米の産地 新潟県のユニークな特産物と郷土料理

豪雪地帯としても有名な新潟県は伝統的な祭りや行事も多く、中でも長岡まつりは正三尺玉などのスケールの大きい花火があがり、日本三大花火の一つとしてもとても人気があります。また、日本海に面しているため、新鮮で豊富な海産物を楽しめるだけでなく、自然も豊かで気候や地形から日本一の米どころとしても有名です。今回はそんな、新潟県で生産されている特産物や馴染み深い郷土料理について紹介していきます。

米/日本酒

新潟県の特産物として特に有名なのが“米”です。新潟県といえばお米、お米と言えば新潟県というほど印象が強く、収穫量だけでなく米の栽培面積も合わせて日本一となっています。新潟県は日本海側に位置しており積雪量も日本で1番多い豪雪地帯ですが、5月~10月の日照時間は東京よりも長く、稲が太陽の光をしっかり浴びるためお米がよく育ちます。また、6月~8月の気温が高く昼夜の温度差も大きいことや粘土質の土壌・雪解け水などには栄養が豊富に含まれているなど恵まれた気候や環境が米作りに適しており、さらに長年にわたって改良してきた生産者の努力などが美味しいお米を作るのに大きく影響しているのです。

新潟県では長年トップブランドとして多くの人から親しまれている「コシヒカリ」をはじめ、新之助・こしいぶき・つきあかり・あきだわらなど多くのブランド米や品種が作られています。これらのお米は柔らかさや味、粘り具合などそれぞれの特徴が大きく違うため、自身の好みだけでなく料理に合わせて選べるのも種類が多い新潟米ならではのよさとなっています。また、収穫時期や粒の大きさ、冷めた後の食感などにも差があるため、どのタイミングで購入するかや使い勝手のよさによって選択するのもよいでしょう。近年は6~10種類のブランド米や品種をセットにした商品も販売しているため、食べ比べする場合や贈り物として使うのもおすすめです。

米と並んで特産品として愛されているのが“日本酒”です。主原料のお米が美味しいうえに県内に流れる湧き水や雪解け水は硬度が低い軟水であるため、新潟の日本酒はきめが細かくまろやかなお酒に仕上がります。さらに、気温の低い中時間をかけながら発酵させて作ることですっきりとした味わいが生まれるため、新潟県の日本酒は飲みやすくクセの少ない「端麗辛口」の種類が多いのも特徴となっています。県内の日本酒生産量は日本で3位、酒造の数は日本一多く個人事業も含めると1,500を超えると言われており、約1000年も前から日本酒造りが行われてきたとされているのです。そのため、端麗辛口が多いといっても甘口やコクの強いもの、パンチの強い個性的なものなどジャンルも幅広くあり、酒造や作られている地域の特徴を感じられる日本酒も多くあります。試飲や飲食店で飲んで好みの日本酒を探すのがおすすめですが、種類が多すぎて選びきれない場合は八海山や久保田など一度は耳にしたことがある有名な銘柄を選択すれば間違いないでしょう。新潟県の日本酒は品質が高くどれも美味しいと評判であるため、パッケージのデザインなどで選択するのも新しい発見があって楽しいかもしれませんよ。

笹団子

“笹団子”とは、笹の葉に包まれた俵形のよもぎ団子のことになります。基本的には中にあんが入っているため新潟県の銘菓として人気がありますが、名産品やソウルフードとして地元の方にはもちろんのこと、新潟を訪れた際のお土産や近年は海外にも輸出されるなど国内外問わずに人気が高いです。笹の葉に包まれた団子はスゲやイグサなどの植物を乾燥させた紐で両端が結ばれているため、キャンディーのような見た目をしており、片方だけをほどいてバナナのように笹をむいて食べます。そのため、手を汚さずに食べることが出来るのも笹団子の特徴となっており、同時に笹とよもぎのさわやかな香りを感じられるのは笹団子ならではの楽しみ方でもあるでしょう。両端に加えて中身の飛び出し防止のために中央も紐で結ばれていることが多いですが、地域によっては結ばれていない笹団子もあります。

笹団子は今から約500年も前から新潟の中越・下越地方を中心に福島県や山形県などの隣接した土地でも食べられており、現在もお祭りやハレの日などの行事ごとの際には一般家庭でも作られています。笹には殺菌作用があるため戦国時代には携帯保存食として重宝され、上杉謙信も愛用していたとされています。また、年貢米として使えない古米を美味しく食べるために生まれた郷土料理という説もあることから、もともとは中にあんではなくきんぴらやひじき、おかかなどの惣菜が入った主食に近い食べ物として食べられており、惣菜入りや中身なしのものを「男団子」、あん入りのものを「女団子」と呼び分ける地域もあります。砂糖が手に入りやすくなった明治時代頃からあん入りのものが増えていき、定番の中身として定着していきました。さらに、昭和39年に新潟県で開催された国体では新潟土産の和菓子として推奨したことで全国的に知名度が増し、現在でも銘菓やお土産として人気・需要が高いのです。県内ではスーパーや道の駅、サービスエリアなどさまざまな場所で購入出来ますが、老舗の団子屋も多く、国内産の素材を使ったこだわりが詰まった笹団子を購入することが出来ます。ぜひ、新潟県に訪れた際には老舗のお店まで足を運んで一味違う美味しい笹団子を味わってみて下さい。

