スーパーフードの王様“スピルリナ”とは?

身体によい栄養や成分がギュッとつまったスーパーフードは、健康や美容を意識する人を中心に日本でも普段の生活に取り入れるなど少しずつ広まりつつあります。そんなスーパーフードの中でも王様と呼ばれているものが“スピルリナ”です。アサイーやキヌアに比べるとあまり聞き馴染みのない種類ですが、どのような特徴や栄養が含まれているのでしょうか。今回はスピルリナの凄さについて紹介していきます。

スピルリナとは

今から約30億年以上も前に誕生したスピルリナは、福岡などの九州で栽培されている水前寺海苔と同じような藍藻類の一種であり最古の植物の1つでもあります。藻の一種といっても全長は0.3~0.5mmほどの微細藻類であり、顕微鏡で見ると濃い緑色のクルクルとしたらせん状の形をしていることから、ラテン語で“らせん”や“ねじれたもの”という意味を持つ「Spira(英語ではSpiral)」から名前が付けられたとされています。

淡水に生息する一般的な藻類とは違い、主にメキシコ・ペルー・エチオピアといったアフリカや中南米などの亜熱帯地方にある強アルカリの塩水湖に生息・繁殖をしています。高温地帯と強アルカリという厳しい環境下では通常、他の動植物は生息しにくいですがスピルリナはこの特殊な環境の中、さらに強い太陽光を浴びることにより育つため非常に強い生命力を持っているのも特徴です。

本来藻類は日光を浴びると光合成をおこなってデンプンを作りますが、スピルリナはグリコーゲンという動物性のデンプンを作り出します。動物性と植物性の両面を持ち合わせているため、植物性食品には含まれていないビタミンB12が含まれているのも特徴となっています。

他にも良質なたんぱく質やビタミン、ミネラルなど50種類以上もの健康に役立つ栄養が豊富に含まれており、そのバランスもよいことから「スーパーフードの王様」と呼ばれているのです。

あまり聞き馴染みのないスピルリナですが食品としての歴史も長く、16世紀に栄えていたアステカ王国では常食していた記録が残っており、アフリカの中央部に位置するチャド共和国では原住民がチャド湖に自生していたスピルリナをたんぱく源として長いこと食べられてきた歴史があります。

この一部の地域で長いこと愛されてきたスピルリナが世界的に認知されるようになったのは、1927年にドイツの藻類学者が発見しスピルリナと命名したのが始まりです。1960年代に入ると、スピルリナには非常に多くの栄養素が含まれているのが分かりはじめます。特にたんぱく質が豊富であることからたんぱく源の研究をしていたフランスの博士がスピルリナのたんぱく質の研究を重ね、国際応用微生物会議においてスピルリナの特徴や含まれる栄養の豊富さを紹介したことをきっかけに世界的に注目されるようになります。

実は日本にも1968年(昭和43年)頃に伝わっており、現在は人口池で世界的に大量培養して日本を含めたアジア各国やアメリカ、欧州、オセアニアなどの広い国々で健康管理のための健康食品として役立っています。また、国連では栄養補助食品としてアフリカなどの難民の食料として活用されており、NASA(米国航空宇宙局)では宇宙未来食料としての研究もされているなど、多種類の栄養素を豊富に含むスピルリナはさまざまな場所で広く研究・活用されているのが分かります。

スピルリナに含まれる栄養と効果

幅広く活用されておりスーパーフードの王様と呼ばれるほど栄養が豊富に含まれているスピルリナですが、どのような栄養素が含まれ、どのような効果を期待することが出来るのか気になりますよね。スピルリナには次のような栄養素が含まれています。

〇たんぱく質・アミノ酸

イソロイシン・ロイシン・シスチン・トリプトファン・アラニン・プロリン・フェニルアラニン・アスパラギン酸・グルタミン酸・リジン・セリン・バリンメチオニン・チロシン・スレオニン(トレオニン)・アルギニン・グリシン・ヒスチジン

〇脂質

リノール酸・γリノレン酸・パルチミン酸・オレイン他

〇炭水化物

糖質(グリコーゲン・ラムノース・マンノース他)・食物繊維(ペクチン・セルロース他)

〇ビタミン

β-カロテン(ビタミンA)・ビタミンB1・ビタミンB2・ビタミンB6・ビタミンB12・ビタミンE・ビタミンK・ナイアシン・パントテン酸・ビオチン・葉酸・イノシトール他

〇ミネラル

カルシウム・マグネシウム・カリウム・ナトリウム・リン・鉄・銅・亜鉛・ヨウ素・塩素・マンガン・コバルト・硫黄・クロム他

〇その他

クロロフィルa・イノシトール・フィコシアニン・ゼアキサンチン・核酸・SOD・フェオホルバイド他

栄養素には単体で効果を発揮するものと、他の栄養素と助け合うことで効果をより発揮するものが存在します。そのため、これだけ多くの栄養素が含まれているスピルリナはそれぞれがより効率的な働きをすることが出来るため多くの効果を期待することが出来るのです。

良質なたんぱく質やアミノ酸が豊富

スピルリナには約50~70%のたんぱく質が含まれています。鶏むね肉に含まれるたんぱく質が約25%であるため倍以上の含有量であるのが分かります。他にも卵に含まれるたんぱく質の含有量が約12%、牛肉が約19%、大豆が約35%と他の食品と比べても圧倒的にたんぱく質の含有量が多いです。さらに、体の細胞や酵素などを作るために必要なアミノ酸も豊富に含まれており、必須アミノ酸・非必須アミノ酸を含めると18種類ものアミノ酸がバランスよく含まれているため、たんぱく質自体が非常に良質であるのです。

