長野県に訪れたら食べたいご当地グルメ

隣接する県が日本で1番多い長野県は、山に囲まれた内陸県であるため台風や梅雨の影響を受けにくく、夏冬や昼夜の寒暖差も大きいことから葉物を中心とした野菜やきのこ、りんご・ぶどうなどの果物の栽培が非常に盛んです。さらに、豊かな土壌や水源がより農産物を美味しく育てるため、長野県で愛されている郷土料理やご当地グルメの評価も高く、訪れる観光客にも人気があります。今回は、そんな長野県で愛されている訪れた際には食べたい郷土料理やご当地グルメについて紹介していきます。

信州そば

長野県といえば“そば”のイメージが強いという方も多いのではないでしょうか。県内には美味しいそば処が多いだけでなく有名な産地も多いため、県全域で食べられている伝統的な郷土食となっています。県内で作られているそばは産地によって名称や特徴が大きく変わり、日本三大そばのひとつである「戸隠そば」、竹製のとうじかごに盛り付けられた「とうじそば」、大根おろしと焼き味噌のつゆが特徴的な「行者そば」などをはじめに約30種類の個性豊かなそばが作られており、種類の多さから長野県で作られているそばの総称として“信州そば”と呼ばれています。県外から見ても知名度・ブランド力ともに高い信州そばは、種類が多い他にも水が美味しいということが大きく影響しており、そばを栽培する際にも、そばを打つ・茹でる際にも良質な水をたっぷり使うことが出来るため、風味豊かな美味しいそばに仕上がります。また、つなぎの有無や小麦粉・自然薯といったつなぎの種類、醤油・味噌・くるみベースなどのつゆの種類もバリエーションが豊富で各地域の異なる特徴を感じられるところが信州そばの大きな特徴ともいえるでしょう。

長野県に深く根付いているそばの歴史は非常に古く、古墳時代からすでに栽培が始まっていたと言われています。さらに長野県の寒暖差が大きく冷涼な気候や日照時間の長さ、水はけのよい土壌、豊富な水資源がそばの実を栽培するのに適した環境であり、反対に言えば、稲を栽培するには不向きであったため、そば作りが盛んになり重要な作物として育てられるようになっていきました。この環境下では、そばの実のでんぷんがしっかり熟成するため香りがよく、コシの強さとのど越しのバランスがよいのも信州そばならではの特徴となっています。そばはもともと、実をそのまま食べる、実を砕いてお湯でこねたそばがきという形で食べるというのが一般的でしたが、江戸時代にそば切りという麺状に細く切られた形が考案されると、県内だけに留まらず全国まで広まり、食べ方と一緒に信州そばの名前もさらに広まっていきました。現在、私たちが慣れ親しんだそばの形は実は信州で生まれた食べ方だったのです。古く濃い歴史があるからこそ、各地域の特色に合わせて独自に改良や発展が遂げられたため、信州そばは種類が多く個性豊かであるのです。どこのそばを食べても美味しいですが、地域によっては食べ方に加えて使っているそば粉の挽き方なども異なり、風味や弾力の違いも感じられるため、いくつかの地域で種類の異なるそばを味わってもらいたいです。また、お土産としてもさまざまな種類のそばが販売されているため、シェアをして好みのそばを探してみたり食べ比べてみるのもおすすめです。

おやき

円形をした“おやき”は長野県の郷土料理であり、手軽さや美味しさから地元の方だけでなく全国にも多くのファンがいる料理となっています。小麦粉やそば粉から作った生地に季節の野菜や豆類などの具材をたっぷり包み込み、カリっと焼き上げるのが一般的ですが、地域や、家庭、お店によっては蒸す・揚げるといった調理方法を取り入れることも多く、もちもちした食感やサクッとした食感など焼いた時とは異なる味わいを楽しむことが出来ます。具材には特産物である野沢菜やかぼちゃ、なす、切り干し大根などを入れるのが定番となっており、昔はおやつよりも食事として食べられることが多かったそうです。しかし、あんこやさつまいもなど甘い具材も使うことからおやつとしても食べられるようになり、現在は具材の種類に関係なく日常的に食事としてもおやつとしても食べられています。定番に加えて肉味噌や信州牛、鹿肉を使った具材や季節を感じるよもぎ、山菜、くるみ、きのこ、りんご、さらにはトマトやチーズ、ポテトサラダなど洋風の具材を包んで販売しているお店もあり、バリエーションの幅が広がっているのも特徴となっています。

長野県は冷涼な気候や山岳地帯といった環境から稲作が適しておらず、代わりにそばや小麦の栽培を行ってきたことから粉食文化が身近にありました。おやきもその1つであり、お米の代わりとして食べられてきたため、食事としておやきを食べる文化が根付いているのです。おやきの発祥となっている西山地域では昔は各家庭に囲炉裏があることが多く、ほうろくと呼ばれる鉄製の鍋で表面を焼いてから囲炉裏の灰の中で蒸し焼きにする「炭焼きおやき」が主流となっていました。しかし、作られる地域が広まるにつれ焼く・蒸すといった簡略化した調理方法が主流となり、さらには焼いてから蒸す・蒸してから焼くなどいくつもの調理方法も誕生しました。おやきは小麦粉などの粉を水で溶いて生地にするため、同じ粉食のうどんやそばなどに比べると手間がかからなかったことが日常的に食べられるようになった理由となっています。また、日常食ではありますが地域によってはお盆には仏前に供える、正月に願掛けをして食べるなどハレの日にも食べられており、地域に深く根付いているのが分かります。

