「ごまさば」と「ゴマサバ(胡麻鯖)」の違い、ゴマサバはまずいのか?

 日本で流通するサバは大きくゴマサバとマサバの2種類があります。一般的にマサバのほうが価格も高く美味しいとされ、ゴマサバは安いがあまり美味しくないと言われてしまっています。また、福岡には「ごまさば」と呼ばれる郷土料理があります。年々人気が高くなり、近年では他県でも福岡の料理を扱っているお店などで食べることが出来ます。今回はマサバとゴマサバの違い、そして福岡の郷土料理郷土料理のごまさばはどのような料理なのかと一緒に紹介をしたいと思います。

マサバとゴマサバの違い

 はじめにも少しお伝えしたようにサバにはゴマサバという種類があり、郷土料理にあるごまさばとは別物になります。日本のサバは大きく分けるとマサバ(真鯖)とゴマサバ(胡麻鯖)の2種類に分かれます。郷土料理のごまさばを調べる際にもゴマサバは出てくるため、間違えやすく、さらに調べると“ゴマサバ 不味い”のようなネガティブな検索ワードが出てくることも。本当にゴマサバは不味いのか気になるところですよね。

マサバとゴマサバの違いや特徴、ゴマサバは美味しいのかについても調べてみたので紹介していきますね。

マサバとゴマサバの違いと特徴

この2種類のサバの見た目は似ていることが多く、パッと見ただけではなかなか判別することが難しいです。ですがその中でも区別しやすい点が2つあります。

模様の違い
サバには体に模様があります。目の横にある胸のヒレから上が背中、下が腹としたときに

マサバ:背中側には模様があるが、腹側には模様がない
ゴマサバ:同じく背中側に模様があり、腹側にも黒い斑点の模様がある

この黒い斑点模様がゴマのように見えることからゴマサバと呼ばれています。

断面の形
頭を落とした時の断面の形にも違いがあります。

マサバ:断面が楕円のような形をしており、その形から“平サバ”とも呼ばれている
ゴマサバ:マサバと違い断面が丸く“丸サバ”と呼ばれている

しかし、模様は個体差や鮮度によっては分かりづらい場合や判断しにくい場合もあり、断面の形は旬の季節や脂の乗り具合によっても差が出てきます。他にも、背ビレの棘の数や第一背ビレと背ビレの間の長さなどでも判断することは出来ますが、知識がないと判断するのは少し難しいかもしれませんね。

続いて旬の時期と市場価格の違いはあるのかという点ですが、ここに大きな特徴があります。

旬の季節と市場価格
マサバは秋から冬にかけた時期が旬で、この時期が一番脂が乗っています。全体的に身が締まっていて脂も多く、白っぽい見た目をしているのが特徴で、市場価格はゴマサバよりマサバの方が2倍ほど高いです。しかし、春から夏の産卵期を過ぎた後は身の質が落ち、脂がなくパサパサしてしまい、味も落ちてしまいうため、価格も下がりこの時期はマサバよりゴマサバの方が高くなります。

ゴマサバの旬の季節は夏になります。ゴマサバは脂が乗りにくく、エサや海域によって多少の差は出ますが、1年を通して脂が少ないのが特徴です。赤みが強く脂が少ない分水っぽいため、〆ても身が割れてしまうなどの理由で刺身やしめ鯖には不向きになります。そのため、出汁用のサバ節などに加工されることの方が多くなります。市場価格も基本的にはゴマサバの方が低いことが多いです。

ゴマサバが不味いと言われてしまう理由

郷土料理のごまさばを紹介した時にも軽く触れましたが、ごまさばは生のサバの味や食感を楽しむ料理です。そのため、同じ名前のゴマサバではなく脂の乗ったマサバを使っています。

このゴマサバの水っぽいという特徴や価格が安いという点が“不味い”というネガティブなワードに引っかかってしまう理由です。

しかし、これはあくまで2つのサバの特徴や違いを比較した結果であって、どちらも美味しいサバには変わりないのです。特に九州ではマサバは刺身向き、ゴマサバは調理・加工向きというだけです。反対に言ってしまえば、ゴマサバは1年中味の変化が少ないため、安定していてはずれが少ないサバです。

