玉露とかぶせ茶

 日本茶として飲む機会の多い緑茶ですが、煎茶や玉露、番茶などの言葉を聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。ですが、一体なにが違うのかよく分からないという人も多いと思います。

一言で言えばすべて“緑茶”になります。緑茶の中には製造方法や栽培する過程の違い、収穫時期の違いなどにより種類が分かれており、その違いで煎茶や玉露、番茶などにも分かれていきます。ここでは、その中でも玉露についての特徴や産地についてご紹介していきます。

玉露とは

 日本茶の中でも高級品として有名なお茶の1つが玉露です。製造方法としては煎茶とほとんど変わらず、生葉を摘んだ後、蒸気で蒸して4段階の揉む作業を行い、最後に乾燥させて完成となります。では製造方法が同じ煎茶と玉露は何が違うかというと、茶葉を育てる過程に大きな違いがあります。

日本で最も多く生産されている煎茶は、屋外の畑で栽培される”露地栽培”と呼ばれる方法によって茶葉を栽培しており、太陽の日光をたくさん浴びて育てられています。日光を浴びることで光合成が行われ、葉に含まれるテアニンと呼ばれるアミノ酸がカテキンへ生成され、お茶の持つ渋みなどが出てきます。

ですが、玉露は新芽が出始める頃によしずなどを使って約20日前後、日光を遮って栽培していきます。さらに遮光具合も、初めは70%ほどから始まり最終的には90%ほどまで遮光して育てており、この作業が入ることでカテキンへの生成が抑えられ、テアニンの多い茶葉になることにより、渋みや苦みが少なくうま味が強い玉露の特徴として影響してきます。しかし、手間のかかる日光を遮る作業が増えることと、国内全体的に見ても生産している地域が少ないことが玉露が高級品として扱われている理由となっています。

玉露の茶葉は、煎茶より少し大きめの形をしており、お茶を淹れた時の水色は淡い黄色をしています。うま味と同時に甘みも感じられる味わいがあり、玉露の1番の特徴でもある「覆い香(おおいか)」と呼ばれる青海苔にも似た深みのある独特な香りがします。
玉露は少量のお湯を50~60℃くらいの低めの温度でお茶を淹れることにより凝縮したうま味を感じることが出来ます。はじめは、エスプレッソのように少量で濃厚な味わいを楽しみ、2煎目3煎目は徐々にお湯の温度を上げて淹れることでそれぞれまた違った味わいを楽しむことが出来るのも玉露が持つ良さの1つとなります。また、質の高い玉露はお茶を淹れた後の茶殻も、塩やぽん酢などをかけて美味しく食べることが出来ます。

玉露の主な産地

 玉露の主な産地としては、福岡の八女玉露、京都の宇治玉露、静岡の朝比奈玉露などが有名です。

福岡:八女玉露
福岡県八女市を中心に作られている八女茶はお茶の種類も多く生産しており、その中でも特に評判が良く日本で1番多く生産しているのが八女伝統本玉露です。八女玉露は伝統的な製法を使って作られており、甘み・うま味・香りのバランスがよくコクがあるのが特徴です。また、茶殻が美味しいのも八女玉露の特徴になります。どの玉露を買うか迷った場合は八女玉露がおすすめです。

京都:宇治玉露
抹茶で有名な宇治で作られる玉露は、玉露の中でも特に香りが良いのが特徴です。知名度としてはブランド並みに有名で品質も高いため、価格も高めなものが多いです。ですが、甘みやうま味が強くお茶として淹れた水色は透明感が高く、見た目も香りも味わいもクオリティの高いです。そのため余韻を楽しむことも出来ます。プレゼント用や自分へのご褒美として購入してみるのも良いかもしれません。

静岡:朝比奈玉露
八女・宇治に並ぶ三大玉露の産地として並ぶ朝比奈地区でのお茶の栽培は室町時代から始まっていると言われるほど古い歴史があります。他の玉露に比べるとすっきりとした爽やかな味わいと渋みが特徴で、濃厚な味わいの玉露の中では飲みやすい種類となっています。

かぶせ茶とは

 玉露に比べるとあまり聞き馴染みのないお茶として”かぶせ茶”と呼ばれるものがあります。かぶせ茶とは玉露と同じく、茶葉を育てる途中に日光を遮って栽培されたお茶です。玉露と違う点としては日光を遮る期間が違い、玉露が20日前後に対して、かぶせ茶は10日前後と短く、遮光具合も50%程度と玉露より低い環境で育てられています。

茶葉は煎茶に比べるとやや太めの形になり、水色としては玉露に比べると青みの強い黄緑色です。玉露ほど強くはありませんが、かぶせ茶にも「覆い香」があり、同時に煎茶のような清涼感のある香りも感じられ、爽やかでありながらまろやかな渋みとうま味を味わうことが出来ます。また、お茶を淹れる際のお湯の温度によって風味が変わるのもかぶせ茶の特徴であり、80℃前後のお湯で淹れると玉露に近い風味に、50℃程度のお湯で淹れると煎茶の風味にも近くなる何度も楽しめるお茶になっています。

産地としては、三重が1番生産量が多くかぶせ茶の国内全体量の3分の1を占めています。三重で作られたお茶の総称を伊勢茶と呼び、その中でも特に有名であるかぶせ茶は鈴鹿や四日市を中心に作られています。伊勢のかぶせ茶はうま味やコクが強く、香りが良いのが特徴になります。

かぶせ茶は玉露に比べると少し価格帯も低く手に取りやすくなっています。煎茶も飲みたいけれど玉露も試してみたいという人には1度飲んでもらいたいお茶です。

煎茶も玉露もかぶせ茶も同じ製造方法で作られていますが、栽培方法の少しの違いで風味や水色をはじめとした見た目などが大きく異なってきます。それぞれの持つ特徴が違うため、飲み比べて三者三様の美味しさの違いを感じてみて下さい。