群馬県の特徴的なご当地グルメ

草津温泉をはじめとした100か所以上の温泉地がある群馬県は、伝統的な祭りや富岡製糸場といった世界遺産も多数あり、訪れる観光客も多いです。また、特有の気候や土壌から小麦の栽培が盛んであるため、実は粉食文化の県でもあります。群馬県の特産品としては下仁田ネギやこんにゃくなどの農産物も有名ですが、飲食店やご当地グルメ、お土産などには多くの粉ものが取り扱われており、地元の方はもちろん観光客にも非常に人気が高いです。今回はそんな群馬県のご当地グルメや郷土料理に注目して紹介していきます。

水沢うどん

日本三大うどんの1つにあげられているのが群馬県の特産品でもある“水沢うどん”です。温泉地としても有名な伊香保町の水沢周辺で食べることが出来、歴史ある水澤寺の参拝道には水沢うどん商標登録店組合の加盟店13軒が約4㎞に渡り建ち並ぶ「水沢うどん街道」も有名な観光スポットとなっています。伊香保町は小麦の生産が盛んなうえに美味しい湧き水も豊富に採れる環境であるため、こだわりの小麦粉・塩・水沢の水のみでうどんを作っており、白く透明感のある麺はコシが強く、つるっとしたのどごしを感じられるのが特徴となっています。少し太めの水沢うどんは冷たいざるうどんで食べるのが一般的ですが、つゆの味やうどんの太さ、食感などはお店ごとに少しずつ違い、各店舗のこだわりを感じられるでしょう。

伊香保町は、年間を通して日照時間が長いことと土壌の水はけがよいことが重なり、小麦を栽培するのに適した環境であったため生産も盛んになりました。群馬県では古くからうどんを食べる習慣があり、安土桃山時代の頃から水澤寺に訪れた参拝客には手打ちうどんを振舞っていたと言われています。これが現在の水沢うどんの始まりとされています。その美味しさから通信手段のない当時でも口コミで全国に広まり、今では日本三大うどんの1つとして親しまれているのです。こだわりを持って作られる麺は、こねる・伸ばす・寝かせるといった工程を繰り返して行うことで強いコシが生まれ、多くのお店では自家製生麺を手打ちしているのも特徴となっています。中には、農家から分けてもらった小麦を石臼で挽き、うどんでは珍しい自家製粉をした小麦粉を使用しているお店もあり、うどん1つにこだわりを持っているのが分かります。そのためか、お土産用などで販売している水沢うどんには乾麺ではなく冷蔵生麺で販売しているものも多く、県内や近隣県ではスーパーなどで簡単に購入して美味しいうどんを食べることが出来ます。うどん好きの方にはもちろんですが、暑い日や伊香保温泉に訪れた際には、ぜひともこだわりと歴史の詰まった水沢うどんを堪能してもらいたいです。

ひもかわうどん/おっきりこみ

群馬県の郷土料理でもある“ひもかわうどん”は、うどんというよりもきしめんに近い幅広の麺をしており、何よりも見た目のインパクトが強いです。7~8mmが一般的なきしめんよりさらに太い麺が折りたたまれた状態で提供され、お店によって太さは違いますが、細くても1.5cm、太いものだと10cm以上あり、麺というより生地のような印象のうどんもあります。しかし、幅はあるものの厚みは薄く、約1mm程度しかないためのどごしがよく、麺の太さと相まって独特な食感を味わえるのが特徴です。きしめんのルーツともいわれている愛知県の平打ちうどん「芋川うどん」が訛って「ひもかわうどん」と呼ばれるようになったと言われていますが、詳しい起源までは分かっていないそうです。つけ汁につける食べ方が定番となりますが、出汁醤油をかけるぶっかけうどんやかけうどんなど温冷問わずにさまざまな方法で美味しく食べることが出来るのも、ひもかわうどんの魅力となっています。というのも、もともとは幅広の麺はおっきりこみという群馬県の郷土料理に使われていたため、麺の太さや温麺としても食べるのはその名残なのかもしれません。

