福井県のローカルフード・ローカル飯

山や海に囲まれた福井県は恐竜の化石が最も多く発見された県としても有名です。そんな自然豊かな土地柄であるため、特産品も海鮮から農産物まで幅広いです。さらに、地元民が愛するご当地グルメには名前からは想像しにくい料理もあるのだとか。今回はそんな福井県のローカルフードやローカル飯について紹介していきます。

福井県のおすすめローカルフード・ローカル飯

越前がに

福井県の名産物の中でも特に知名度が高く、冬に欠かせないのが越前がにです。背中に小さな黒いツブがついたカニと言えばピンとくる方もいるのではないでしょうか。福井県の漁港で水揚げされるオスのズワイガニのことを“越前がに”と呼び、ぎっしり詰まった甘味のある身とコクの強い濃厚なカニ味噌が特徴です。背中についた黒いツブはカニビルの卵であり、卵が多くついている越前がには脱皮してから時間が経過していることを表すため、身がしっかり詰まった美味しいカニである証拠となります。

国内で最も古いズワイガニ漁の歴史を持つ越前がには、全国でトップクラスに入るほど品質も高く、唯一皇室に献上した歴史のあるカニでもあるのです。その美味しさの秘訣としては、寒流と暖流がぶつかるプランクトンが豊富な環境や水深が深くカニが生息しやすい地形、漁場から港までが近く新鮮な状態で水揚げされることなどが大きく影響しています。

脱皮を繰り返しながら長い年月をかけて成長してきた越前がには立派な爪や長い脚も特徴的ですが、爪の根元に取り付けられた黄色いタグは越前がにを証明する特徴ともなっています。ブランド化の先駆けとして1997年に全国で初めてカニにタグをつけたのが越前がにであり、これをきっかけに現在は全国にタグのついたブランドガニが多数存在しています。さらに、大きさや重さなどの厳しい基準をクリアした越前がにには「極」のタグがつけられ、“幻の越前がに”と呼ばれるほどの高級品として扱われているのです。

また、福井県ではメスのカニのことを“せいこがに”と呼び、現在はせいこがににも黄色いタグをつけてブランド化させています。オスとは違った食感や旨みがあり、ぎっしり詰まったカニ味噌や内子・外子と呼ばれる卵、比較的手ごろな価格が人気となっています。越前がにの漁期が終わる頃には“水がに(ズボガニ)”と呼ばれる脱皮直後の殻の柔らかいズワイガニが出回るようになり、身離れがよくみずみずしい味わいが特徴です。水ガニも手頃な価格で販売しており地元では人気が高いですが、流通はほとんどしていないため、越前を訪れた際には越前がにだけでなく新鮮なせいこがにや水がにも味わってみて下さい。

とみつ金時

とみつ金時とは、1987年(昭和60年)から福井県の最北端に位置するあらわ市富津(とみつ)地区で生産されているサツマイモです。適度な水分がありしっとりとほくほくの両方を楽しめるとみつ金時は、甘みが強く鮮やかな赤紫の色をした皮が特徴です。その美味しさは一流のシェフやパティシエも認めるほどと言われています。

丘陵地である富津地区は、赤土を含み粘度質のある山砂でさつまいもを栽培しており、水はけのよさや徹底した土壌づくりが美味しいとみつ金時を栽培するカギとなっているようです。さつまいもは収穫直後よりある程度貯蔵した後の方が甘みが増すとされており、とみつ金時も収穫後に貯蔵してから出荷されています。

土付きの状態で温度35℃、湿度95%以上の室内で約90時間保管した後、温度12℃、湿度85%まで下げた状態で保存していきます。この繊細な温度管理によって旨みや水分を内側にギュッと閉じ込め、美味しい状態のまま長期間保存することが出来るのです。この方法を”キュアリング貯蔵”と呼び、キュアリング貯蔵を取り入れることで収穫時期だけでなく、1年を通して甘みが強く美味しいとみつ金時を出荷することが出来ます。

みつ金時を1番美味しくと味わう方法は焼き芋であり、農家もおすすめしている食べ方です。しかし、そのほとんどが県内に出荷されてしまうため県外で見かけることは少ないですが、焼きいもマニアがテレビで紹介していたり、とみつ金時を使ったスイートポテトやプリンなどのスイーツも増えてきているため、県外でも見かける機会が増える可能性が高いです。そのため、県内外問わずとみつ金時を見かけた際には、ぜひとみつ金時の食感や美味しさを味わってほしいです。

