こめ油の効果 メリットとデメリット

普段使う油にはサラダ油やごま油、オリーブオイルなどさまざまな種類があります。原材料が違う分、それぞれに含まれている栄養素や期待出来る効果も大きく変わってきます。今回は、日本人には切っても切れないお米から作られているこめ油の効果やメリット・デメリットについて紹介していきます。

こめ油の効果とメリット

こめ油は正確に言うとお米からというより、玄米を白米に精米した際に出る米ぬかを使って作られている油になります。白米より玄米の方が栄養価が高いと言われる理由は、胚芽や糠層(ぬかそう)と呼ばれる栄養が豊富に含まれている部分が残っているためです。この栄養豊富な部分を使って作られているこめ油にも玄米由来の栄養素が豊富に含まれるのです。

抗酸化作用による生活習慣病の予防・改善

こめ油にはビタミンE・トコトリエノール・γ-オリザノール(ガンマオリザノール)などの抗酸化作用が強い栄養素が含まれています。ビタミンEには体内にある脂質の酸化を防ぐ効果があり、細胞の健康維持を助ける働きを持っています。大さじ1杯に約4.9㎎のビタミンEが含まれているのですが、米油には“スーパービタミンE”とも呼ばれているトコトリエノールも含まれており、その抗酸化作用の強さはなんとビタミンEの約40~50倍とも言われています。

人は普段呼吸により体内に取り込まれた一部の酸素が活性化されると活性酸素という物質となります。適量であれば、病原体やガン細胞を攻撃する免疫として機能しますが、増えすぎると正常な細胞まで攻撃してしまい細胞にダメージを与え、免疫機能の低下、脳梗塞・心筋梗塞などの生活習慣病やガンに繋がるなど、さまざまな悪影響があります。米油に含まれるビタミンEやトコトリエノールの持つ抗酸化作用にはこれらの悪影響を予防・改善する働きがあるとされています。

自立神経の調整、シミ・しわなどの老化予防

抗酸化作用もあるγ-オリザノールは他の油には含まれていないこめ油特有の成分です。
ホルモン分泌や自律神経系を調整する働きがあり、閉経後の女性に多く見られる更年期障害や自律神経の緩和や調整をし、不安やストレス、疲労感、ほてりなどを軽減する効果があります。また、ストレスにより自律神経のバランスが崩れることで胃痛や吐き気などの症状が現れる胃腸神経症の改善にも効果があると言われています。

さらに、メラニン色素を作り出す働きがあるチロシナーゼという酸素の活性を抑え、メラニン生成を抑制する働きがあります。この働きにより血行がよくなり肌のターンオーバーに繋がり、抗酸化作用と合わせて老化・しみ・くすみの予防など女性には特に嬉しいアンチエイジングの効果も期待が出来ます。

コレステロールを減らし高血圧・動脈硬化などの改善と予防

γ-オリザノールは他にも脂質の吸収を抑え肝臓で作られるコレステロールを抑制する働きがあります。さらに、こめ油には油の食物繊維と呼ばれる植物ステロールという成分も含まれています。植物油にはコレステロールが含まれていないのが特徴ですが、この植物ステロールはコレステロールの吸収を抑えてくれる働きがあり、こめ油には他の油よりこの植物ステロールが多く含まれているのです。

また、善玉コレステロールを減らさずに悪玉コレステロールを減らす働きのあるオレイン酸や血糖値や血圧、コレステロール値を下げる働きがあるリノール酸も含まれており、これらの働きによって血管の硬化を防ぎ血液をサラサラに改善し、高血圧の改善や動脈硬化を予防し生活習慣病の予防へと繋がります。

オレイン酸やリノール酸は脂肪酸と呼ばれる脂質の構成要素の種類であり、複数の脂肪酸をバランスよく摂取することがとても大切になります。体内で生成されるものもあれば、体内では生成されず食物から摂取する脂肪酸もあり、何をどのように摂取するかによってはバランスが取れず偏ってしまい、体に悪影響を及ぼす場合があります。しかし、こめ油は他の油に比べるとオレイン酸・リノール酸をはじめとしたいくつかの脂肪酸が理想的な割合で含まれています。そのため、体により効果的な期待が出来ると言われており、健康を意識する人にはぜひ取り入れてもらいたい油でもあります。

より詳しいこめ油の解説はこちら

こめ油のデメリット

こめ油は1日の摂取量の目安として約14g:大さじ1杯と言われています。適量を日常的に取り入れることで美味しいだけでなく体にもとてもよい効果が期待出来ますが、メリットだけでなくデメリットはないのでしょうか?