おっきりこみとは同じく郷土料理の1つで、野菜と小麦粉で作った手打ちの幅広麺を鍋に入れて一緒に煮込んで作る家庭料理です。江戸時代中期頃から日常的に食べられており、庶民にとっては主食として親しまれていた料理でした。根菜を中心に季節の野菜を醤油や味噌ベースのつゆで煮込みますが、これといった決まりはなく、家庭によって使う野菜や味付けが違います。麺棒に巻いたうどんの生地を包丁で切り込みを入れながら鍋に入れることなどから「おきりこみ・おっきりこみ」と呼ばれるようになりました。幅広の麺はひもかわうどんと同じようにも見えますが、おっきりこみに使う場合は塩を入れずに生地を作り、煮こむ前提であるため3~5mmの厚みがあるのが特徴です。そのため、塩の有無や麺の厚みにそれぞれ違いがみられます。県内には別々にはなりますが、ひもかわうどんやおっきりこみを食べられるお店がいくつもあるため、店舗によるひもかわうどんの太さや味つけの違い、ひもかわうどんとおっきりこみに使う麺の違いを味わうことも出来ます。どちらも違った特徴や美味しさがあるため、食べ比べて違いを直接感じてみるのもおすすめです。

高崎パスタ

すいとんやおっきりこみのような郷土料理とは違いますが、近年「パスタのまち」として知名度を上げているのが高崎市です。高崎市には全国的に見てもイタリア料理店などパスタを提供しているお店が多く、その数約150店舗、人口比率としては東京に次いで2番目に多いのが群馬県になります。粉食文化である群馬県内では各地で粉もの料理が身近にあり、高崎市ではその中でもパスタがとても親しまれていました。“高崎パスタ”というのはメニューの名前ではなく、高崎市で食べられるパスタの総称として呼ばれています。全国でパスタのまちとして聞く機会が増えたのは最近ですが、地元ではパスタは昭和の時代からとても馴染み深い料理であったのです。毎年11月には市内のイタリア料理店が競い合い、その年の1位のパスタを決めるキングオブパスタというイベントも開催されており、2023年までに15回も開催するほど人気のイベントとなっています。

昭和後期に高崎市で創業した老舗のイタリア料理店が高崎パスタの始まりとされており、ここで修業した料理人たちが独立していったことで市内に多くのイタリア料理店が出来ました。そのため、各店舗ではそれぞれの料理人が考案したバラエティ豊かなパスタが食べられるため、必ずトマトを使用していないといけないというような決まり事などはありません。ただし、高崎パスタの特徴として1つ挙げられるのが量の多さです。一般的なパスタの量としては1人前80~100gが多いですが、高崎パスタは120~130gが主流となっており、中には200g前後で提供するお店もあるそうです。そのため、一番小さいサイズでもお店によっては一般的な量より多いこともあるため、初めて訪れる方はパスタの量やサイズを確認するのをおすすめします。市内のお店はどこもレベルが高く、トマト・オイル・和風といった定番のパスタから、カツやハンバーグが乗っているもの、創作性の高いものまで本当に多くのパスタを味わうことが出来ます。お店の雰囲気や評判から選ぶのもよし、賞を取っているお店を選ぶのもよし、ふらっと通りかかったお店に入るのもよしです。お店の多さからどこを選ぶか迷ってしまうかもしれませんが、どこのお店に入っても美味しいのが高崎パスタの魅力でしょう。

