みなさんはココナッツという食材をご存じですか?ドーナッツなどのトッピングに使われていることが多く、食べたことがある人も多いのではないでしょうか。ですが、ここ最近は体によいということからこのココナッツの油分であるココナッツオイルが注目されています。まだまだ一部の人にしか取り入れられていないこのココナッツオイルとは一体何なのか、どのような効果があるのかについて紹介していきます。
ココナッツオイルとは
そもそもココナッツとはヤシ科のココヤシと言う果実です。このココヤシの実の胚乳から抽出された油がココナッツオイルとなります。ココナッツや同じヤシ科のアブラヤシの果肉であるパームフルーツには中鎖脂肪酸と呼ばれる天然の成分が含まれており、他の植物油に含まれているオレイン酸やリノール酸と同じ脂肪酸の1種となっています。この中鎖脂肪酸が含まれている油は“Medium Chain Triglyceride=MCT”と呼ばれ、一般的な油に比べると吸収や消化・分解が早くすぐにエネルギーになる特徴から、近年は日常的な健康や生活習慣病の予防のために取り入れる人も増えていますが、実はスポーツ分野・医療現場などでは栄養補給として40年以上に渡り広く長く利用されているのです。また、中鎖脂肪酸は母乳にも含まれていることから、未熟児などのエネルギー補給にもココナッツオイルを用いることがあると言われています。
食用油は脂質であるため、原料となる食物によって脂肪酸の種類が変わってきます。基本的にはラード・バターなどの肉類や乳製品から作られる固形の油脂は飽和脂肪酸、サラダ油やオリーブオイルなどの植物から作られる液体状の油脂は不飽和脂肪酸に分類されますが、このココナッツオイルは植物油であるにもかかわらず飽和脂肪酸に分類される少し特殊な油になっています。不飽和脂肪酸にはさらに細かく分類が分かれ、オレイン酸が多く含まれる油はオメガ9、リノール酸が多く含まれる油はオメガ6などオメガを使った呼び方がありますが、ココナッツオイルはオメガの分類には該当しないです。
さらに、これらの脂肪酸は構成される分子の長さによって分類の仕方が変わり、ラードやサラダ油など一般的な油脂のほとんどは長鎖脂肪酸に分類されます。通常長鎖脂肪酸は小腸から吸収された後、リンパ管や静脈を通り最終的に肝臓に運ばれ分解・貯蔵されますが、長鎖脂肪酸の半分の長さで構成されている中鎖脂肪酸は水に馴染みやすく溶けやすいため、小腸から直接肝臓に入ることで約4~5倍も速く分解されエネルギーに変えることが出来るのです。そのため、中鎖脂肪酸が60%も含まれているココナッツオイルは他の油よりも早くエネルギーに変わり、他の油には持ち合わせていない効果を発揮してくれます。
ココナッツオイルの効果
では、ココナッツオイルの持つ効果を詳しく見ていきましょう。大きな特徴としては下記のような特徴があります。
- 中鎖脂肪酸である
- エネルギーになりやすい
- ケトン体を作り出す
- 酸化に圧倒的に強い
- 抗菌・殺菌作用がある
免疫力を上げ病気になりにくい健康な体に
中鎖脂肪酸がエネルギーになりやすいことはお伝えしましたが、中鎖脂肪酸はケトン体も作り出してくれます。ケトン体とは体内で脂質が変化しブドウ糖に代わるエネルギー源として使われる物質です。特にブドウ糖は能のエネルギー源として重要な働きをしてきましたが、このケトン体も脳のエネルギー源として使われることが近年分かり、糖尿病などを患いブドウ糖を摂取しにくい人でも脳のエネルギー源として使え、記憶障害にも繋がるアルツハイマー病の症状の軽減や改善にも効果が期待出来ます。さらに、がんなどの原因にもなる活性酸素の抑制や免疫抗体の活性化などをはじめとした老化防止に繋がるサーチュイン遺伝子の働きが活性化されるため、病気になりにくい体に改善し長寿にも効果的と言われています。
さらに中鎖脂肪酸には、抗菌・抗ウイルス作用が働きやすいラウリン酸やカプリル酸、カプリン酸が含まれるだけでなく、ココナッツオイルに含まれるビタミンE、ポリフェノールなどの抗酸化作用の強い栄養分も豊富に含まれています。ウイルス・細菌に対する抗菌効果や細胞の老化防止などのアンチエイジング効果、代謝が上がることでむくみや肌荒れなどの改善にも繋がり、免疫力が上がることでより健康維持に繋がりやすくなります。
ダイエット効果
そして、もう1つ特徴的な効果としてはダイエット効果が期待出来るということです。エネルギーになりやすい中鎖脂肪酸は脂肪燃焼を促進する働きがあり、体内で脂肪として蓄積されにくい特徴があります。体内で作られるケトン体も代謝を促進させる働きがあるため、代謝が上がり皮下脂肪や内臓脂肪の脂肪燃焼に繋がりやすくなります。さらに、ココナッツオイルは満腹感をもたらす効果があるため、食欲を抑制し食べすぎの防止や、腸内環境を整え便秘の改善にも役立ちデトックス効果としても期待することが出来ます。実際に体脂肪が減った、エネルギーの消費を増加させたという実験結果も出ているほど効果の高さが伺えます。
