宮崎 定番のお土産にも使える宮崎県の代表的な特産物

宮崎県は1年の平均気温が約17度と温暖で日照時間や快晴日数が多く、さらには降水量も九州で1番多いという環境であることから、農業が盛んで多くの野菜や果物が生産されています。また、農業だけでなく牛・豚・鶏といった畜産業やカツオの一本釣り・チョウザメの養殖など漁業の幅も広く、これらを使った郷土料理やソウルフードも認知度が高く人気があります。今回はそんな美味しいものがたくさんある宮崎県のお土産としても使える代表的な特産物や郷土料理について紹介していきます。

日向夏

宮崎県を代表する特産物の1つである“日向夏”は県内で発見された柑橘であり、県の特産柑橘にも認定されています。そのため、栽培面積・出荷量ともに全国1位、その生産量は約8割を占めており、宮崎市や隣接する市町を中心に生産しています。鮮やかな黄色い見た目をしている日向夏は文旦やグレープフルーツに似た印象がありますが、大きさは温州みかんより一回り大きい程度と小ぶりです。酸味や苦みが少ないため甘ずっぱく爽やかな味わいを感じられ、果汁も多く食べやすいのが特徴になります。また、柑橘類は皮をむく際に外皮と一緒に内側のアルベドと呼ばれる白い筋や綿のような白い皮を取り除きますが、日向夏はこのアルベドも一緒に食べるのが大きな特徴でもあります。日向夏のアルベドには甘みがあるため、通常の柑橘類のむき方ではなくりんごのように黄色い外皮だけを薄くむき、アルベドも一緒に食べるのが日向夏の正しい食べ方となっており、世界的にみても珍しい特徴を持った柑橘類と言われています。

日向夏は江戸時代末期に曽井(現・宮崎市赤江)で偶然発見されました。柚子の突然変異種と言われているため当時は酸味が強く食べにくかったそうですが品種改良を重ね、明治に「日向夏密柑」と名付けられてからは日向夏という名称で宮崎県をはじめ全国でも広く親しまれています。現在、日向夏は宮崎県だけでなく柑橘の生産が盛んな高知や愛媛、静岡などでも作られており「土佐小夏・小夏みかん・ニューサマーオレンジ」など違う名称としても出荷されています。ハウス栽培と露地栽培では収穫時期や種のあるなしなど多少の違いがみられますが、冬から春にかけて収穫時期を迎え、初夏に近づくほどより酸味が少なく食べやすいです。そのまま食べても美味しく食べられますが、爽やかでさっぱりしていることからサラダのトッピングや果汁を搾ってドレッシング・ソースとして使うなど料理にも幅広く使えます。醤油との相性もよいことから、日向夏を使った調味料も多く販売しており、他の柑橘類に比べるとバリエーションが豊富なのも日向夏の特徴かもしれません。もちろん、ジュースやゼリー、ジャム、お菓子など定番の商品も多く販売しているため、生でしか味わえない日向夏の美味しさと多様なジャンルのある加工された日向夏の美味しさを比べてみるのもおすすめです。

マンゴー

今や国内で“マンゴー”と言えば宮崎という印象も強く、品質も高いことから贈答品などとしても重宝されています。宮崎県ではいくつかの品種を生産していますが、中でも鮮やかな赤色になるアップルマンゴーのアーウィン種を主に生産しており、芳醇な高い香りと強い甘み、とろけるような食感が大きな特徴です。完熟マンゴーとして販売されているアーウィン種の中でも色や形が美しく、糖度15度以上・重さ350g以上という基準をクリアしているもののみに「太陽のタマゴ」という称号が付けられます。全国的にもブランドマンゴーとして有名な太陽のタマゴは大きさによって多少の差はありますが、現在1玉5,000円~10,000円前後で販売されている高級品であり、初セリでは2玉で50万円の値が付いたことから見ても品質の高さが伺えます。とはいっても、基準をクリアしていない等級の低い完熟マンゴーや規格外のマンゴーでも海外産に比べると、甘さや香りのよさ、手間ひまをかけているからこその生産量の少なさから全体的に品質が高く、宮崎県をはじめとする国産マンゴーの価格は高めであるのも特徴です。

完熟マンゴーは宮崎県の特産物となっていますが生産量自体は国内で2位となっており、トップの沖縄県が全国の約半分以上の生産量を占めています。では、なぜ宮崎県のマンゴーが全国的にも有名になったのかというと、確立した収穫技術による品質の高さと農家のこだわりが大きく影響しています。もともと宮崎県はマンゴーを栽培するのに適した環境をしていましたが、季節問わず温度管理が出来るよう現在は基本的にハウス内で大切に育てられていることが多いです。さらに、マンゴーは早採りすると糖度が低くなり、完熟するまで待つと自然に落下してしまう特性があることから、収穫のタイミングを逃さないよう1つずつネットをかけ、完熟して落下してもネットの中に落ちるという収穫方法を生み出しました。こうした新たな収穫技術や1つ1つ丁寧に手作業で収穫するなど、手間をかけて作られていることがより高い品質を作り出しているのです。また、地道にPR活動を続けメディアでも取り上げられたことなどにより宮崎県産の完熟マンゴーは広く認知され、今や不動の人気を誇る特産物としてその地位を築いています。人気の高さや4月~7月と収穫時期が限られていることもありなかなか手に入りにくくなっていますが、完熟マンゴーを使ったプリンやアイス、ピューレなどのスイーツを中心とした加工品も多く、1年を通して購入することが出来るため、マンゴー好きの方や宮崎県産マンゴーが気になる方はぜひ加工品にも注目してみて下さい。

