緑茶(不発酵茶)の種類と特徴

 私たち日本人は昔からお茶を飲む習慣があり、現在も家庭をはじめ外出先や飲食店でもお茶を飲む機会は多くあります。コンビニや自動販売機で手軽に買えるものから専門店までお茶を販売している場所も多く、緑茶や麦茶など慣れ親しんだものもあれば黒豆茶やとうもろこし茶のような風味に特徴のあるお茶、何種類かブレンドされたお茶など種類も数えきれないほどあります。

そんなたくさん種類のあるお茶の中でも特に馴染みの深い日本茶は“不発酵茶”と呼ばれる種類に分類されます。では不発酵茶とは一体何か特徴や種類を簡単にご紹介していきます。

お茶の区分

緑茶を解説する前に、お茶の区分を簡単に紹介します。日常的に飲んでいるお茶ですが、烏龍茶、緑茶、紅茶は全て同じ茶葉から製造されており、発酵の度合いによって種類が変わってくるということはご存知でしたでしょうか?後ほど詳しく解説しますが、非常に荒い説明ですと、チャノキから作られるお茶で発酵が進んでいないものを緑茶、発酵が半分程度進んだものを烏龍茶、発酵が十分に進んだものを紅茶と呼びます。

不発酵茶・・・緑茶
半発酵茶・・・烏龍茶
発酵茶・・・紅茶

またチャノキとはツバキ科の茶樹で、その葉や茎を使い、それぞれ違う製法で作られています。チャノキには大きく分けると2種類あり、日本で主に生産されているのは背があまり高くならない中国種です。もう1つは大きいものだと10m前後まで大きくなるアッサム種になります。このようにお茶は発酵の具合で分かれており、さらに細かくすると、弱発酵茶/白茶、後発酵茶/黄茶・黒茶と呼ばれる種類が増えます。

不発酵茶の作り方

ここでは緑茶(不発酵茶)の作り方を解説します。

1.摘んだ生葉を新鮮なうちに蒸気で蒸します
2.異なる機械により4段階に分けて茶葉を揉みます(荒揉み→加熱せずに揉む→乾燥しながら揉む→形を整えながら揉む)
3.乾燥させて「荒茶」の完成
4. 荒茶を仕上げて商品の完成

生葉を荒茶まで製造するのは地域によって異なりますが、茶葉の生産農家さんが地域で持っているお茶加工場に茶葉を持ち込み自分たちで作業をすることが多いそうです。大規模お茶農家になるのと自社で加工場を持っていたり、周辺のお茶農家さんからお茶を集約して荒茶を作ることがあります。

まずは生葉を蒸気で蒸す作業です。熱を加えることで酵素を失活させ、発酵が進まないようにします。ここで熱を加え発酵を止めることが烏龍茶や紅茶と大きく異なる方法になります。お茶つくりにはこの蒸す工程が非常に重要で、蒸し時間の長さにより味、香り、色が変わってきます。一般的に蒸し時間が長くなると色が濃くなり、渋みと香りが少なくなります。生産者によって自社の茶葉を最もおいしく飲む蒸し時間を追求するのも1つの技法になっています。

そして次は茶葉を揉むという工程です。以前はお茶を人力で揉んでいたためその期間だけ雇用された人がお茶揉みをしながら茶揉み歌という歌と歌ったとされています。
江戸時代までは、お茶は茶色や黄色をしており今のように綺麗なグリーンではありませんでした。しかし、1738年に京都の宇治で永谷宗円が開発した青製煎茶製法により今のような綺麗なグリーン色のお茶が作られるになりました。それまでは、お茶を蒸したらすぐに乾燥をさせていましたが、乾燥させる前に揉むことで色が綺麗なグリーン色になるという手法を発見、開発したのが永谷宗円なのです。そのため、現在のお茶作りではこの揉むという工程も一般的となり、機械によって圧力をかけたり、熱をかけながら揉むなど様々な技術進歩がしています。

そして最後に乾燥をさせます。揉んだあとの茶葉の水分量は10-13%程度とされており、最後に乾燥作業を行い5%まで水分量を減らすと荒茶が完成します。

荒茶は蒸して、揉み、乾燥させた状態の茶葉でまだ商品としては完成ではありません。ここから仕上げを行います。仕上げでは細かい枝や形の悪い茶葉を取り除き、商品となるように見た目も整えていきます。そして、そこから火入れという作業を行います。最後に加熱することで水分をさらに飛ばすことで香りを引き立てます。焙煎と呼ぶこともありますが、町にあるお茶屋さんは荒茶を仕入れ、自社の温度やノウハウで焙煎することでそのお店の味を作ります。

