たまり醤油(溜醤油)の特徴と産地

 主原料はほぼ大豆で作られており、仕込み水を少なくすることで濃厚なうま味や香りが強くなっている醤油です。中部地方で主に作られており、生産量は全体の1.6%。色は1番濃くとろみがあるのが特徴となっています。本記事はたまり醤油について紹介していきます。

たまり醤油とは

 たまり醤油は原材料は大豆と小麦ですこいくち醤油やうすくち醤油と同じですが、大豆と小麦の比率は9:1と圧倒的に大豆を多く使用することが溜醤油の特徴です。こいくち醤油やうすくち醤油はこの比率が1:1です。また、熟成期間が他の醤油と比べて最も長く、最低でも2年、長いと3年以上の熟成期間を要します。長い熟成期間を経て作られたたまり醤油はとろみがあり芳醇な香りが強い醤油となり、旨味が強いことが特徴です。醤油の旨味はグルタミン酸ですが、こいくち醤油やうすくち醤油の約2倍ほどのグルタミン酸が含まれます。また醤油自体の香りや旨味が強いことから魚の臭みを消す効果が期待でき、照り焼きなどにも向いています。

たまり醤油の成分(塩分濃度、タンパク質)

 たまり醤油の塩分濃度は16%前後で他の醤油と比べるとやや低めです。また原材料の9割が大豆ということもあり、タンパク質が他の醤油より高く、うすくち醤油のやく2倍、こいくち醤油の約1.5倍のタンパク質が含まれており、平均で100gあたり13gとなります。またグルタミン酸の量は平均で1,700mg前後となっており、これも他の醤油と比較すると最も高い数値になっています。

たまり醤油の作り方

 たまり醤油の作り方は原料となる大豆を蒸して、麹を加えて味噌玉を作ります。味噌玉は赤味噌を作る過程で出来るもので、そこから染み出すもろみ液を何度も味噌玉にかけ戻し、熟成を進めていきます。この熟成期間は2〜3年かかります。また醸造元によって異なりますが、こいくち醤油等の一般的な醤油は熟成期間中に撹拌(熟成中の醤油をかき混ぜる)を繰り返すのですが、たまり醤油は撹拌をせずに重石を乗せ圧力をかける方法もあります。樽の下から滲み出たもろみを更に重石の上からかけ戻し熟成をさせていきます。
 たまり醤油は赤味噌を作る過程で作られる味噌玉から滲み出た液体がたまり醤油の起源と言われており(諸説あり)、まめ味噌の製造が盛んなエリアと、たまり醤油の製造が盛んなエリアはちょうど一致しており、主に中部三県(愛知県、三重県、岐阜県)での製造が盛んです。
 また小麦を使っていない(またはほとんど使用しない)たまり醤油もあり、近年の健康志向からグルテンフリー(ロウグルテイン)として海外からも注目され国内外問わず需要が高くなっています。

たまり醤油に向いている料理

 たまり醤油は「さしみたまり」とも呼ばれ、生魚の臭みをとり、醤油の濃厚なうま味が刺身との相性を引き立ててくれます。また、たまり醤油の持つとろみが照り焼きにも向いており、コクや香りを出す役割をしてくれます。たまり醤油で煮ると具材が固くなりにくい特徴もあるので煮物やしぐれ煮などにも向いています。
しかし、煮詰めすぎるとうま味が強いため味が濃くなってしまうので注意しましょう。ですが、そのうま味が日本料理や郷土料理だけにとどまらず洋食や中華の隠し味にも使える万能な醤油となっています。

  ・照り焼き          ・漬け丼

  ・すき焼き          ・しぐれ煮

  ・佃煮            

たまり醤油を使う地域

愛知・三重・岐阜を中心に東海地方

 東海地方の郷土料理に多く使われており、ひつまぶしのタレや伊勢うどん・きしめんのつゆとしても広く使われています。たまり醤油の作り方の項目でも解説しましたがまめ味噌の製造が盛んなエリアでの製造が盛んです。豆味噌を作る過程で重石をのせて圧力をかけますが、たまり醤油も重石で圧力をかけて製造する蔵も多く、愛知県内のしょうゆ噌蔵に行くと重石を積んでいる蔵も多く見かけます。愛知県内だけでもたまり醤油を作っている企業は30社以上あり、東海三県の中でも愛知県に特に集中しています。