温泉まんじゅう

“温泉まんじゅう”とは、各地の温泉地でお土産などとして販売されているまんじゅうであり、小麦粉で作った薄皮に餡が包まれているのが特徴ですが、色や餡の味わいなどは各地の温泉地によって違うのも1つの特徴になっています。生地に温泉水を使っている、温泉の蒸気を使って蒸している、単に温泉地で販売しているからといったように、温泉まんじゅうと呼ばれる過程にはいくつかありますが、温泉の蒸気を使い蒸して作られる温泉まんじゅうが多い傾向にあります。特に群馬県には有数の温泉地があり、草津温泉や伊香保温泉で販売されている温泉まんじゅうが全国的にも有名です。詳しい詳細は不明のままとされていますが、伊香保温泉の温泉まんじゅうが発祥という説が強く、これといった土産物がなかった時代に伊香保温泉のお湯の色に似せてまんじゅうを作ったのが始まりとされています。

鉄分を含んだ茶色の見た目は黒糖や黒蜜を使って再現しており、代々受け継ぐ秘伝のレシピをもとに作られているまんじゅうも多いほど繊細な和菓子でもあります。昭和初期に視察に訪れた昭和天皇が大量に購入した事で伊香保温泉のまんじゅうの知名度が全国的に広がり、以降各地の温泉地では似たような茶色い温泉まんじゅうが多く販売されるようになりました。こういった知名度を広めた経緯があったため、伊香保の温泉まんじゅうが発祥という説が強いのです。温泉のお湯の色に似せた茶色のまんじゅうが多い伊香保温泉に対して草津温泉では、茶色に加えて白皮の2色で販売していることやいんげん餡・うぐいす餡を使っているもの、揚げまんじゅうなどまんじゅうのバリエーションが多くみられるのが印象的です。とはいっても、どちらの温泉地でも老舗のお店が多く、茶色い温泉まんじゅうを定番商品として販売しているため、餡の甘さや口当たり、皮の薄さなどの違いを食べ比べて好みの温泉まんじゅうを探してみて下さい。

焼きまんじゅう

一見みたらし団子のようにも見える“焼きまんじゅう”も群馬県の郷土料理の1つですが、大きさや食感などは全く違った食べ物になります。中身の入っていないまんじゅうを竹串に刺し、甘みのある味噌ダレを塗って焼いたものが焼きまんじゅうです。大きさは団子よりも一回りから二回り大きく少し平べったい形をしており、ふわふわもちもちとした中の食感とカリっとした外の食を味わえるのが特徴となっています。家庭で作るものというよりは、お祭りなどの屋台で販売されることの方が多く、甘辛い味噌ダレと焼いた時の香ばしい風味は群馬県のソウルフードとして年齢問わず広い世代に愛されています。

焼きまんじゅうは江戸時代末期に作られた味噌づけまんじゅうが発祥とされており、もともとは各家庭でお酒を造っていた時の副産物として作られた食べ物でした。そのため、発酵剤としてどぶろくを小麦粉ともち米に混ぜてパンのように発酵させてまんじゅうを作っていたため、当時としてはとても珍しい作り方として注目を集めていたのです。さらに、竹に刺した見た目が意表を突き、作られた当初から好評だったと言われています。ただし、各家庭で作られていた焼きまんじゅうをいつから商売用として誰が販売し始めたのかは不明となっています。甘辛い味噌ダレが特徴でもある焼きまんじゅうですが、最初は甘めの味付けではなかったと言われており、明治時代に入り黒蜜が輸入されるようになったことで現在のような甘辛い味付けへと変化いていきました。県内には今でも焼きまんじゅうを提供している茶屋や軽食店が多く、お祭りなどのイベント以外でも手軽に食べることが出来ます。焼きたてのうちは柔らかいものの、冷めてしまうと水分が抜けて硬くなってしまう特性を持っていますが、冷めても美味しく食べられるように工夫をしているお店が多く、古民家のような歴史や趣を感じられる店内の雰囲気も一緒に楽しめるお店も多いです。中には大正初期に創業してから100年以上も作り続けているお店もあり、各店舗ではタレや生地のこだわりを感じられるでしょう。見た目よりも軽く食べられてしまうため、軽食やランチのお供として焼きまんじゅうを食べてみてはいかがですか?