山梨 お土産としても人気が高い山梨県の特産物

山梨県は富士山や八ヶ岳、南アルプスなどの高い山々に囲まれており、県土の約78%が森林という自然豊かな内陸県になります。また、日本で1番日照時間が長く、水源などにも恵まれていることから野菜や果物を中心に酪農や畜産などの農産物全般の生産が盛んになります。今回はそんな資源が豊富な山梨県の人気が高く定番の特産物やご当地グルメについて紹介していきます。

果物(ぶどう・もも・さくらんぼ・梨など)

山梨県はフルーツ王国と呼ばれるほど多種類の果物を生産しており、その中でも特にぶどう・もも・すももの生産量はどれも日本一を誇るほど盛んです。県内では果物ごとに定番の品種や有名な品種などが栽培されていますが、ぶどうやももなどの生産量の高い果物を中心に県内で発見・開発されたオリジナル品種や希少価値の高い品種も多く生産しており、旬の時期や味わい、香り、大きさ、見た目など特徴の違う品種を豊富に扱っていることが山梨県の大きな強みとなっています。多種多様の果物や品種を生産していることこそがフルーツ王国と呼ばれる理由にもなっていますが、これは傾斜地の多さや標高差、盆地特有の気候といった山梨県の地形や気候などが大きく影響しているのです。

山梨県は年間の日照時間が日本で1番長く、土壌の水はけもよいことや豊富な水資源にも恵まれているため、農産物を栽培・生産するには非常に適した環境をしています。太陽の光をたくさん浴びた果物は甘みのもととなるデンプンがたくさん作られ、それに加えて昼と夜の寒暖差が大きいことが作られたデンプンを余分に消費するのを防いでくれるため、果実の内部に糖分として蓄えられていきます。さらに年間の降水量が少ないこと、名だたる山々に囲まれ季節風を受けにくいこともあり、果実が病気にかかりにくく元気に育つため、甘く品質の高い果物を生産することが出来るのです。こうした恵まれた土壌や気候、環境の恩恵は古くから受け続いており、ぶどう・もも・梨・栗・柿・りんご・ザクロ・銀杏またはくるみの8種類は、江戸時代から山梨県を代表する果物として「甲斐の八珍果」と呼ばれ、献上品として江戸まで運ばれていた歴史が残っています。昔から果樹園が多かった山梨県ですが、戦後食糧増産のために果樹園をさらに増やしたことで県全体の果樹園化が進み、一大産地へと変化していきました。環境だけでなく歴史や長年培ってきた農家の技術と経験、それに伴って増えていった果樹園の数も影響して、現在では多岐に渡る美味しい果物が山梨県の特産物となっています。旬の時期が違う果物をたくさん生産しているため、県内ではほぼ1年を通して旬の果物が食べられるのも大きな特徴です。たとえ時期がずれていたとしても、加工したジュースやゼリーなど果汁をしっかり味わえる加工品も豊富に扱っているため、季節問わず美味しい果物を食べたいと思った際には山梨県を訪れるのがおすすめですよ。

ワイン

ぶどうが特産物となっている山梨県ではぶどうを原料にした“ワイン”の生産も盛んです。初めて日本ワインを生産した発祥の地でもある山梨県の生産量は、国内で作られている日本ワイン全体の約3割を占めており、日本一生産量が多い県であると同時に県内にあるワイナリーの数も日本で1番多いです。県内には100軒近いワイナリーがあり、次いで生産量の多い長野県や北海道と比べても倍以上の軒数となっています。山梨県はぶどう作りに適した環境をしていることから、デラウェアや巨峰、シャインマスカットといった定番の品種からサンシャインレッド、甲斐のくろまるなどオリジナルの品種までさまざまな品種を栽培していますが、ワインの原料として使われるぶどうの品種も多く、いちごやキャンディーのような甘い香りが特徴のマスカット・ベリーA、酸味が少なくまろやかなメルロ、ワインで有名なフランスボルドー地方が原産のカベルネ・ソービニヨンなども栽培しています。その中でも特に人気が高いのが日本を代表する「甲州」という品種であり、病気に強く酸味と甘みがしっかり感じられるのが特徴のぶどうです。甲州種から作られるワインは“甲州ワイン”と呼ばれ、酸味と苦味のバランスがよく爽やかですっきりとした味わいを楽しめることから山梨県を代表するワインとして国内外問わず高く評価されています。

日本でワインを造り始めたのは今から約150年も前、明治時代初期頃に明治維新が殖産興業政策の一環としてワイン造りを奨励したことをきっかけに甲府市で本格的にワイン造りが始まりました。勝沼の青年2人が醸造技術を学ぶためにフランスまで派遣され、帰国後に地元で広めたことで産地化していきました。勝沼から始まったワイン造りは現在、甲州盆地周辺で広く行われており、大きく4つのエリアに分けられています。県内でもワイナリー軒数が多く代表的な産地の東部、年間の平均気温が高く収穫時期が早い中央部、年間降雨量が少なく昼夜の寒暖差も大きい西部、標高が高くヨーロッパ系の品種も多く栽培している北西部と場所によって土壌や気候などの環境が異なるため、品種だけでなくエリアやそのエリア内にあるワイナリーによっても造られているワインの特徴が大きく変わります。しかし、この違いが山梨県産ワインの強みでもあり、同じ品種で造られていてもワイナリーなどの違いから味や香りが異なり、飲み比べが出来るのも山梨県ならではの楽しみ方となっています。

