福岡県で愛され続ける特産物と特産品
九州最大の都市として栄えてきた福岡県は、商業施設や飲食店、公共機関などの多さから利便性が高くコンパクトシティとも呼ばれています。しかし、実際には海や山などが身近にあり、自然も豊かで年間を通して過ごしやすい気候でもあることから、米や野菜、果物、畜産など多様な特産物や特産品が生産されています。今回は全国でも有名な特産物を中心に福岡県で愛されている特産物や特産品について紹介していきたいと思います。
いちご/あまおう
福岡県の特産物のなかでも特に有名な農産物が“いちご”です。県内で作られているいちごの生産量は栃木県に次いで2番目に多く、主力品種であり県を代表するブランドいちごの“あまおう”を中心に毎年多くのいちごが生産されています。「あかい・まるい・おおきい・うまい」の頭文字から名づけられたあまおうは、その名の通り赤色が濃くて艶があり、丸みの強い大粒であるのが特徴で、ジューシーで濃厚な味わいの中には甘味と酸味をバランス良く感じられるため、全国で生産されているいちごの中でも非常に人気のある品種となっています。人気・品質・生産量の高さから1キロあたりの販売単価は20年連続1位になるほど高く、高級いちごとしても扱われていますが、好きないちごランキングなどでは長年1位を獲得しており、栃木県のとちおとめ・静岡県の紅ほっぺと合わせて日本三大いちごとしても多くの人から親しまれています。ただし、小粒なものほど酸味を強く感じ、反対に大粒すぎると味にムラが出やすい品種でもあることから、粒感の大きさによって味わいが左右されることもあると言われています。県内で栽培されているいちごのほとんどはあまおうですが、その他にも甘みが強く硬めの食感が特徴のさがほのかや華やかな香りを感じられる恋みのり、さっぱりとした甘みとコクを持つかおり野など、産地や旬、特徴の異なるさまざまな品種も一緒に作られています。
福岡県でいちごの栽培が始まったのは1920年代後半、大正初期にあたる頃になります。早くから始まったいちごの栽培でしたが戦争を機に一時中断し戦後に再開、その後品種改良を重ね昭和中期頃「とよのか」という新品種を開発しました。香り高く大粒なとよのかは、程よい酸味と強い甘みを持ち合わせていたことから県内で広く栽培されるようになり、福岡県がいちごの生産地として発展するきっかけにもなりました。しかし、色づきが悪く低温にも弱いという性質上、環境や気候によっては見た目や大きさなどの発育に大きな影響が出てしまうことから、新たな品種を開発することになります。そこで新しく開発された品種があまおうです。あまおうが誕生するまでには約5年もの年月がかかっており、開発までにはさちのかやとちおとめなどの開発や品種改良も行われてきました。その中でさらに発色の良さや糖度の高さ、寒さに強い品種を求めて改良が続き、1999年に赤くて大粒、そして甘みもあるあまおうが新しく誕生したのです。あまおうは生産地を福岡県のみに限定し、種苗法によって育成者権が守られていたため基本的には県外で生産されることはありませんでした。現在、いちごは開発された地域を中心に他県でも生産されている品種が多く、栽培される地域によって同じ品種でも味や特徴に違いが出ることがありますが、生産地を限定し栽培を管理したことで品質を守り、ブランドいちごとしての地位を確立してきたのです。しかし、2025年1月にその育成者権が切れてしまったため、今後他県でもあまおうの苗からいちごを作ることが可能になってしまいます。ただし、あまおうという名前は商標登録されており、福岡県で作られたいちごにしか使うことが出来ないため、似たようないちごが出てきたとしてもあまおうとして販売することは出来ません。新しい品種が続々と開発されていますが、あまおうという名前がより福岡県産のいちごとしての立ち位置を明確にしてくれることでしょう。
