マンゴーだけじゃない!宮崎県の魅力あふれる特産物

温暖な気候の宮崎県にはマンゴーや鶏の炭火焼など美味しくて人気の高い特産物がたくさんありますが、中には県内では有名だけどまだまだ全国的には知られていない美味しい特産物や個性豊かな郷土料理がいくつもあります。今回は、代表的な特産物とは対照的にちょっとマイナーだからこそ知ってほしい魅力あふれる宮崎県の特産物に注目して紹介していきたいと思います。

宮崎牛

“宮崎牛”は日本の100種類以上あるブランド牛の中でも人気が高いため有名ではありますが、宮崎県は地鶏である「みやざき地頭鶏」をはじめとするブロイラー(食用若鶏)の飼養頭羽数が全国で1位を占めているため、鶏肉や鶏料理の方が注目されることが多く、鶏に比べると認知度は少し落ちてしまう印象があります。しかし、宮崎牛は赤身でありながらも全体にサシ(霜降り)がきめ細かく入り、肉質も極上と言われていることから柔らかく滑らかな食感と旨みや甘み、芳醇な香りを感じられるのが特徴で、日本の10大ブランド牛に入るほどファンも多いです。さらに、上質な脂は融点が低いため口に入れるととろけるようなくちどけのよさも高く評価されています。そのため、全国和牛能力共進会という5年に1度開催される和牛のオリンピックでは最高賞の内閣総理大臣賞を過去に4度も受賞しており、全国的にみても品質と認知度の高さが伺えます。

もともと宮崎県では馬産が盛んでしたが、戦後生産が低下したことで和牛に力を入れ始めます。当時は三重や佐賀など他県のブランド和牛として肥育される仔牛(素牛)の生産の方が盛んであり、県内ではブランド和牛の肥育には手を出していませんでした。しかし、素牛の品質のよさは当時から日本全国でも評価されており、この良質な素牛を県内で肥育しはじめたことが宮崎牛の始まりとなっています。「太りやすく、飼いやすく、肉質の良い」という独自の指針を掲げて和牛の改良を進め、日本で初めて種雄牛の管理体制などを構築しました。昭和61年に宮崎牛というブランド名が作られると牛肉の統一化をするための定義も定められるようになり、「県内で生まれ育った黒毛和種の中でも肉質等級が4級以上」のものに“宮崎牛”の名称が付けられました。さらに2017年からは「県内種雄牛、もしくは家畜改良のため指定された種雄牛を一代祖にもつもの」という条件が新たに追加され、より厳しい条件をクリアしないと宮崎牛と名乗ることが出来なくなったのです。この厳しい条件をクリアし、徹底された管理を受けながら大切に育てられているからこそ、品質の高い宮崎牛が生産されています。宮崎牛は他県のブランド牛と比べても負けないほど魅力的であるため、宮崎県に訪れた際には地鶏だけでなく牛肉にもぜひ注目してみて下さい。

ライチ

中国が原産地の“ライチ”は見た目こそゴツゴツした赤く硬い皮に覆われていますが、中身は半透明の白色をしたみずみずしい果肉が特徴でぷるんとした食感をしています。香りも非常に華やかで甘くジューシーな味わいは世界三大美女の楊貴妃が愛していたことで有名です。紀元前から中国では栽培され、日本にも江戸時代には伝わっていた歴史の古いフルーツですが、亜熱帯地域のフルーツであったことから日本での栽培はなかなか難しく、基本的には海外で生産された冷凍ライチを輸入しています。しかし、国内でも宮崎県や鹿児島県、沖縄県といった温かい地域でライチは栽培されており、生産数が少ないことや1年のうち1ヶ月半程度しか収穫出来ないことから、国内への流通量は1%と非常に少ないですが海外産のライチとは比べものにならないほど別格の美味しさと言われています。中でも宮崎県の新しい特産品として認知度が高まってきているのが新富町で生産されている新富ライチです。

