沖縄県の定番のグルメ・名産品

かつて琉球王国という独立した国家であった沖縄県は、中国をはじめとするアジア諸国との貿易が盛んであったため沖縄にしかない文化が多数存在します。食文化もそのうちの1つで、食べたことのあるものから名前や見た目からでは想像しにくいものまでさまざまです。今回はそんな独自の食文化の中でも定番のグルメや特産品について紹介していきます。

沖縄そば/ソーキそば

沖縄県を代表するグルメの1つが沖縄そばです。そば粉ではなく小麦粉から作られる太めの麺は、豚骨とかつお節から取ったダシの旨みが強いスープとの相性が非常によく、濃厚でありながらもあっさりした味わいが特徴の麺料理です。トッピングには、豚の三枚肉・かまぼこ・ネギ・紅ショウガを使うことが定番ですが、地域よって麺の細さやトッピングの種類が変わり、スープの味わいも店によって変わるのも特徴になっています。

あっさりした沖縄そばの味わいは時間帯関係なく食べることが出来るため、地元では朝食として食べることも日常です。ソウルフードとして長いこと親しまれている沖縄そばは、今から約500年前に琉球王国・国王の四十九日供養のために献上された粉湯(汁そば)が沖縄そばの起源となっており、その後に中国や台湾から伝わった中華麺の製法を独自に改良したことで現在の形に変わっていったとされています。明治中期頃に沖縄そばのお店が出来たことをきっかけに徐々に店舗数が増え、現在県内には300店舗以上の沖縄そばのお店が存在しています。

沖縄そばに並んでよく耳にするのがソーキそばですが、沖縄そばのトッピングに使われている三枚肉が“ソーキ”と呼ばれる醤油や砂糖で煮込んだスペアリブに変わることでソーキそばになります。他にも、アオサが加わるとアーサそば、野菜が入ると野菜そば、宮古島で食べられているそばが宮古そば、八重山地域で食べられているそばが八重山そばというように、麺やスープ、トッピングの違いが出ることで名前が変わり、これらの総称としても沖縄そばという名前が使われています。このように非常にシンプルでありながらも、アレンジが自由で豊かなのが沖縄そばであるため、いろいろなお店の沖縄そばを食べて店ごとの違いや地域による違いも楽しんでみて下さい。

ジューシー

沖縄県の代表的なグルメである沖縄そばですが、そのサイドメニューとして多くのお店で取り扱われているのが“ジューシー”です。名前からは、フルーツのみずみずしさや肉汁があふれ出るといった印象を持ちますが、沖縄では炊き込みごはんのことをジューシーと呼び、“じゅーしー”や“じゅうしい”といった表記をすることもあります。お米に豚肉・にんじん・ひじき・かまぼこ・しいたけといった沖縄では馴染みのある食材を豚のダシ汁で一緒に炊いた郷土料理です。細かく言うとごはんの硬さによって名称が変わり、硬さのある炊き込みごはんをクファジューシー、柔らかい雑炊タイプをヤファラジューシーと呼んでいますが、一般的に飲食店で出されるジューシーは炊き込みごはんであることが多いです。

本来は家庭料理の1つとして日常的に食べられている料理であるため、各家庭によって味付けが違うのも特徴です。また、お盆の初日や冬至といった特別な日には葉ショウガや田芋といった普段は使わない食材を加えて作り、行事料理や祝い料理としても食べられています。県内ではスーパーやコンビニに並んでいることも多く、簡単に作れるレトルトタイプも販売しているほど沖縄県では身近な料理であるのです。

他にも、よもぎの一種であるフーチバーやニラといった葉物を一緒に炊くことも多く、イカ墨を入れたジューシーや雑炊ではなく炊き込みごはんにダシ汁をかけて食べるタイプなどバリエーションが豊富なのも人気の理由の1つになっています。

お店で提供しているジューシーにもお店ごとのこだわりや味付けといった違いがありますが、基本的にはそのお店の沖縄そばに合うように作られていることが多く、家庭で食べるジューシーやスーパーなどで販売しているジューシーとはまた違った美味しさを味わえるでしょう。沖縄料理の人気は県外でも高く沖縄以外でも食べられるお店はたくさんありますが、意外とジューシーを置いているお店は少なため、ぜひ沖縄に訪れた際には沖縄そばだけでなく一緒にジューシーも頼んでその美味しさを味わってみるのもおすすめです。

