塩糀の効果と肉が柔らかくなる理由

2011~2012年にテレビに取り上げられたのをきっかけに瞬く間に話題になった「塩麹」は、2024年現在でもその人気は変わるどころかより身近なものへと変わり、スーパーのお惣菜やお弁当でも取り入れられるほど人気があります。しかし、今となっては塩麹は一体何なのか?どのような効果があるのか身近であるが故に知らないこともあるのではないでしょうか。今回は「塩麹」について特徴や成分、効果について紹介していきます。

そもそも塩麹とは?

塩麹とは“米麹と塩”から作られる発酵調味料です。そもそも麹とは米や麦、大豆などに麹菌を繁殖させたものであり、米に麹菌を繁殖させた米麹を使って塩麹を作っています。この麹は日本では欠かせない調味料を作る原材料となっているものがほとんどであり、醤油・味噌・酢・みりん・酒を作る際には麹の力を使って発酵させています。

東北地方の保存食「三五八漬け」という野菜の漬物の漬け床が塩麹のルーツであると言われており、麹菌や酵素の働きを手軽に取り入れられることが人気の秘訣となっています。塩麹という名前から塩辛いイメージが少なからずありますが、実はそこまで塩辛くなく一緒に麹の甘みと香りが感じられるためどちらかというと甘辛い味わいがします。そのため、塩に比べると塩分量は1/4しかありません。おかゆのような白くドロッとした見た目をしており、人によってはバナナのような香りを感じられます。しかし、長期間使用しないと麹が発酵しすぎてしまい、アルコールや酸味のある風味が出てくるため注意が必要です。

塩麹は商品によって「糀」という文字を使っている場合がありますが、麹は中国から入ってきた文字、糀は明治時代に日本で出来た文字であるため、塩麹・塩糀・塩こうじは同じものになります。肉や魚に塩麹を漬け込んで焼くのが一般的な使い方ですが、他にも炒め物や揚げ物、また火を通さなくても食べられるため和え物やサラダなど実はさまざまな料理に使うことが出来るのも人気の理由の1つです。

塩麹の成分と効果

塩麹にはビタミンB1・B2・B6をはじめとしたビタミン群やナイアシン、葉酸、銅、モリブデンなどの栄養素が豊富に含まれています。ビタミンB群は酵素を活発化させる手助けをする役割があるだけでなく、その他の栄養素がバランスよく含まれているため、それぞれが効率よく働き多くの効果をもたらしてくれます。

ビタミンB1は体内のエネルギー代謝の手助けをしてくれ、糖質をエネルギーに変えてくれます。ビタミンB2・B6はたんぱく質や脂質の代謝を手助けし、肌や粘膜の維持・修復に繋がります。さらに塩麹はオリゴ糖を作る酵素を持っているため、善玉菌を増やし腸内環境を整えてくれます。また、腸内環境が整うことで免疫力を高めることも出来ます。これらの栄養素や働きは体内で作ることも貯めておくことも出来ないため、塩麹を食事として取り入れるだけで継続的に体にとって多くの良い効果を得ることが出来るスーパーフードでもあるのです。

塩麹でお肉が柔らかくなる理由と味の変化

塩麹で肉が柔らかくなるメカニズム

肉や魚を漬け込んで使うことが多い塩麹は“肉質が柔らかくなる・うま味が増す”という理由で使われています。ではなぜ肉や魚は柔らかくなるのか気になりますよね。

塩麹に含まれるビタミンB群は酵素の働きを活性化させてくれるとお伝えしましたが、この酵素こそが柔らかくなる理由なのです。塩麹には三大消化酵素と呼ばれる「アミラーゼ・リパーゼ・プロテアーゼ」の3種類の酵素が含まれており、特にこの中のプロテアーゼがたんぱく質をアミノ酸に分解してくれます。

タンパク質はアミノ酸が繋がったものであり、たんぱく質の分解とは、この繋がったアミノ酸を切り離していくことです。プロテアーゼとは総称であり、その様々な種類と特徴により、切り離すアミノ酸の種類や、切り離す場所が異なります。硬くて噛み切れない肉の原因であるコラーゲンのような複雑な構造であっても、酵素を用いることで、その構造を短く分解することができ、柔らかい食感にすることができるのです。

