菜種油、キャノラー油、サラダ油の違いと特徴

 スーパーやネット通販などでよく販売されているサラダ油や菜種油、キャノラー油・・・見た目も価格も似ていて何が違のか?と思う方もいるのではないでしょうか?今回はそれら油がどういう違いがあるのかを解説したいと思います。

菜種油、キャノラー油、サラダ油の違い

 これら3種は全く違う油というとそうとは言い切れず、まずは簡単にそれぞれの違いを説明します。キャノラー油は菜種油の1種で、菜種油の中に含まれる油です。菜種油はその名の通り、菜種を絞って作られる油で、キャノラー油は菜種の中でもキャノラー種という品種に限って精製された菜種油をキャノラー油と呼びます。

 サラダ油は、植物油の中で低温でも結晶化しないよう精製された油のことを指します。日本のJAS法では、3つの等級(精製度による区分で品質による差ではない)に区分しています。そのため大豆サラダ油、とうもろこしサラダ油、なたねサラダ油というように、本来は特定の原材料を使用し、精製した植物油の等級を指します。

 一般的に販売されているサラダ油は大豆サラダ油と菜種サラダ油を混合したものをサラダ油という名称で販売していることが多く、実際商品の原材料を確認すると、大豆油、菜種油と何種類かの植物油が書かれていることが確認できます。

サラダ油、菜種油、キャノラー油の違いを解説した図

菜種油とは?

 菜種油はその名の通り、菜種を絞った作られる植物油の一種です。世界的にはパーム油、大豆油に次ぐ第3位の生産量となる植物油です。日本では食用油の6割は菜種油とされています。具体的にはセイヨウアブラナの種子を絞ってくられます。セイヨウアブラナはヨーロッパからシベリアにかけて海岸沿いに自生しています。食用にはあまり向きませんが、油を絞ることに適していることから、栽培されるようになりました。主にカナダ、ドイツ、中国、インドで生産されており、この4カ国で世界の生産量のおよそ半分を生産しています。日本では北海道で生産が盛んで、日本の生産量のほとんどを北海道で生産しています。

菜種油は不飽和脂肪酸のうちオメガ9系が100gあたり60gを占めており、その量は一般的に流通している植物油のうちオリーブオイルに次いで多い量となっています。オメガ9系は体内で生成できる脂肪酸の一種ですが、それだけでは不十分とされ、食事から補うことが推奨されており、悪玉(LDL)コレステロールを抑制する効果があるとされています。

またオメガ3系のリノール酸が100gあたり約18g含まれます。リノール酸を含む多価不飽和脂肪酸は体内で生成できないため食事によって摂取をする必要がある成分で、食事から摂取することが望ましく、血中コレステロール値の低下で、悪玉コレステロールの減少を期待できます。
しかし食事から摂取する必要性がある脂肪酸ですが、現代の日本人の食生活が欧米化し、むしろ過剰摂取している脂肪酸であると指摘されており、むしろオメガ6の過剰摂取は善玉コレステロールの減少も招くことから高血圧を招くともされています。

キャノラー油とは?

冒頭解説した通り、キャノラー油は菜種油で特定の品種を絞ったものをキャノラー油と呼びます。そのため、キャノラー油も菜種油の一種であるということは冒頭解説した通りです。後ほど詳しく解説をしますが、日本で流通している菜種油はほとんどがキャノラー油で、あえてキャノラー油とせず、菜種油として販売しているケースもあります。

キャノラー油が開発された背景

 アメリカでは1985年まで菜種油は食用が禁止されていました。その理由は、菜種油にエルカ酸が含まれ、そのエルカ酸は心疾患を引き起こす物質と言われておりアメリカでは食用が禁止されていました。現在は様々な研究がなされ、エルカ酸の耐容一日摂取量(1日に接種して良い量)は体重1kgにつき7mgとされています。体重70kgの人であれば490mgが1日の上限摂取量の目安となり、菜種油の量では1日5.77g程度となります。毎日この量を接種するとなんらかの影響はでる可能性はあるものの、毎日かかさずこの量を接種することは難しく、菜種油を毎日かかさず接種しかつ1Lの菜種油を約5ヶ月で飲み切るという量です。当時の研究が十分でなかったということから接種が禁止され、特に欧米の食文化は日本やアジアより摂取量が過多になりがちであるという背景からこのような禁止に至ったとされています。

 しかし、そのような背景から、カナダでキャノーラ種というアブラナが開発されました。このキャノラー種は菜種油の課題点であったエルカ酸の含有量が少なく、その少なさから1985年にアメリカ国内での菜種油(キャノラー種から精製されたものに限る)が食用として解禁されました。

 また日本でもキャノラー油は、エルカ酸を含まないという特徴から、健康的な油としてブランディング、認知されキャノラー油という名称で国内でも販売が開始されました。そのためキャノラー油は菜種油に含まれる油ではあるが、菜種油と比較される油でもあります。

