海塩とは作り方と特徴

 海塩とは天然塩と呼ばれる塩の中の1つであり、文字通り、海水から作られた塩になります。日本で広く流通するほとんどの塩は海水から作られてる塩です。しかし海塩他の食塩や食卓塩と区別して販売されています。今回はその海塩について解説をしていきます。

海塩とは

海塩はJAS法によれば天然塩に含まれる塩になります。しかし、岩塩や湖塩のように海水を原料としない塩以外は基本的にすべて海水が原材料となります。そのため、JAS法では天然塩の中の海塩と定義されますが、岩塩、湖塩以外の塩は全て海水を原料としていることから、少しややこしくなります。

天然塩は古くから伝わる伝統的な作り方や科学的な手法を使用しないで作られる塩のことを天然塩とよび、その中で海水を原料とするものを海塩と呼びます。天然塩の定義は少し曖昧で、明確な定義はありませんが伝統的な手法で科学的な手法を用いないという点で他の精製塩等と違う、という理解になります。

海塩の作り方

海塩には主な作り方が2種類あり、その違いによっても風味などが変わってきます。ここで紹介する方法は天日塩と平釜塩と呼ばれる2種類の方法で、日本でも生産量は多くないものの伝統的な手法として塩製造に用いられてきました。

天日塩

 天日塩とは海水を塩田に取り入れ、太陽の光や風の力を利用して乾燥・蒸発させて結晶化した塩です。一般的な方法としては海水を貯水池に流し込み、水分を風と太陽の力で蒸発させながら塩分濃度が濃くなった海水を蒸発池、結晶池と移動させ完全に水分を蒸発させ結晶化させます。海水を引き込んでから商品化するまでに約2年かかることから商品価値は非常に高いものの、海水の引き込みにポンプなどは使用するものの、化学的な力をほとんど使用せず自然の力と人間の力のみによって製造できるということから近年味や希少性だけでなくSDGsの観点からも再注目されています。特にフランスのブルターニュ地方が有名で、大規模な塩田が見られます。

乾燥させて作るため、降水量が多い地域や曇りなど晴れの日数が少ない地域には不向きになります。メキシコやオーストラリア西部など砂漠と海岸が近く、広い土地が確保出来る地域で主に生産されています。雨も多く湿度も高い日本では、離島など一部の地域を除いて生産されることは難しいため、天日塩は輸入のものが多くなります。

日本でも天日塩は作られており、塩田に海水を撒き塩田に海水を浸透させ、天日にさらして乾燥させます。その後、塩がついた砂を人力で集め、そきに海水をかけてこし、濃い塩水を作ります。海外の方式に比べ、早く濃縮させることができますが、かなり人的な労力を要する方法です。また雨も多く天候に左右されることからこの方法による塩の作り方は量もかなり減っており、貴重になっています。

また日本ではビニールハウスを張り、その中に小さな浅めの箱を用意し、その中に濃い海水を入れ水分を蒸発させ塩を作ります。その際、あくまで日光と風の力だけで水分を蒸発させるため、時間を要しますが、蒸発させる時間や海水をかき混ぜる頻度や回数などによって味に差が出るとされており、そこが各塩職人の腕によって異なります。この手法によって作られる塩製造所は全国30ヶ所ほどあるそうですが、11ヶ所が高知県に集中しています。高知県の山から川を伝って流れる水が海の水と混ざり合い、ミネラル豊富な海水が手に入ること、雨が多いものの年間通じて気温が高いということがビニールハウスをし使用しての天日塩の製造に向いているそうです。

平釜塩

 日本では伝統的に使われてきた製法で、平釜を使って作られた塩になります。海水を平釜で長時間かけて煮詰め、濃縮させて結晶化させています。海水を完全に蒸発させるため、かなりの時間を要することや、海水を蒸発させることで不純物などを取り除き、かき混ぜたりとかなり手間のかかる手法です。水分を蒸発させ、結晶化させた塩をさらに高温で焼くことでサラサラになります。なお平釜の規定としては形や大きさ、蓋のありなしは問いません。密閉されておらず開放していれば平釜と呼びます。

海水を煮詰めて作られた平釜塩も天日塩同様、ミネラルが豊富に含まれています。また、結晶がフレーク状と呼ばれる薄い結晶に作られているものが多いため、柔らかく溶けやすいのが特徴になります。その特徴によりつけ塩を始め、さまざまな料理に使うことが出来、馴染みやすいのも平釜塩の良さになります。ミネラルが含まれることにより精製塩に比べると、塩辛くなく、まろやかな味わいですが、天日塩に比べると火を通して作られていることから、塩気がはっきりとし、結晶の大きさも相まってより塩の味わいを感じることが出来ます。

この2種類は塩のパッケージの裏側に“天日”または“平釜”と記載されているため、風味の違いや舌ざわり、料理の用途など海塩をよりこだわって選ぶ際にはこの表記を確認して購入してみると良いでしょう。

精製塩(食塩、食卓塩)と海塩との違い 

精製塩は電気分解など科学的な製法で精製された塩は「精製塩」と呼ばれ、不純物と一緒に塩の持っているミネラルもほとんど除去されてしまいます。それにより、全体の99%以上が塩化ナトリウムになり、より塩辛くなります。食塩や食卓塩と呼ばれ、サラサラして溶けやすいのが特徴です。

それに比べ、海塩は科学的な製法を使わずに海水を天日干しや煮詰めて作る製法により作られるため、海水に含まれているミネラルが残り、マグネシウム・カルシウム・カリウムなどが塩にも含まれています。この海塩に含まれるミネラルは、環境や海水の場所などにより成分率やバランスが変わるのも特徴の1つです。ミネラルが含まれることにより、塩化ナトリウムの全体量が約80%になり、精製塩より塩気が強くなく、まろやかで、うま味や甘みを持つのも海塩の良さになります。

 自然の力を使い長い時間をかけて作られる天日塩はより多くのミネラルがそのまま含まれ、深みと甘みを感じることが出来ます。また、高温を加えず作られることで塩辛さが抑えられ、素材や料理の良さを引き立ててくれる役割をしてくれます。

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番外編:粗塩とは

 塩を買う際に見かけることのある“粗塩”ですが、一体何を指す塩なのか案外分からない人も多いのではないでしょうか。

粗塩とは精製されていない結晶が大きめの天然の塩のことをいいます。そのため、海塩である天日塩や平釜塩も含まれます。その他にも、岩塩や湖塩と呼ばれる自然に作られた塩も含まれ、どれもミネラルが含まれているのが特徴になります。これは、商品表記に“天然”や“自然”と言う表記することが規定上出来ないため、「粗塩」と表記しているそうです。

また、メーカーやブランド独自に開発した製法により粗塩と呼んでいるものや、輸入した天然塩を1度溶かして再度結晶化させた塩もあり、粗塩の定義や規定は存在していないことから精製していない塩全般を指します。料理用のみだけではなく、お清めや魔除け用としても広く使われています。

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