沖縄の代表的な加工食品/お土産

沖縄県は海に囲まれた最南端の県であり、透明度の高い海ややんばるといった山原には沖縄にしか生息していない動植物も多いです。そんな沖縄県には、特有の食文化から生まれる加工食品も多く、旅行で訪れた際にはお土産として購入していく方もたくさんいます。今回はお土産としても人気のある沖縄の加工食品について紹介していきます。

島とうがらし/コーレーグース・島ラー油

沖縄で栽培されている“島とうがらし”は、一般的な唐辛子に比べると小ぶりですが非常に辛味が強いのが大きな特徴です。唐辛子は海外から伝わったとされている野菜ですが、島とうがらしも18世紀に薩摩藩を通して海外から沖縄に伝わったとされており、沖縄の温暖な気候によって島とうがらしという独自の品種が生まれました。強い辛味の中にフルーティーな香りを感じられるのが特徴で、沖縄では伝統野菜として古くから使われています。

この沖縄特有の島とうがらしを使って作られる調味料が“コーレーグース”です。沖縄の方言では島とうがらしのこともコーレーグースと呼びますが、現在は調味料のことを表すことが多く、泡盛に島とうがらしを漬け込んだだけのシンプルな調味料になります。泡盛の風味と島とうがらしの辛さがストレートに伝わり、料理にパンチを効かせたい時や味変をしたい時などに使うことが多いです。

沖縄そばに少し加えるのが定番の食べ方で、沖縄そばを提供しているお店には絶対といっていいほどの高確率でコーレーグースが置いてあります。タバスコのように料理に数滴かけるだけでその風味を楽しむことが出来ますが、想像以上に辛いため、初めて使う方は少しずつ加えて辛さを調節するのがおすすめです。沖縄そばをはじめに汁物・炒め物・刺身などさまざまな料理に使え、沖縄料理には欠かせない調味料になりますが、実は料理以外にも発泡酒やビールに数滴加えて一味違った美味しさを楽しむといった使い方も出来ます。シンプルで使い方のバリエーションも豊富なコーレーグースを上手に使って、その美味しさと奥深さを味わってみて下さい。ただし、種類や製法によって強さはさまざまですが、度数の高い泡盛に直接漬け込んで作っているためコーレーグース自体にもアルコールが含まれています。体質的にアルコールが合わない方や運転をする方は使うタイミングや量に気をつけて使って下さいね。

もう1つ島とうがらしを使っている加工品で人気があるのが“島ラー油”です。もともとは、石垣島で食堂を営む夫婦が島唐辛子や石垣島で作られた塩、島コショウ、ウコン、ニンニク、黒豆などを使った具材が入っているタイプのラー油を販売したのが始まりでした。強すぎない香りとまろやかな味わい、たくさんの具材が入っているのが特徴で、販売当時は珍しさと美味しさ、そして大量生産出来ないことが重なり幻のラー油とも呼ばれるほど人気がありました。大手メーカーでも販売されている食べるラー油の先駆けとなった島ラー油の人気は劣らず、現在は他メーカーからもオリジナルの島ラー油がいくつか販売されています。メーカーによってゴーヤやパパイヤなど使われている食材も違うため、辛さだけでなく具材の種類や多さなどで選択するのもおすすめです。

泡盛

沖縄にあるお酒の中でも特に代表的なお酒といえば“泡盛”です。大きく括れば焼酎の仲間にはなりますが、沖縄発祥の伝統的な蒸留酒であるため、原料や製法が大きく違います。米・麦・さつまいもなどさまざまな原料から作られる焼酎とは違い、泡盛の原料は米だけです。西アジアで発達した蒸留技術が中国・タイを経由して当時の琉球に入ってきたとされているため、原料の米は主にタイ米使って造られており、麹も沖縄原産の黒麹菌を使うことが決まりになっています。黒麹菌を使っているため他の麹菌を使う場合より多くのクエン酸が発生することや二次仕込みで造る焼酎に対して泡盛は一次仕込み(単式蒸留)で造られているのも大きな違いとなります。