今でこそ観光地だけでなくサービスエリアなどでも人気の高いおやきですが、PR活動を通して認知されるまでは県外の方が手に取る機会も少なく、郷土食の存続にまで影響が出るほどだったそうです。しかし、地道な活動を通しておやきの認知度を広め、県北部で食べられていたものが県全域に広まり、さらには全国まで認知されるようになったことで現在は長野県を代表するご当地グルメとして親しまれています。県内では、サービスエリアの他にも専門店やお土産店、コンビニなどいたるところで販売しており手軽に購入することが出来るため、お土産用や自宅で冷凍保存するために多めに購入するといった方も多数見かけられます。また、駅前や観光地周辺でも販売しているため、食べ歩きのお供として購入すれば長野県の風情ある街並みや歴史をより身近に感じることが出来るでしょう。

五平餅

“五平餅”とは潰したお米を串や割りばしに巻きつけて焼いた郷土料理で、長野県の木曽・伊那地方を中心に岐阜県や愛知県、静岡県などの山間部で食べられているため、中部地方では広い範囲で親しまれているソウルフードとなっています。形が崩れないよう一度素焼きし、味噌や醤油をベースにした甘いタレをつけて再度焼くため、香ばしさと甘く濃厚なタレの味わいを楽しめるのが特徴です。小判型やわらじ型といった平たい楕円の形をしているものが多いですが、地域によって形や大きさ、タレの種類が異なり、ひょうたん型やきりたんぽ型、タレにピーナッツ・くるみ・ごまなどが加わっているものなど非常に多種類の五平餅が存在しています。その中でも長野県の五平餅は飯田市から上の北部はだんご型、南部はわらじ型が多く、信州の特産物であるくるみをたっぷり使った優しい甘さが特徴のくるみ味噌を使っていることが主流となっています。しかし、細かく分けると県内でも10種類近い形があると言われており、だんご型だけでも厚みがあるもの、平たいもの、だんごの個数が2つや3つ、多いものだと5つ刺さっているものなどいくつかの種類を見かけることが出来ます。特に飯田市の辺りでは平たい円形が2つ刺さった眼鏡型が主流となっており、場所によって全く違った印象の五平餅となっているのです。また、信州味噌やクルミを使う以外にも季節によっては山椒やゆずを加えたタレやご飯にそば粉を練り込むなどの分かりやすい特徴が加わった五平餅も多く、お店ごとに風味の違いも感じられることが多いでしょう。

五平餅が誕生したのは江戸時代中期頃、木曽や伊那地方の山間部に暮らす人々によって山仕事の安全を祈るために作られていたと言われています。しかし、他にも起源や名前の由来にはいくつか諸説があり、飯田市に住む五平という男性が食べていた平らにした握り飯に味噌をつけて焼いていたものが広まったという説や神様のお供えものとして使われる御幣の形に似ていたためという説、米が貴重だった時代にハレの日に食べていたご馳走であり、1人5合も食べてしまうほど美味しいという意味の五平五合から名づけられたという説なども有力とされています。いずれにしても、古くからお祭りやお祝いごとの際に食べられてきた郷土料理であるため、今でも祭りや正月などのイベント時には地元の方が露店で販売していることが多いです。また、道の駅や農協、郷土料理を扱う飲食店、茶店などには定番商品として販売していることも多いため、地域によっては日常的に食べられていることもあります。中部地方では馴染み深いものの、全国的にはあまり知られておらず、2016年以降に著名なアニメやドラマ内で登場したことにより認知度が広まり、場所によっては売上が急増するほど人気が高まりました。見た目からも名前からももち米を使っているように捉えられますが、ごはんから作られているため食べやすく、五平餅でしか味わえない特有の食感や風味を楽しめるのが五平餅のよさでもあります。また、形やタレの種類が多いのも大きな特徴となっているため、長野県をはじめに他の地域との違いもぜひ食べ比べてみて下さい。

