穀物酢(米酢、米黒酢、大麦黒酢)の種類と違い

 穀物酢とは、米や小麦、トウモロコシ、酒粕などの穀物を主原料として作られているお酢です。一般的に言われるお酢やレシピに記載されている「お酢」は基本的にはこの穀物酢のことを指しています。今回は一般的に広く使用される穀物酢について解説をしていきます。

穀物酢とは?定義

 穀物酢はJAS規格(日本農林規格)により定めがあり、醸造酢の中で原材料として1種または2種以上の穀類を使用していることとされています。そして、その穀類の使用総量が醸造酢1リットルにつき40g以上でないと穀物酢と呼ぶことが出来ません。この穀物酢の中には主原料に米を使っているのか、麦を使っているのかでさらに分類を分けています。1リットルにつき原材料の米の量が40g以上のものを米酢、180g以上でかつ麦や大麦を加えたものは米黒酢、180g以上の大麦を使用したものを大麦黒酢と呼びます。今回はその種類と特徴をさらに細かく紹介していきます。

穀物酢の簡単な分類

・1Lにつき40g以上の米を使用:米酢
・1Lにつき180g以上の米を使用し麦や米を加え褐色または黒褐色:米黒酢
・1Lにつき180g以上の大麦を使用したもの:大麦黒酢

よく米黒酢と穀物酢は何が違うの?黒酢と穀物酢は何が違うのか?と思われる方もいますが、穀物酢の中にこれら3種のお酢が含まれます。一方でJAS法では米や小麦、トウモロコシ、酒粕などの穀物を1種か2種以上使用していると定義をしていますから、米酢、米黒酢、大麦黒酢に含まれない穀物酢も存在します。例えば、トウモロコシを主原料とするようなお酢は穀物酢でありながら、米酢、米黒酢、大麦黒酢でもないということになります。また1種類の穀物のみを使用している場合はお酢の前に純とつけ、純米酢というような表現をすることがあります。

穀物酢と米酢、黒米酢、大麦黒酢の違い

穀物酢と米酢、黒米酢、大麦黒酢の違い

 

米酢と穀物酢の違い

 冒頭、米や小麦、トウモロコシ、酒粕などの穀物を主原料とて作られるお酢のことを穀物酢と解説をしました。穀物酢が広く「お酢」として認知され販売されていることから、お酢=穀物酢という認識が一般的です。そのため、米酢、純米酢、米黒酢も穀物酢に含まれるお酢ではあるのですが、あえて一般的に知られる普通の「お酢」と区別するために、米酢、純米酢などと呼んだり、商品パッケージで強調したりしています。そのため、米酢という表記であれば、1リットルあたり40g以上の米を使用した穀物酢であると認識いただき、原料がより明確であることにこだわりたい、料理によって使い分けたいという場合には成分表示をよく見ると良いかもしれません。米酢の特徴などは下記で説明をします。

米酢/純米酢

 米酢とは、米を主原料に他の穀物を混ぜて作られるお酢です。穀物酢の中で原材料として米の使用量が穀物酢1リットルにつき40g以上のものを米酢と呼びます。主原料が米なため、米のうま味と甘さを感じるまろやかな味わいが特徴です。

 また米と穀物で作られた米酢に対して原材料が米のみで作られているお酢を「純米酢」と呼びます。米酢にはアルコールが入っているものがありますが、純米酢にはアルコールが入らず、より米の香りやうま味を感じ、口当たりもやわらかくなるのが特徴になります。
 どちらも主原料が米であることから、米酢は主に日本で作られており、日本で代表的なお酢の1つとなっています。よく、健康のために黒酢を水などで割って飲むことがあります。米酢も飲むことは出来ますが、料理に使用することが一般的です。料理の種類を問わずに使うことに向いていますが、お酢自体がまろやかなため、ドレッシングやマリネなどそのまま使う料理がおすすめです。また、酢のものや酢飯、漬物など和食に使われていることが多いお酢となります。

 米酢は穀物酢の一種だと冒頭にも解説をしました。同じく鹿児島県で生産が盛んな黒酢も米が原料であることから穀物酢の一種になります。しかし米酢は精米した米を原料とするのに対して、黒酢は玄米を原料としています。また鹿児島県の伝統的な手法で熟成期間が1〜2年と通常のお酢よりも長く、長期間による熟成を経ることからトロミとコクのあるお酢ができます。