一方で酵素はpHと温度によって作用する部位や力が異なってきます。単に肉を柔らかくしたいということであればあまり考える必要性はありませんが、厳密にいうと噛んだときに硬いとされる筋が柔らかくなるのは良いことかもしれませんが、本来歯応えを残したい赤身まで柔らかくなってしまうという事態も発生してしまいます。そのため、食肉工場や加工工場では麹の機能を活用する際には、狙った部位だけ柔らかくなるよう温度やpHも調整しているそうです。

阿部ら(2019)の研究によると、鶏肉、豚肉、牛肉いずれにおいても塩麹を使用することで肉が柔らかくなることを明らかにしており、酵素の活動を考えると本来は30℃前後で酵素が最も活発になることから、その温度帯が望ましいとされいますが、30℃で肉を長時間放置することの危険性も指摘しています。そのため、衛生面を考えると塩麹を肉に塗り冷蔵庫で保管するほうほうが良いでしょう。

また、市販されている塩麹によって肉を柔らかくする機能が高いものと低いものがあることが確認されています。それら研究をまとめると肉を柔らかくする機能が高い塩麹は下記のような特徴を持っています。

・味噌蔵で作られた塩麹であること
・50-60℃の加温熟成法がとられていること
・塩分濃度が10%程度であること
・冷蔵流通させていること

味噌蔵で作られる塩麹は使用される菌株の性質として、タンパク質分解酵素活性の高い菌株を使用している可能性が高いとされています。実際、塩麹の製造販売をしているメーカーは味噌メーカーが多いことはその理由もあると考えられています。また、塩麹に含まれる酵素は熱に弱いため、常温流通させようとすると加熱殺菌を施す必要があり、その加熱殺菌の過程で酵素が死滅、または酵素活性が著しく低下してしまいます。そのため、中には加熱殺菌をしていないという表記をしている商品もあるそうです。肉を柔らかくするために塩麹を使用したいという場合には、常温ではなく冷蔵で販売されている塩麹を選ぶと良いかもしれません。それに加え、加熱殺菌をしない代わりに、雑菌などを繁殖させないように手立てをしないといけなく、塩を多く入れることでその機能を持たせることができます。そのような背景から塩分濃度が10%以上の塩麹は加熱殺菌をせずに塩の力で雑菌を抑えながら流通させている可能性があり、やはり肉を柔らかくする機能は高いでしょう。

ただし、あくまでこれらの研究は肉を柔らかくすることを期待しての機能の違いです。上述しているように、食材の賞味期限の調整や味そのものを調整したいという場合にはその限りではありませんので、常温流通している塩麹は品質が低いということではありませんので注意してください。

味の変化

さらに、肉や魚の筋繊維がほぐれ柔らかくなるだけでなくアミノ酸のおかげでうま味も増します。アミラーゼは炭水化物を分解しブドウ糖やオリゴ糖などの糖に変え甘みを出す働きをしてくれ、リパーゼも脂質を分解し素材の脂質を良質な脂質に変える働きをしてくれます。さらにアミラーゼ・プロテアーゼはビタミンB群を手助けする働きや食材の消化・吸収を助ける働きもしてくれます。

そのため塩麹を使用すると味にも変化が現れ、旨味と甘みが増すとされています。しかし、塩麹は文字通り塩を使用しているため塩味も増すことから、味付けの際は塩辛くなりすぎないように注意しましょう。


塩麹に含まれるすべての栄養素がお互いを助け合うことで、より多くの働きや効果を生み出してくれます。さらに塩分があるため漬け置きすることで食材の保存性が上がり、賞味期限が近い・多めに買ってしまったなど余っている肉や魚を塩麹に漬けて冷凍保存することが出来ます。日持ちすると同時に柔らかさやうま味もアップすることが出来るためおすすめです。

販売している塩麹もペットボトルに入ったものからパウチタイプ、瓶など種類もサイズも多く販売されているため、用途や使用頻度によって買うことが出来ます。さらに、米麹と塩と水を混ぜて発酵させるだけで簡単に手作り塩麹を作ることが出来るため、体にも良くご飯も美味しくなる塩麹を日常的に取り入れてみてはいかがですか?