へぎそば

新潟県には魚沼地方発祥の“へぎそば”という郷土料理があります。名前の通りそばではありますが、一般的なそばと違いつなぎとして海藻の1種である「布海苔(ふのり)」をそば粉に練り込んでいるため、緑がかった色をしており、コシが強くツルツルっとした滑らかなのどごしを味わえるのが大きな特徴です。磯の風味が感じられる分そばの香りが弱くなり、食感も稲庭うどんに近いと言われていることから、そば好きの方だけでなくそばの風味が苦手という方でも食べやすいとされています。また、剥ぎ板から作られる四角い器に一口大に丸めたそばが綺麗に並べられている盛り方も1つの特徴となっており、剥ぐという言葉が訛って「へぎ」と呼ばれていたことからへぎそばという名前がつきました。

新潟県でのそばの栽培は魚沼地方を中心に江戸時代から始まったと言われています。この地方ではカラムシと呼ばれる植物から作られる織物が盛んであり、その緯糸を張るために使用されていた布海苔を使ってそばを作れないかと考えたのがきっかけでへぎそばが誕生しました。特有の盛り方は「手振り・手繰り」と呼ばれる方法で、糸を撚り紡いだ「かぜぐり」をもとに発案されたと言われており、織物産業が盛んだった土地だからこそ生まれた盛り方になります。そのため、へぎと呼ばれる器に盛り付けられていないお土産用のそばは、お店やメーカーによっては“布海苔そば”や“手繰そば”と呼び分けていることもあります。さらにもう1つへぎそばにはおもしろい特徴があり、そばの薬味には定番のわさびではなくからしが使われているのです。これは、発祥の魚沼地方ではわさびが採れなかったためからし菜から作られるからしが使われるようになり、わさびが手軽に手に入る現在でもお店によってはからしのみの場合や、わさびとからし両方を選択出来るお店も多くあります。個性豊かなへぎそばは風味や食感の違いからそばのイメージがガラッと変わるため、食べたことのない方や苦手意識のある方にはぜひ一度食べてみてもらいたいです。

柿の種

お酒のおつまみだけでなくおやつとしても幅広い年齢層に食べられている“柿の種”ですが、実は新潟県で生まれた米菓というのをご存じでしょうか?長楕円形の粒状をした形状と辛みのある醤油味が特徴の柿の種は、色や形が柿木(カキノキ)の種子に似ていることからその名前が付けられました。形のバリエーションはありませんが、大きさや長さ、太さなどはメーカーや商品によって異なり、反対に味のバリエーションは非常に豊富です。定番の醤油味は辛さが弱いものから激辛のものまで幅が広く、他にも梅味や塩味、わさび、チーズ、ご当地の特産品を使った限定味などがあります。現在はピーナッツが入った柿ピータイプの方が一般化していますが、ここ近年では単体タイプも増えています。また、辛みのある柿の種とチョコレートの相性がよいことから、チョコがコーティングされているものや砕いた柿の種がチョコレートに混ぜ込んであるものなど甘い種類の柿の種も非常に人気が高いです。

「元祖柿の種」として現在の柿の種の軸を作ったのが県内にある浪花製菓です。現在も全国的に人気の高い浪花製菓の柿の種ですが、あられを作るための小判型を踏んでしまい、ゆがんだ形のままあられを作ってみたことがきっかけで柿の種は生まれました。大正14年に商品化したことで世間に広まりますが、商標登録をしなかっただけでなく製法も公開されたため多くのメーカーで商品化され、一般名称として認知されるようになっていきました。もともとはどのメーカーも柿の種のみで販売していましたが、亀田製菓がピーナッツを入れ酸化しにくいよう小分けにして販売したことで需要が高まり、より身近なものへと変化していきます。柿の種の発祥となった浪花製菓も全国のお茶の間に浸透させた亀田製菓も新潟県の会社であるため、柿の種は新潟県の代表的な銘菓として認知されているのです。

柿の種の人気は衰えるどころか、さまざまな形として続々と商品化されており、ふりかけやオイル漬けなどお菓子としてではなくごはんのお供として販売しているもの、さらにはスターバックスをはじめとする企業や他社の製菓会社とのコラボ商品にも柿の種が使われることが多々あります。2017年にはJAXAとの共同開発をした柿の種が宇宙食としても認定されており、中国やアメリカなどの海外進出も行われ、今や日本のみならず海外でも認知が広まっているのです。また、柿の種専門店では定番の味から今までにありそうでなかったオリジナルフレーバーや違う種類のナッツを入れた商品を扱ったことで話題となり、パッケージのデザイン性なども含めて贈答品としても重宝されています。年々新な形が提案される柿の種ですが、お米の美味しい新潟県ならではの柿の種が県内にはたくさん販売されているため、ぜひ元祖柿の種と一緒にこだわりの柿の種をチェックしてみて下さい。