ワイン自体の品質が高いのはもちろんですが、基準をクリアしたワインには産地に「山梨」と地理的表示することが認められ、品質・原産地ともに保証されたブランドワインとして認識されています。奥が深く種類も豊富な山梨県産のワインを選ぶのはなかなか大変ではありますが、コンクールで受賞したワインも多いため、赤や白、スパークリングなど好みのワインに加えて地理的表示や受賞歴のあるものを中心に選ぶのがおすすめです。また、ワイナリーで試飲や詳しい話を聞いて選ぶのも楽しいため、直接ワイナリーまで足を運んでみるのもおすすめですよ。

ほうとう

“ほうとう”とは山梨県を代表する郷土料理であり、かぼちゃや芋類、にんじん、白菜、きのこなどの具材を味噌で味つけした汁と一緒に煮込んだ料理になります。ほうとうには、「ほうとうめん」という小麦粉を練って作る平打ち麺が入っており、もちもちした食感を味わえるのが大きな特徴です。また、麺に打ち粉が付いたまま具材と一緒に煮込むため汁にとろみがつき、具材の旨みが染み出た汁がよく麺に絡むのも美味しさの秘訣となっています。とろみのある汁は冷めにくく体を温めてくれることから、冬に食べる機会が増えますが、山梨県では物事がうまく進んだ時には「うまいもんだよ、かぼちゃのほうとう」という言い回しが使われるほど身近な料理であり、1年を通して日常的に食べられているソウルフードにもなっています。通常は味噌で味つけをすることが一般的ですが、醤油や小豆を使って味つけをする場合や平打ち麺ではなくすいとんのような小さな塊を使う場合、さらにはざるとして冷たい状態で食べるなど地域やお店などによって材料や作り方が変わることも多いです。

ほうとうは非常に古くから親しまれてきた料理でもあるため、発祥の時期や説がいくつかありますが、その中でも有力とされている説があります。1つはこねた小麦粉を麺棒で伸ばし煮込んだ「餺飩(はくたく)」という料理が奈良時代に遣唐使などによって伝わり、平安時代に訛ったことから“ほうとう”と呼ぶようになった説。もう1つは戦国時代に武田信玄が甲州に訪れた遣唐使から生麺と野菜を味噌で煮込んだ料理が伝えられ、栄養価の高さなどから陣中食として食べられていました。その際に武田信玄が伝家の宝刀を使って麺を細く切ったことから後に「宝刀=ほうとう」という名前が生まれたという説。この2つの説が特に有力とされていますが、時代も違うためどちらの方が有力かまでは分かっていません。しかし、いずれにしても山地が多く稲作が適さない立地の多かった山梨県では、古くから米の代わりに主食としてほうとうが食べられてきたため、地元の方にとっては現在でも身近で親しみのある料理となっているのです。うどんを作る際には小麦粉に塩を入れて作りますが、ほうとうでは塩を練り込まないためコシがなく柔らかい食感になります。しかし、別途で塩抜きする必要がなくそのまま具材と一緒に煮込めるのもほうとうのよさとなっています。

ほうとうは家庭でも作ることが出来ますが、県内には食べられるお店がいくつもあり、近隣の県からはほうとうを食べるためだけに山梨県に訪れるという人も多く見られます。野菜と一緒に使われる肉のバリエーションも豊富で、鶏肉やブランド牛の甲州ワインビーフ、さらには鴨肉や熊肉、猪肉といったジビエを使っているお店や汁に山梨名産のあわびの肝を使っているお店などこだわりや個性豊かな特徴が見られるほうとうも多いため、自分好みのほうとうを探す旅に出てみてはいかがでしょうか。

吉田うどん

県内で1番富士山に近いまちとして知られている富士吉田市には“吉田うどん”という郷土料理があるのを知っていますか?トッピングにキャベツ・甘辛く煮た馬肉・油揚げを使うことが多く、見た目の第一印象からしても個性を感じられますが、何よりも吉田うどんの最大の特徴は麺のコシが非常に強いということです。歯ごたえをしっかりと感じられる食感は日本一硬いうどんともいわれており、初めて食べる人はその硬さに驚くことも少なくありません。しかし、噛めば噛むほど素材や出汁の旨みが口の中に広がると評判で、地元やうどん好きの方を中心に特有の食感を求めて富士吉田市に訪れる人も多いです。煮干しや椎茸の出汁を効かせた醤油ベースのスープが多く使われますが、うどんのスープでは珍しい味噌ベースのスープや醤油と味噌を合わせたスープを提供するお店も多く、あっさりとした中に味噌のコクを感じられるのも特徴となっています。また、一味や七味が置いてあることが多い中、吉田うどんを提供しているお店では赤唐辛子とごま、山椒を油で炒めて作る「すりだね」という辛味調味料が置いてあるのも特徴で、辛みの他にも旨みやコクを増やしてくれることから辛いものが苦手な方でも使う人が多く、吉田うどんには欠かせない万能調味料となっています。

