四国の中でも東側に位置する徳島県には大鳴門橋がかかっており、淡路島を経由して本州に車で行き来出来ることから四国の玄関口とも言われています。大阪や兵庫からのアクセスが良いことに加えて歴史と伝統を感じられる徳島阿波踊りや阿波藍、自然を堪能出来る鳴門海峡や剣山、祖谷渓といったスポットなど徳島県には多彩な魅力が多く、特産物やグルメにも大きく影響しています。今回はそんな魅力溢れる徳島県で生まれ、地元の方に愛され続けている特産物やソウルフードを紹介していきたいと思います。
なると金時
秋~冬にかけて旬を迎えるさつまいもは、甘みを感じやすいことから料理にもスイーツにも使える万能な野菜です。特に近年はさつまいもの品種が増え、より甘みが強いものや食感の違うものなど特徴が大きく異なる品種が多く、さつまいも本来の美味しさや食感が分かりやすい焼き芋の人気も高まっています。そんな数多くの品種があるさつまいもですが、人気の品種の上位に必ずランクインしているのが“なると金時(鳴門金時)”です。主に徳島県の鳴門市で栽培されているなると金時は、ホクホクとした食感が特徴で栗にも似た食感を持っており、ねっとりとした食感の品種が増えている中、親しみ深いさつまいもらしさを感じられる品種になります。繊維が少なく煮崩れしにくいことから天ぷらや煮物、芋ごはん、大学芋などホクホク感を楽しめる料理に最適で、糖度は高めではあるものの甘すぎず食べやすい上品な甘さと旨みも味わえるため、お菓子作りにも使い勝手が良いとされています。
なると金時は鳴門市を中心に徳島市や板野郡など吉野川の河口付近にある地域の砂地畑で栽培されています。鳴門地域にさつまいもが入ってきたのは今から約200年前、大正中期から昭和初期にかけてと言われており、温暖で降雨量の少ない気候がさつまいもを栽培するのに適した環境をしていました。さらに土質も水はけや通気性がよい砂地で、鳴門海峡が近いことから海のミネラルがたっぷり含まれていたため、味の良いさつまいもを育てるために必要な条件が揃っていたとされています。早掘り用の品種である「高系14号」を改良して昭和後期に作られたのが鮮やかな赤紫色の外皮を持つなると金時であり、加熱することで中身がクリーム色から濃い黄金色になることから「金時」という名前がつきました。今や徳島県を代表する特産物の1つであり、ブランドさつまいもとしても認知されているなると金時ですが、県内では産地によって別名でオリジナルのブランド名がついているのも特徴で、里浦町では「里むすめ」、川内町では「甘姫」、松茂町では「松茂美人」という名前で呼ばれています。大きな違いこそありませんが、甘みの強さやきめ細かさなどの違いが感じられるものもあり、産地同士で日々品質の高さを競い合っているからこそ、なると金時全体のブランド力の高さにも影響しているのでしょう。
通常のさつまいもよりも収穫時期が少し早く貯蔵性に優れているなると金時は、晩夏から秋にかけて収穫された後、貯蔵することで少しずつ甘みが増していき、さらに1年を通して出荷することも出来ます。さつまいもは食べてみるまで甘みや食感などを判断しにくいのが難点ですが、栄養をたっぷり吸収して育ったなると金時は、ずっしりとした重みや全体的にふっくらとしているものを選ぶと失敗せず高い確率で美味しい個体を選ぶことが出来ると言われています。また、外皮が鮮やかな赤紫色をしている、ひげ根が少ない、傷や変色がないといった見た目に特徴があるものは病気や害虫の被害に遭わずに育った証拠でもあるため、購入時のチェックポイントとして抑えておくとより美味しいさつまいもに出会えるでしょう。特徴をしっかり抑えて最大限になると金時の美味しさを味わってみて下さい。
鳴門鯛
日本を代表する魚である真鯛は魚の王様とも呼ばれており、西日本の日本海側を中心に多く生息しています。淡泊な味が食べやすく弾力のある食感も人気の理由となっている魚ですが、その中でも特に“鳴門鯛”と呼ばれる鯛の人気が高く、徳島県の特産物にもなっているのをご存じですか?徳島県鳴門市と兵庫県南あわじ市の間には、世界最大級の渦潮として知られている鳴門海峡があり、この激しい潮流のなかで育った鯛を“鳴門鯛”と呼んでいます。鳴門の海は渦が非常に激しく、大潮の際には時速20kmを超えるほど速い潮流であるため、鳴門海峡に生息する鯛の中には骨の一部に瘤のような異常な膨らみがみられる「鳴門骨」を持つ個体もいるほどです。そんな厳しい環境で育った鳴門鯛は、一般的な鯛よりも筋肉が付いた引き締まった身をしており、コリコリとした食感を味わえるのが大きな特徴にもなっています。また、渦潮の流れが海域の栄養分を循環させているためプランクトンが多く、これにより鯛のエサとなる小魚なども育つことから栄養が豊富で脂乗りもよく、噛み応えのある食感と甘みを楽しめるのが鳴門鯛の美味しさの秘訣となっています。