金福すいか・銀福すいか

夏に食べたくなるスイカは、黒縞模様のある緑色の見た目と割った時の赤い果肉が特徴ですが、福井県には果肉は赤いものの、皮が美しい黄金色をしたスイカがあります。その美しい見た目や福井市の景気回復と健康・幸福の願いをかけて“金福(きんぷく)すいか”と名付けられました。福井市で2000年に新種として誕生した金福すいかは、重さが2キロ前後の小玉で種が少なく、みずみずしいまろやかな甘さの果肉が皮際ギリギリまであるのが特徴です。シャーベットのようにも感じるシャリシャリした食感があり、未成熟の白い種はそのまま食べることも出来るため、子供から年配の方まで広い世代に楽しめるスイカでもあります。

皮際ギリギリまで果肉があるため、一般的なスイカに比べると皮が薄く傷や割れに弱いことから、ビニールハウス内でネットをハンモック状にした中に1つずつ果実を入れて育てる「玉吊り」という方法で栽培しています。さらに、自らの花粉で受精することが出来ないため、人の手を使って人工授粉を行い手間をかけて丁寧に栽培していることが美味しさにも繋がっているのです。

さらに、金福すいかとあわせて縁起物としても喜んでもらえるような新品種を開発し、2007年には“銀福(ぎんぷく)すいか”が誕生しました。金福すいかと同じく、人工授粉・玉吊りをして栽培されている銀福すいかは、見た目は一般的な黒縞模様のある緑色の皮をしていますが、割った時の果肉が黄色に近いオレンジ色をしており、甘味が強い爽やかな味わいを楽しむことが出来ます。2キロ前後の小玉で種が少なく、みずみずしいところや果肉が皮際まであるところは金福すいかと同じですが、見た目や味に違いがあるため、2種類を食べ比べてみるのもおすすめです。どちらも見た目の珍しさや美味しさから人気が高いですが、県内でも手に入りずらい品種であるため、気になる方は5月~6月にある販売申込期間を狙って購入してみてはいかがでしょうか。

ソースカツ丼

カツ丼と言えば揚げたトンカツと玉ねぎを甘辛い煮汁で煮付け卵でとじた料理をイメージしますが、福井県ではウスターソースをしっかり染み込ませた薄めのトンカツを数枚ごはんの上に乗せたソースカツ丼がご当地グルメとして人気があります。そのため、県内の飲食店やお弁当ではソースカツ丼を提供していることの方が圧倒的に多く、地元民からも広く愛されています。ごはんにソースが染み込んだトンカツだけが乗っているものが多く、非常にシンプルでボリューミーですが意外とあっさりしているため、地元民だけにとどまらず食通や観光客の間から徐々に知名度が広がり、近年は福井県を訪れた際には食べたいグルメの1つともなっています。

ソースカツ丼が生まれたのは大正時代、福井市内にある老舗洋食店「ヨーロッパ軒」が発祥になります。ドイツで修業をしていた初代店主が今ほど定着する前のウスターソースを日本人に合うように工夫して作られたのがソースカツ丼です。カラッと揚げた薄めの豚肉は柔らかく、甘みと酸味のあるウスターソースとの相性が抜群です。ソースカツ丼の美味しさやインパクトの強さは県内にも広がり、現在は100軒以上もの飲食店でソースカツ丼が食べられます。ごはんが見えないほどカツが乗っている場合は丼ぶりの蓋に乗せて食べるのが地元では定番で、お店によってソースの味わいが違うのも醍醐味の1つです。ただし、福井県内でカツ丼を注文するとソースカツ丼が出てくる確率が高いため、卵でとじたカツ丼を注文したい時には「卵でとじたカツ丼」など呼び方には注意して下さいね。

越前おろしそば・越前そば

代表的な日本食でもあるそばですが、福井県嶺北地方を中心に食べられているそばがあります。それが越前おろしそば(越前そば)です。コシがあり食べ応えのある黒めの田舎そばの上にたっぷりの大根おろしとネギ、かつお節が乗っており、ダシ(つゆ)を上からぶっかけて食べる冷たいそばになります。シンプルなそばですが、辛味大根を使っているためピリッとした辛さがよいアクセントになり、寒さの厳しい冬でも福井県では冷たいおろしそばを食べるのが定番です。そのため、ざるそばなど冷たいそばについてくることが多いわさびは使わないのが特徴でもあります。

福井県は全国でも有数のそばどころと言われるほどそばの実の栽培が盛んであり、特に収穫量が安定せず栽培するのが難しい品種改良されていない在来種を作り続けています。全国的に見ても在来種の希少な産地として有名で、収穫されるそばの実は小粒ですが身が詰まっており、香りが高く味も濃厚なのが特徴です。さらに、石臼で製粉されることが多いため他の地域で作られるそばより風味を豊かに感じます。

お店によってダシのぶっかけ方も違い、大根おろしが別になっているものやダシの中に入れられているもの、大根おろしの汁だけをダシに入れるものなど違った食べ方が出来るのも越前おろしそばの醍醐味となっています。