一般的ないちごの旬は1月~5月頃までとなっていますが、あまおうは1月~3月が旬の時期で、特に2月頃までに収穫されたあまおうは寒さの中で栄養を蓄えながらゆっくり成長するため、最も美味しいと言われています。また、高品質なものはエクセレント(EX)・デラックス(DX)・グランデ(G)という3つの等級に分かれており、美味しさに加えて重さや形、色などがより優れていることから、贈答品や自分へのご褒美として購入するのもおすすめです。もちろん、スーパーなどで販売されているものも十分に美味しいですが、色の濃さやツヤの良さ、ヘタが反り上がっているもの、さらにはヘタ付近に種が少ないものなどに注目すると手ごろな価格帯でもより美味しいあまおうを購入することが出来るため、鮮度の良いあまおうを上手に選んで大事に守られてきた福岡産いちごの品質の高さや味わいを堪能してみて下さい。
キウイフルーツ
“キウイフルーツ”は強い抗酸化作用のあるビタミンEや腸内環境を改善させる食物繊維、むくみや高血圧予防にも繋がるカリウムといった栄養が豊富に含まれている果物です。その中でも特に美肌効果や免疫を高めるビタミンCの含有量が多く、成人が1日に摂取したいビタミンCの推奨量が100mgであるのに対して、一般的なグリーンキウイであれば可食部100gあたりは約71mgものビタミンCが含まれており、1.5~2個食べるだけで簡単に1日の推奨量を摂取することが可能です。そんな果物の中でも群を抜いて栄養価の高いキウイの国内主要産地には福岡県が含まれており、近年では長年生産量1位を維持し続けてきた愛媛県を抜くほどの勢いもあります。福岡県で果物と言えばいちごが有名ですが、キウイの生産も非常に盛んで県を代表する特産物でもあるのです。県内で生産しているキウイは全体的に糖度が高く強い甘味を持っているのが大きな特徴であり、果肉が緑色で爽やかな酸味のグリーンキウイの他にもより甘味が強く、倍のビタミンC を含む黄色のゴールドキウイ(ゴールデンキウイ)、果肉の中心が赤くグラデーションになっている特徴的な見た目と上品な甘さを持つレッドキウイも栽培しています。
キウイが日本に入ってきたのは今から50~60年ほど昔、昭和後期とまだ新しく、ニュージーランドから苗を輸入し栽培をはじめたことをきっかけに、国内でも生産するようになっていきました。そもそもキウイの歴史は日本に限らず世界的にもまだ新しく、商業栽培をするようになったのも1934年頃、日本が昭和になったあたりと言われています。原産は中国ですが、1900年代初期に中国で手に入れたキウイの苗をニュージーランドに持ち帰り、品種改良を行ったことで現在のようなキウイフルーツが誕生し、商業栽培をはじめたため世界各地でも食べられるようになっていったのです。国内では愛媛県が最初に栽培を始め、その後に福岡県や和歌山県など現在の主要産地を中心に広がっていきました。現在、スーパーなどではニュージーランド産やチリ産、アメリカ産など海外のキウイを輸入して販売していることが大半ですが、なかには国産のキウイが出回ることもあり、旬である11月~4月頃に見かける可能性が高いです。県内では9割を八女市で生産しており、一般的なグリーンキウイの「ヘイワード」やゴールドキウイで甘味と酸味のバランスが良い「甘うぃ」、「レインボーヘッド」という高糖度のレッドキウイなど、特徴や糖度の異なるさまざまな品種が生産されています。特に甘うぃは8年もの年月をかけて開発した福岡県オリジナルゴールドキウイの品種であり、果肉が大きくて酸味が少なく糖度が17度前後と非常に強い甘味を持っているため、国産キウイの中でも特に注目されている品種になります。甘いキウイということから名付けられた甘うぃは、日本人が食べやすいように開発しているため特有のイガイガする感覚もほとんどありません。キウイの酸味やイガイガ感が苦手な人にはぜひ食べてもらいたい品種ですが、国産キウイ自体の流通量が少ないうえに、甘うぃは福岡県でしか生産がされていないため、手に入れにくいことが欠点となります。
キウイは栄養価の高さや甘味の強いゴールドキウイが広く流通されるようになったことから、近年は人気が高まっており、スーパーなどでも良く見かけるようになりました。しかし、福岡県で生産されているキウイはさらに個性豊かで見慣れない品種も多く、食べた時の圧倒的な甘さにキウイの概念を覆されるかもしれません。種類が多い分、旬の時期も幅広いですが、なかなか出回らない国産種でもあるため、見かけた際にはぜひ手に取ってもらいたいです。また、それぞれの旬を狙って1番美味しいタイミングで取り寄せするのもおすすめです。
明太子