豆腐(島豆腐/ジーマーミ豆腐)

普段から食べる機会の多い豆腐ですが、沖縄県には独自の文化が加わった豆腐や豆腐料理がいくつもあります。はじめに、沖縄料理でかかせないのが“島豆腐”です。沖縄豆腐とも呼ばれる島豆腐はゴーヤチャンプルーをはじめとした炒め物や煮物、汁物といったさまざまな料理に幅広く使われています。

一般的な豆腐とは違った製法で作られているため木綿豆腐よりさらに硬く、炒め物や煮物などに使っても崩れにくい性質をもっています。凝縮して作られるため大豆の風味と旨みも強く、木綿豆腐と比べても3倍近い重さがあるため非常に食べ応えがあるのが特徴です。さらに、伝統的な製法により海水を使っていることから塩味を感じる味わいは一般的な豆腐では味わえない風味があり、ミネラルやビタミンと言った栄養も豊富に含まれていることから沖縄では長寿食品として昔から親しまれています。

県内のスーパーで購入することが出来ますが、その販売方法も少し違い、熱々の島豆腐が袋に入った状態で販売されるのです。水にさらさない分、旨みが逃げず美味しさが詰まった島豆腐は、製造業者からの入荷を狙って購入しに人が多いほど人気が高いです。

この島豆腐と正反対の特徴をしているのが“ジーマーミ豆腐”です。沖縄料理店でもメニューでよく見かけるジーマーミ豆腐は甘さがあり、もちもちした食感とトロっとした口当たりはつまみだけでなくデザートとして食べられることもよくあります。ジーマーミとは沖縄の方言で落花生のことであり、大豆やにがりを使う一般的な豆腐とは違い、落花生の搾り汁と芋くずを練り上げて作る胡麻豆腐に近い料理です。落花生の風味を感じるジーマーミ豆腐には醤油と砂糖を使った甘めのタレをかけて食べるのが定番となっていますが、近年は黒糖や紫芋をベースにした甘いタレやチョコ味のタレ、ハチミツなどをかけることが増えており、よりスイーツに近い感覚として食べる人が増えています。

他にも、島豆腐を作る途中の豆乳ににがりや海水を加えて、固まる前のふわっとした状態の豆腐にカツオ出汁や醤油をかけて食べる“ゆし豆腐”や水気の少ない豆腐を麹や泡盛でじっくり発酵させた“豆腐よう”という珍味なども沖縄料理では定番の豆腐料理であり、地元の方だけでなく観光に訪れた人の間でも広く食べられています。

ちんすこう

子供から大人まで年齢問わずに好きな人も多いお菓子が“ちんすこう”です。優しい甘さとサクッとした食感やほろっとした食感を楽しむことが出来るちんすこうは、今でこそ手軽に食べられるお菓子ですが、昔は琉球王国の貴族でもお祝い時にしか食べられない貴重な焼き菓子だったそうです。一般人が食べられるようなお菓子ではなかったことから、ちんすこうの“ちん”には珍しいや高価なという意味合いがあり、お菓子という意味の“すこう”と合わせて珍しいお菓子や高価なお菓子ということからその名前がついたとされています。

琉球王国の頃から食べられていたちんすこうは、今から約500年以上も前に中国から伝わったとされています。しかし、当時のちんすこうは現在のクッキーのようなものではなく、チールンコウと呼ばれる中国風の蒸しカステラでありました。明治後期頃に今まで蒸して作っていたちんすこうをレンガ釜で焼いてみたことで現在のサクっとした形が生まれたとされているため、ちんすこうの歴史は古いものの現在の形に変わってからはまだ100年ほどしか経っていないのです。

ちなみに、よくクッキーと間違われますが、卵やバターを使って作るクッキーと違い、ちんすこうはラードを使って作られるため特有の食感が生まれます。プレーン・紫芋・黒糖を定番に塩・ミルク・ココナッツ・パイン・抹茶・ごま・チョコ・シークワーサーなど年々味の種類も増えており、メーカーによっては食感の違いも感じられるため、お気に入りのちんすこうを見つけてみるのも楽しいですよ。