山賊焼

松本市や塩尻市など長野県の中央から西部に位置する中信地方を中心に食べられている “山賊焼”というソウルフードを知っていますか?山口県にも山賊焼という鶏をオーブンで焼いた料理がありますが、長野県の山賊焼は焼くのではなく揚げているのが特徴です。鶏の一枚肉をにんにくや生姜、たまねぎなどが効いた醤油ダレに漬け込み、片栗粉をまぶしてじっくり揚げた郷土料理であり、部位はもも肉以外にも胸肉や骨付き肉なども使われます。しかし、から揚げのように食べやすい大きさに切ってから調理するのではなく、一枚肉など大きい状態のまま揚げた後、カットして提供されることが多いため豪快でボリューム満点の見た目と片栗粉のサクサクした食感が特徴となっています。盛り付けにはキャベツが添えられていることが多いのも1つの特徴であり、ボリューミーな見た目ながらも意外とあっさり食べられてしまうのが山賊焼の不思議な魅力でもあります。地元では定食として提供しているお店も多いですが、下味がしっかりついた山賊焼はお酒との相性もよいことから居酒屋などでも人気の高いメニューとなっており、また地元の方からの人気の高さから、スーパーなどのお惣菜では山賊焼の味つけをしたから揚げが販売されているなど郷土料理としてだけでなく日常的に子供から大人まで幅広く愛されている料理となっています。

山賊焼は塩尻市にある「山賊」という居酒屋の創業者が第二次世界大戦前後に考案したと言われています。中国から帰還した兵士の話をもとに中国料理がヒントとなって作られ、料理の見た目のワイルドさに加えて、創業者もワイルドな風貌をしていたことから山賊焼きと名付けられました。当時は、油が非常に貴重であり、少ない油で揚げ焼きにして調理していたため「焼き」という名がつきましたが、油がたくさん手に入るようになると揚げ焼きから揚げる調理方法へと変わっていきました。しかし、名前だけはそのまま残ったため名前と調理方法に違いが出てしまったようです。山賊焼の美味しさは次第に広まり、松本市でも山賊焼を販売する店舗が増えていきました。2000年からは松本市がご当地グルメとしてPR活動をして認知度を高めてしまったため、発祥の塩尻市とは10年近く山賊焼をめぐって論争が起きていましたが、歴史的和解を経て現在は協力関係を築いており、両市合わせて地元の方や観光客が楽しめる山賊焼をメインとしたイベントも行っています。塩尻市の山賊焼はにんにくの効いたパンチがあるものが多く、松本市では生姜がアクセントとなっているあっさりした山賊焼が多くなっており、どちらも名物として県内外から人気と注目を集めています。どちらの市にも美味しくこだわりのある山賊焼がたくさんあるため、お腹を満たしたい際にはボリュームたっぷりの山賊焼を味わってみてはいかがでしょうか。

牛乳パン

長野県には昭和30年頃に誕生してから60年以上たった今もなお愛され続けているご当地パンがあります。それが“牛乳パン”です。コッペパンのようなふわふわっとした厚めの生地にたっぷりのミルククリームが挟まっているボリュームたっぷりのパンで、幅広の長方形が一般的な形となっています。お店にもよりますが、昔ながらの老舗でよく見られるふわふわの生地は、卵を使わずに牛乳を加えて作っているお店が多く、全体的に白っぽい色をしており、口当たりが軽く厚みがあるものが多いです。反対に厚みの少ないものは、しっとりとした生地感であり、くちどけのよさが特徴となっています。牛乳を練り込んだミルククリームは、全体的に甘すぎずしつこくないため、あっという間に間食してしまうほどの仕上がりとなっており、バタークリーム寄りかホイップクリーム寄りかによって風味に違いを感じられるでしょう。また、バターを使っている場合も、バターの量によって軽さが変わってくるため、似ていたとしてもまったく同じ牛乳パンが存在しないことも大きな特徴となります。

牛乳パンは伊那市の製パン会社で偶然作られたのがきっかけとなっています。昭和30年頃、まだパンが作られていないような早朝に年配女性が訪れ、どんなパンでもよいから売って欲しいという要望からその場にあったパンに菓子用のバタークリームを塗って渡したのが始まりです。この女性は近隣のダム建設の賄いを担当しており、会社で好評だったため連日同じパンを求めに来るようになりました。これをきっかけに商品化したところ非常に人気が出て、最盛期には1日に1,000個以上焼いても足らないほど売れたと言われています。当初は牛乳を使っていませんでしたが牛乳が簡単に手に入らないような時代だったため、名称に牛乳とついていたことでより人気に拍車がかかったとされています。長野県パン組合に加盟していた店主たちから牛乳パンの講習をして欲しいという要望から長野県全域や新潟県の上越地方まで牛乳パンの作り方が広まり、長い間愛され続けるご長寿パンとなったのです。当初から濃紺で印刷された白い共通の袋を使っていたため、現在も白いデザインの袋を使っているお店が多く、パン以外の特徴にもなっています。また、丸い形や半月の形、シュガー入りのシャリシャリした食感が楽しいクリームやコーヒークリーム、ジャム入りなど牛乳パンのラインナップも増えており、その人気は衰えることを知りません。そのため、開店時間と販売時間をずらしている場合や店頭に出るとあっという間に売り切れてしまう場合も多く、中には事前に予約をしていないと購入出来ない人気店もあるため、販売方法や時間、どこで購入出来るのかなどを各店舗のHPや直接電話をして確認をしておくとよいでしょう。お店によっては取り置き可能なところもあるため、売り切れが心配な場合は電話をしておくのがおすすめです。