ピリッと辛く旨みがたっぷり詰まった“明太子”は、ごはんのお供として欠かせない逸品です。軽く炙ればお酒のつまみにも最適ですがアレンジ力も高く、うどんやパスタ、サラダ、トーストなど和食から洋食までさまざまな顔を見せてくれることも魅力となっています。近年は、明太子を使った料理やお店が増えているため思いのほか身近な存在でもある食べ物ですが、原料にはスケトウダラという白身魚の卵巣を使っており、唐辛子と日本酒・醤油・みりんなどが入った調味液に漬け込んで味つけをしています。唐辛子の量によってマイルドから激辛、まろやかで昆布の旨みが加わったものなど辛さのレベルも幅広く、辛いものが苦手な人でも食べやすい味つけをしているものも多々あります。また、無着色や無添加、一本もの・切れ子・チューブタイプと大きさや形などにも種類があるため、贈答用や普段使い、贈る相手によって選択出来るのも明太子の強みです。
福岡県の中でも特に博多が明太子の名産地として広く認知されていますが、原料として使われるスケトウダラは北海道やアラスカ、ロシアといった北の海で漁獲される魚であるということはご存じでしょうか?そのため、九州では水揚げされていない魚になりますが、どうやって博多の名産品として定着していったのでしょう。スケトウダラの卵を加工するという文化は、もともと日本ではなく朝鮮半島で広まったとされており、塩漬けにして発酵させた卵巣に唐辛子やニンニクなどを加え「たらこのキムチ」として17世紀頃から食べられてきた伝統料理になります。このたらこのキムチは朝鮮半島と交流のあった福岡市や北九州市などで昭和初期頃から輸入され、鮮魚店で惣菜の一つとして販売されていましたが、食文化の違いもあってあまり日本人の味覚には合わなかったとされています。しかし、第二次世界大戦後に朝鮮から帰還した老舗明太子メーカー「ふくや」の創業者が日本人が食べやすいように改良を加え、あえて発酵させずに作ったものが馴染みのある明太子のはじまりとなったのです。現地ではスケトウダラのことを「明太(ミョンタ/ミョンテ)」と呼んでいたことから日本でも明太の卵ということで明太子と名付けられ、ふくやが初めて博多で販売を始めました。商品によっては辛子明太子と異なる表記をしていることも多いですが、現在は辛子明太子と明太子は同じものを表しています。本来であればスケトウダラの卵(たらこ)が明太子であり、その卵を唐辛子などで味付けをしていることから辛子明太子となりますが、辛子明太子の略称として明太子という言葉が浸透してしまったため、今では唐辛子を使わず塩漬けにした「たらこ」が別物という認識となっています。
ふくやは明太子の製法やレシピを制限せず多くの人に公開したため、人気が出るにつれて市内を中心に明太子を製造するメーカーが増えていきました。さらに1970年代に開通した山陽新幹線によって博多へ行き来しやすくなったことにより、明太子の認知度が高まり名産品として定着していったのです。当時は北海道の近海で国産のスケトウダラが入手出来たため国産の明太子が作られていましたが、次第に全国でも作られるようになるとその需要とは反対にスケトウダラの漁獲量が減ってしまい、現在はロシアなどの海で漁獲し、鮮度が落ちる前に船内で急速冷凍された卵巣を使って明太子を製造していることが多いです。下処理から熟成、品質管理などすべての工程を国内の工場で行っている場合もあれば、途中の工程までは専門業者に任せる、海外の自社工場で加工するなどメーカーによって介入している工程はさまざまです。しかし、県内にある多くの明太子メーカーは手で異物を取り除く、触って大きさや質感の選別を行うなど最終的には人の手を使って一つずつ確認し、徹底的な品質管理を行っているからこそ、粒感が大きく食感の良い明太子を食べることが出来るのでしょう。卵巣の質や唐辛子と漬け込む調味料とのバランスによって美味しさが大きく分かれますが、その他にも国産の卵巣のみを使用しているものや熟成に手間と時間をかけているもの、一緒に漬け込む日本酒やお酒の種類、昆布、柚子などの素材にもこだわりをみせているものなど各メーカーによって力を入れている部分が異なり、これによって食べた時の印象や口当たりも大きく変わってきます。そのため、同じように見えてもまったく違った風味や食感を味わうことが出来るため、福岡県のメーカーの中からお気に入りの明太子をぜひ探してみて下さい。
かつお菜