蒸し製緑茶の種類

 お茶(緑茶)は上述した通り、茶葉を高温で蒸すことにより発酵を止める製造方法で作られます。この手法で作られたお茶を「蒸し製緑茶」と呼びますが、日本茶はほとんどの種類がこの蒸し製緑茶に該当します。そして、その蒸し製緑茶の中にも使用する茶葉や製法によって種類が分かれ、その種類と違いを解説します。

煎茶

国内で多く飲まれており、最も生産されている代表的な緑茶です。ペットボトルのお茶の原料としても多く使われており、全国の産地で生産されています。煎茶には製造過程にある茶葉を蒸す時間の長さによって普通煎茶深蒸し煎茶の2種類に分かれており、味のバランスが良い普通煎茶に対し、蒸す時間を普通煎茶の2~3倍の時間をかけて作る深入り煎茶は苦みが少なくまろやかな味わいが特徴になります。

より詳しい煎茶の解説はこちら

玉露(ぎょくろ)

玉露は新芽が出始める頃に、日光をよしずなどで遮って作られた高品質のお茶です。直射日光を避けて作られることでうま味が増し、苦みが抑えられることで甘みを強く感じる味わいが特徴の手間ひまがかかっている高級品になります。「覆い香(おおいか)」と呼ばれる独特の香りがするのも玉露の特徴です。50~60度の低めの温度で淹れることでより玉露の持つ甘みを感じることが出来ます。

より詳しい玉露の紹介はこちら

かぶせ茶

玉露と同様に新芽が出始める頃に、日光を遮って作られているお茶ですが、日光を遮っている時間が違ってきます。玉露が20日前後に対しかぶせ茶は10日前後と短くなり、煎茶ほど苦みが少なくうま味を感じますが、玉露ほど香りやまろやさが少ないのが特徴です。全体的に飲みやすい味わいをしていますが、お茶を入れるお湯の温度によって煎茶に近い味わいにも玉露に近い味わいにもすることが出来ます。

蒸し製玉緑茶

製造工程は煎茶と途中まで同じですが、茶葉をまっすぐ伸ばす工程をせず丸まった状態で完成されたお茶になります。丸まった状態の見た目が勾玉のように見えることから「グリ茶」や「ムシグリ」とも呼ばれており、濃厚でまろやかな味わいが特徴のお茶です。

より詳しい蒸し製玉緑茶の解説はこちら

てん茶(碾茶)/抹茶

玉露やかぶせ茶と同じように、てん茶も日光を遮って作られています。日光を遮る時間として玉露が20日前後に対して、てん茶の場合同じくらいか少し長い期間日光を遮って作られているため、さらにうま味が強くなります。茶葉を蒸した後、揉まずに乾燥させ茎や葉脈を取り除いたものがてん茶になります。

てん茶についてより詳しい解説はこちら

このてん茶を石臼や微粉砕機を使って挽いて粉末状にしたものが“抹茶”になります。石臼で挽いた場合、1時間で約30gしか抹茶として作ることが出来ないため非常に高価なお茶となっていますが、近年はお菓子にも多く使われており日本だけではなく世界でも多くの人に好まれています。

番茶

製造方法は煎茶と同じですが、煎茶の収穫時期より後の新芽が伸びてしまい硬くなった茎や葉を使って作られています。収穫時期が遅いことから日光に当たっていた時間も長くなることで、他のお茶に比べると渋みが強く感じられます。代わりにカフェインが少なく価格も安価なため子供から大人まで幅広い年齢層の人に親しまれているお茶です。地域によっては呼び方や品質にも違いがありますが、共通して言えることは旬の季節や主流の品質から外れた「番外茶」が該当するようです。

番茶についてより詳しい解説はこちら

茎茶/芽茶/粉茶/頭

煎茶などの仕上げの加工で選別機によって新芽の茎を中心とした茎の部分をだけを集めて作られたお茶を茎茶、芽の先の部分を集めて作られたお茶が芽茶、ふるいなどにより集められた細かい部分で作られたお茶が粉茶、葉が硬く大きいサイズの茶葉を頭と呼ばれ、それぞれにうま味や渋みなど違いのあるお茶として楽しむことが出来ます。