多種類のビタミン・ミネラルも豊富に含まれる

日常的に意識して摂取しないと不足しがちなビタミンやミネラルもスピルリナには豊富に含まれています。β-カロテンやビタミンC・ビタミンEには抗酸化力があり、体を酸化するのを防いで老化や生活習慣病を防ぐ、肌や髪などのアンチエイジング効果を期待することが出来ます。体内でビタミンAに変化するβ-カロテンも多く、100gあたりの含有量はほうれん草の約44倍とも言われています。また、はじめの方にもお伝えしたように、植物性の食品には含まれていないビタミンB12も豊富に含まれており、その含有量は牛レバーやカキよりも多いとされています。スピルリナには他にも血液の原料となる葉緑素(クロロフィル)や鉄分も一緒に含まれているため、これらの栄養素によって貧血を改善・予防する効果を期待出来るでしょう。

さらに代謝に必要なビタミンB1やビタミンB2だけでなく、高血圧を防ぐカリウム、骨や歯を強くさせるカルシウム・マグネシウムなどさまざまな食物をバランスよく摂取しないと不足しやすいミネラルもスピルリナには多く含まれているため、偏りがちな栄養を効率よく補うことが出来ます。

植物性色素を含む

スピルリナは緑黄色野菜と同じ緑色の色素である葉緑体(クロロフィル)・β-カロテンなどのオレンジ~黄色の色素であるカロテノイド・スピルリナ特有の青色の色素であるフィコシアニンと呼ばれる3種類の食物性色素を含んでおり、体内を巡りさまざまな面でサポートする効果があります。

特に葉緑体は貧血の改善の他にも、体のサポートや血液中の毒素を清浄化する働きがあるため、疲労回復や二日酔いの防止、口臭・体臭などの改善にも繋がります。スピルリナ特有のフィコシアニンには抗酸化作用があり、活性酸素から守る他にも炎症の原因となる物質を抑える効果もあることから抗炎症作用が期待されるため、他の色素と合わせてアレルギー対策としても効果を期待することが出来ます。

消化吸収率が高い

他にも、腸内環境を整え便秘の予防・基礎代謝の改善、血糖値やコレステロールの上昇を抑える働きにも繋がる食物繊維、高血圧の改善などに繋がるγリノレン酸やリノール酸といった必須脂肪酸なども含まれています。しかし、これらの豊富な栄養素は体内で消化・吸収されて初めてその価値が出るため、豊富に含まれているからといってすべての栄養素が体によい影響を与えるかどうかは別の話になりやすいのです。

同じようなイメージを持つクロレラは細胞壁が硬く消化することが難しいとされていましたが、スピルリナは細胞壁が薄く壊れやすい性質があるため消化吸収率が95%と非常に高く、含まれている栄養素の効果をしっかり受け取ることが出来るのも大きな特徴となっているのです。

これらの特徴から期待出来る効果

  • アンチエイジング効果
  • 抗炎症作用
  • 疲労回復
  • 免疫力の向上
  • 貧血予防
  • 肥満や生活習慣病の予防
  • アレルギー症状の緩和
  • 腸内環境の改善・解消 他

スピルリナの摂取量と食べ方

スピルリナは微細藻類であるため、粉末状や粒状などに加工されて販売しているものが一般的です。メーカーによって含有量や粒の大きさなどが違ってくるため、1日の摂取目安量は特に定められておらず、適量であれば大きな副作用などは起きにくいです。しかし、さまざまな栄養素が豊富に含まれているため過剰に摂取すると下痢・胃痛・不快感といった体の不調を起こす可能性があるため、商品パッケージなどに記載されている適切な量を摂取することが大切になります。

また、スピルリナに含まれる葉緑素は分解するとフェオホルバルトという物質に代わり、光過敏症という日光によって皮膚に炎症を起こす病気の原因となる場合があることや、治療などに使われる血液を固まりにくくするワーファリンの働きを弱める副作用が起きるため、体質や病気を持っている人は注意が必要となる場合があります。

摂取方法としては、手軽にサプリメントのように摂取したい場合は粒状やカプセル状のものを選ぶのがおすすめです。ただし、水溶性の食物繊維が豊富に含まれており、飲む水やお湯の量が少ないと便秘になる可能性があるため、たっぷりの水やお湯と一緒に飲むのがよいとされています。

パウダー状のものはスムージーや料理などに加えてアレンジすることが出来るため、料理をするのが好きな人はパウダー状のものを上手に使うのもよいでしょう。スピルリナは味やにおいが強すぎず青のりのような風味があるため日本人には馴染みやすいのも特徴です。また、緑色をしているためドレッシングやスープ、天ぷらの衣などに入れると綺麗な緑色がつくため見た目も鮮やかにしてくれます。

どちらにしても、他のスーパーフードと違いスピルリナは基本的に加工されているため、手軽に豊富な栄養素を摂取しやすいのがメリットでもあります。野菜不足や食の偏りがある人は簡単に不足している栄養素を摂取することも出来るため、使いやすい形状のスピルリナを日常的に取り入れて体の中から改善させていきましょう。

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