正月に欠かせない料理である雑煮は、餅とさまざまな具材を使って作る日本料理ですが、餅の形や具材の種類、味つけの仕方は地域や家庭によって異なり、非常にバリエーションが豊かな料理になります。福岡県の博多地区では「博多雑煮」と呼ばれる雑煮が古くから郷土料理として親しまれており、丸餅にブリの切り身やしいたけ、里芋・にんじんなどの野菜を使った華やかな雑煮となっています。この他にも博多雑煮を作る際には緑色の彩りを添える“かつお菜”を欠かさずに使っており「ブリ・かつお菜・アゴだし」を使うことが博多雑煮の大きな特徴でもあるのです。福岡県の伝統野菜であるかつお菜はアブラナ科の葉野菜で、葉が大きくて肉厚、長さは40~50cmになることもよくあります。大きくなった葉は濃い緑色と表面が縮れているのが特徴で縮れが深いほど食感が良く、アミノ酸が豊富に含まれていることから旨味や甘味を感じやすいのも特徴となっています。茎の部分がかつお節のような風味を持っている、煮るとかつおだしにも劣らないほどの風味が出ることからこの名前がついたと言われており、クセがなく辛味やアクも少ないため下茹でしないで調理することも可能です。サラダなどとして生のままでも食べることも出来ますが、葉柄に少しトゲがあるためそのまま使う場合はトゲに注意して使うのが良いとされています。また、葉は大きい方が旨味や甘味をしっかりと感じられますが、若くて小さい葉も柔らかくあっさりとしているため、大小によって違った美味しさを感じられるでしょう。県内では非常にポピュラーであり、旬の12月~2月頃には他県でもスーパーによって取り扱いがありますが、伝統野菜であるため九州を離れるにつれて見かける機会は減り、存在自体知らないという人も多い野菜となっています。
福岡市を中心に糸島市や北九州市など県内各地で生産されているかつお菜は、江戸時代中期頃から栽培が始まったとされています。旨味が強いことに加えて漢字で「勝男菜」と書き、すべてに勝つという意味を持っていたことから縁起が良い食べ物として扱われており、すでに江戸時代から雑煮などの正月料理に使われていたと言われています。かつお菜は葉が20cm以上になれば収穫することが可能で、白菜やキャベツのように株ごと収穫するのではなく手作業で一枚ずつ葉をハサミで切り取って収穫していくため、長期間に渡って収穫することが出来る野菜でもあります。12月頃を目安に大きくなったかつお菜は、冷たい空気に触れて寒き季節を乗り越えることで甘味が増して葉が柔らかくなっていくため、特に寒さの厳しい1月~2月がもっとも美味しい時期となっているのです。県内では古くから盛んに生産され親しまれてきましたが、需要に合わせてほうれん草や小松菜の生産へ切り替えたことによって九州以外ではほとんど見かけることがなく、年々県内の生産量も減っています。しかし、寒さの中で育ったかつお菜は旨味と一緒に栄養分も凝縮することから、抗酸化作用の強いビタミンCやβカロテン、カルシウムなどの栄養が豊富に含まれており、疲労回復や肌荒れ防止、風邪・ガンといった生活習慣病の予防など身体に良いさまざまな効果を期待することが出来ます。一般的に販売されている身近な野菜よりも各地で生産している伝統野菜の方が全体的に栄養価が高く、独特な旨味や美味しさを持っているため、近年は素材や健康にこだわりを持った人たちを中心に注目されており、全国各地でも伝統野菜を見直す活動が盛んになっていることが影響してかつお菜も他県から注目されつつあります。栄養豊富な緑黄色野菜でありながらも、使い勝手がよく風味も豊かで旨味も味わえる特徴を持った野菜は日本各地を探しても希少であるため、近い将来身近な野菜として各地のスーパーに並ぶ可能性も大きいです。現在も場所によっては県外で購入することが出来るため、より多くの人にかつお菜の美味しさと使い勝手の良さを認知してもらいたいです。
梅ヶ枝餅
