お酢の種類と違いと選び方

 飲むお酢、寿司専用のお酢、簡単にピクルスを作ることができるお酢など、今スーパーだけでなくコンビニでも数種類のお酢が販売されています。それらお酢は日本農林規格(通称JAS法)によっていくつかの種類に区分されています。今回はJAS法に基づくお酢の区分とそれぞれの特徴、合う料理を解説、紹介していきます。

お酢の種類(定義)

 お酢(食酢)とは醸造酢と合成酢の総称です。醸造酢、合成酢とそれぞれに含まれる穀物酢、果実酢など多くの種類があり定義されていますが、非常に簡単にお酢(食酢)を定義すると、酢酸を主成分とし、食べることのできる酸味調味料となります。後ほど詳しく説明をしますが、醸造酢、合成酢ともにJAS法に基づき、製造方法、原材料によって明確に区分されています。飲むお酢や寿司用のすし酢、簡単にピクルスなどが作れるお酢は食酢には定義されず、その他の調味酢やお酢ドリンクなどとして区分されます。

醸造酢

 醸造酢とは穀物、果実、野菜、その他の農作物(さとうきび糖)、はちみつ、アルコールを原料としたものを酢酸発酵させた調味料で、氷酢酸、酢酸を使用していないものを指します。醸造酢は更に、穀物酢と果実酢の2つに区分され、更に穀物酢は米酢、米黒酢、大麦黒酢の3つに分され、果実酢はりんご酢、ふどう酢の2つに区分されます。

穀物酢

 穀物酢は醸造酢のうち、穀物を1種類か2種類以上使用し、その使用総量が1Lにつき40g以上のものを穀物酢と呼びます。穀物酢は更に、米酢、米黒酢、大麦黒酢の3種類に区分されます。日本で生産されるお酢のうち約50%は穀物酢が占めており、一般的にお酢といえばこの穀物酢を指すケースがほとんどです。またJAS法による定義はありませんが、原材料が1種類のみにより製造されるお酢のことを【純】をつけて呼ぶことがあります。例えば米酢のうち、米のみを原料として使用した場合、純米酢などと呼びます。原料を複数使うことにより、風味を増したり、酸味を調整したりすることもできますが、原料を1つにすることで、その原料特有の味や香りをより際立たせることができ、特徴的な酢ができます。

米酢

 米酢は穀物酢に該当する酢で、その名の通り原材料として米を使用したお酢で、米の使用量が穀物酢1リットルにつき40g以上のものを指します。米酢は米特有の甘みとまろやかな酸味が特徴的なお酢で、酢の物やドレッシングなど加熱をしない料理に向いています。一方で加熱をすると米須特有の香りが飛んでしまうため、お酢特有の酸味やさっぱり感を残し和食や中華など幅広い料理に使用することができます。

米黒酢

 米黒酢とは原材料として米、またはこれに小麦もしくは大麦を加えたもののみを使用したもので、米の使用量が酢1リットルにつき180g以上であって、かつ、発酵および熟成によって褐色または黒褐色に着色したものを指します。鹿児島県で多く生産されている黒酢はJAS法的にはこの米黒酢に区分されます。また、中華料理でよく見る黒酢と日本の黒酢(米黒酢)とは異なり、中国で製造される黒酢はもち米を原料としており、中国国内でも地域によって麦ふすまを使用するなど微妙に異なります。そのため、中華料理で黒酢炒めと一言で言っても、中国産の黒酢を使用しているお店と、国内で製造された黒酢(米黒酢)を使用している店があります。

 米黒酢は特有の風味があり、手羽先の煮付けや中華料理などこってりした味付けの調理におすすめです。また昨今の健康ブームにより、米黒酢を飲むケースも増えているようですが、酸味も強くむせることもあるため、ドリンクとして飲む際は水や牛乳で割って飲むようにしましょう。

大麦黒酢

 大麦黒酢は穀物酢のうち、その名の通り、大麦のみを使用したもので、大麦の使用量が穀物酢1リットルにつき180g以上であって、かつ、発酵および熟成によって褐色または黒褐色に着色したものを指します。

 大麦黒酢は一般的に米黒酢よりも酸味がマイルドで様々な料理に使用されます。しかし酸度は高いため、原液のまま飲むと胃等に負担がかかるおそれもあるため、米黒酢と同じく水や牛乳などで希釈して飲むようにしましょう。

より詳しい穀物酢の解説はこちら

果実酢

 醸造酢のうち、原材料として1種または2種以上の果実を使用したもので、その使用総量が醸造酢1リットルにつき果実の搾汁として300g以上のものを指します。原材料がりんごのものをりんご酢、ぶどうのものをぶどう酒と呼びます。なお、JAS法ではりんご酢、ぶどう酢ともに、りんご、ぶどうと平仮名で表記されています。国内での製造はお酢全体の製造量の10%以下で、製造量が少ないことから醸造酢と比較してやや高価になる傾向があります。

 りんご酢はりんごを原料としており、米黒酢や大麦黒酢よりもまろやかな酸味が特徴で、マリネや洋風なサラダに使用されることもありますが、ドリンクに使用されるケースが多いようです。さっぱりとした味わいからスポーツドリンクとして使用するのがおすすめです。

 ぶどう酢はふどうを原料としたお酢で、りんご酢と同じくまろやかな酸味が特徴で料理だけでなくドリンクなどにも使用されます。また、JAS法による区分ではぶどう酢となりますが、ワインビネガーと呼んだり、原材料であるぶどうの色によって、赤ワインビネガー、白ワインビネガーと分けることがあります。

より詳しい果実酢の解説はこちら

合成酢

 合成酢とは氷酢酸または酢酸の希釈液に砂糖類等を加えた液体調味料、もしくはそれに醸造酢を加えたものの酢で、主に調味酢を作る原材料や、業務用として販売されており、一般家庭用に合成酢が販売されることはほとんどありません。そのため、スーパーやコンビニで販売されているお酢はほとんどが醸造酢のいずれかであると思っていただいたも過言ではないかと思われます。

このようにお酢もJAS法によって区分されており、原材料や製造方法によって特徴などが異なります。料理や用途によってお酢を使い分けるのも楽しいかもしれません。