ほうじ茶(焙じ茶)

煎茶や番茶、茎茶などを茶色くなるまで焙じて(炒って)作られているお茶です。茶葉を焙じることで香ばしい香りと味わいが生まれ、すっきりとした口当たりが特徴になります。茶葉の色も水色も茶色をしていますが緑茶の1種類になります。また、カフェインも少なく胃に負担がかかりにくいことから年齢問わず飲んでもらうことが出来るお茶でもあります。

ほうじ茶についてより詳しい解説はこちら

玄米茶

番茶や煎茶に炒った玄米を同量ブレンドしたお茶が玄米茶です。炒った玄米の香ばしい香りとお茶の香りや味をバランス良く楽しむことが出来るお茶であり、緑茶の量が半分になるためカフェインも少なくなります。玄米が入った特徴的な日本茶の1種ですが、茶葉だけでは出せない独特の風味は日本だけでなくアジアでも広く人気のあるお茶となっています。

玄米茶についてより詳しい解説はこちら

釜炒り緑茶の種類

 鉄の釜を使って茶葉を炒ることで発酵を止める製造方法を使って作られたお茶を「釜炒り茶」と呼びます。日本では釜炒り茶の生産はほとんどされておらず、宮崎県の北部などごく一部の地域でのみ生産されており、日本全体で言うと生産率は1%未満になります。そのほとんどが、中国で主に生産されている製法であり、中国から海外に輸出している緑茶の多くは釜炒りされた緑茶となっています。

釜炒り製玉緑茶
蒸し製玉緑茶と途中まで同じ製造方法ですが、蒸すのではなく釜で茶葉を炒って作られたお茶です。蒸し製玉緑茶と同じく茶葉を伸ばす工程を入れずに作られているため、丸まった状態の見た目をしており、蒸し製を「ムシグリ」と呼ぶことに対し釜炒り製は「カマグリ」と呼ばれています。あっさりとした味わいでうま味が感じられ、炒ることで生まれる独特の香ばしい香りがするのも釜炒り茶の特徴となっています。

半発酵茶と発酵茶

ここまで緑茶(不発酵茶)について解説をしてきましたが、最後に烏龍茶を代表する半発酵茶、紅茶を代表とする発酵茶について簡単に解説をします。

半発酵茶

 中国や台湾で主流として作られており、茶葉を摘み取った後に行われる発酵を途中で止めて作られています。そのため、発酵した茶色い部分としていない緑色の部分が混ざることから青茶とも呼ばれています。日本でも人気の高い烏龍茶は半発酵茶の1種類です。他にも包種茶や鉄観音、水仙茶など多くの種類が半発酵茶には存在しており、茶葉の発酵の度合いにより半発酵茶の種類が分けられています。

発酵茶

 湿度や温度が保たれた部屋で完全に発酵されて作られているお茶が発酵茶と呼ばれ、日本をはじめ世界で広く生産・消費されている“紅茶”が発酵茶に該当します。お茶全体の生産量としては70%と1番多いのが紅茶であり、生産されている国の土地や気候などにより香りや味、色などの違いが生まれ多くの種類が存在します。生産されている土地名がそのまま銘柄になっているのも紅茶の特徴の1つとなっています。

他にも後発酵と呼ばれる乳酸菌などの力を借りて発酵させているプーアル茶やさらに発酵度の低い弱発酵茶などが存在しています。

普段何気なく私たちが飲んでいる日本茶は不発酵茶と呼ばれる発酵をしないで作られた緑茶であり、緑茶の中にも加工の違いや日光の当たる時間、茶葉を摘む時期により様々な種類があります。さらに発酵が進むことにより烏龍茶や紅茶へと変化する非常に奥深い飲み物なのです。簡単に楽しむのであればペットボトルの緑茶を製造メーカーによる風味の違いを味わって感じてみてください。もっと奥深く緑茶を楽しむのであれば茶葉を自分で淹れたり、専門店へ行って、茶葉や淹れ方によって変わる風味や見た目の違いを楽しむことでより日本茶の良さに気づいてもらえるかもしれません。ぜひ、いろいろ試して自分好みのお茶を見つけてみて下さいね。