栃木県の郷土料理「しもつかれ」ってどんな料理?つくりかた

 各都道府県にはさまざまな郷土料理がありますね。聞いたことや食べたことがあるものもあれば、なかなかその地域でないと知る機会が少ないものも多いのが郷土料理です。今回は栃木県の代表的な郷土料理である「しもつかれ」という料理について紹介していきます。

しもつかれとはどんな料理

 栃木県の郷土料理の1つである「しもつかれ」は、鮭の頭や大根、大豆、酒粕などを煮込んだ料理です。

栃木県全域で食べられている郷土料理ではありますが、茨城県西部、埼玉県東部、群馬県東部、福島県南西部、千葉県北部など栃木県に隣接している地域でも広く食べられています。酒粕を使っているため、酒粕の独特の香りが強く酸味もあり見た目も含めると少しクセの強い料理ですが、地域や家庭によっては使われる食材や調理法に少し違いがあり、風味も違ってきます。

歴史と地域による違い

 主な食材は“塩引き鮭の頭、大根、人参、大豆、酒粕、油揚げ”を使って作られています。正月で食べられた塩引き鮭の頭と節分で残った大豆(福豆)を使い、鬼おろし器を使って粗くおろした大根と人参、酒粕を使うのがポイントになっています。

これはもともとしもつかれが、旧暦で言う2月:初午(はつうま)の時期に稲荷神社への供え物として“わらつと”に入れて赤飯と一緒に供えるために作られた料理という歴史があるからです。

ちなみに“わらつと”はわらを束ねて中に物を入れられるようにしたものであり、わらで包まれた納豆がイメージしやすいのではないでしょうか。あのわらの束がわらつとになります。

この初午の時期は供え物として出すための食材を調達するのが難しく、正月や節分で残った食材を使って作られました。しかし、本来残り物で作った食べ物は神様へのお供え物としてはふさわしくないため、お供え物としてこの時期だけに作る特別な料理として区別したそうです。そのため、他の時期に作ることは禁忌とされており、この時期以外に作ると災いが起こると伝えられていました。

江戸時代中期の天明の飢饉の辺りから始まったと言われていますが、鎌倉時代には存在していたとされています。また、江戸時代中期頃に酒屋が現れたことから酒粕の流通が増え、この頃からしもつかれにも酒粕が加えられています。

基本的には茹でて臭みを取った鮭の頭と他の食材を一緒に煮込んで最後に酒粕を入れて作られますが、地域によっては煮込まずにお酢で漬け込む作り方や大豆と大根だけを使うなどの食材の違い、鮭の頭や酒粕を使うところもあれば使わないところもあるなどいくつか違いがみられ、醤油や砂糖を使った味付けにも家庭などによって味の違いはあるようです。鮭の頭を使う場合、茹でてから使うことが多いですが焼いて使うなど下処理の方法によっても風味が違ってきます。

名前の由来と意味

 しもつかれという名前は、栃木の旧名が下野の国(しもつけのくに)だったことやその下野(しもつけ)で盛んに作られていたこと、炒った大豆をお酢につけた酢み漬けという料理から「すむつかり」と呼ばれていたなど名前の由来にはいくつか諸説があるとされています。また、地域によって「すみつかれ・しもつかれ」などと呼び方が変わっているところもあります。

稲荷神社へのお供え物とされていたしもつかれは火の用心や家内安全、魔除け、厄除けなどの意味があり、正月に食べられた塩引き鮭の頭には“悪を払う”、節分の福豆である大豆には“魔を滅する”という意味があり合わせて縁起の良い食べ物とされてきました。

昔は初午の時期だけに作られていましたが、現在は季節問わず家庭で作られておりご飯のお供として日常的に食べられています。スーパーでも年中販売されているため、簡単に手にすることが出来ます。

しもつかれの作り方(レシピ)

 しもつかれを食べる地域でも見た目や風味から好き嫌いが分かれてしまうことが多いため、旅館や宿泊施設で出されるものやスーパーで販売しているものは食べやすいように工夫されているものが多いです。

また、家庭で作ればさまざまなアレンジをすることが出来るのも良い点です。簡単にしもつかれの作り方を紹介しますね。

1.鮭の頭をよく洗い、事前に茹でて臭みを取るまたは熱湯をかけて臭みを取る

2.下処理をした鮭の頭を圧力鍋を使って火を通す

3.粗くおろした大根と人参、大豆、細かく切った油揚げを加え1時間ほど煮込む

4.柔らかくなったら、酒粕を加えてさらに煮込む
  (焦げつきやすいためよく混ぜる)

5.最後に醤油、砂糖、塩などの調味料で味を調えたら完成

レシピ(4人分)
・鮭の頭 (1匹)
・大根 1本
・人参 1本
・大豆 1/2カップ (落花生でも可能)
・油揚げ 1/2枚
・酒粕 100g
・塩、醤油、砂糖 少々

上記のレシピは鮭の頭を使った作り方の1つです。鮭の頭を使わず、事前に焼いた切り身を使えば圧力鍋を使わずに最初から食材をすべて鍋に入れて煮るだけで簡単に作ることも出来ます。また、鬼おろし器がない場合は大根や人参をみじん切りにすれば大丈夫です。酒粕や酢を入れる入れないも家庭で作るからこそ出来るアレンジですので、ご飯のお供や酒のつまみに栃木の郷土料理「しもつかれ」を作ってみてはいかがですか?