こうして造られた泡盛は焼酎よりも濃厚で甘い風味とタイ米の独特な風味を感じられるのが特徴で、3年以上熟成させることでより深いコクとまろやかな味わいが生まれます。全体的にアルコール度数は高いですが、糖質ゼロ・低カロリーであるため糖質やカロリーを気にしている方にとっても飲みやすく、日数や温度による劣化が少なく賞味期限もないため現地で飲むだけでなくお土産として購入するのも非常に人気が高いです。

製法や原料の違いからクセが強いと言われる泡盛ですが、種類によっては飲みやすいものもあります。製造されてから3年未満の泡盛は一般酒と呼ばれ、特有の甘みを感じつつもクセが少なく初めて飲む方やクセが弱いのが好みの方にはおすすめです。また、シークワーサーや柚子などのフルーツやハーブを漬け込んだ甘いリキュールタイプの泡盛もあるため、普段お酒を飲む機会が少ない方はリキュールタイプを試すのもよいでしょう。反対にお酒が好きでしっかり泡盛の風味を楽しみたいのであれば、3年以上熟成させた古酒(くーす)を試してみて下さい。10年以上の泡盛はさらに濃厚で凝縮した風味を楽しむことも出来ます。泡盛のアルコール度数は30度前後が一般的ですが、20~50度と非常に幅広く種類も豊富であるため、飲みやすさや度数の高さ、クセの強さなどを相談しながら選ぶとお気に入りの泡盛に出会えるかもしれません。さらに、沖縄県で造られた泡盛には“琉球泡盛”というラベルがついているので、せっかくであれば琉球泡盛の中から選んでみて下さいね。

黒糖

黒糖にはミネラルが豊富に含まれているため、健康を意識する方を中心に和菓子や料理など普段使いとしても人気が高い砂糖ですが、その約9割が沖縄県で作られています。300年以上も前の江戸時代、まだ琉球王国だった頃に中国まで行き砂糖の製造方法を学んだことが沖縄県での砂糖作りの始まりとされており、現在、砂糖の原料であるサトウキビは県の耕地面積の約半分の広さで栽培されています。

基本的に栽培されているサトウキビは上白糖の原料になってしまうため、黒糖としては製造されるのは5~6%ほどしかありません。さらに、その黒糖を作っているのは沖縄県の小規模離島である与那国島や西表島などを含む8島でしか生産されていないのです。

サトウキビの搾り汁を煮詰めて固めるというシンプルな製法であるため、サトウキビに含まれているミネラルやビタミンを多く含み、独特の風味や甘み、コク、苦みなどを感じるのが特徴です。8島で作られた黒糖は“沖縄黒糖(純黒糖)”と呼ばれており、製法などに大きな差はないものの、天候や土壌といった環境による違いから作られる黒糖の風味や食感に少しずつ違いが生まれます。

硬い・柔らかい・軽い・くちどけがよい・シャリシャリしているといった食感の違いから濃い焦げ茶色・明るい黄土色・白っぽい茶色という色の違い、大粒・小粒・長方形・正方形・石のようなゴツゴツしたものなどそれぞれに個性的な特徴があり、単体や一般的に販売している黒糖では分かりにくいかもしれませんが、8島の黒糖を食べ比べることでそれぞれの違いや特徴をしっかり実感することが出来ます。どの島で作られている黒糖を選んでも美味しく食べられますが、最近は8島の黒糖を少しずつ詰め合わせたセット商品も販売しているため、気になる方はぜひ8種類の黒糖を食べ比べて違いを味わってみて下さい。