へべす

宮崎県は温暖な気候からマンゴー・バナナといった南国のフルーツや日向夏・金柑などをはじめとする柑橘類の生産が特に盛んですが、その中には日向市で生まれた“へべす”という柑橘類があるのをご存じですか?へべすは「香酸柑橘」の1種であるため柑橘系の爽やかな香りを感じられますが、同時にスパイシーやウッディな香りも感じられる特有の香りを持っているのが特徴です。緑色の皮と小さめのサイズ感はカボスやすだちにもよく似ていますが、香りだけでなく味わいなどもまったく別ものであり、まろやかな酸味と甘みを持ち、種がほとんどなく皮も薄いことから女性や子供でも簡単に搾れてしまう点も特徴となっています。小ぶりながらも他の柑橘類とはくらべものにならないほど果汁が豊富に搾れるうえに、料理との相性も使い勝手もよいことから特に肉や魚料理、麺料理などによく使われており、日本料理店や料亭などでも重宝されています。また、お酒との相性もよいことから、へべすを使った果実酒やリキュール以外にも地元では焼酎やジン、ウォッカ、ワイン、ハイボールなどさまざまなお酒にスライスしたへベすや果汁を使ったメニューを提供しているお店も多いです。

へべすが発見されたのは江戸時代末期、現在の日向市内に住んでいた長曽我部平兵衛(ちょうそかべへいべえ)という人物が山中で自生していたへべすを見つけて持ち帰り、自宅の庭で栽培したことが始まりとなっています。当時、柑橘類のことを「酢みかん」と呼んでおり、平兵衛が見つけた酢みかんという意味合いから「平兵衛酢(へべす・へべず)」と呼ばれるようになりました。へべすは地元の農家に分ける、嫁入りの際に木を持たせるといった風習などにより少しずつ栽培する範囲が広まっていきましたが、その範囲は限られており、さらには種苗法に登録されていたこともあって数年前まで日向市以外での栽培が禁止されていました。また、収穫時期が短いことや長期保存に向いていないことも重なり、へべすの県外への流通は非常に少なく、同じ県内で生産されている日向夏やきんかんに比べると知名度も低かったです。しかし、農家の高齢化などにより現在は宮崎県内での栽培が認められるようになり、冷凍保存を取り入れるなど1年を通して出荷出来るようになったため、へべすの認知度はお店だけでなく一般の方へも広まっています。へべすは柑橘類の中でも類をみない特徴を持っているため、まだ味わったことがないという方や出会ったことがないというかたは宮崎を訪れた際にはぜひ、へべすを味わって特有の香りや酸味・甘みなどを直接味わってもらいたいです。

チキン南蛮

“チキン南蛮”は定食屋や居酒屋など全国の飲食店で食べることが出来る人気の鶏肉料理ですが、実は宮崎県で生まれた郷土料理になります。しっとりとした食感と甘酢の甘酸っぱい味わいが特徴のチキン南蛮は、鶏肉を油で揚げて作りますが、から揚げやカツと違い、片栗粉やパン粉を使わずに小麦粉と卵のみを使って衣をつけているため、揚げ物の特徴であるサクッとした食感ではなくしっとりとした食感が出来あがります。この衣は、揚げたあとの甘酢ダレを染み込みやすくする効果や口当たりをよくする効果もあり、ふわっとした軽さがあるからこそ鶏肉の食べ応えや旨みをしっかりと感じられることが出来るのです。

県内の北部に位置する延岡市にある洋食店で昭和30年代にチキン南蛮は誕生しました。起源として関係しているお店は2店舗あり、1店舗では鶏のから揚げに甘酢をかけたものを賄い料理として食べていたという説、もう1つはお店で余った鶏むね肉を使った料理を新しく考案し商品化したという説の2つが有名です。どちらの説が先に出たかまでははっきりしていませんが、どちらにしても延岡市で生まれたのは変わりません。当初は「鶏から揚げ甘酢漬け」という料理名でしたが、戦国時代に来日したポルトガル人の食文化をもとに作られたこともあり次第に“チキン南蛮”と呼ばれるようになり浸透していきました。

基本的にはむね肉を使うのが定番ですが、現在はもも肉を使うことも多く、部位によって食感や食べ応え、ジューシーさが違うため好みや気分、お店によっても違いを楽しめます。また、チキン南蛮といえばタルタルソースがたっぷりかかっているのも特徴ですが、延岡市ではシンプルな甘酢のみのチキン南蛮とタルタルソースのかかった定番のチキン南蛮を提供しているお店があり、あっさり食べたい場合とガッツリ食べたい場合でお店を選べるのも発祥地ならではの楽しみ方となっています。さらにこのタルタルソースですが、県内ではバリエーションが非常に豊富で、数種類の野菜を刻んで作られているもの、ガーリックを使ったパンチが強いもの、トマトやバジル、梅などをベースに作られているものなどお店ごとのこだわりがみられるオリジナルのタルタルソースが味わえるのも醍醐味であるため、宮崎県でしか食べられない個性豊かなチキン南蛮を探してみてはいかがでしょうか。

