亜麻仁油とはどんな油なのか

取り入れると身体によいとよく聞く亜麻仁油ですが、どんな油なのか、どのように摂取したらよいのか分からなくて手が出せないという人も多いのではないでしょうか。今回は亜麻仁油について、含まれる栄養素やその効果、効率よく摂取する方法などを紹介していきます。

亜麻仁油とは

あまり聞き染みのない亜麻仁油はアマと呼ばれるアマ科の一年草の種子「アマニ」から抽出した油です。アマは中央アジアが原産となり、綺麗なブルーや白い小さな花を春から夏にかけて咲かせます。アマからとれるアマニは茶色くごまのようなしずく型をしており、この種子には30~40%の油分が含まれています。食用として西洋では古くから愛されきてた植物です。また、食用以外にも亜麻仁油は柿渋などと並んで天然塗料として使われて来ており、防腐・防カビ・撥水効果などの高さから木材の保護にも優れている油になります。古代エジプトではミイラの保存薬剤の1つとしても使われていた歴史があり、塗料の他にもインクなど実はさまざまな用途として使われています。

亜麻仁油に含まれる栄養素とその効果

  • α-リノレン酸
  • たんぱく質
  • 食物繊維
  • アマニリグナン

α-リノレン酸

体内で作り出すことが出来ない必須脂肪酸の中にオメガ3系脂肪酸と言うものがあります。脂肪酸は人間が生きていく上で必要なエネルギー源としてや正しく細胞を機能させるには大切な役割を果たしており、この脂肪酸の中には体内で作ることが出来るものと作ることが出来ないものがあります。特にオメガ3系脂肪酸(n-3系多価不飽和脂肪酸)は体内で作り出すことが出来ないため、食物を通して摂取しなければなりません。オメガ3に含まれる栄養素としては主にα-リノレン酸・DHA・EPAが含まれおり、もともとはDHA・EPAが多く含まれるサバやイワシなどの青魚を食べることで摂取していました。しかし、近年は魚を食べる機会が減ってしまったため、なかなかオメガ3を体内に取り入れることが出来なくなっています。そこで注目されたのが同じオメガ3に属するα-リノレン酸です。亜麻仁油にはこのα-リノレン酸が多く含まれているため、健康目的から日常的に亜麻仁油を摂取する人が増えているのです。

α-リノレン酸は血中の総コレステロール値や中性脂肪、血圧を下げる働きがあり、血管や血液を改善することが出来ます。さらにこの働きによって、血管の中に血栓が作られるのを防ぎ動脈硬化や心筋梗塞、脳梗塞などを予防したり、血流の改善から肌や頭皮にも栄養を行き渡らせしわ・たるみからくる老化の予防、太くハリのある美しい髪へと改善させ、美肌にも美髪にも繋げてくれます。また、アレルギーを抑制させ、皮膚障害や成長阻害の予防などにも効果が期待出来るのです。この亜麻仁油に含まれるα-リノレン酸はオリーブオイルの95倍、さらにごまの150倍以上とも言われており、オメガ3系脂肪酸が含まれている量としては植物油の中でもトップクラスと言われています。

たんぱく質・食物繊維

亜麻仁油には他の油にあまり含まれていないたんぱく質や食物繊維も豊富に含まれています。種子であるアマニは約20%がたんぱく質なっており、その量は鶏ささみとほとんど同じとなっています。また、アマニに含まれているたんぱく質には成長ホルモンの分泌を促すアルギニンも多く含まれており、健康や美容においてよい影響を与えてくれます。

また、アマニ100gには約24%の食物繊維が含まれており、その量はごまの約2倍の量となっています。さらにそのうちの2/5がわかめや昆布など海藻類に多く含まれる水溶性食物繊維、残りの3/5はキャベツなどに多く含まれる不溶性食物繊維になっています。食物繊維は水溶性と不溶性どちらもバランスよく摂取することが大切ですが、1つの食材にバランスよく2つの食物繊維が含まれていることがアマニがスーパーフードとして注目が高い理由の1つともなっています。

アマニリグナン

α-リノレン酸と並んで植物油の中でトップクラスの成分があります。それがリグナンと呼ばれる植物に含まれるポリフェノールの1種です。このリグナンは大豆イソフラボンに似た働きを持っているため、特に女性にとって嬉しい効果があります。腸内細菌によって分解されたリグナンは女性ホルモン(エストロゲン)を整える働きをしてくれるのです。エストロゲンの血中濃度が高い場合はそれを抑え、低い場合は手助けする働により、肌や髪にうるおいを与えα-リノレン酸と一緒に美肌・美髪に導いてくれる効果や更年期障害を緩和してくれる効果が期待出来ます。そのため、特に女性には積極的に摂ってもらいたい油でもあります。

亜麻仁油に含まれている栄養分によって、

  • 高血圧・動脈硬化・心筋梗塞・脳梗塞などの生活習慣病の予防
  • アレルギー性疾患の改善
  • 認知症予防
  • 記憶力・学習能力の向上
  • コレステロール値や高血圧の改善
  • 免疫機能の促進
  • 脂質代謝の改善・ダイエット効果
  • 更年期障害の改善
  • アンチエイジング効果

