醤油は海外でも人気なのか?日本の醤油の輸出量

日本では欠かせない調味料の1つに醤油があります。大豆から作られた醤油は風味がよくうま味もあり、和食だけでなく洋食や中華料理などさまざまな料理に使うことが出来る万能調味料です。そんな日本ではなくてはならない醤油ですが、海外では使われているのか、使われる以前に知られているのか気になるところです。今回は醤油に対する海外の反応についてまとめてみました。

醤油の輸出量

日本は訪れたい国の1つとして海外からの人気が高く年々多くの人が来日し、和食をはじめとした日本食に触れる機会も多いです。日本食は美味しいだけでなく、美しい見た目やヘルシーであること、安全などの理由により年々注目されており、海外にも日本食を提供するお店は増え続けています。このような背景により醤油を使う頻度は増えており、醤油の知名度は海外でもとても高いのです。

日本からの輸出量も年々増えており、2013年12月に和食がユネスコ無形文化遺産に登録されてからさらに伸び続けています。“しょうゆ情報センター”によると、1989年(平成1年)には出荷された醤油の総量約8,400㎘が53か国へ輸出されていましたが、2022年(令和4年)には総量41,000㎘が75か国へ輸出され30年で醤油の輸出先は約1.5倍・総量は約5倍と増加しています。

特に多い輸出先は圧倒的にアメリカが多く2022年には約7,500㎘が輸出されており、次いで中国・オーストラリア・韓国が多く、この4か国は基本的に輸出量が多い国として常に上位に来ています。

さらに醤油は海外での人気が増加するとともに各国にある工場の数や生産量が増え、現在は輸出量より各国の工場による生産量の方がはるかに多く、2022年には輸出量41,000㎘に対して海外工場生産量は31万2,000㎘にもなります。日本でも大手老舗メーカーであるキッコーマンは1973年にアメリカに初めて醤油の海外工場を作ったことをきっかけにヨーロッパやシンガポール、ブラジルなどに工場を建設しており、ヤマサ醤油など他の醤油メーカーの海外工場も含めると現在は13か国に醤油の製造工場があります。

しかし、反対に日本国内では製造数や消費量は年々減っており、人口や醤油企業の減少、外食や日本食以外の食文化の増加、麺つゆなどのしょうゆ加工品の増加が原因となっています。

アメリカにおける醤油事情

アメリカに初めて醤油が渡ったのは正確な記録はないものの明治元年とされています。当初は現地に住む日本人向けに輸出されていたとされており、一部の日本人や日系人には醤油が認知されていましたが、当時はほとんど知られていませんでした。時代とともに日本とアメリカを往来する人が増え徐々にではあるものの醤油が認知され、一部地域のスーパーで販売が開始されます。醤油は日系人や現地に住む日本人向けの調味料でしたが、肉に合うソースとしてアメリカ人の口に合うことが分かり、醤油を口にすることさえできれば、アメリカ人にも受け入れられるということが分かってきたのです。

そこに目をつけた日本のキッコーマンが1957年に醤油の輸出を本格的に開始しました。同時に1958年頃アメリカでは日本ブームが到来し、華道や茶道、着物などが注目され、その過程で日本食、醤油と徐々に人気になっていったとされています。特に醤油とみりんを合わせた照り焼きが現地で紹介され醤油の認知度がさらに広がります。そして元々家庭でバーベキューを楽しむ文化のあるアメリカでは醤油を使ったタレを使用したものをTeriyakiと呼び、醤油がアメリカ国内で一般的な調味料になりました。
キッコーマンはさらに現地で醤油工場を建設し、現地での生産を開始します。そしていよいよ1973年に現地で生産された醤油がアメリカ国内で販売され全土で認知、消費されるようになったとされています。

2022年にはアメリカへの醤油輸出量は8,733トン(約7,500㎘)となっており、金額ベースでは約19.1億円となっており、前年比+23.6%となっています。近年のインバウンド需要の増加により、来日したアメリカ人が日本で日本食に触れたことも後押しとなり年々増加傾向にあります。日本食は健康的な食事であり、その料理に欠かせない調味料が醤油という認識の広まりから今後も広まっていくことが予想され、特に最近では有機醤油や一般的な濃口醤油だけでなく淡口などの醤油の多様性に対するニーズも増しいます。

中国における醤油事情

醤油は日本で稲作が始まった弥生時代に中国大陸から伝来されたとされていますが、文献上、醤油という記録があるものは飛鳥時代であるとされています。中国から伝来した醤油の製造技術と文化は日本国内で地域性や文化などを取り込み進化を続け、江戸時代には逆に日本から中国への醤油の輸出が開始されました。

その後は中国に移住した日本人を対象に輸出がされていましたが、第二次世界大戦が始まる1941年頃には輸出が停止され1949年に輸出が再開されるようになりました。現在ではアメリカに次ぐ第二位の輸出相手国であり、2022年には4,539トンの醤油が輸出され、金額ベースでは9.0億円となりました。アメリカ同様その需要は伸びており、前年比で7.5%の伸びとされています。