実は福井県のそばの歴史は非常に古く、500年以上も前の戦国時代に籠城用の食料や飢饉の為の食料として短期間で収穫出来るそばを栽培して使うようになった事が始まりです。江戸時代にはすでに大根おろしを添えた現在の食べ方が広まっていましたが、越前そばと呼ばれるようになったのはわりと最近であり、昭和天皇が福井を訪れた際に食べたそばを「越前のそば」と呼んだことが由来となっています。

県内にはおろしそばを提供しているお店が多く、シンプルなものから福井県民のソウルフードとして有名な油揚げを使ったおろしそばまであります。また、中にはそば打ちを体験出来る施設もいくつかあるため、時間がある際にはいくつかのおろしそばを食べ比べて店による違いを感じてみたり、自らそばを打ってそばの奥深さを体感してみるのもよいでしょう。

ボルガライス

福井県には前に紹介したソースカツ丼・越前おろしそばと並んで地元民に愛されているご当地グルメ“ボルガライス”というものがあります。名前からはどのような料理か想像しにくいですが、オムライスの上にソースがかかったトンカツが乗っており、男女問わず子供から大人まで人気のあるボリュームたっぷりの料理です。ソースカツ丼のような薄めのトンカツではなく、一般的な厚みのトンカツを使っていることが多いですが、ヒレカツやメンチカツなど使うカツや上にかけるソースの種類、オムライスの中身などはお店によって違うのも1つの特徴となっています。

越前市で30年以上も前から食べられていますが名前の由来はいくつかあり、発祥なども含めると全体的によく分かっていないことの方が多い料理でもあります。ボルガライスを普及させるボルガラー協会の活動もあり、現在は越前市にあるお店を中心に洋食店やカフェ、さらにはそば屋など20店舗以上のお店でボルガライスを食べることが出来ます。王道の洋風のものからあんかけのかかった中華風のもの、釜めしタイプや出し巻き風玉子が乗った和風のもの、さらには押し寿司やホットドッグタイプなど手軽に食べられる進化系のボルガライスまで販売されており、アレンジの豊富さもボルガライスの人気と繋がっているようです。過去には学校給食に出されたことや大手コンビニ・大手パンメーカーによって商品化されたこともあるため、見かけた際にはぜひ味わってもらいたいローカル飯の1つになります。

焼き鯖寿司

冷めても美味しいというフレーズが印象的な“焼き鯖寿司”は福井県発祥の食べ物になります。空港や駅、各地で行われる物産展などでも非常に人気が高く、じっくり焼いた肉厚なサバを酢飯と一緒に押し固めた「押し寿司」の一種となっています。大きな違いはないものの、直火で焼き上げるサバは素材の風味を感じられるものから醤油漬けや照り焼きにして香ばしさを感じられるもの、明太子や酒粕に漬け込んでコクやアクセントを楽しめるものなどがあり、お店や商品によって口に入れた時の印象が違うのも特徴です。また、サバと酢飯の間に大葉や生姜といった具材を挟んでいるのが一般的ですが、煮椎茸や梅、明太子などをプラスして挟んでいる場合やご飯にごまを混ぜ込んでいるものなど、ちょっとした違いだけでも全体の風味や美味しさが変わり、それぞれの特徴となっている焼き鯖寿司も多くあります。

焼き鯖寿司の歴史は意外とまだ新しく、2000年に福井県坂井市の三國神社で行われた三国祭りで販売したのが始まりとされています。福井県の若狭には傷みやすいサバを美味しく保存出来るように、開いたサバを直火で焼く「浜焼き鯖」という食文化があり、この浜焼き鯖を押し寿司にして販売したらいいのではというアイディアから誕生しました。その後、2003年に行われた博覧会や同時期の空弁ブームにより一気に知名度が広がった焼き鯖寿司は現在も人気の高い福井県の名産品となっています。生のサバを使った鯖寿司と比べると生臭さがなく、さらに焼くことで出てくるサバの脂や旨みを感じられるため、サバが苦手な方でも非常に食べやすいということが人気の秘訣にもなっています。また、押し寿司になっていることから持ち運びや取り分けがしやすく、保存性が高い点や見た目の華やかさなども含めるとお酒のつまみやお祝い事の贈り物など、お土産やお弁当以外にも広く重宝されているため、好みの焼き鯖寿司を探してさまざまなシーンに活用してみてはいかがですか?他店や具材の違いなどによる風味の違いを比べてみるのも焼き鯖寿司を楽しめるポイントです。

今回紹介したローカルフードやローカル飯以外にも、福井県にはコシヒカリや越のルビーと呼ばれる甘味の強いトマト、日本海側で獲れる新鮮な海鮮、メスの親鳥を食べる焼き鳥の食文化などまだまだ美味しい特産品やグルメがたくさんあるため、お気に入りの福井県のローカルフードやローカル飯を見つけてみて下さい。

こちらの記事では福井県の名産品について紹介しています。