玉緑茶って一体なに?

 緑茶の中には玉緑茶と呼ばれる種類があるのをご存じですか?緑茶の茶葉はまっすぐ伸びた細い針状の形をしているものが大半です。これは製造過程の中で茶葉をまっすぐ伸ばす工程が入っているため、仕上がった茶葉もまっすぐ伸びた状態になるのですが、その工程をあえて行わずに作られたお茶が玉緑茶になります。くるっと丸まった見た目をしており、勾玉のような形をしています。

この玉緑茶には種類が2種類あり、製造過程の中にある茶葉に火を入れる工程が違ってきます。この工程の違いで特徴も大きく変わる玉緑茶の特徴をご紹介します。

玉緑茶の製造方法

 まず、玉緑茶は途中まで煎茶と同じ作り方になります。煎茶の基本的な製造方法は

1.摘んだ生葉を新鮮なうちに蒸気で蒸して加熱します
2.異なる機械により4段階に分けて茶葉を揉みます(荒揉み→加熱せずに揉む→乾燥しながら揉む→形を整えながら揉む)
3.乾燥させて「荒茶」の完成

緑茶は不発酵茶という種類に含まれ、発酵していない茶葉を使って作られています。茶葉を摘んだ瞬間から茶葉の持つ酵素により発酵が始まるため、煎茶は新鮮なうちに蒸して加熱をすることで発酵を止めています。しかし、玉緑茶はその方法が“蒸す”か“炒る”かの2種類に分かれます。さらに、2番目にある4段階の茶葉を揉む工程が3つに減り、最後の形を整えながら揉む作業がなくなることで玉緑茶の特徴的な丸まった形に仕上がります。

蒸し製玉緑茶の特徴と産地

 くるっと丸まった形の玉緑茶は見た目が「ぐりっと」していることから“グリ茶”とも呼ばれ、蒸して作られる蒸し製玉緑茶は“蒸しぐり・ムシグリ”とも呼ばれています。

先ほどもお伝えしたように、形を整えて揉む「清揉(せいじゅう)」という工程が省かれるのですが、その代わりに「再乾(さいかん)」という工程が加わります。回転するドラム式の乾燥機に茶葉を入れ、熱風をかけて乾燥させることで特徴的なくるっと丸まった形になります。また、揉んで仕上げる工程の代わりに再乾が入ることで茶葉の持つうま味を逃がさずに仕上げることが出来るのも玉緑茶の特徴になります。

蒸し製玉緑茶は渋みが少なくまろやかでさっぱりとした味わいを感じることが出来ます。煎茶に比べると蒸す時間が長めに作られているものが多いことや、煎茶より柔らかい生葉を使うことが多い点が渋みの少ない味わいに繋がっているようです。香りは煎茶に近い清涼感があり、水色としては黄緑色をしています。

産地としては佐賀の嬉野が代表的であり、長崎や熊本をはじめ九州を中心に生産されています。

釜炒り製玉緑茶の特徴と産地

 日本で飲まれている緑茶は茶葉を蒸して作られているものが大半です。しかし、緑茶は日本だけでなく中国を中心にアジアで広く飲まれています。特に中国の緑茶は日本とは違い、茶葉を蒸すのではなく釜で炒って作られている緑茶が多いのです。その製法を取り入れて作られているのが釜炒り製玉緑茶になります。

蒸し製と同じように清揉と呼ばれる形を整える工程が省かれ、回転するドラム式の乾燥機により乾燥させてつくられています。そのため、蒸し製玉緑茶と同じくくるっと丸まった勾玉状の見た目に仕上がります。釜で炒って生葉に火を入れることから「釜ぐり・カマグリ」とも呼ばれています。

釜炒り製玉緑茶は戦国時代に中国から伝わったものと言われており、蒸し製よりもその歴史は古いです。しかし、その後全国的に煎茶が広がってしまったため、現在国内での釜炒り製玉緑茶の生産量は緑茶生産量に対して0.3%未満と少なく、令和元年には0.02%程度ともいわれています。宮崎の北部を中心に佐賀や熊本など九州の一部でしか生産されておらず、非常に希少性の高いお茶となっています。

蒸し製と違い、茶葉の発酵を鉄製の釜で数十秒~2分程度炒ることにより蒸し製にはない「釜香(かまか)」と呼ばれる香ばしい香りがあります。また、赤みがかった黄金色の澄んだ水色が特徴です。さっぱりとしながらも、蒸して作られる緑茶には感じられないうま味や深みを感じることが出来、品がありながらもどこか懐かしさを感じるお茶となっています。

釜炒り製玉緑茶は80~85℃の煎茶より高めの温度で淹れることにより、釜炒りの持つうま味や釜香をより感じることが出来ます。

くるっとした見た目が特徴の玉緑茶でも加熱の方法が異なることで香りや味わいにも大きな違いが出てきます。国産の釜炒り製玉緑茶は生産量が少ないためなかなか手にする機会がありませんが、釜炒り製で作られている中国産の緑茶でも同じく美味しい緑茶を飲むことが出来ます。蒸して作られることの多い緑茶とは違った味わいを楽しむことが出来る釜炒り製玉緑茶や通常の緑茶とはまた違った味わいを感じる蒸し製玉緑茶をぜひ味わって緑茶の奥深さを感じてもらいたいです。