元々醤油は中国発祥の調味料であるものの、日本の醤油が輸入され、消費されているのはなぜでしょうか?董喆らの研究によると中国で製造される醤油(中国醤油)と日本の醤油では、前者は味付け、後者は素材の味を引き立てるものとして、日本の醤油は寿司や刺身に使用する専用の調味料として中国醤油とは別物として利用されるようです。つまり日本食には日本の醤油を、と認識され消費に至っているそうです。これも中国国内における日本食の人気拡大が要因となっており、今後も中国国内での日本醤油のニーズは高まっていくことが予想される一方で、日本メーカーが現地に工場を建設し、現地での生産を行なっていることから輸出量が今後も右肩上がりに伸びていくかどうかはまだ不明確です。一方で現地で生産される醤油は大衆向けのスタンダードな醤油が中心であり、有機醤油や日本の産地の原料を使用した出汁醤油など、現地生産が難しい醤油や珍しい醤油などは輸入に頼るしかないため、今後これら領域の伸び代はまだ十分にあることが見込まれます。

海外の醤油に対する反応

醤油は日本に住んでいる外国人だけでなく、海外でも日常的に使うことが増えているようです。きっかけとしては、やはり日本食の人気の高さから日本食を食べる機会が増えたことが大きく、その際に味付けとして使われていたり、つけ醤油や味の調整用にテーブルに置かれていることから初めて口にしたという人も多いようです。しかし、家庭によっては海外でも昔から日常的に使っていったという人もおり、醤油の海外工場の数や生産量が増えたことにより、現在はアメリカやフランスでは大きいスーパーでは簡単に手に入れることが出来ます。アジア圏では、醤油に似た調味料が昔から使われている国も多くあるため、どちらも使う傾向が強いようです。

また、醤油は風味の良さや日本特有の旨みやコクがあることからクオリティが非常に高いと言われており、同時に伝統的な製法を現在でも使っている醸造所が多いことがより醤油の人気を高めています。和食の価値が世界的に認められることと同時に醤油や味噌などの日本の伝統的な調味料も注目を浴び評価も上がっていることが伺えます。その結果海外では、馴染み深い風味を持つ日本の醤油だけでなく甘い味や薄めの味など各国の味の好みに合わせた醤油も多く販売しています。

醤油が受け入れられない国、NGな国

醤油の人気が世界的にも高いことは分かりましたが、実は宗教的な決まりで醤油を受け入れられない国はいくつかあります。世界に信仰している人が18.5億人いると言われているイスラム教やインド・ネパールに多いヒンドゥー教などには独自の決まり事があり、その中には摂取してはいけない食べ物があります。その1つにアルコールが含まれているものは口にしてはいけないルールがあるのですが、醤油は3%ほどアルコールが含まれています。酵母により原材料に使われている小麦の糖がアルコールに変わってしまうため、醤油を受け入れられない国もあります。
しかし、該当する国にある工場ではアルコールが出ない製法で醤油が作られ、安全で安心して食べられるよう改良がされています。日本でもアルコールを発生させないように小麦を使わずに作られた「ハラール醤油」が販売され、宗教的な決まりで食べられない人だけでなく小麦を使わない“グルテンフリー食品“としても世界的に多くの人に注目されています。同時に、原材料のほとんどが大豆から出来ている「たまり醤油」もグルテンフリー食品としての注目は高いです。

醤油のヴィーガン、ハラールについてのより詳しい解説はこちら

海外の醤油に似た調味料

実はアジア圏を中心に醤油に似た調味料はいくつかあります。もともと醤油も中国の醤(ジャン)がルーツであり、それを独自に改良されたものなのです。醤油と同じく大豆を使っているものとしては中国の豆鼓(トウチ-)と呼ばれる黒大豆を発酵させた塩辛い調味料やインドネシアのケチャップマニスと呼ばれる大豆を使った塩味より甘味の方が強く粘性のある発酵調味料があります。

また、大豆ではなく魚を塩で漬けて作る魚醤はさらに多くの国に存在しており、有名なものとしてはタイのナンプラーやベトナムのニョクマム、中国の魚露(ユイルー)があります。近年のアジアンフードやエスニックフードの流行により日本でも聞くことや口にすることが増えており、他にもフィリピンやラオス、ミャンマー、マレーシアなどアジア諸国ではその国の魚醤を使っている国が多いです。しかし、アジアだけでなく実は古代ローマ時代からガルムやリファメンと呼ばれる魚醤は存在し現在もトルコ・スペイン・南フランスなどで製造されています。

日本にもしょっつるやいしるなどの魚醤がありますが、長期間発酵・熟成して作られる日本の魚醤に対して海外の魚醤は製造工程が簡素なものが多いため、魚特有の風味が強く表れるものが多く好みは分かれやすいです。

醤油は世界からの反応が良いことが多く、海外でもその人気は高いです。さらに、国や地域、人によっては欠かせない調味料の1つにもなっていることが分かりました。しかし、中には醤油のうま味や風味を出すための長期間発酵・熟成の工程を省き短期間で作られている醤油(ソイソース)も販売されており、全く違った風味のものが存在するようです。原材料を見て判断することは出来るようなので、海外で醤油を買う場合は注目してみて下さい。

伝統的な醤油が世界でも人気があることは日本人にとってはとても嬉しく誇らしい気持ちですね。