こめ油のデメリットとしてよく聞くものとしては次の3つです。

  • ノルマルヘキサンが含まれている
  • トランス脂肪酸が含まれている
  • 価格帯が高価である

まず、1つ目のノルマルヘキサンとは人体に有害な化学物質であり、抽出法によってはこの化学物質が使用されています。こめ油の抽出法としては「圧搾法・抽出法・圧抽法」の3つがあり、このうちの抽出法と呼ばれる製法ではノルマルヘキサンが使われています。しかし、抽出後の精製の工程によりこの成分も取り除かれてしまうため実際のところは人体に影響はないとされています。それでも出来るだけ化学物質を排除したいという場合は、ノルマルヘキサンが使われていない圧抽法を使って作られているこめ油を選択すればより安全に摂取することが出来るでしょう。

2つ目のトランス脂肪酸はたしかに大量に摂取することで人体に悪影響が出ます。トランス脂肪酸とは不飽和脂肪酸の1種であり、摂取しすぎてしまうと悪玉コレステロールを増やし善玉コレステロールが減り、高血圧や動脈硬化などの生活習慣病に繋がります。しかし、こめ油に含まれているトランス脂肪酸は他の油に比べても少なく、もともと日本人が日常的に摂取するトランス脂肪酸の量も少ない傾向にあります。人体に影響が出るほど摂取するとなると1日にこめ油を100g程度を摂取しないといけないことになり、1日の目安である大さじ1杯(14g)程度では全く影響はないため、特に制限しなくて問題ないとされています。

しかし、3つ目の価格は他の油に比べると高めとなっています。理由としては、大量生産に向いていないからです。玄米100㎏から約1㎏程度しかこめ油を作ることが出来ず、抽出法によってはさらに少ない量しか作ることが出来ません。さらに、精米した際に出る米ぬかを使って作られているため、お米の生産量が減ってしまうと米ぬかの量も減り、こめ油の生産量も減ってしまいます。近年は少子高齢化や食生活の多様化により日本人の米離れが進み、お米の消費量が減っていますが、健康への効果やクセがなく使いやすい点からこめ油の需要は年々増えており、供給が追い付いていない状態です。せっかく国産で作れる油ですが、輸入に頼らないと追いつかず、国産のものはより高価になりつつあるところだけが唯一のデメリットかもしれません。

カネミ油症事件とは

昭和43年10月に起きたカネミ倉庫社が製造したライスオイル(米ぬか油)に猛毒のダイオキシン類であるポリ塩化ビフェニル(PCB)が混入したことにより西日本を中心に起きた食中毒の事件です。

こめ油の製造工程で熱媒体として使用していたポリ塩化ビフェニルが混入してしまい、混入したライスオイルを摂取した人には吹出物をはじめとした皮膚症状や内臓疾患、しびれ、食欲不振などさまざまな健康被害が現れ、患者の推定人数は約3万人、さらに母親のへその緒を通じて子供へとうつり50年経った今でも被害が続いています。民事裁判としては2014年2月まに最高裁での判断がくだるまで長きにわたる事件でした。また後遺症も重かったため、当時こめ油はあっという間に店頭から姿を消し、再度家庭用として販売するまでには長い期間が必要とされました。

事件後は家庭用食用油として姿を消し、新たな用途が求められるようになります。マヨネーズや缶詰など、米油の安定性を活かした活用方法で、主に原材料としての活用です。そんな中ポテトチップスで知られる湖池屋がポテトチップスの揚げ油として米油を採用したことを契機にまた徐々に食用油として家庭でも使用されるようになりました。

しかし、この事件はこめ油そのものが悪いのではなく間違って混入してしまったポリ塩化ビフェニルが原因です。実際は風評被害であり、どの食品に混入したとしても起きてしまったであろう事件でした。そのため、この事件当時を知る年代の中には今でもこめ油は危険だと考えてしまう人も一定数いるとされています。それが米油について危険とか、乳児や出産前のお母さんには米油を控えるようにと言われ所以です。

こめ油は江戸時代から続く歴史ある国産の植物油です。効果やメリットばかり注目しがちですが、デメリットも知ることでより効果的な取り入れ方や、バランス、他の食材との相性などを知るきっかけとなります。使いがってのよいこめ油であるからこそ、日常的に取り入れやすく継続もしやすいです。上手に取り入ることで、健康にも繋がるよい影響が多いため、食用油を見直しをする場合にはこめ油を取り入れてみてはいかがでしょうか。