宮崎県の中央に位置する新富町では約20年もライチの栽培をしており、現在その生産量は国内の3割を占めています。しかし、ライチは手間がかかる上に原産国の違いなどから日本の環境に適さず、なかなか実が付かなかったそうです。さらに、長い期間をかけて何度も改良を重ね、品質や生産個数を安定させるまでには10年以上かかったと言われています。その後も水や気温の管理、害虫対策など手を抜かずに育て、出荷基準を設けたことで品質の高い国産ライチにまで成長しました。海外産よりも大きくゴルフボールくらいのサイズ感の新富ライチは1粒1,000円と非常に高級品ですが、生産者の努力とこだわりが詰まった1粒は生の国産ライチだからこそ海外産からは味わえない本当の美味しさを体感することが出来るでしょう。新富ライチを使ったケーキを東京都内のケーキ店で販売した際にはライチの美味しさから短期間でリピートする方が何人もいるほど評判がよかったそうです。宮崎県では新富ライチをはじめに宮崎県産の生ライチを生産している農家がいくつかあり、どれも評判がよいですが希少価値から手に入りにくく、近年はふるさと納税でも宮崎県産の生ライチの人気が高まっています。5月下旬から7月上旬と限られた期間のみですが購入することが出来、贈答品としても人気があるため珍しく美味しい国産ライチを見かけた際には見逃さないように要チェックです。

お茶/宮崎茶

宮崎県では日照時間の長さや温暖な気候から、フルーツや野菜だけでなくお茶の生産も盛んであるのをご存じですか?お茶と言えば日本三大茶として有名な静岡県や埼玉県、京都府などを思い浮かべやすく、あまりイメージがないという方もいるかと思いますが、宮崎県はお茶の生産量が全国4位と多く、茶葉作りに適した環境から美味しいお茶が作られているのです。県内で作られたお茶は“宮崎茶・みやざき茶”と総称され、日向市や都城市、串間市などが産地となっています。さらに、高千穂の五ヶ瀬では「釜炒り茶」と呼ばれる九州の一部でしか製造されていないお茶が作られており、全国的にみても貴重なお茶が県内で製造されているのです。宮崎茶の大半は蒸して作る煎茶となり、お茶の旨みと言われるアミノ酸と苦味・渋みのもととなるカテキンが多く含まれているため、旨みの強い深く濃厚な味わいを感じられるのが特徴となっています。宮崎県で煎茶が作られるようになったのは、1751年、江戸時代に当時の藩医が京都の宇治からお茶の栽培方法や蒸製製茶法を学び県内に広めたのが始まりとなります。

煎茶の歴史も古いですが、少し触れた釜炒り茶の歴史は煎茶よりもさらに古く、1600年代に朝鮮半島から日本に伝わったと言われています。釜炒り茶は一般的な蒸して作る煎茶と違い、名前の通り専用の釜で炒って茶葉を作ります。300度ほどの高温で炒ることで煎茶では作り出せない「釜香」と呼ばれる香ばしい香りが生まれ、合わせて澄んだ水色と渋みの少ないまろやかな味わいが特徴となっています。昔は全国でも生産していたとされていますが、昭和中期以降は生産する地域が減っていき、現在は宮崎県や佐賀県などそのほとんどが九州でしか生産されなくなりました。生産地域が非常に限られているため日本全体の釜炒り茶の生産量は1%にも満たないですが、そのうちの約6割が宮崎県で生産されているのです。

県内では大正後期から昭和にかけて機械製茶の導入や整備の補充、釜炒り茶から煎茶への転換など県がさまざまな茶業奨励策を取ったことで本格的にお茶の生産が広まっていきました。さらに、適した気候や降雨量などから県内の広い範囲でお茶が作られるようになり、現在は高品質なお茶として宮崎茶は品評会などでも評判がよいです。まったく違った特徴を持つ宮崎茶ですが煎茶・釜炒り茶どちらも魅力的で、煎茶は扱っている品種が多く、釜炒り茶は希少価値が高いため飲み比べてみるのもおすすめです。また、新茶の時期にはお茶の新芽を使った天ぷらも郷土料理として食べられており、県内のお茶に関するイベントなどで食べられる機会があるため、お茶好きの方はイベントにも参加してみるのもおすすめですよ。

菜豆腐

宮崎県には“菜豆腐”という郷土料理があります。菜豆腐とは豆腐を作る際に豆乳に刻んだ野菜を加えて一緒に固めて作られており、菜の花や山藤の花、三つ葉、椎茸、柚子、平家かぶの葉など季節を感じられる野菜やからし菜、桜、山椒の葉などのアクセントとなる野菜を中心に使われています。近年は大根や人参、青じそ、ほうれん草、里芋、パプリカといった馴染み深い野菜も使われるようになり、シンプルながらも色彩豊かな見た目が特徴です。また、しっかり水を切って作られることから一般的な豆腐に比べると硬めですが、野菜が入ることで豆腐2丁分くらいの大きさがあるのも特徴となっています。適当なサイズに切った菜豆腐はそのまま食べても、醤油や柚子味噌などの調味料をつけても美味しく食べられるうえに、硬めであることから煮崩れしにくいため料理にも使うなどさまざまな食べ方で親しまれています。