など、さまざまな効果があり、身体・脳に加え精神的にもサポートをする効果が期待出来ます。

男性にも嬉しい効果が

さらに、亜麻仁油には男性が悩む要因の1つである薄毛を改善する効果も期待出来ます。薄毛はテストステロンという男性ホルモンが体内でジヒドロテストステロン(DHT)に変換することで髪の成長を阻害し引き起こされます。しかし、亜麻仁油に含まれるオメガ3系脂肪酸がこのジヒドロテストステロンが作り出されるのを抑制し、抗酸化作用の効果と一緒に発毛の促進・健康に保つなどの働きをしてくれます。そのため、実は女性だけでなく男性にとっても嬉しい効果が期待出来る油でもあるのです。

1日の摂取量と効率的な摂取方法

では、亜麻仁油に含まれる栄養分を効率的に摂取して身体全体に少しでも多くのよい効果を取り入れるには、どれ位の量を摂取したらよいのでしょうか。

亜麻仁油の成人1日の摂取量の目安としては小さじ1杯です。亜麻仁油が含まれる脂肪酸“オメガ3系脂肪酸”は1日の摂取量の目安が1.6g~2.2gとなり、α-リノレン酸が多く含まれる亜麻仁油は小さじ1杯で約2.5gのオメガ3系脂肪酸を摂取することが出来ます。1日に目安量よりも多く摂取してしまうと、せっかくの効果が発揮できないどころか反対に肥満になる、動脈硬化を引き起こす、体質によっては下痢や嘔吐などの副作用が出てしまう恐れがあるため、正しい量を日常的に取り入れることが重要です。

効率的な摂取方法

毎日取り入れたい亜麻仁油ですが、実は酸化しやすい性質を持っています。さらに、加熱にも弱いため料理をする際の食用油として使うことは向いておらず、小さじ1杯の亜麻仁油を“生のまま”摂取することが効率的な摂取方法になります。

もともと、青いナッツのような香りや味、ほのかな苦みを持つ亜麻仁油ですが、加熱してしまうと生臭くなってしまうのが特徴であるため、サラダや冷ややっこ、おひたしなどにかけて摂取するのが取り入れやすくなります。また、発酵食品との相性も良く、納豆に加えて食べるのもおすすめです。たんぱく質が豊富に含まれる納豆は肌の調子を整え美肌へと繋げてくれる大豆イソフラボンも摂取出来るため、アマニリグナンの効果と一緒に女性にとってより嬉しい効果を期待出来るでしょう。

しかし、亜麻仁油の持つ苦みや風味が少し独特であるため、慣れていない人や苦手意識がある場合はヨーグルトにフルーツと一緒に加える、アイス・野菜ジュースなど味が感じられるものに加えると亜麻仁油のクセが和らぎます。また、加熱するのは不向きですが、完成した料理にかけたりみそ汁やスープなどに加えることは問題なく食べられるため、こちらもクセが減り食べやすくなります。

保存方法と購入時のポイント

亜麻仁油は酸化しやすく、酸化してしまうと風味の変化以外にも食べた際に胸やけなどを起こすこともあり、場合によっては消化器官や血液循環などに悪影響が出てしまうこともあります。そのため、加熱しない以外にも保存方法が重要となってきます。

保存方法としては、蓋をしっかり閉め温度や湿度の変化が少ない冷暗所で保存するようにして下さい。正しく保管していても開封した時点で酸化は始まってしまうため、開封後はなるべく早めに使いきってしまうことが大切です。また、冷蔵庫での保存は使用時の温度差で品質が劣化する可能性があるため控えた方がよいですが、商品によっては推奨している場合もあるため、商品ラベルなどを一度確認してみて下さい。

購入時のポイントとしては

  • 遮光性のある容器に入っている
  • 使い切りタイプや少量のものを選ぶ

酸化しやすい油は外からの強い光によっても酸化してしまうため、購入する際に濃い緑色や茶色などの遮光性のあるビンに入っているものや箱に入っているもの、二重構造ボトルのものを選ぶのも1つのポイントになります。ただし、通常はペットボトルよりビンの方が空気を通しにくい性質があるため特殊な構造でない限りはビン入りのものをおすすめします。

開封後早めに使いきるために、少量の商品を選ぶことも鮮度のよい亜麻仁油を摂取出来るポイントとなります。商品によって冷蔵庫での保存を推奨している場合も小さめの方が保存しやすいでしょう。また、製造時に精製しているものと未精製のものがあります。未精製のものは栄養が豊富な分、風味にクセが残っていることが多いため、初めて購入する場合などは精製しているものを選ぶのも日常的に取り入れやすくなります。

クセは少しあるものの、商品の種類や摂取の仕方によって改善することが出来ます。それ以上に、他の油には持ち合わせていない効果も多く期待出来るためぜひ取り入れて欲しい油の1つです。一般的には90g~150gの量で販売していることが多いですが、50g入りのようなさらに少量のものも販売しているため、迷っている人は少しずつ摂取して風味やその効果を実感してみて下さい。