サーターアンダギー

丸い形をしたサーターアンダギーは沖縄県を代表する伝統的なお菓子です。沖縄版ドーナツとも言われているサーターアンダギーは、中はふわっと、外はカリッとした食感と優しい甘さが特徴です。沖縄の方言で“砂糖=サーター、油=アンダ、揚げる=アギ”という意味があり、卵以外の水分を加えずに時間をかけて揚げることが時間が経ってもパサつかず日持ちする特徴に繋がっています。そのため、調理済みのサーターアンダギーを商品として販売しているものも多く、専用のミックス粉と合わせてお土産用として購入する方も多いです。

小麦粉・砂糖・卵を使った生地を丸め、低温でじっくり揚げることで花のように割れた形に仕上がり、この見た目が花が咲いたように見える・笑った顔のように見えることから、福を呼ぶ縁起のよいお菓子として結婚式などの祝いの席でもよく食べられています。那覇市を中心に県内には惣菜屋やカフェなどっを中心にサーターアンダギーが食べられるお店や専門店がいくつもあり、出来立ての美味しさや紫芋・黒糖・ごま・かぼちゃと言ったプレーン以外の風味を味わうことが出来るのも現地ならではの醍醐味です。正確な起源は分からないとされていますが、ちんすこうと同じく琉球王国の時代に中国から伝わったと言われており、中国の開口笑という揚げ菓子がサーターアンダギーの元型とも言われています。

そのまま食べても美味しいサーターアンダギーですが、近年は割ったサーターアンダギーにアイスやクリームを挟んで食べる新感覚スイーツや一口サイズのサーターアンダギーにチョコなどをトッピングしている写真映えするものなどその進化は止まりません。スーパーやコンビニでも販売しているため、見つけた際にはドライブのお供にもおすすめですよ。

パイナップル/シークワーサー

沖縄県はパイナップルの生産量が日本一であり、日本産のパイナップルのほとんどが沖縄で栽培されたものです。温暖な気候と水はけのよい酸性質の赤土が美味しいパイナップルを栽培するのに適した環境だったため、その条件を満たしている沖縄本島の北部や石垣島で多く栽培されており、糖度が高く甘みが強いのが大きな特徴になります。海外ではフィリピンをはじめとする東南アジアやブラジルなどで栽培さいれていますが、輸送する時間も含めて早めに収穫される海外産のパイナップルに比べると、完熟した状態で出荷される沖縄のパイナップルは刺激が少なく、よりパイナップルの甘さを感じやすくなっているのです。

バランスのよい定番の品種から収穫までに3年かかる貴重な品種まで県内では7種類の品種を栽培しており、甘味や酸味、硬さなどもそれぞれ異なるため食べ比べてみるとよりその違いを実感するはずです。

そんなパイナップルと並んで生産量日本一のフルーツが沖縄県にはもう1つあります。それがシークワーサーです。沖縄本島の北部で多く栽培されているシークワーサーは料理やスイーツ、飲み物などに広く使われており、その独特で爽やかな香りと強い酸味がよいアクセントになります。沖縄の方言で“酸=シー・食わせる=クワーサー”という意味から名付けられたシークワーサーですが、実は収穫される時期によっては全く違った特徴を持つのです。酸っぱいイメージが強い緑色のシークワーサーは「青切りシークワーサー」として夏から秋にかけて収穫されていますが、冬になるとみかんのようにオレンジ色に変わり、甘味のある「完熟シークワーサー」として沖縄では親しまれています。しかし、県外に流通されることはほとんどないため、冬に沖縄に訪れた時にしか完熟のシークワーサーに出会うことが出来ないのです。

パイナップルやシークワーサーは特徴的な香りや味わいがあるため、果汁をお菓子やジュース、お酒などに加工して販売しているものも多く、沖縄らしさを感じるお土産としてよく使われています。他にも、マンゴーやパパイヤ、パッションフルーツなど沖縄特有の環境や土壌では南国のフルーツがよく育つため、県外ではあまり見かけないフルーツも多く栽培され、商品化しているものもたくさんあります。スーパーではフルーツそのものを購入することも出来るため、新鮮な果実を直接味わうこと沖縄ならではの楽しみ方かもしれません。