のっぺ

新潟県の郷土料理である“のっぺ”は里芋を使ったとろみのある煮物であり、にんじんやさやえんどうといった野菜、鶏肉、きのこ、こんにゃく、かまぼこ、銀杏など色とりどりの具材が使われています。県内全域で食べられている家庭料理でもあるため、各家庭によって使われる具材やダシなどに違いがみられるのも特徴です。全国的に広く食べられている郷土料理にのっぺい汁がありますが、名前や使われている具材は似ているものの、のっぺは煮物、のっぺい汁は汁もの、さらに食べられている地域差があることから別物となっています。お祝いの際には生のイクラが添えられることがありますが、青味として定番で使われるさやえんどうが採れない時期にとと豆と呼ばれる加熱したイクラが使われるのも地域特有の特徴となります。

のっぺは煮物ではありますが、地域や季節によって温かく食べる場合も冷たくして食べる場合もあります。これは昔、雪のたくさん降った日など外出が出来ないような日にのっぺをたくさん作り、冷蔵庫替わりとして雪の中に鍋ごと入れて保存していた名残から今でも冷やして食べる風習が残っていると言われているのです。また、煮汁をにごらせないようあまり煮込みすぎず、ダシを中心に醤油やみりんなどで軽く味つけをするため素材の色が鮮やかに残っているのも特徴です。近年は居酒屋・小料理屋などでも提供していることが多く、季節や時期を問わずに年中通して食べられる機会が増えていますが、もともとは正月や祭り、法事など冠婚葬祭の場で食べられる料理でした。そのため、祝い事の際には、野菜を丸や太めの短冊に切る・具材の品数を奇数にしない、仏事の際には、乱切りや三角切り・細い短冊などそれぞれの切り方に特徴が出るのものっぺならではとなっています。また、地域によっても呼び方や切り方、具材の種類・品数の多さ、片栗粉を使ってとろみを出すなどの違いが見られます。新潟県では非常に馴染み深く煮物の中でもあっさりとしているのっぺは、各家庭でも簡単に作ることが出来るため、食卓に色どりを持たせたい時などには作ってみるのもおすすめです。鮭やホタテを使うレシピもあり、より一層華やかになるため普段の料理だけでなくお祝い事の際にも新潟県の郷土料理を作ってみてはいかがでしょうか。

ぽっぽ焼き

新発田市や新潟市など下越地方を中心とした地域には子供から大人まで幅広い世代に愛されているお菓子があります。それが“ぽっぽ焼き”です。馴染みのない方からすると名前からはどのようなお菓子か想像しにくいですが、ぽっぽ焼きは細長い棒状の形をしており、一見カステラのようにも見えますが食感はモチっとしたパンに近いお菓子になります。そのため、“蒸気パン”と呼ぶ地域もあり、特有の食感と黒糖の素朴で優しい甘さから地元の方からは絶大な人気があります。基本的には、お祭りやイベント、スーパーの駐車場などに屋台として出店していることが多く、3本あたり100円、10本で300円~400円程度と価格も安価であるため屋台を見つけると行列になっていることも多いです。しかし、県内でも下越地方のある北部ではソウルフードともなるほど人気がありますが、南部に下っていくにつれてぽっぽ焼きの屋台出店数は減り、地域によっては食べたことがないという方がいるのもご当地ならではのお菓子になっています。

ぽっぽ焼きは明治の終わり頃、もともと城下町だった新発田市で誕生したと言われています。銅製の「カマ」と呼ばれる専用の焼き機に生地を流し込み焼いて作られますが、このカマには煙突がついており、ここから蒸気が出る様子が蒸気機関車を連想させることや客寄せのために蒸気口に笛を取り付けてポーポーという音を鳴らしていたことなどから、昭和後期頃からぽっぽ焼きと呼ばれることが増え浸透していきました。焼き機から蒸気が出ることから蒸し菓子や蒸しパンと間違われることもあるそうですが、生地自体は焼きのみの工程となり、蒸し焼きをしているわけでもありません。そのため、発祥地の新発田市周辺では、ぽっぽ焼きの名前が浸透する前の蒸気パンという名称で現在も親しまれています。材料や作り方はとてもシンプルであるため、家庭でも簡単に作ることが出来、卵焼き用の四角いフライパンなどを使えば形も似せることが出来ます。また、新潟市内には数店舗ですが常設しているお店もあり、催事以外でも焼きたてのぽっぽ焼きを購入出来ることや屋台では提供していないチョコチップ入りのものや揚げてあるものなどアレンジをしたぽっぽ焼きを食べることも出来ます。お店によっては日持ちするように真空パックになっているものやカステラタイプとして販売している商品もあり、お土産として購入していく人も多いです。新潟県では大きなお祭りも多くお祭りのために訪れる方も多いため、屋台で見かけた際にはお祭りのお供として購入してみて下さい。きっとその懐かしく素朴な味に魅了されるはずです。