一般的に旬の時期の魚はスーパーにも出回ることが多く手に取りやすいため、食べるタイミングも旬の魚の方が多くなります。そのため、脂の乗った旬のマサバと比較されてしまうゴマサバはなんだかかわいそうですね。ゴマサバもマサバも調理方法の違いはなく、焼く・煮る・揚げるなど火を通す料理であればどの料理にも使うことが出来ます。

今回調べてみてどちらのサバも美味しいサバということが分かりました。旬の時期と旬ではない時期のマサバ・ゴマサバを食べ比べて味や食感の違いを感じてみるのも面白いかもしれませんね。サバは1年中食べられる魚ですので、正しい調理法で美味しく普段の食事にサバを取り入れてみてはいかがですか。

福岡で愛されている「ごまさば」とは

 福岡の郷土料理である「ごまさば」は、刺身より薄めに切った生のサバを九州の甘めの醤油やみりん、すりごまとよく合えて食べます。薬味として生姜やわさび、ネギなどが添えられていることが多く、そのままでも薬味と一緒に食べても美味しいですが、ご飯に乗せたり、さらに番茶などをかけて茶づけ風にして食べても美味しい料理です。

博多を中心に居酒屋や専門店で食べることが出来ますが、昔は居酒屋などでは提供されておらず料亭や高級な料理屋でしか食べられなかったとされています。現在、ごまさばの人気は高く、福岡や九州だけでなく東京など他の県でも食べられるお店が増えていますが、実は平成に入る辺りまではごまさばの名前すら広まっていないことの方が多く、その理由として漁師めしや漁港近くの家庭料理であったためではとも言われています。明確な理由は分からないそうですが、ネットやSNSの普及などにより徐々に存在が広まり福岡以外でも人気が高くなっていきました。

ごまさばは醤油が一般的に手に入るようになった江戸時代の後期~明治初期の辺りから食べられていたとされており、季節問わず1年中食べることが出来ます。ごまさばは“マサバ(真鯖)”というサバを使っているため、マサバの旬の時期である秋から春先は脂の乗りがよく特に美味しく食べることが出来ます。

福岡で生のサバが食べられる理由

ごまさばは生のサバを使っている料理です。ここで1つ気になる点があります。それは生のサバは食べられるのか?ということです。

サバを含む青魚は魚の中でも特に痛みやすく、新鮮でないと食中毒を起こしやすい魚として有名です。サバだけではありませんが魚の内臓にはアニサキスという寄生虫が潜んでおり、寄生していた魚が死滅すると身に移動します。アニサキスがそのまま人間の胃に入ってしまうと激しい胃痛を引き起こすとされており、これが青魚に多く、その中でも特にサバに多く寄生しています。魚に火を通すか冷凍することでアニサキスを死滅させることが出来るため、一般的にはアニサキスの多い魚を生で食べることは少ないのです。

では、なぜごまさばのような生のサバを使った料理を食べるのかというと、福岡に入ってくるサバが新鮮であるからです。中でも博多にはサバの水揚げ量が全国で2番目に多い長崎から新鮮な魚介類が入ってくるため、昔から生でサバを食べる食文化がありました。さらに、九州の沿岸で獲れるサバと太平洋で獲れるサバに寄生しているアニサキスの種類が違い、太平洋で獲れたサバより九州の沿岸で獲れたサバのアニサキスは内臓にとどまる割合が高く、内臓から身に移る“移動率”は100倍ほど低いのです。

福岡に入ってくるサバは新鮮であることとアニサキスの種類が違う点が、他の県よりサバを生で食べる食文化が根付いたと言っていいでしょう。

ごまさばのレシピは調味料を合えるだけで簡単に作れますが、新鮮であることが1番重要なポイントです。冷凍しているからと言って、市販のサバで作るのはやめておきましょう。ぜひ、福岡に訪れずれた際やごまさばを提供しているお店に行って、新鮮でおいしいごまさばを食べて下さいね。ふるさと納税や通販でも販売しているメーカーがあるため、気になる人はチェックしてみて下さい。