどん
福岡県のソウルフードには“ごぼ天うどん”と呼ばれるうどんがあります。ごぼ天うどんとはその名の通り、トッピングにごぼうの天ぷらが載せられており、天ぷらのサクサクした食感とごぼうのシャキっとした歯ごたえは福岡の柔らかいうどんとあっさりした出汁と非常に相性が良く、ごぼ天を求めて訪れる人も少なくありません。福岡の麺料理と言えばとんこつラーメンの印象が強いこともあり、長い間あまり他県から注目されてこなかったグルメですが、福岡県民からは絶大な人気があり、地元の人はラーメンよりもうどんを食べることの方が多いとも言われています。ここ数年の間に、東京都内などでは少数ですがごぼ天を扱ううどん店が出来たことやSNSの影響もあって、少しずつごぼ天うどんを認知する人は増えてきており、福岡県を訪れた際に食べたいグルメとしての人気は高いです。ごぼうの天ぷらは店舗によって形や大きさが違い、ささがきのように薄く切ったごぼうをかき揚げにしているタイプや棒状に切って数本トッピングしているもの、なかには30cm以上もあるごぼ天を器に橋渡しをするように乗せたインパクトのあるものなどさまざまな形で提供されており、ごぼうの切り方によって食感が大きく変わるのも特徴となっています。
福岡県でのうどんの歴史は想像以上に古く、鎌倉時代、勉強のために中国(宋時代)へ渡った僧が製粉技術を持ち帰ったことが始まりと言われています。うどんを日本に持ち帰ったという歴史だけで言えば讃岐の方が早く、平安時代にまで遡りますが、庶民向けに小麦粉を挽いてうどんを提供し始めたのは福岡県の方が早いと言う説が有力であり、それが本当であれば日本の食文化でもあるうどんは福岡県が発祥地となり、全国へ広まったとされているのです。しかし、コシの強いうどんが多いなかでコシがなく柔らかい麺が特徴でもある福岡のうどんは、食べた時のインパクトが少ないからかあまり注目されず、長年県内でのみ愛されて続けてきたザ・ご当地グルメという存在になります。味や柔らかさなど全体的に優しい印象が強い福岡のうどんですが、そこにパンチを効かせてくれるのがごぼ天であり、他県では珍しいトッピングでもあるため年々ごぼ天うどんの人気は増す一方となっています。ごぼ天うどんが生まれたのは明治時代、屋台の人気エリアとしても有名な天神で営業をしていたうどん店が天ぷらをトッピングしたのが始まりです。お店ではいも天やいわし天など他の天ぷらも選択肢にはありましたが、その中で特に人気だったのがごぼうの天ぷらで、当時は下味をつけて細く拍子切りにしたごぼうをかき揚げにしたものだったそうです。お店もごぼうの天ぷらも人気があったものの第二次世界大戦を機に閉店してしまい、一度は福岡の街から消えてしまいましたが、あの美味しさを再現しようと戦後にごぼ天うどんを受け継ぐ人や店が増えて定着し、浸透していったため、県内にはトッピングにごぼ天を扱ううどん店が多数存在しているのです。また、消化の良いうどんは体調不良の時にも好まれることに加えて、ごぼうは食物繊維やカリウム、鉄分などの栄養を多く含み、解熱作用や毒素を解消する効果、コレステロール・塩分等の吸収を抑制させる効果などを期待出来ることも人気が集まった理由とされています。
県内にあるうどん店では、九州ではお馴染みのあごダシを中心にカツオや昆布などを使った異なるだしの味わいを各店舗で楽しめ、肉うどんやぶっかけ、すだちうどんなどさまざまな種類のうどんを食べることが出来ます。しかし、やはり圧倒的に人気が高いのがごぼ天であり、福岡県だからこそ味わえるうどんでもあるため、食べたことがない人や迷った時にはごぼ天を注文することでより福岡の特徴的なうどんを楽しむことが出来るでしょう。また、魚のすり身を円形にして揚げた「丸天」を乗せた“丸天うどん”も福岡県では人気が高く、ごぼ天と合わせて福岡二大ご当地うどんとしても親しまれているため、さらにご当地色を強く感じたい場合にはごぼ天と一緒に丸天をトッピングするのもおすすめです。