1年を通して鳴門海峡では美味しい鳴門鯛が漁獲されますが、特に春と秋が旬の時期と言われており、春に産卵を迎える「桜鯛」は適度に脂が乗りあっさりとしているため、刺身にするのが最適と言われています。冬の寒さに供えるため栄養や脂肪を蓄える「紅葉鯛」は甘みが強く、他の時期の鯛よりもしっかりと脂が乗るため、焼き魚や煮付けにするのがおすすめです。どちらも通常の鳴門鯛とも違った味わいや食感を楽しむことが出来るため全国的見ても鳴門鯛の人気は高く、高級魚として認知されているのです。そのため、本当に美味しい魚として地元の漁師が自信を持って選定している「プライドフィッシュ」にも選ばれており、魚のプロからのお墨付きの魚でもあります。また、旬の時期や鳴門鯛に限らず目の上にアイシャドーのような青くキラキラと光るラインが入っている真鯛は上質と言われており、確実に味が良いとも言われているため選ぶ際の目印にするとよいでしょう。
そんな質が高く美味しい鯛が漁獲される徳島県では、鳴門鯛を丸ごと一匹使った「鯛めし」が県内全域で食べられており、郷土料理としても広く親しまれています。下ごしらえをして塩を振り焦げ目がつくくらいに焼いた鯛とお米、昆布出汁、酒、白醤油を加えて土鍋で炊く鯛めしは、豪快な見た目ですがシンプルな味つけだからこそ鯛の旨みをしっかりと味わえる贅沢な料理でもあります。炊き上がった後、骨や皮を取り除いてごはんと鯛の身を混ぜ込むのが徳島流で、現在は家庭料理というよりも徳島市を中心とした飲食店で食べられることの方が多いです。しかし、鳴門鯛の切り身と出汁がセットになった鯛めしの素なども販売されており、自宅でも手軽に作ることが出来ることや縁起の良い魚としても認知されていることなどから贈答品として重宝されています。鳴門鯛は鳴門海峡の厳しい環境があってこそ通常の鯛とは異なる引き締まった身や脂乗りのバランスの良さが作り出されており、生でも加熱調理をしても特有の食感と美味しさを楽しめるため、徳島県を訪れる際には調理法や旬の時期の違いなども合わせて鳴門鯛の魅力を思う存分堪能してもらいたいです。
徳島ラーメン
徳島県の東部で誕生し、今や県を代表するソウルフードとして県全域で食べられているのが“徳島ラーメン”です。徳島ラーメンは豚骨ベースのスープに中細のストレート麺、そしてメンマやネギに加えて生卵と豚バラ肉を具材にしているのが特徴になります。生卵が入っているのも珍しいですが、徳島ラーメンを提供する多くのお店では具材の定番であり欠かすことの出来ないチャーシューの代わりに、甘辛く醤油で煮付けた豚バラ肉を使うため、見た目にも味わいにも個性を感じることが出来るでしょう。また、豚骨ベースのスープは3系統に分かれるのが最大の特徴で、濃口醤油などで味付けをした甘辛い「茶系(黒系)」、鶏ガラや野菜などを使った清湯ベースの「黄系」、小松島地方に多くさっぱりとした味わいの「白系」とお店によってまったく異なる印象を受けるのも徳島ラーメンならではです。濃厚なスープと豚バラ、そして生卵は想像以上に相性が良く、生卵をくずして麺と絡める食べ方はすきやきを想像することから別名で「すきやきラーメン」などと呼ばれることもあります。
徳島県では昭和初期から徳島市や小松島市で屋台ラーメンを販売しており、当時は豚骨だけでなく鶏ガラに鰹節加えたものやイリコを主体としたスープなど、全体的に中華そばや支那そばをイメージしやすい澄んだ色や半透明をしたあっさり風味のラーメンが作られていました。豚骨がよく使われるようになったのは第二次世界大戦中に日本ハムの前身である徳島ハムの工場が徳島市に建設され、大量の豚骨が安価で手に入るようになったからと言われています。戦争を機に一時期屋台ラーメンを見かけることはなくなりましたが、戦後にはじめて屋台ラーメンを復活させた場所が小松島であったため、戦前からこの地で食べられていた豚骨ベースの白いスープが徳島ラーメンの原点となっているのです。