赤糖と和三盆(和三盆糖)の特徴、その他の砂糖

 砂糖は精製糖と含蜜糖の2つの大きく分類されます。食探ではそれぞれの砂糖の特徴を解説していますが、今回は含蜜糖の中に含まれる赤糖(あかとう)と和三盆、またそれら区分に含まれない他の砂糖について解説をします。より詳しい砂糖の種類と分類はこちらを御覧ください。

赤糖(あかとう)とは

 含蜜糖の中には赤糖と呼ばれるものがあります。これはサトウキビの搾り汁からとれた原料糖と糖蜜を混ぜて作られており、黒糖より苦みやえぐみが抑えられ食べやすいのが特徴です。黒糖よりは減りますが、上白糖やグラニュー糖などの精製糖と呼ばれる砂糖よりミネラル分が多く、甘みやコクなど味のバランスがいいのも特徴です。

黒糖や加工黒糖ほど色は濃くなく、小さめのつぶつぶとした塊が混ざっている赤褐色の見た目をしています。和菓子や製菓などにもよく使われており、洋菓子ではメープルシロップやメープルシュガーと合わせて使うことが多いです。また、特有の甘さとコクがあるのでアジアンスイーツとの相性が抜群で、タピオカや豆花のシロップとしても使われています。

赤糖の栄養成分とカロリー

 赤糖はサトウキビから作られることからミネラルが豊富で、日本で広く使用されている三温糖と比較すると、カリウム、カルシウム、マグネシウムは約2倍、リン、鉄、亜鉛、銅、マンガンは約3倍含まれます。特にカリウム、カルシウム、マグネシウムについては、黒糖よりも若干ですが多くなっており、身近な砂糖でミネラル成分を最も接種しやすい砂糖と言えます。またカロリーについては100gあたり三温糖よりも10kcal高い程度で、カロリーは黒糖とはほぼ同数字となり、あまり差はないと言えます。

和三盆(和三盆糖)とは

 四国東部で生産されている含蜜糖の1つです。主原料はサトウキビですが、一般的なサトウキビよりも細い品種の「竹糖」を使って作られています。栽培地は主に香川や徳島になります。きめ細かく、くちどけが良い上品な砂糖の和三盆は、上白糖にくらべると淡いやさしい味をしています。その和三盆を使った干菓子と呼ばれる和菓子が有名ですね。
江戸時代から作られている伝統的な砂糖ですが、製造過程が増え手間がかかるため他の砂糖に比べると価格は高めです。高級な砂糖としても知られています。

和三盆の作り方

 作り方は黒糖と同じく、サトウキビの搾り汁を煮詰めて作りますが、この後の作業が黒糖と異なります。
和三盆は、「押し舟」という器具を使い石の重さを利用して蜜を抜く作業と、押し舟の作業により蜜を抜いたものに適量の水を加えて揉みこむ「砥ぎ」という2つの作業が増えます。この押し舟と砥ぎを3~5回繰り返してさらに蜜を抜くことにより、黒っぽい砂糖が淡い黄色になっていきます。最後にふるいにかけて乾燥させると和三盆糖が出来上がります。
こうした手間をかけて作られることにより、とても粒子が細かい上品な味わいの砂糖になるのです。

和三盆を使ったお菓子

 和三盆は粒子が細かく口溶けが良いことが最大の特徴です。和三盆を作る際の押し船を色々な形にしたきれいな和三盆があり、お茶菓子などにそのまま食べることもあります。また和菓子に使われているイメージが強いですが、いろいろな料理やお菓子に使うことが出来きます。最近では口溶けの良さを活かして、口に入れるとホロホロとほどけるような食感のクッキーやゲレンデ菓子などにの洋菓子にも使用されています。また料理でも特に和食との相性が良く、卵焼きや酢飯などに使われることも多いです。またコーヒーや紅茶の砂糖として、カステラやロールケーキなどの洋菓子に使うのもおすすめです。

その他の砂糖の特徴と種類

きび糖(きび砂糖)

 きび糖(きび砂糖)は本来、日新製糖が作ったオリジナルの砂糖になります。1984年に新しく美味しい砂糖を作りたいというところから出来た含蜜糖の1つです。現在は他のメーカーでも作られ、販売されています。

薄い茶色の色が特徴のきび糖は、製造方法はほとんど黒糖と同じです。サトウキビの搾り汁を煮詰めて作ったものが黒糖に対して、さらに精製したものがきび糖になります。上白糖やグラニュー糖ほど精製はしていないので、薄く茶色が残り、黒糖よりは少ないですがミネラル分も含まれています。サトウキビの風味も残しつつクセが少なく食べやすい砂糖になっています。白砂糖に比べると少しきめが粗い作りで粉末状なのが特徴となっており、黒糖ほど風味が強くないので、料理からお菓子まで幅広く使うことが出来ます。

砂糖の中には見た目がよく似た“三温糖”という砂糖があります。きび糖は含蜜糖という黒糖の仲間なのに対して、三温糖は精製糖という上白糖の仲間になりカラメルの風味が特徴の1つになります。色などの見た目はよく似ていても風味や甘みの強さが違うので、気になる人はぜひ味の違いを感じてみて下さい。

てんさい糖(ビート糖・てんさい含蜜糖)