学問の神様として有名な大宰府天満宮は県内の中でも特に人気の観光地であり、毎年県内外だけでなく海外からも多くの人が訪れています。そんな大宰府天満宮に訪れると参道や周辺のお土産店などで必ず目にする食べ物があります。それが“梅ヶ枝餅(うめがえもち)”です。梅ヶ枝餅とは、もち米とうるち米をブレンドして作った薄い餅生地で小豆餡を包んだお菓子であり、大宰府市を代表する名物としても知られています。梅ヶ枝という名前から「梅を使っている・梅の風味がある」と思われることも多いですが、実際には梅を使ったお菓子ではなく米粉・小豆・砂糖・塩から作られる非常にシンプルなお菓子で、素朴な味わいと老若男女問わず食べやすいことが人気の秘訣となっています。梅の刻印が入った鉄板で焼いていくため、焼きあがった餅の表面には梅の模様が入っており、焼きたてのパリッとした食感と中のもちもちとした異なる食感を楽しめることも合わせて大きな特徴です。大宰府天満宮の参道には30軒近い梅ヶ枝餅の店舗があり、大きさや形などが似ていることから一見どれも同じように見えますが、生地の食感やあんこの甘み・粒感、焼き加減などがお店によって少しずつ異なるため、食べる人によって好みが分かれるのもおもしろいポイントとなっています。
梅ヶ枝餅が太宰府の土産物として定着したのは江戸時代からと言われていますが、発祥はさらに古く平安時代にまで遡り、現在は大宰府天満宮に神として祀られている藤原道長が大きく影響しています。学者・詩人・政治家と多くの顔を見せその名を残した菅原道真ですが、晩年には無実の罪により太宰府に左遷され、軟禁状態で衣食もままならない罪人同様の環境下で生活をしていました。近隣に住む道真を慕っていた老婆(浄明尼)はそれを気の毒に思い、こっそり格子ごしに餅を梅の枝に挿して差し入れをしたことが梅ヶ枝餅の由来とされており、道真の死後にはその老婆が墓前に好物だった餅と梅の枝を添えてお供えしたという話も残っています。これらの話をもとに梅ヶ枝餅が誕生し、当時は、梅ヶ枝餅を食べると病魔を防ぐ効果があるということから知名度が広がっていきました。後に、道真の墓所がある太宰府天満宮の参道には門前町が作られ、江戸時代に入ると全国から「さいふまいり(宰府詣り)」のために大宰府を訪れる人が増え、その際の土産物として梅ヶ枝餅の人気が高まり名物として定着していったのです。餅生地は白い色をしているのが定番ですが、菅原道真の誕生日(845年6月25日)と命日(903年3月25日)がどちらも25日であることから毎月25日は「天神さまの日」として、よもぎ入りの緑色をした梅ヶ枝餅が月に一度販売されています。さらに、毎月17日には九州国立博物館の開館十周年を記念して作られた古代米(黒米)入りの紫色をした梅ヶ枝餅も販売されており、定番の白い梅ヶ枝餅にはない香りや食感の違いなどを味わうことも出来ます。
手のひらに収まるほどの大きさと1個150円ほどと手ごろな価格から、太宰府天満宮参拝時には食べ歩きのお供としても親しまれていますが、喫茶店やカフェを併設している店舗では一緒に抹茶や煎茶、梅茶などがセットになっているものや自分で小豆を2つの梅ヶ枝餅で挟んで食べる「夫婦餅」など現地でないと食べることが出来ないメニューも取り扱われています。また、冷めても美味しいためお土産として購入していく人も多いですが、梱包したタイミングによっては帰った頃には固くなっていたり、反対に水蒸気でかなり柔らかくなってしまうことも多々あります。そんなときは電子レンジで20~30秒軽く温めた後、トースターやオーブン、フライパンなどで焼くと表面がパリッとして小豆の風味も立つため、焼きたてのような美味しさを味わえるでしょう。冷凍タイプも同様に温め直すことで美味しく食べられるため、ひと手間かけることがおすすめです。悲しい背景から誕生した梅ヶ枝餅ですが、今では福岡県を代表する特産品や名物として広く認知され、多くの人に愛されています。味わいや食感などさまざまな個性を持ち合わせているため、ぜひ大宰府天満宮を訪れる際には焼きたての梅ヶ枝餅を食べてお気に入りの1つを見つけてみて下さい。また、大宰府天満宮以外にも福岡空港や博多駅、さらには九州や福岡県のアンテナショップなど県外でも販売している場合があるため、見かけた際にはぜひ手に取ってみて下さい。九州最大の都市として栄えてきた福岡県は、商業施設や飲食店、公共機関などの多さから利便性が高くコンパクトシティとも呼ばれています。しかし、実際には海や山などが身近にあり、自然も豊かで年間を通して過ごしやすい気候でもあることから、米や野菜、果物、畜産など多様な特産物や特産品が生産されています。今回は全国でも有名な特産物を中心に福岡県で愛されている特産物や特産品について紹介していきたいと思います。