MCTオイルとは

スーパーに行くとオメガ3と書かれたえごま油や亜麻仁油など健康によいと言われる油が置かれていることが増えています。その中でも特に見た目からはどのような油なのか分かりづらいものが「MCTオイル」です。名前だけでもMCTオイルとは一体何から出来ているのか、どのような効果があるのか、どのように使えばいいのか分からないため手に取ったこと自体ない人も多いのではないでしょうか。今回はこのMCTオイルについて栄養や効果、使い方などについて紹介していきます。

MCTオイルとは

まず、MCTとは”Medium Chain Triglyceride”の略称であり中鎖脂肪酸のことになります。100%中和脂肪酸で出来ている油のことを“MCTオイル”と呼んでいます。中鎖脂肪酸とは、オリーブオイルなどの植物油に含まれるオレイン酸やリノール酸と同じ脂肪酸の1種であり、ココナッツやココナッツと同じヤシ科のパームフルーツに含まれる天然の成分です。母乳にも含まれている成分ですが実は牛乳にも含まれているため、気づかないうちにMCTを普段から摂取している人は多いのです。

脂肪酸は通常、原料の違いや含まれる脂肪酸の種類により飽和脂肪酸・不飽和脂肪酸、さらに一価不飽和脂肪酸・多価不飽和脂肪酸と分類されていきますが、成分の構成の長さにより分類の仕方が変わります。サラダ油やオリーブオイル、ごま油、ラード、バターなど一般的な食用油のほとんどは長鎖脂肪酸に含まれていますが、この長鎖脂肪酸の半分の長さで出来ているものが中鎖脂肪酸となり、その特徴や性質に大きな違いが出てきます。成分の長さが短く水に馴染みやすい特徴であるため、小腸から門脈を経由して肝臓に直接入り分解されます。分解されるまでが長鎖脂肪酸より短い経路であるため約4~5倍も速くエネルギーとして使うことが出来るのです。

一般的な油に比べると消化や吸収が早くエネルギーになりやすいことから、体内に体脂肪として蓄積されにくく生活習慣病の予防だけでなく、ダイエット目的としても注目されています。ですが、消化・吸収性の高さからもともと医療現場やスポーツ分野においても栄養補給のために使われており、馴染みが少ないMCTは実は40~50年以上に渡り使われているのです。エネルギーが必要な未熟児や腎臓病患者、高脂肪食が必要なてんかん患者、消化器系の手術により油の消化吸収がしにくい患者などの栄養補給としても中和脂肪酸は使われています。さらに近年は脳のエネルギー源としても使われることが分かり中和脂肪酸が利用されている範囲は広がっています。

中鎖脂肪酸が約60%含まれるココナッツオイルも同じ効果や目的として広く使用されていたり、健康・美容のために一般的にも取り入れている人が増えていますが、そのココナッツから中鎖脂肪酸のみを取り出してMCTオイルは作られています。原料から取り出した油分から高圧蒸気を使って脂肪酸を取り出し分解、さらに蒸留の温度差を使って中和脂肪酸を取り出し、グリセリンとくっつけてオイル状に加工していきます。最終的にろ過装置により不純物やにおいを完全に取り除いて作られた100%のMCTオイルは、ココナッツオイルよりさらに高い効果が期待出来るでしょう。

MCTオイルの効果

  • 抗菌・抗ウイルス作用による免疫力の強化
  • 満腹感を促進し食欲の抑制
  • 脂肪燃焼の促進や代謝UPによるダイエット効果
  • 認知機能の向上や症状の軽減
  • 集中力・記憶力の向上
  • アルツハイマー病の予防
  • アンチエイジング効果
  • 便秘解消

など、同じ中和脂肪酸が含まれるココナッツオイルにもみられる効果に加え、MCTオイルにはより高いダイエット効果、持久力・筋肉などのパフォーマンス能力の向上、ストレスや疲労感の改善が見られます。

