えごま油に含まれる栄養とその効果

身体によいと言われ取り入れている人も多いえごま油ですが、一体何がよいのか、そもそもえごま油とは何か分からない人も多いと思います。今回はえごま油について含まれている栄養素や効果、効率的な摂取方法について紹介していきます。

えごま油とは

名前にごまと言う文字が入っているためごまの仲間だと思いがちですが、実は「荏胡麻(えごま)」と呼ばれるシソ科の1年草であり、原産国としては中国南部やインドになります。このえごまの種子を使い抽出した油がえごま油となり販売されているのです。

青じそによく似た見た目をしているえごまは、日本でも縄文時代から栽培しており、特に福島の会津地方ではえごまを使った郷土料理があるほど古くから愛されています。食べると十年長生きすると言われることから、会津地方では“じゅうねん”と呼ばれていたり、青森でも“じゅね”という名前で呼ばれ親しまれています。韓国でもえごまの葉は非常に親しまれている食材であり、サムギョプサルや焼き肉と一緒に巻いて食べたり、醤油漬けしたえごまの葉をご飯のお供として食べる習慣があります。

通常5月中旬にまいた種は10月下旬~11月中旬に収穫時期を迎え、収穫したえごまの種子からえごま油を作るのが基本の流れになりますが、現在はハウス栽培をしている農家も多いため、季節問わず1年を通して購入することが出来ます。

えごまに含まれる栄養素とその効果

  • α-リノレン酸
  • ビタミンE
  • ビタミンA(βカロテン)

α-リノレン酸

人間は脂肪酸を体のエネルギー源としているだけでなく、身体の組織を正しく機能させる役割などさまざまな働きを持っています。脂肪酸に含まれる不飽和脂肪酸のうちオメガ3と呼ばれる必須脂肪酸の中にα-リノレン酸は含まれていますが、オメガ3は唯一体内で生成することが出来ないため、食物を通して取り入れるしか摂取方法がありません。

食物としてはイワシやサバなどの青魚が持つ魚油(EPA・DHA)に多く含まれているのですが、日常的に魚を食べなくなってしまった現在では不足しがちな脂肪酸でもあります。そのため、同じくオメガ3に該当するα-リノレン酸が豊富に含まれているえごま油から摂取することが注目され取り入れている人が増えているのです。

α-リノレン酸は中性脂肪や血圧を下げ、血管や血液を改善、血中の総コレステロール値を下げる働きがあります。これにより、血管の中に血栓が作られるのを防いだり、アレルギーを抑制させ、皮膚障害や成長阻害の予防、動脈硬化・脳梗塞・心筋梗塞などの生活習慣病の予防に繋がるとされています。また、血流の改善は頭皮や肌にも栄養を行き渡らせ、抜けにくい髪を作る、しわやたるみを予防するなど美肌や美髪を保つためにはとても効果的な働きをしてくれます。

えごま油には特にこのα-リノレン酸が多く含まれており、その量はこめ油の約20倍、オリーブオイルにいたっては約30倍にもなります。さらに、α-リノレン酸は体内に入るとDHAやEPAといった脳の栄養素に変化し、脳や身体のサポートとしても働いてくれます。

ビタミン群

えごま油にはビタミンA・ビタミンE・ビタミンKなどのビタミン群も多く含まれています。ビタミンAは目・皮膚・粘膜などの機能や健康を保つためには必要なビタミンです。他にも、肌荒れの予防にも役立ち、ビタミンAとして変換されなかった部分は強い抗酸化作用を持つビタミンEと一緒に抗酸化物質として働き、体内の脂質の酸化を防止、血中コレステロール値の減少、シミしわを防ぎ老化を予防、血行の改善などの効果が期待出来ます。ビタミンKには肌の血流をよくさせ色素沈着を防ぐ、肌のダメージを修復、赤みや炎症を抑えるなどビタミンAと一緒に肌に役立つ効果が特に期待出来る栄養素です。

他にもえごま油には抗炎症作用がありアレルギー反応を抑える効果のあるロスマリン酸や肥満を防ぐ効果が期待出来るルテオリンと呼ばれる成分も含まれています。これらの栄養素により生活習慣病の予防やアンチエイジングの効果以外にも

  • 代謝UPによるダイエット効果
  • 記憶力などの学習能力の向上
  • 脳の発達促進
  • 認知症・アルツハイマー病の予防
  • 緊張感や不安感の軽減

など身体や脳への効果が期待出来るスーパーオイルとなっています。

1日の摂取量と効果的な摂取方法

これだけ身体だけでなく脳へも良い影響を与えてくれるえごま油は積極的に取り入れていきたいところですよね。では1日にどれくらい取り入れたらよいのでしょう。

えごま油の1日の摂取量の目安としては小さじ1杯になります。α-リノレン酸が多いえごま油は全体の約60%がオメガ3脂肪酸です。成人のオメガ3脂肪酸の1日の摂取量は1.6g~2.2gですが、えごま油小さじ1杯には2.5gのオメガ3脂肪酸が含まれており、小さじ1杯で十分な量を摂取することが出来るのです。