鶏の炭火焼き

焼き鳥や唐揚げなど鶏肉を使った料理は年齢層関係なく人気があり身近な料理でもあります。そんな鶏肉料理で近年、全国的にも人気が高まっているのが“鶏の炭火焼”です。宮崎県の郷土料理である鶏の炭火焼は、一口大に切った鶏肉を塩コショウで味付けをして、強火の炭火で表面が黒くなるほど焼き上げているのが特徴となっています。また、炭火によって燻製のような香りと鶏肉のジューシーさを味わえるのも特徴となっており、ご当地グルメとして県内ではもともと人気がありますが、地鶏料理を扱う居酒屋チェーン店や地方料理を扱うお店の増加、クセになる美味しさから全国にもその名と人気が広まっています。

宮崎県と鹿児島県では昔から「地頭鶏(じとっこ)」と呼ばれる在来種の鶏を飼育していました。しかし、繁殖が難しいこともあり昭和初期に固定天然記念物の指定を受け、代わりとなる新たな食用鶏として地頭鶏×外来種の交配で生まれた地鶏「みやざき地頭鶏」の生産を始めます。みやざき地頭鶏は鶏特有の臭みが少なく、コシがあるものの柔らかいのが特徴となっているため、炭火で豪快に焼いてもジューシーで噛めば噛むほど旨みが出てくるのが人気の秘訣でもあります。人気とは対照的に県内では35軒でしかみやざき地頭鶏を生産しておらず、県からの厳しい条件や品質管理をクリアしていないと雛を出荷出来ないことなどからみると選び抜かれた生産者のもとで大事に育てられてるからこそ品質の高さに繋がっているのです。さらに、広々とした環境の中で放し飼いをし、JAS規格で定められている飼育期間の2倍近い期間をかけて育てられているため心身ともに健康でバランスのよい筋肉が付き、食べた時の食感や美味しさなどにも大きく影響しています。もちろんお店で出来立ての炭火焼を食べるのが1番おすすめですが、現在は加工技術の向上により、みやざき地頭鶏を使った炭火焼きや焼き鳥、燻製、たたきなど真空パックになっている商品も多く販売されており、自宅でも簡単に炭火焼などを食べられることから自分用やお土産としての人気も非常に高いです。シンプルな味つけだからこそ鶏肉の質感と炭火の旨みが感じられるため、ビールや九州の地酒などを合わせればお酒が進むこと間違いなしですよ。

冷や汁

宮崎県の郷土料理としても有名な“冷や汁”はもともと日本各地に存在する郷土料理でした。魚の出汁と味噌を使って味つけをした冷たい汁をごはんにかけた料理で夏の暑い日に食べられますが、年間を通しても温かい気候が多い宮崎県の環境に適していたため郷土料理として根付いていきました。他県でも郷土料理として残っているところがいくつかあり、場所によって特徴や具材、調理法、名称などが違いますが各地で現在も親しまれています。宮崎県の冷や汁は焼いたアジやイワシなどの魚のほぐした身を使う場合と炒ったいりこなどをすり鉢ですったものを使う場合の2つに分かれ、ここに焼き味噌やごまを加えて伸ばし、キュウリ、豆腐、青じそ、ミョウガなどの具材を入れるのが特徴です。みそ汁を冷たくしたものと思われやすいですが、作り方はまったく違い、火を使わず初めから冷たい状態で作っていくのも冷や汁の特徴になります。

平安や鎌倉時代からすでに食べられていた記述があるほど冷や汁の歴史は古く、この頃は現在の冷や汁とは少し違い和え物のようなものとして食べられていました。僧侶などによって全国に広められたと言われていますが、どのタイミングで汁物の形になったかははっきりと分かっておらず、江戸時代以降には冷や汁を麦飯にかけて食べていたとされています。昔は作業の忙しい農家の方が手軽に食べられ、暑い夏の日でも栄養が取れる食事として親しまれていましたが、戦後は手間のかかる料理として広まり、県央を中心に県内の広範囲で食べられるようになりました。現在も冷や汁は栄養補給と疲労回復という点から夏バテ対策メニューとして注目されていますが、メディアや全国に展開している定食チェーン店などで宮崎県の郷土料理としてとして取り上げられることが増えたため冷や汁=宮崎というイメージが定着していきました。もともと家庭料理であったことから県内でも各家庭で作り方や具材が違い、冷たいごはんにかけるか温かいごはんにかけるかの違いもあるようです。出汁や具材にこだわった冷や汁が食べられるお店も県内にはいくつかあり、旅の思い出に食べるのもおすすめですが、そのままごはんにかけて食べられる出汁も販売しているため自宅でも手軽に宮崎県の郷土料理を味わってみて下さい。