抹茶とてん茶(碾茶)の関係

 近年、カフェのメニューやスイーツなどのお菓子に使われたりと幅広く好まれている抹茶は、日本だけではなく海外でも多くの人に愛されています。少し前までは、茶道やお茶屋などでしか飲む機会がなく、少し敷居の高いイメージがありました。しかし、2000年代に入る辺りから飲料などに使われることが増えはじめ「抹茶ブーム」が起こったことをきっかけに、抹茶ラテやアイスクリーム、抹茶を使ったスイーツがたくさん増えました。現在でもその人気が衰えることはありません。そんな抹茶はどのように作られているのか製造方法や特徴などをご紹介していきます。

抹茶とてん茶の特徴

 抹茶の1番の特徴としては、粉末状であるということです。茶葉を石臼や微粉砕機を使って粉末状にしたものが抹茶になり、この抹茶の原料となるのがてん茶(碾茶)と呼ばれる緑茶です。中国茶の種類に甜茶という種類がありますが、別物になります。てん茶は抹茶の原料として作られた茶葉のため、他の緑茶と違いお茶としてそのまま飲むことはありません。また、日本で育てられた茶葉でなければ抹茶と呼ぶことが出来ず、抹茶に似たような粉末状のお茶があったとしても、国外で作られたものであれば抹茶と呼ぶことは出来ません。

原料のてん茶は玉露と同じく、茶葉を育てる途中で日光を遮って栽培されています。光合成が行われることにより、茶葉に含まれるテアニンと呼ばれるアミノ酸がカテキンに生成され、緑茶の渋みなどが生まれます。しかし、日光を遮って育てられたてん茶はカテキンへの生成が抑えられ、渋みが少なくうま味が強い茶葉となります。また、遮光する期間も玉露が20日前後なのに対し、同じくらいの期間またはそれよりも少し長い期間遮光するため、より強いうま味が生まれます。さらに、てん茶は抹茶の原料として茶葉がそのまま粉末状となって使われ、茶葉の持つ豊富な栄養分をそのまま摂取出来ることから昔から良薬とされており、現在でもスーパーフードとして注目されています。

てん茶・抹茶の産地

京都:宇治抹茶
抹茶として有名なのが京都の宇治です。日本のてん茶の生産量としては40%弱と1番多く、宇治茶で作られた抹茶は品質も高く、まろやかで渋みが少ないのが特徴です。宇治での抹茶の歴史は鎌倉時代から続いており、歴史あるお茶の1つでもあります。京都・奈良・三重・志賀で作られたてん茶を京都で加工された抹茶のみ宇治抹茶と呼ぶことが出来、日本で1番品質が良いと言われているのも宇治抹茶になります。

愛知:西尾茶
生産量が2番目に多い産地として知られているのが愛知の西尾です。“西尾の抹茶”はブランド名としても有名で、特にてん茶の生産に力を入れています。温暖な気候と恵まれた環境で育てられた西尾の抹茶は色が濃く、強い香りと上品な甘みやうま味も強く感じられる味わいとなっています。

他にも、静岡や鹿児島、奈良、福岡でもてん茶の栽培がされています。

抹茶の品質と点て方による違い

 抹茶は茶葉を育てる過程で手間がかかっており、石臼で挽いた場合1時間に30gほどの少量しか挽くことが出来ないため、高級品となっています。高級品である抹茶の中にはさらに品質が高いものから低いものまであります。品質の高いものは、粉末の色が鮮やかな緑色をしており、香りやうま味が強く渋みが少ないです。品質の低いものは、高いものに比べると粉末の色が赤みや白みのある緑色をしており、香りやうま味が弱くなります。抹茶によっては渋みや苦みも感じられます。抹茶は長期間保存がきかないため、てん茶の茶葉の状態で保存され必要に応じて粉末状に加工されます。保存方法や状態がいいものは茶葉が熟成され、上質な抹茶ほどこの熟成が品質に大きく影響されていることが多いです。

粉末状の抹茶は、緑茶とは違った淹れ方をします。抹茶の場合、点てる(たてる)という言い方になり、専用の茶碗や茶器を使って点て、使う抹茶の量よって味わいも大きく変わってきます。

一般的な抹茶としては「薄茶」と呼ばれるサラっとした抹茶で、泡立てるように点てられ、甘いお菓子と合わせていただきます。もう1つは、薄茶の2倍の量の抹茶を使う「濃茶」です。濃茶は点てるではなく“茶を練る”という言い方をし、濃茶専用の抹茶を使います。そのため、とても濃厚なお茶となり、質の低い抹茶を使うと渋みが強くなってしまうため、上質な抹茶や甘み・香りが良い抹茶を使うことが多いです。近年では茶事や茶会以外でも抹茶が飲めるお店が多く、基本的には飲みやすい薄茶を提供していることが多いです。お店によっては濃茶を提供しているお店もあるため、初めて抹茶を飲む場合には薄茶を、慣れてきたり薄茶との違いを味わいたい場合は濃茶を試してみると良いでしょう。

抹茶は産地の違いだけでなく、抹茶の淹れ方によっても大きく味わいが変わってきます。コンビニやカフェなどで手軽に抹茶ラテなど飲みやすいものを味わうことも出来ますが、タイミングがあれば伝統的な本来ある姿の抹茶を味わってぜひ日本の文化にも触れてみて下さい。