MCTオイルはケトン体と呼ばれるブドウ糖に代わってエネルギー源として使われる物質を長鎖脂肪酸より10倍以上も多く作り出すことが出来ます。脳を正常に働かせるにはブドウ糖が必要不可欠ですが、病気などによりブドウ糖をエネルギー源として利用することが出来なくなってしまった場合、エネルギーが不足し認知機能が低下することによりアルツハイマー病などの認知症を発症しやすくなります。しかし、このケトン体はブドウ糖の代替として脳のエネルギー源としても使われることが近年分かり、脳の機能をサポートしたり、脳の神経細胞を保護する役割もあるとされています。これにより、認知症の症状の軽減や予防、記憶力などの向上に繋がりるだけでなく、ストレスの軽減やてんかん発作の頻度を減らす可能性、自閉症にも効果が期待出来ると言われています。

ダイエット効果においても100%中鎖脂肪酸であるMCTオイルの方がより効率的に脂肪を燃焼させる効果があるため、ココナッツオイルよりさらに脂肪が体内に蓄積されにくくなります。この働きにより、糖質制限を取り入れ糖質の代わりに脂質を燃焼させるケントジェニックダイエットというダイエットを取り入れる場合には、MCTオイルを使う方がよりその効果を発揮するでしょう。満腹感もココナッツオイルより持続したという結果があるため食べすぎを防止するにもMCTオイルの方がおすすめです。

また、MCTオイルは体が疲労を感じる乳酸の蓄積を軽減する役割を持っており、運動する1時間前くらいに摂取することで脂肪燃焼のサポートと同時に持久力を増やす働きも期待が出来ます。また、エネルギーになるスピードが早いため筋肉が落ちにくくパフォーマンスの向上にも繋がります。運動前も効果的ですが、運動後15~20分の間に摂取するのもおすすめです。

ダイエットや健康目的だけでなく、保湿効果の高いMCTオイルは美容目的としても使うことが出来ます。洗顔後に数滴手に取り顔に塗布すると、高い保湿効果や抗酸化作用により肌のバリア・老化防止、さらには炎症を抑える作用から肌の赤みやニキビ跡などの炎症を沈める効果もあり肌の改善にも繋がります。

デメリット

MCTオイルはココナッツから中鎖脂肪酸を抽出した濃度の高い油であるため、過剰摂取や体質によっては胃腸に負担がかかりやすく、胃痛や腹痛、下痢を引き起こす可能性があります。もちろん油であるため、脂肪燃焼効果が高いからと言って、摂取しすぎや運動をしない場合は太ってしまうことも頭に入れておきましょう。また、発がん性があるかという声を聞きますが、今のところMCTオイルに発がん性があるということは報告されていません。しかし、油が酸化すると老化や細胞がんを引き起こす過酸化脂質に代わってしまうため、酸化しないよう蓋をしっかり閉めて冷蔵庫で保存するようにしてください。

1日の摂取量と摂取方法

1日の摂取量の目安としては小さじ1杯、慣れてきても多くて2杯までがよいです。MCTオイルはココナッツオイルと違い熱に弱い性質を持っていますが、無味無臭でさっぱりしているためコーヒーやプロテイン、みそ汁、スープなど飲み物や汁物に入れる、サラダにドレッシングとして使う、ヨーグルト入れるなど生のまま使うようにして下さい。

摂取するタイミングはいつでも大丈夫ですが、日中や睡眠前に摂取すると体脂肪の燃焼をサポートしてくれます。胃腸が弱いという人は食後に取ることで負担を軽減することが出来るため、自分の体調やどの効果を期待したいかによってタイミングを変えるのもよいでしょう。

また、液体や固形になっているものが一般的なココナッツオイルに対してMCTオイルは液体状・カプセル状・パウダー状と形状もさまざまです。プロテインと一緒に摂取するならパウダータイプ、サプリの代わりとして摂取するならカプセルなど用途によって形状を選べるのもMCTオイルのよい点です。

あまり素性が分からなかったMCTオイルですが、理解して上手に摂取すると他の植物油にはない効果や同じ効果を持つココナッツオイルよりさらに高い効果を期待することが出来ます。無味無臭であるところが取り入れやすい大きなポイントにもなりますので、少量から取り入れて健康や美容に繋がるよい影響を受けてみてはいかがですか。

ココナッツオイルとMCTオイルの違いについての解説はこちら