富士吉田市は富士山の北麓に位置しており、標高が700~900mあるため気候も冷涼であることに加え、火山灰土という水はけの悪い土壌であったため、稲を栽培するには不向きな環境でした。そのため、代わりとなる小麦や大麦、そばなどの雑穀を昔から栽培していたことが郷土料理や伝統料理にも粉食が使われていることが多い理由となっています。土地柄的に稲作が出来ない富士吉田市では昭和に入ると女性が携わる機織や養蚕が主要産業となったため、食事の準備のためだけに織り手である女性の手を止めないよう、また、絹を扱う女性の手が荒れないよう行商に出ていた男性が女性に変わって炊事を受け持つようになります。こうした歴史的背景から、男性がうどんを打つようになり、腹持ちがよくなるようにと力強く練ったことが吉田うどん特有のコシの強さを生み出しました。手打ちで作られる吉田うどんは、歯ごたえの強さだけでなく太さやねじり具合、もちもちした食感が強い、つるっとしたのどごしを感じられるなどお店ごとに形状や食感に特徴を感じられるでしょう。また、トッピングも馬肉ではなく牛肉や豚肉を使っているものやすりだねが絶品というお店も多いため、何を重視してお店を選ぶかによっても美味しさが変わるのが吉田うどんの魅力でもあります。手打ちの生麺を販売している製麺所も多く、家庭でも手軽にコシの強い吉田うどんが食べられるため、お土産として購入するのもおすすめです。さらに山梨県の代表的な郷土料理には食感の柔らかいほうとうも人気があるため、麺のコシの強さを食べ比べてみるとよりそれぞれのおいしさに気づくかもしれません。

甲府鳥もつ煮

甲府市を中心に県内で広く食べられているご当地グルメが“甲府鳥もつ煮”です。もつ煮といえば、牛や豚などの内臓と野菜や豆腐を一緒に長時間煮込み、内臓の柔らかい食感や具材の旨みを味わえる料理が一般的ですが、甲府鳥もつ煮は一般的なもつ煮と違い、照り焼きに近い料理になります。使うのは鶏の砂肝やレバー、ハツ、きんかん(卵として産む前の卵黄)といった内臓を砂糖と醤油で甘辛く煮詰めた料理になり、煮込んでいないからこそ各部位のコリコリした食感やプチプチ感、弾力の違いなど異なる食感を楽しむことが出来るのが特徴です。また、強火で少量のタレを短時間で絡めるため鳥もつをコーティングし、旨みや甘みをぎゅっと閉じ込め、噛めば噛むほどに鳥もつ本来の旨みを味わえるのも特徴となっています。

甲府鳥もつ煮が生まれたのは、昭和25年の戦後間もない頃になります。甲府市内のそば屋が処分するだけだった鳥もつをなんとか再利用出来ないかと肉屋から相談されたことがきっかけで考案されました。食糧難時代のもったいない精神と当時はまだ貴重だった砂糖を使った甘辛い味つけが評判となり、庶民の味として浸透するほど広まっていきました。そば屋で誕生したこともあり、そば屋の定番料理となりましたが、濃いめの味つけはお酒だけでなく白いごはんとの相性も非常によかったため、次第に居酒屋や定食屋など多くの飲食店でも食べられるようになったのです。県内では「鳥もつ煮」という名称で親しまれていますが、町おこしも含めて「甲府鳥もつ煮」と呼ばれるようになり、この名前で全国的にPR活動を行ったりメディアで取り上げられるようになったため、県外では甲府鳥もつ煮という名前の方が浸透しています。また、山梨県では甲府市以外でも広い範囲で食べられていることもあり、かつて令制国の1つとして存在していた甲斐国の通称から「甲州鳥もつ煮」と呼ばれることもあります。

2010年に行われた地域活性化を目的とするB-1グランプリでは初出場ながらも優勝を果たし、鳥もつ煮の人気と認知度はさらに高まりました。それに伴って通販の需要も高まり、県外からはレトルトタイプの鳥もつ煮を取り寄せる方が増え、県内外の多くの方に愛されています。作り方はとてもシンプルであるため家庭でも作ることが出来ますが、内臓の下処理が面倒と思う場合はレトルトタイプを取り寄せてみたり、山梨県やご当地グルメのフェスなどに訪れて本場の甲府鳥もつ煮を味わってみて下さい。お店によってはあっさりしているものや旨みが強いものなど味の違いも感じられるため、ぜひいくつかの店舗をはしごして味付けや食感の違いも感じてもらいたいです。