その美味しさに感動した人が次々と白系と呼ばれるラーメンの屋台を始め、現在、小松島市で有名店として名高い人気のラーメン店の中にはこの屋台がルーツとなっているお店もいくつかあります。次第に豚骨ベースのラーメンは徳島市など小松島以外にも広がり、白湯スープが主流になっていくにつれて種類が増えていき、黄系や茶系(黒系)などが誕生したと思われます。今では白よりも茶系(黒系)の方が主流となっている徳島ラーメンですが、茶系が誕生したのは3系統の中で1番遅く、昭和中期も終わる頃です。それまでは一般的なラーメンの具材であるネギやメンマが使われていましたが、茶系を提供し始めたお店で肉や卵を具材として使うようになったところ人気が出たため、逆輸入という形で他の徳島ラーメンでも肉や卵を使うようになったというのがおもしろいポイントでもあります。
県内では古くから中華そばや支那そばと呼ばれ親しまれてきましたが、スープや具材の珍しさから平成に作られた新横浜ラーメン博物館で特集され、メディアでも取り上げられたことをきっかけに徳島ラーメンという名前で全国に広まったとされています。また、近年は減りつつありますが、徳島ラーメンで使われるどんぶりは一般的なものより小ぶりなものが多いです。これは、屋台や出前で使われていた小さめのどんぶりを今でも使っているお店が多く、あえて小さいどんぶりで提供している店舗もあると言われています。メディアなどの影響から今や地元の方だけでなく観光客からの人気も高い徳島ラーメンは種類も多く店舗数も多いため、好みの系統を探してみるのも楽しいですよ。その際にはスープや具材の特徴と一緒にぜひどんぶりの大きさもチェックしてみて下さい。
フィッシュカツ
一般的にカツといえば豚肉に衣をつけて油で揚げるトンカツをイメージしやすいですが、徳島県でカツと言えば“フィッシュカツ”のことだと分かるほど県民にとっては非常にポピュラーで、広く認知されている食べ物です。フィッシュカツといっても単に白身魚などの切り身のフライではなく、徳島県の近海で漁獲された太刀魚やスケトウダラ、エソといった白身魚をすり身にして加工したものであり、カレー粉や唐辛子などの香辛料を加え、手のひらのサイズほどに薄く広げてパン粉をまぶして揚げています。想像以上に大きいサイズ感とピリッとした味わいは大人だけでなく子供まで年齢問わず幅広い世代に人気が高く、1枚80円~100円で購入出来る価格の安さも人気の秘訣となっています。カレー粉などの香辛料で味付けをしているため、そのまま食べても十分美味しく魚の旨みをしっかりと味わえますが、マヨネーズや醤油、ソース、レモン汁などの調味料を加えると一味違った風味でも楽しめるため、ごはんのおかずとして食べるのか、ビールなどの酒のつまみとするのか、またはおやつとして食べるのかなど、いつどのようなタイミングで食べるかによって味変をするのもおすすめです。トースターやフライパンで軽く焼くと衣がカリっとするため、ひと手間加えるとよりフィッシュカツの美味しさを味わうことが出来ます。パンに挟んでサンドイッチやハンバーガーの具材にしたり一口サイズに切って野菜と炒める、卵でとじてカツ丼のようにするなどアレンジがしやすいのもフィッシュカツの良いところです。
昭和30年頃に作られるようになったフィッシュカツは、徳島県の小松島市の老舗かまぼこ店で誕生したと言われています。小松島市は古くから漁業が盛んな町であったため、かまぼこなどの練り物の製造も有名です。特に徳島県で作られる練り物は特産物である鯛やハモを使っていることも多く、他県のものよりふわっとした柔らかさとプリプリとした食感、魚の旨みや甘みを感じられるのが特徴で、すり身を青竹に巻き付けた「竹ちくわ」も小松島の名産品として古くから親しまれています。そんな練り物と縁がある小松島でかまぼこの材料を使い、手軽に食べられる新しい商品が出来ないかと考案されたのがフィッシュカツでした。もともとは考案したかまぼこ店などでしか購入出来なかったですが、美味しさと親しみやすさから県内全域にまで人気が広まったことにより、現在は県内の30社近くあるかまぼこメーカーのうちの約1/3のメーカーでフィッシュカツを製造しています。人気の高さから年間の生産量は約5000トンとも言われ、スーパーの総菜コーナーだけでなくコンビニにも置かれているほど身近なソウルフードとなっているのです。また、市内にあるかまぼこの直営店まで行くとタイミングによっては揚げたてのフィッシュカツを購入することも出来、ザクザクとした衣の食感を楽しむことが出来るだけでなく、竹ちくわやかまぼこ、イカ天、ごぼう天などこだわりの詰まった美味しい練り物を購入することも出来るため直営店まで行くのもおすすめです。全国的な認知度はそこまで高くはありませんが、なくてはならない存在でもあるほど徳島県では親しまれているため、フィッシュカツを見かけた際には手に取って愛され続けている魅力を体感してみてはいかがでしょうか。