砂糖と同じく普段の生活にかかせない塩ですが、綺麗な海のある沖縄県で作られた塩は栄養だけでなく美味しさも一味違います。日本で販売されている塩の多くは海水を加工しているものが多く、その加工方法によって栄養や味わいが違ってきます。海水などの原料を精製してほとんどのミネラルを取り除いてしまう精製塩と違い、沖縄では海水を平釜で煮詰める・太陽や風の力を使う・海水を吹き付けて結晶化させるなどさまざまな製法を使って天然塩や自然塩を作っているため、ミネラルなどの栄養素がとても多く含まれています。さらに、旨み・甘み・苦味のバランスがよく、まろやかで優しい味わいの塩味が特徴です。

これは、沖縄県が珊瑚礁が隆起して出来た島であることや、工業地帯ではないことが大きく関係しています。珊瑚礁は光合成を行うため水中でミネラルを作り出し、海水を浄化してくれています。さらに、工場がほとんどなく工場地帯もないため、海を汚す排水などが出にくい環境にあることが海を綺麗に保ち、美味しい塩を作ることに繋がっているのです。また、沖縄の海はプランクトンや微生物を分解する暖流が流れていることも透明度の高い綺麗な海水を保つ要因の1つになっています。県内には約150種類以上の塩が作られており、メーカーによって製法やこだわりなどが違うため、粒の大きさや味にも違いが出ますが、基本的にはどれも栄養素が高く甘みを感じられる塩が多いです。体によく美味しいだけでなく、塩の特徴によっては料理の美味しさも最大限に引き立たせてくれるため、人気の高さから県外ではなかなか手に入りづらい塩も多いです。日常的に使うからこそ、沖縄を訪れた際にはぜひ沖縄で作られた塩にも注目してみて下さい。

豚肉/ポーク・ラフテー・ソーキ・テビチなど

沖縄県では、ソーキ・ラフテー・ポークなど豚肉を使った料理が非常に多いです。さらには、ミミガーやテビチといった豚の耳や手足など隅々の部位まで食べる習慣があります。なぜ沖縄県では豚肉を食べる習慣があるのかというと、14世紀頃の琉球王国の時代に豚は中国から伝わったとされており、当時家畜の主流であった牛や馬の価値が高まったため家畜の禁止をする代わりに豚の飼育を推奨したことが養豚が盛んになった最初の理由です。これに加えて、自然災害の多い沖縄でも栽培がしやすく飼料にもなるサツマイモの栽培が普及したことや本土より仏教が浸透せず肉食禁忌の影響を受けなかったことなどが大きく影響しています。さらに、戦争時に食べるものがなく困っていた時に、ハワイへ県系移民した人達が豚を救援物資として送り、県民の生活を支えてくれたことも現在の豚肉を食べる習慣に繋がっています。

しかし、第二次世界大戦後まで庶民が豚肉を食べる機会は少なく、正月や盆などの特別な日にしか食べることが出来ないごちそうだったのです。そのため、特別な日に豚1頭を食べる際には親戚や身近な人を集め、無駄なく分け合い感謝しながら食べる習があったことや自分の身体の悪い部分を豚の部位に置き換えて食べる習慣があったことが、耳や手足などさまざまな部位を余すことなく食べる沖縄料理の習慣へと浸透していきました。代表的な食べ物や部位としては、沖縄そばや唐揚げに使うことが多いあばら肉の“ソーキ”、三枚肉をじっくり煮込んだ“ラフテー”、スパムで有名な豚肉をすりつぶして固めた“ポークランチョンミート”、コラーゲン・ビタミンが豊富で煮込み料理に多く使われる“テビチ”、コリコリした食感が特徴の“ミミガー”などをよく見かけますが、他にも大腸・小腸・レバーなどのホルモンからチラガーと呼ばれるインパクトの強い顔の皮まで沖縄では食べられています。沖縄料理には家庭料理だけでなく宮廷料理として食べられていたものもあるため、県外では見かけない料理や部位に出会った際には挑戦してみてはいかがでしょうか。