菜豆腐は宮崎県の郷土料理にはなりますが、正確にいうと椎葉村という九州全体から見てもど真ん中に位置する静かな村の郷土料理になります。椎葉村は面積の95%以上が森林に囲まれ、伝統的な民家や焼畑農法を守り続ける日本唯一の村となっています。また、日本三大秘境の1つとしても知られており、源平合戦に敗れた平家一族が隠れ住んだ平家落人伝説が残る村としても有名です。この椎葉村は上方言葉を日常的に使い継がれていることから、食生活にも京料理を思わせるものがあり、色彩豊かな菜豆腐はまさしく京料理を彷彿させるでしょう。野菜を混ぜるのには彩りの他にも、味を調える・栄養を補うといった効果もありますが、大豆が貴重だった時代に増量させるという目的でも使われていました。当時はやせた土地でも育つ平家かぶの葉が重宝されており、その名残から現在でも使われることが多いです。祭りや結婚式、法事など冠婚葬祭の際に食べられ各家庭でも作られていましたが、手間がかかることから現在は椎葉村の近隣にある数軒の豆腐屋で作られ購入することが出来ます。また、道の駅のような椎葉村物産センターでも直接食べることが出来るため、日本三大秘境である椎葉村に訪れた際には郷土料理の菜豆腐もぜひ味わってみて下さい。

干し大根

大根の漬けものとして定番のたくあんや壺漬けには塩押しをした大根を使ったものと“干し大根”を使ったものがあります。塩押しで作られるたくあんはソフトな食感が特徴となり、調味料で味付けされることが多いですが、干し大根で作られるたくあんはぱりぱりとした食感が味わえ、天日干しをして作られることから大根の旨みが強く素材本来の味わいを楽しむことが出来ます。そもそも干し大根とは、杉丸太と竹で作られた大根を干すための「大根やぐら」に1本ずつかけていき、風通しのよい場所で天日干しをして水分を抜いた大根のことになります。県内の田野町や清武町がある宮崎市を中心に作られる干し大根の生産量は日本一となっており、高さ・幅ともに6m、長さは20~150mもある巨大な大根やぐらはこの地域の冬の風物詩として親しまれています。巨大なうえにやぐらに綺麗にかけられた大根はまるで屋根のようにも見え、圧巻の光景となっています。

干し大根は白首大根という細長い品種を使い、11月下旬~1月にかけて収穫されたものを使って加工していきます。収穫した大根を洗いそのまま干していくため、12月頃から大根やぐらが見られるようになり、2~3週間かけて天日干しをして少しずつ水分を抜いていきます。その際に、気温が下がりすぎて低温障害にならないようやぐら内で何台ものストーブを焚いたり、雨によるシミが出来ないよう天候不順の日にはシートをかけるなど、昼夜問わず生産者の手によって丁寧に管理されているのです。宮崎市ではもともと千切り大根を生産していましたが、昭和35年頃、鹿児島県のたくあん業者が大根を栽培するのに適した土地として宮崎市に着目した事で干し大根の生産が始まりました。当初は鹿児島県で使われていた大根やぐらを再現して使っていましたが、宮崎県の環境に合わせて改良されて現在の形となり、やぐらの両面に大根を干すのも宮崎県の気候や風土の違いから取り入れられたものとされています。また、干した終わった大根を鹿児島県の業者まで運んでいましたが、コスト削減などから生産地にJA(農業協同組合)が工場を作り、すべてその土地で加工出来るようにしたことで干し大根の生産量が増えていきました。作ったやぐらは大根が干し終わると解体され、また翌年の大根が収穫される冬場に組み立てられるため、冬場にしか見られない風物詩となっているのです。こうして手間ひまかけて干された干し大根は規格ごとに選別されてJAで加工され、全国各地に商品として出荷されていきます。普段たくあんをはじめとする漬物を食べる機会が多い方は、ぜひ干し大根を使っているか、宮崎県産のものかなどにも注目してみて下さい。少数ですが、県外で作られる干し大根を使った漬物も販売されているため、塩押し大根を使ったものも含めて食感や風味の違いを食べ比べてみるのも楽しいですよ。