反対に過剰摂取をしてしまうと、免疫細胞が正常に働きにくくなり花粉症やアトピー性皮膚炎などのアレルギー性炎症疾患や心疾患、脳血管疾患などを引き起こす可能性があるため、適量を日常的に摂取するように心がけて下さい。

効率的な摂取方法

えごま油の特徴としては“酸化しやすい”ことと“加熱に弱い”ことです。そのため、1番効率よく摂取する方法としては小さじ1杯のえごま油を生のまま取り入れるということです。

えごま油はクセが少なく、似た性質を持つ亜麻仁油より香りや味がマイルドでコクを感じられます。そのため、サラダ・冷ややっこ・おひたしなどにかける、野菜ジュース・ヨーグルトに加えるのが簡単に取り入れやすいです。発酵食品との相性も良く風味がUPするので納豆などに加えるのも良いでしょう。また、加熱に弱い性質を持っていますが、うどんやコーヒーなど温かい料理や飲み物に加える分には問題なく摂取出来るため、冬などの寒い季節でも取り入れやすくなります。

さらに、えごま油に含まれているビタミンKも熱に弱い性質を持っているため、生のまま摂取することでビタミンKの栄養分もより効果的に摂取することが出来ます。ドレッシングとして使う以外にもバターやマーガリンの代わりにパンに塗ることも出来るため、身近な油を使っているものの代用として使うこともおすすめです。

注意点

ここで1つ注意いて欲しいことがあります。えごま油は納豆やカップラーメンなどに使われている発泡ポリスチレンの容器を変形・破損させる効果を持ち合わせています。そのままちょいたししてしまうと、容器に穴が開き火傷などに繋がる可能性もあるため、発泡ポリスチレンに入っている場合は容器を変えて使うようにして下さい。

また、質のよくないえごま油や加熱してしまった場合は魚臭いにおいがあり食べにくいです。酸化してしまったえごま油も同じようなにおいがあり劣化している可能性が高いため注意が必要になります。酸化させないためにもしっかり蓋をしめて高温多湿を避け、直射日光があたらない暗い場所で保管して下し、開封後は早いうちに消費するようにして下さいね。

えごま油を選ぶポイント

いざ購入しようとした際に、どのえごま油を選べばよいか迷ってしまいますよね。そんな時は次のことに注目してみて下さい。

  • 遮光性のビンに入っている
  • 製法が記載されている
  • 有機栽培である

酸化しやすい油は外からの光によっても酸化しやすいのが特徴です。そのため、濃い緑や茶色など遮光性が高い濃い色のビンに入っているものを選ぶのが購入時の1つのポイントになります。

もう1つのポイントとしては、製法が記載されているということです。えごま油は生搾り・圧搾・焙煎・コールドプレスなどの方法により油分を抽出させています。えごま油は油分を多く取り出すために一般的には種子を焙煎をしてから圧搾して油を抽出しています。効率的な抽出方法ですが熱が加わるため本来持っている栄養素が減ってしまうのが難点です。そのため、生搾りや低温焙煎で抽出されているえごま油を選ぶのも大きなポイントとなります。

えごまの種子を生のまま圧力をかけて油分を抽出させる圧搾法は生搾りとも呼ばれており、熱を加えないため他のえごま油にはないさっぱりとした味わいやクセが少ないのが特徴です。料理や飲み物の邪魔をしにくく使いやすいですが、圧搾法では取り出せる油分が少ないため価格が高めであるのも特徴になります。

コールドプレスや未焙煎は低温で焙煎することで熱に弱いえごまの栄養素を壊さないように抽出させる製法です。熱を30度以下に抑え時間をかけながら圧力をかけて抽出するため、こちらもにおいやえぐみが少なく食べやすいのが特徴となります。

また、国内で生産されているえごま油は自社農家などで作られた有機栽培のえごまを使っていることが多いですが、中には海外産のものを使っている油もあります。海外産のえごまを使った油は比較的リーズナブルですが、栄養面や酸化を考慮すると国産や有機栽培と記載されているものは購入時の判断材料になります。海外産が悪いわけではありませんが、その土地の環境によりクセが強い場合もあるため初めてえごま油を取り入れる場合は産地なども確認するとよいでしょう。

α-リノレン酸が多く含まれていることや酸化しやすい・加熱に弱い性質であるため、食用油として頻繁に使うことは不向きですが、少量を毎日取り入れるだけで多くの効果を期待することが出来ます。まだ取り入れたことがない人や検討している人はえごま油の特徴を理解してぜひ日常的に取り入れてみてはいかがでしょうか。