黒糖の特徴と加工黒糖の違い

黒糖の原料と特徴 

 黒糖はサトウキビを原料に作られる砂糖の1種です。沖縄や鹿児島県などサトウキビの生産が盛んな地域に行くと沖縄黒糖などのお土産を見る機会も多いのではないでしょうか?しかし、通常よくみる白い砂糖もサトウキビが原料になっていることが多いです。そのため、まずは簡単に砂糖の種類を解説し、黒糖の特徴などを紹介したいと思います。

 種類がたくさんある砂糖は、ほとんどがサトウキビとテン菜という2つの植物から原料が出来ています。その原料を砂糖にする製造方法の違いで、精製糖(分蜜糖(ぶんみつ))と含蜜糖(がんみつ)の2種類に分けられます。

精製糖:原料の搾り汁を結晶と糖蜜に分け、その結晶が砂糖となります。主な製法は遠心分離機にかけて分離させ、糖蜜を取り除いています。家庭でよく使われている上白糖やグラニュー糖は精製糖に含まれる砂糖です。

含蜜糖:原料の搾り汁を煮詰めて作られています。この製法ではミネラルなどが除去されずに含んだまま作られるので、砂糖にもミネラルが豊富に入っているのが特徴です。

より詳しい砂糖の種類と分類はこちら

 この含蜜糖の代表と呼ばれるものが黒糖になります。黒糖は世界中の温かい地域で作られており、サトウキビを使って作られているのが特徴です。日本ではサトウキビの栽培が盛んな沖縄と鹿児島の離島で生産され、そのほとんどは沖縄で作られたものになります。鹿児島でも作られていますが、沖縄に比べると小規模です。

作り方はシンプルで、サトウキビの搾り汁を煮詰めて濃縮し、加工せず冷やして作られます。
そのため、サトウキビの持つミネラル分を豊富に含み、特有の風味と甘さ、コクを持つ砂糖となります。色は濃い焦げ茶色をしており、料理からお菓子まで広く使うことが出来ます。コクが出るため、カレーなどの隠し味として入れるのもおすすめ。白砂糖に比べると固まりやすい性質から粉末状ではなく、ブロックのような固まりで売っていることが多く砕いて使います。沖縄では粒状の黒糖をそのままおやつの代わりとして食べる文化があります。

黒糖の栄養成分とカロリー

栄養成分 

黒糖にはビタミンBやナイアシンなどのビタミン類・カルシウムやマグネシウムなどのミネラル、鉄分、ポリフェノールなどの成分が豊富に含まれています。特にカリウムが豊富で、カリウムは血圧を下げる効果やむくみを解消してくれる効果が期待できるとされています。また、カリウムはその他にもコレステロールや糖の吸収、血糖値の上昇を抑えてくれる効果や疲労回復、便秘解消にも繋がる成分が含まれています。

カロリー

 気になるカロリーは白砂糖100gあたり384キロカロリーに比べると、黒糖100gあたり354キロカロリーと少し低めです。コーヒーに砂糖を入れる人や料理でよく使うなど毎日の暮らしの中で砂糖を使うことが多い人は黒糖に変えるだけで、カロリーを抑えながらカルシウムやミネラルが摂れてしまうためおすすめです。

黒糖を使ったおすすめの料理

 ミネラル分が豊富なのでそのまま食べるのもおすすめです。そのままが苦手な人は細かく砕いてヨーグルトやコーヒーに入れるとコクが出て、黒蜜のような味わいになため食べやすくなります。黒糖は白砂糖に比べると独特な風味やクセがあるため、食べるのに馴染みがない人は料理やお菓子に入れるのが良いでしょう。しかし、料理やお菓子の種類によっては黒糖の風味が強く出てしまうので、使うときは用途を選ぶと良いかもしれません。

おすすめの料理・お菓子

  • 蒸しパン
  • パウンドケーキ
  • ドーナッツ/サーターアンダギー
  • コーヒーゼリー
  • かりんとう
  • 角煮
  • 佃煮
  • 煮物/肉じゃが
  • 肉味噌
  • 甘酢あんなどの中華料理
  • もずく酢
  • タピオカミルクティー
  • チャイ
  • カレーなどの隠し味

黒糖を使用した焼酎、奄美黒糖焼酎

黒糖を使用した焼酎、黒糖焼酎をご存知でしょうか?黒糖焼酎はその名の通り、黒糖を利用した焼酎で、黒糖の甘さとコクが味わえる焼酎で焼酎小心者でも飲みやすいということと、蒸留酒になるめ糖質0で人気の焼酎です。

 実はこの黒糖焼酎は正式名称は奄美黒糖焼酎と言い、鹿児島県の奄美諸島でのみ製造されている焼酎になります。黒糖の生産量では沖縄が上回るのですが、沖縄では製造されず奄美大島だけで製造されています。その理由は歴史的な背景があります。元々奄美大島では黒糖を使用した焼酎を製造しており、麹は使用していませんでした。そして1953年に奄美大島は日本に返還されることとなるのですが、麹を使用していないことから酒税法上は「スピリッツ」に分類され、高い酒税をかけられることとなってしまいました。当時戦後からの復興期で返還間もないことから、島民からも国に対して強い要望があったこともあり、特例的に奄美大島内で製造される黒糖焼酎のみ、スピッツではなく焼酎として扱うという措置があり、現在に至ります。