キャノラー油の遺伝子組みえについて

 日本でもキャノラー油の生産は行われていますが、その量はわずかで基本的に海外からの輸入が中心となっています。特にキャノラー油についてはカナダが最大の輸入国です。菜種油は遺伝子組み換え作物であることの表示義務がなく、カナダで生産される菜種は遺伝子組み換え作物が主力です。またカナダ内では遺伝子組み換えの菜種とそうでない菜種を区別することなく混同して扱うため、日本に輸出される菜種には遺伝子組み換え菜種が大量に含まれており、我々はそれを知らずに日常的に使用しています。話は少しそれますが、日本では遺伝子組み換え作物に対する関心度が非常に高いため、あえて遺伝子組み換え菜種を使用しない菜種油も流通するようになってきました。

遺伝子組み換え作物については最後に解説しますが、日本では非遺伝子組み換え菜種も栽培されており、国産=非遺伝子組み換えとは確実には言えませんが、その可能性が高く、プレミア化して日本産の菜種油は高級化しています。

サラダ油とは?

 サラダ油は正式には精製度の高い植物油のことをサラダ油と呼びます。例えば、なたね油(JAS法律では平仮名でなたねとする)の精製度が低いものはなたね油、精製されたものを精製なたね油、さらに精製度が高いものをなたねサラダ油と呼びます。油の精製度とは、原料を絞っただけ(不純物などは取り除く)の油を精製度が低いとし、脱酸、脱色、脱臭することを精製と呼びます。そしてサラダ油に定義されるものは精製した状態でさらに低温で濁ったり、固まったりしない状態になったものをサラダ油と呼びます。精製油とサラダ油では成分的にはほとんど変わらず、見た目の違いというところが大きいな差になります。

 ある油メーカーさんの話では品質に差はないが、厳密な定義があるため精製油とサラダ油とは分ける必要性があるものの、味や品質に差はないが、スーパー等の陳列された時に見た目の差は大きいですね、とのことでした。また、例えばオリーブオイルは絞ったままで販売されるオイルになるため、そもそも精製という概念がなくオリーブサラダ油というものは存在しません。現在日本のJAS法でサラダ油が存在するもは、サフラワー油、ぶどう油、大豆油、ひまわり油、とうもろこし油、綿実油、ごま油、なたね油、こめ油、調合油の10種類です。

 一方でサラダ油がJAS法律によって定められる1969年より前にサラダ油という名称は存在しています。1924年(大正13年)に現日清オイリオグループ社が「日清サラダ油」として販売したのが始まりです。当時、海外ではサラダ油に塩や酢を加え、サラダ料理に使用していました。そうしたサラダ料理のように生でも使用できる油、精製度を高めた良質な油であるということからサラダ油という名称になったとされています。

 日清サラダ油は菜種油と大豆油を調合したサラダ油です。先ほど解説した調合油に該当する油になります。調合油にもサラダ油は存在しており、2種類以上のサラダ油を調合した場合、調合サラダ油として表記ができます。日清サラダ油の場合は菜種サラダ油と大豆サラダ油を調合しており、2種のサラダ油となるまめ、名実共にサラダ油となります。

 少し解説が複雑になりましたが、サラダ油をまとめるとこうなります。
・サラダ油は植物油を精製(脱酸、脱色、脱臭)し、低温放置しても固まったり、色が変わったりしない油である
・サラダ油は精製度の高い植物油でJAS法では10種類存在する
・JAS法にサラダ油が定められる前に、日清サラダ油が商品化されていた
・日清サラダ油は大豆サラダ油、菜種サラダ油の調合サラダ油で名実共にサラダ油である

菜種油と遺伝子組換え作物について

 最後に遺伝子組み換え作物についても少し解説をします。遺伝子組換え作物と聞くとなんとなく危険、健康被害がありそうな作物というイメージを持たれているかたもいらっしゃるかもしれません。遺伝子組換え作物については別のサイトで解説していますので、そちらも是非読んでみてください

遺伝子組換え作物とは本当に危険なのか?事実と誤解、食品への影響
http://nou-ledge.com/2019/01/04/gene_recombination1/

 さて、日本で流通している菜種油、キャノラー油に遺伝子組換え作物が使用されているかどうか?という件について、結論はイエスです。そもそもカナダで開発されたキャノラー種は遺伝子組換え技術を用いて開発された品種であり、キャノラー油に使用されるキャノラー種すべてが遺伝子組換による作物は言い切れませんが、ほとんどがそうであるとされています。また、現在日本の法律では菜種油について遺伝子組換原料をしているかどうかを明記するルールはないため、知らず知らずのうちに遺伝子組換作物を接種している可能性は十分にあります。  

 最後に食探として、遺伝子組み換え作物が危険だから国産原料のものを食べようとか、エルカ酸が危険だから菜種油はやめようとか、そのようなことを主張する気はありません。むしろ、危険と言われている背景やその量、事実をしっかり理解して、変に恐れず正しい知識を身に着けていきましょう。