 てんさい糖とはてんさい(甜菜)と呼ばれる植物の根から作られた砂糖になります。別名では「砂糖大根」や「ビート」とも呼ばれ、見た目はカブや大根に似ていますが、ほうれん草の仲間の植物です。ヨーロッパを中心に生産されているドイツ生まれの作物で、日本では北海道のみで栽培されています。

ほとんどの砂糖の主原料はサトウキビかてんさいから作られており、てんさいも製造過程の違いで精製糖と含蜜糖に分けられます。サトウキビと違うところは、てんさいの根を細かく切って煮ることで糖液を作り、遠心分離機で蜜と結晶に分けています。この蜜を乾燥させて作った砂糖が「てんさい糖」または「てんさい含蜜糖」になります。

黒糖などに比べると少ないですが、てんさい糖にもカリウム、カルシウム、リンなどのミネラルが含まれています。また、てんさい糖には天然のオリゴ糖であるラフィノースやケストースが含まれていることが特徴です。オリゴ糖は胃や小腸で吸収されずに大腸まで届くので、腸内で善玉菌(ビフィズス菌など)の栄養分となり、悪玉菌(大腸菌など)の増加を抑えてくれる働きがあります。

またGI値が低いのがもう一つの特徴と言われています。GI値とは炭水化物が糖に変わる速度を表しており、食べたものでどれくらい血糖値があがるかを表した数値です。血液中に糖が多いと、糖尿病や動脈硬化、脳卒中などの発症の恐れがあります。血糖値の上昇を抑えてくれるため、血糖値を気にしている人には取り入れたい砂糖の1つですが、低いからといって摂りすぎには注意しましょう。

あっさりした甘さとコクを持ち合わせているてんさい糖は種類問わず料理・お菓子づくりに向いています。とくに、甘さを抑えたいお菓子などを作りたい時に使うのがおすすめです。

カエデ糖(メープルシュガー)

 カエデ糖とはサトウカエデという木の樹液から作られる砂糖です。北アメリカで生産されることが多く、現在はそのほとんどがカナダの小さな地域で生産されています。カナダの国旗にデザインされているのがサトウカエデの葉っぱになります。なんとなく見たことがある人も多いのではないでしょうか。

サトウカエデからとれた樹液を煮詰めることでメープルシロップが出来ます。メープルシロップからさらに水分を取り除いてサラサラにしたものがメープルシュガーになります。メープルシュガーも樹液以外には何も加えずに作られているのでミネラル分が豊富に含まれており、一般的な砂糖では出すことが出来ない香りや甘さ、深いコクが感じられるのが特徴です。

 メープルシュガーは他の砂糖に比べると価格が高くなります。砂糖を作るために大量に栽培されているサトウキビやテン菜と違い、自然に生えている樹齢40年以上のサトウカエデの木の幹から採取されています。さらに季節も冬から春に変わる少しの期間の中で樹液を採取しているので、単純にとれる樹液の量が少ないのです。そこから手間をかけてメープルシロップやメープルシュガーに加工するので価格も高くなります。

ですが、栄養価が高く100gあたり約257キロカロリーとカロリーが低いので健康やダイエットに効果があります。メープルシロップはパンケーキやワッフルにかけて使うことが多いですが、メープルシュガーは乳製品と相性が良いので牛乳やヨーグルトなどに入れるのがおすすめです。

ヤシ糖(パームシュガー)

 サトウヤシなどのヤシ目の木からとれる樹液から作られる砂糖です。あまり日本では馴染みがありませんが、タイなどの東南アジアを中心にインド、アフリカ、南アメリカなどで生産されています。メープルシュガーと同じく樹液を摂取して作られるので大量には生産されず、作られたパームシュガーは生産地で消費されてしまうことが多いです。そのため輸出されるものが少なく、日本ではなかなか馴染みのない砂糖になります。
馴染みのない砂糖ですが自然な甘みとコクがあり、香ばしくヤシ独自の風味を持ち合わせています。固形や粉上で売られていることが多いですが、産地の1つであるタイでは、液状などさまざまな形状で販売されています。

 含蜜糖の中ではクセが少ないパームシュガーは栄養価が非常に高く、パワーフードとも呼ばれています。含蜜糖によく含まれているカリウムの他に鉄や銅などのミネラルも含まれており、総ミネラル量としてはメープルシュガーの約2.6倍にあたります。

 ヤシと言えばココナッツをイメージする人も多いと思いますが、パームシュガーとは別にココナッツパームシュガーが存在します。ココヤシの花の蜜を煮詰めて作られる優しい甘みとココナッツ特有の風味やクセが少ないのが特徴です。ですが、この2つの砂糖の違いはメーカーによっては曖昧に分けられていることが多いです。1つ言えることは、ココナッツパームシュガーはココヤシの花の蜜から作られていること。パームシュガーはヤシ目の木の樹液から作られていることが言えます。味の違いはありますが、効能やミネラルなどの栄養分もほとんど変わらないです。甘みやクセが少ないのでそのまま飲み物に入れたり、ヨーグルトなどにかけて使うのがおすすめです。

栄養価が高くさまざまな効能が期待出来るので、普段の料理やお菓子に使う砂糖をパームシュガーに置き換えてみてはいかがですか。