米黒酢

 米黒酢はお酢によっては一緒に小麦や大麦を混ぜて作られているものもあります。米の使用量が穀物酢1リットルにつき180g以上であり、発酵および熟成によって褐色または黒褐色に着色したものでないと米黒酢に含むことは出来ません。
米黒酢は他お酢に比べると少しクセがあり色も褐色や琥珀色をしています。ですが、熟成されているため、風味豊かで角がなくまろやかな味わいが特徴になります。また、主原料が玄米のためビタミンやミネラル、さらにアミノ酸が豊富に含まれています。

 元々中国から伝わったと言われている黒酢ですが、中国では香醋(こうず)と呼ばれ、もち米を使って作られているのが特徴です。黒酢といえば中華料理をイメージする人も多く、酢豚や手羽煮込みなどの料理との相性がとても良いです。こってりした料理が苦手な人はドレッシングやマリネに使うとコクや風味が出て違った味わいになり、取り入れやすくなります。
また、美容や健康のため毎日摂取したい人には水やお湯で10倍ほど薄めて飲むのがおすすめです。

米黒酢と黒酢の違い

 米酢は穀物酢の一種だと冒頭にも解説をしました。同じく鹿児島県で生産が盛んな黒酢も米が原料であることから穀物酢の一種になります。しかし米黒酢は精米した米を原料とするのに対して、黒酢は玄米を原料としています。そのためJAS法によれば米の精米状態までは定義されていないため、黒酢も米黒酢または米酢に含まれるお酢の種類にはなりますが、玄米を使用した伝統的な特別なお酢という位置づけになります。また鹿児島県の伝統的な手法で熟成期間が1〜2年と通常のお酢よりも長く、長期間による熟成を経ることからトロミとコクのあるお酢ができます。

大麦黒酢

 大麦黒酢は穀物酢の中で原料が大麦のみを使って作られたお酢です。大麦の使用量が穀物酢1リットルにつき180g以上であり、発酵および熟成によって褐色または黒褐色に着色したものを指します。大麦黒酢は黒酢に比べるとクエン酸やグルタミン酸などが豊富に含まれており、香ばしい香りとコク、まろやかな味わいが特徴となっています。

 日本ではあまり馴染みがない麦を使ったお酢ですが、海外では大麦と小麦やトウモロコシを混ぜて作った「モルトビネガー」が有名です。イギリスでは欠かせないポピュラーなお酢で、フィッシュアンドチップスと言えばモルトビネガーと言われるほど親しまれています。フライや肉料理と相性が良く、脂っこさを抑えつつ風味を出してくれる特徴を持っています。イギリスだけでなく、ヨーロッパを中心に洋食でよく使われており、麦芽特有のビールのような香りと苦みも持ち合わせています。

大麦黒酢は米黒酢と同じく薄めてそのまま飲むのが1番簡単に取り入れやすいです。水やお湯以外にも炭酸や牛乳、豆乳やオレンジジュースで割るとより美味しく飲みやすくなります。料理では鶏肉のソテーなどに使うと相性が良いですが、どの料理に使っていただいても美味しくいただくことが出来ます。

番外編:赤酢(粕酢)

 穀物酢や米酢、黒酢は普段の生活でも馴染み深いですが、赤酢と言うものを聞いたことがありますか?
文字通り、赤みがかった色をしたお酢です。たまに、お寿司屋さんで赤酢を使ったピンク色のシャリを出しているお店がありますが、そのほとんどの用途は酢飯に使っているお酢になります。
 
 赤酢は日本酒を作ったときに出る”酒かす”を再利用して作られた日本特有のお酢となり、米酢よりさらにマイルドでお酢特有のツンとしたにおいが少なく、香りが良いのが特徴です。その理由として、熟成期間がとても長いのです。通常の米酢は3~4か月、熟成させている黒酢でさえ6か月~1年が一般的です。伝統的な黒酢を作っている所でも3年ほどになります。それに比べて赤酢は、酒かすを寝かして熟成させるのに2~3年かかり、そこからお酢になるまでに合わせて3~4年かかります。そのため、刺激臭が少なくコクが出ます。風味が良く、ものによっては醤油のようなさらに濃い色になるのも特徴です。あまり流通されておらず、作るのに時間がかかるため高価なお酢となっています。触れる機会が少ないお酢ですが手に入れた場合は濃厚なため、そのまま飲むより料理や隠し味として使うのがおすすめです。

ここでは、醸造酢に含まれる穀物酢についてお話してきました。
穀物酢の中でもお酢の種類によって、風味や味わい、クセ、栄養価などが違ってきます。料理や用途によって使い分ける方がよりお酢の良さを感じたり効果的に取り入れることが出来ます。ですが、料理や普段使いに困ったら1番一般的で万能に使える穀物酢を選んでおけば間違いありません。ぜひ、好みのお酢を普段の生活に取り入れてみて下さいね。