これらの働きによって主に下記のような効果が期待出来るでしょう。
- 免疫力や代謝が上がる
- ダイエット効果
- しみ・そばかすなどの老化防止
- アンチエイジング効果
- 冷え性・むくみ改善
- 便秘改善
- 認知症の軽減・改善
- 生活習慣病の予防
ココナッツオイルのデメリット
これだけ健康や美容に多くの効果が期待出来るのであれば積極的に取り入れていきたいところですが、デメリットや副作用はあるのでしょうか。
ココナッツオイルが分類される飽和脂肪酸は、摂取しすぎると悪玉コレステロール増やし動脈硬化などを引き起こしやすくなります。アメリカの学会でも悪玉コレステロールを上げ心臓疾患に影響を及ぼすという結果を発表していますが、実験結果が少なく実際に心臓病や他の疾患に悪影響があるのかという結果までは出ていないのが現状です。反対に中鎖脂肪酸の多いココナッツオイルは通常の飽和脂肪酸と違い善玉コレステロールを増やし悪玉コレステロールを減らすという研究結果が出ています。
そのため、健康に悪い・コレステロールを上げるという内容には信憑性が低く、どちらかと言うと吸収されるルートが短縮され肝臓で代謝されることから肝臓機能に疾患がある人や機能が低下している人には負担がかかりやすいため注意が必要になります。いずれにしても過剰摂取することで起きる可能性の高いデメリットであるため、適切な量を摂取することが大切になります。また、人によっては稀に胃が熱く感じる・便がゆるくなることやアレルギー反応が出てしまうことがあるため、自分の健康状態なども把握して様子を見ながら取り入れるようにして下さいね。
1日の摂取量と効率的な摂取方法
ココナッツオイルの1日の摂取目安量は大さじ1~2杯です。満腹間をもたらすため空腹時に摂取することでよりその効果を発揮すると言われており、代謝が活性化する朝や脂肪燃焼効果を高めるため運動する1時間前に摂取するのが特におすすめです。
酸化に強いココナッツオイルは熱にも強い反面、20度以下で固まってしまうため料理に取り入れるのが使いやすいです。また、お菓子作りやパン作りにも使うことが出来ます。特に取り入れやすい方法としては
- 調理用の油やドレッシングとして使う
- コーヒーなどの温かい飲み物に加える
- バターの代わりにパンに塗る
などです。しかし、他の食用油に比べるとココナッツの甘い独特な香りがするため、カレーや洋食などに加えることで香りを感じにくくなります。また、バターの代わりとしてパンに塗った後ジャムを塗ったり、アイス・焼き菓子などスイーツに使うことで甘い香りがそこまで気にならなくなるでしょう。反対にココナッツの香りが好きな人はドレッシングとして使うと直接ココナッツの風味を楽しむことが出来ます。
また、コーヒーに含まれるカフェインは基礎代謝を上げ脂肪燃焼を促進させるため、コーヒーに入れて飲むことで脂肪燃焼の相乗効果となりより強いダイエット効果を期待することが出来ます。コーヒーに加える場合、ホットコーヒーにココナッツオイルを加えハンドブレンダーなどでしっかり乳化させると吸収が高くなるため、ひと手間かかりますがしっかり混ぜ合わせてから飲むようにしてみてください。最初は小さじ1の量から初めて慣れたら大さじ1加えるのがよいでしょう。
ただし1つ注意点があります。オリーブオイルなどの植物油はスプーンでそのまま飲むことも勧められており、海外にはココナッツオイルをそのまま飲む人もいますが、日本人には刺激を強く感じる人が多いため直接飲むのは控えた方がよいです。
精製の違い
ココナッツオイルには、精製しないで低温で油分を圧搾したバージンココナッツオイルと高温で圧搾し化学処理したRBDココナッツオイル(精製ココナッツオイル)があります。バージンココナッツオイルは精製していないため、栄養分がより豊富に含まれており健康や美容など多くの効果を実感したい場合はおすすめです。さらに、香りや質も高いものを選びたい場合はエクストラバージンオイルと呼ばれるものを選んでみて下さい。反対に、RBDココナッツオイは精製しているため、特有の香りも少なくさっぱりとしているため食べやすいです。また、価格もバージンココナッツオイルに比べると安価であるため、初めて取り入れてみる人や香りなどが苦手な人はRBDココナッツオイルから取り入れてみてください。
少し個性の強いココナッツオイルですが、中鎖脂肪酸を多く含むため上手く取り入れると他の植物油とは違った健康・美容に繋がる効果をたくさん実感することが出来るでしょう。他にも、髪や肌に直接塗ることで保湿効果やダメージ修復などの効果もあると言われているため、使いやすい形から始めて日常的にココナッツオイルを取り入れてみてはいかがですか?
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