 そのため、奄美大島以外でも製造工程的にはどの都道府県でも製造可能ですが、奄美大島以外で製造された場合は酒税法上、スピリッツに該当するため経済的な面から製造する意味合いが薄いということもあり、奄美大島が黒糖焼酎の唯一の産地として知られ、その伝統が守られてきています。

黒糖と加工黒糖

 黒糖は「純黒糖」と「加工黒糖」の2種類に分かれます。”黒砂糖”もよく聞きますが黒糖の別名で同じものになります。
純黒糖は上でも説明したように100%サトウキビから出来ている黒糖そのものです。加工黒糖は黒糖に原料糖(白砂糖の原料、粗糖とも言います)や糖蜜を加えたものになります。フレーバー付きなども加工黒糖に含まれます。

加工黒糖の特徴

原料糖や糖蜜が加えられるため、純粋な黒糖に比べると本来の風味やミネラル分は減ります。しかし、黒糖は100%サトウキビというところから、環境の影響で生産や品質が安定しにくい弱点がありますが、加工黒糖は1年を通して生産が出来るので安定しています。また、味も黒糖よりクセが少なく甘さが強いのが特徴です。賞味期限も黒糖に比べると長くなります。

 もう1つの特徴としては、必ず黒糖が入っていること。黒糖が入っていないと加工黒糖と表記することが出来ません。パッケージ裏面の原材料に“黒糖”が記載されていれば加工黒糖となります。ちなみに純黒糖の原材料は“さとうきび”のみが記載されています。
加工黒糖は日本全国で売られており手に入れやすいのに対して、黒糖は生産地で消費されてしまうことが多く、手にする機会が少なくなります。お家にある黒糖や購入するときに気になる人は裏の表記を見てどちらのものか確認してみて下さい。

 また、商品によっては生姜黒糖・塩黒糖などフレーバー入りのものがあります。これも加工黒糖に含まれるもので、他にもココア・ミント・ブルーベリーなどたくさん種類があります。黒糖単体のクセがフレーバーによって抑えられ、バランスがよくなるので飴の代わりなどに食べるのがおすすめです。少し変わった黒糖を食べてみたい人や健康志向の人は好きなフレーバーの黒糖を探してみるのも一味違った黒糖が味わえて楽しいかもしれません。

沖縄の8つの島の黒糖

 黒糖の生産はサトウキビの栽培が盛んな沖縄と鹿児島の離島という話をしましたが、収穫されたサトウキビのほとんどが普段使われている上白糖やグラニュー糖などの原料になります。そのうち黒糖になるのは5~6%と少量です。そのため、ほとんどの黒糖を生産をしている沖縄でさえ工場は年々少なくなっており、現在、県外に製造して出荷しているのは沖縄の離島、八島のみになっています。

この八島で作られた黒糖は、味や食感に大きな違いがあり、初めて食べた人はみんな驚くそうです。製造方法にはそこまで大差がないのがまたおもしろいところですね。

沖縄の8つの島と黒糖の特徴

伊平屋島(いへやじま)
山や豊かな水に恵まれているので、土壌にもミネラル分が豊富でゴツゴツした大きい粒が特徴。しっとりとしながらも歯ごたえがあり、甘すぎない黒糖になっています。

伊江島(いえじま)
本島からフェリーで30分程で行ける島です。小粒でほろほろした柔らかい口当たりが特徴で塩味を感じる味わいが特徴です。

粟国島(あぐにじま)
粟の産地だったことが島の名前の由来になっています。えぐみなどが少なくあっさりしていて、クセも少ないため食べやすい黒糖。塩味とのバランスも良いです。

多良間島(たらまじま)
島の中心にサトウキビが栽培されているので潮の影響が少なく、甘みが強いのが特徴です。また、色は濃い焦げ茶色をしており、食感は硬めのしっかりとした黒糖。

西表島(いりおもてじま)
“東洋のガラパゴス”とも呼ばれ自然豊かな島で作られる黒糖は、塩味やクセは少なくコク深い甘さが特徴。色は白めで食感も硬めですが、くちどけが良いのも特徴です。

小浜島(こはまじま)
日本最大のサンゴ礁“石西礁湖”に位置する小浜島では、手作業でサトウキビを収穫し新鮮なうちに製造されています。そのため、食感は柔らかくくちどけも良いです。見た目は比較的薄めなことからチョコレートのよう。

与那国島(よなぐにじま)
日本の最西端にあり、台湾が見える国境の島です。ここでは台地でサトウキビが栽培されており、作られる黒糖にはミネラル分が多く塩気が強く感じられます。しっとりとした食感でキャラメル型をした明るい黄土色の黒糖になります。

波照間島(はてるまじま)
日本最南端の波照間島で作られる黒糖は見た目が石のようでごろっとしています。食感は硬めですがホロっと崩れやすくサクサクしています。少し苦みがあるのも特徴です。

 沖縄本島から北西に位置する8つの島では、作られる黒糖にもそれぞれ特徴があります。両端の伊平屋島から与那国島までは約580キロ離れているので島の土壌なども変わってくるのが味の違いに繋がります。栽培方法や天候などの環境によって見た目や食感に違いが出る8つの島の黒糖。ぜひ食べ比べて違いを感じてみてください。食べ比べセットを出しているメーカーもあるのでそちらもチェックしてみてください。