和三盆
数ある砂糖の中でも最も高級な砂糖として知られているのが“和三盆”です。和三盆糖とも呼ばれており、徳島県と香川県の一部でしか生産されておらず「竹糖(ちくとう)」という在来品種のサトウキビを原料に伝統的な製法で現在も作られています。その工程はほとんど機械を使わずに手作業で行われており、職人がいくつもの工程を丁寧に繰り返して作るため、非常に手間も時間もかかることから価格の高い高級な砂糖となっているのです。和三盆の大きな特徴は粒子の細かさと口どけの良さ、上白糖など他の砂糖と比べると上品で優しい甘さを感じられるところになります。竹糖は一般的な砂糖に使われているサトウキビとは品種が異なり、栽培されている地域が限られているうえに背丈が低く細いという特徴を持っているため、全体的に収穫量が少なく希少な品種です。しかし、そのまま食べても非常に美味しい風味をしていることや精製方法の違いによって和三盆特有の優しい甘さや繊細な食感が生まれています。また、竹糖の栄養素を残したまま作られることから黒糖ほどではないものの、カリウムやカルシウム、マグネシウムなどの栄養素が多く含まれているのも1つの特徴であり、ミネラルが作り出す独特な風味がさっぱりしながらもコクを与えてくれています。
徳島県で和三盆が作られるようになったのは江戸時代になります。徳島の土地は日当たりが良く水はけも良い土壌でしたが、用水がなかった時代には水田が作れず稲作をするのが難しい地域だったと言われています。そんな徳島と似たような条件をした地域が九州にもあり、そこでサトウキビを栽培しているという話を聞いたことがきっかけとなって、サトウキビの苗と栽培方法を習得するため九州に向かった若者がいました。徳島に戻った後も改良や研究を重ね、サトウキビを栽培する環境が合っていたことに加えて徳島藩の奨励もあり、サトウキビの栽培は加速して一大産業にまで発展したと言われています。この時に栽培していたサトウキビの品種が竹糖で、戦前までは西日本の数か所でも栽培されていましたが、効率の悪さなどから徳島県と香川県を除いて途絶えてしまったようです。その後、徳島では竹糖の糖度を上げるためにわざと遅摘みをして12月頃に収穫をするようになり、冬の閑散期を利用して砂糖を作り始めました。さらに、より白い仕上がりにするために圧力をかけて蜜を抜き、水を加えて練る「研ぎ」作業を繰り返し行う製法が生まれ、粒子の細かい和三盆が誕生したとされています。和三盆は今までの砂糖にはないほどキメが細かく、スッと溶ける口溶けの良さや後味のよい甘さといった質の高さから、そのまま固めた干菓子の「和三盆」が作られるようになり、今では代表的な和菓子としても重宝されているのです。ちなみに間違えやすい落雁は米粉などのデンプンが主原料であるため、まったくの別物であり、味わいや食感も異なっています。
名前が同じということも相まって、和三盆といえば和菓子というイメージを持っている人も多く、和菓子の主要産地である京都や金沢などが有名どころと思われていることも多いですが、本来は砂糖の1種であり徳島県の特産物でもあります。そのため、和菓子はもちろんのこと、洋菓子や料理、コーヒー・紅茶など一般的な砂糖と同じ様に使うことが出来、ここ近年ではこだわりの強い寿司屋やそば屋でも使う店舗が増えているそうです。価格が高いこともあり、全体的には高級志向のお菓子や飲食店で使われることが多くみられますが、家庭でもさまざまな食べ物に使うことが出来るため、徳島県産の和三盆を見かけた際には味や食感の違いをぜひ確かめてみて下さい。また、徳島県で作られている和三盆を「阿波和三盆」と呼ぶのに対して、香川県で作られているものを「讃岐和三盆」と呼び、産地や製糖所によっても味わいや色合い、食感が異なるため気になる方は数種類の和三盆を試してみるのも新たな発見があるかもしれません。